【DEAD END リコメンド】
輝き続けるDEAD ENDの軌跡が
示すものとは?
メタルからの脱却と進化!
そして、オリジナリティーの開花
メジャーデビューアルバム『GHOST OF ROMANCE』の翌年、1988年5月にリリースされた『shámbara』。このアルバムに関しては岡野ハジメ氏がプロデューサーとして迎えられている点が、やはり目を引く。
「全体をまとめるプロデューサーがいなかった前作の反省から、次作ではプロデューサーをつけようということになり、当時のマネージャーがバラバラな個性のこのバンドをまとめられるのはこの人しかいないだろうと紹介されたのが岡野さんです。メンバーそれぞれの関心を共有できる稀有な存在として、このアルバム制作においては微に入り細に入りお世話になりました」(MORRIE)
作詞:MORRIE、作曲:YOUを基本体制としつつ、"CRAZY"COOL-JOEが作曲した「Night Song」も存在感を放っている本作。制作過程での岡野氏との作業が刺激に満ちあふれていたことは、精緻に構築された各曲に耳を傾ければ自ずと感じ取れる。
「メタルからの脱却というような暗黙的合意があったようにも思いますが、ジャンルに関係なくクオリティーの高い音楽を作ろうという意志はあったはずで、岡野さんも初めてのDEAD ENDのプロデュースということで、かなり入れ込んでかかわっていただき、全ての曲の全てのパートについて岡野さんと作っていきました。リズムの構築の重要性とか、具体的なレコーディングの手順とか、曲の目指すところの明確なイメージにいかに近づけていくかとか、いろいろと学ばせてもらいました。アルバムの完成度、世界観の構築ということでは最高の作品だと思います。これを作ったことにより次作の『ZERO』であそこまで変わったというか、変わらざるを得なかったようなところがあると思います」(MORRIE)
「いろんな要素が入っているアルバムやと思う。バンド的には分からんけど、自分としては、音色的にも作品的にも、すごく身になったアルバムやと思う」("CRAZY"COOL-JOE)
1曲目「Embryo Burning」が鳴り響いた瞬間に味わえる、“非日常の扉が開かれた”というようなゾクゾクする感覚は、ぜひ実際に噛み締めていただきたい。そして、そのあとにも素晴らしい曲が続く。約5分にわたる展開を経て壮大なクライマックスへと至る「Psychomania」。80年代風味のダンスビートが印象的な「Blood Music」。サイケデリックな旋律が、妖しい高揚感を誘う「Heaven」。…などなど、“メタルからの脱却”というMORRIEの言葉の意味が、聴けば聴くほどよく文かる。そして、全篇を締め括る「I Can Hear The Rain」が美しい。多彩なニュアンスの演奏と歌唱表現で彩られたこの曲は、『shámbara』が永遠の名盤であることを鮮烈に認識させてくれる。
『shámbara』で示されたDEAD ENDの進化は、1989年9月にリリースされたアルバム『ZERO』によって、さらに劇的に加速していく。“メタルからの脱却”が『shámbara』以上に明確に具現化された作品が『ZERO』であるという言い方もできるだろう。2023年のタイミングでこのバンドに触れる若いリスナーにとっては、もしかしたらもっとも馴染み深いものを感じるのが『ZERO』かもしれない。なぜなら、LUNA SEA、L'Arc〜en〜Ciel、黒夢など、彼らへのリスペクトを表明しているバンドたちが90年代以降に確立し、彼らに憧れたさらに下の世代が継承したサウンドに通ずる要素をさまざまな曲から感じ取れる作品だからだ。“DEAD ENDがいなければ、現在の国内のバンドシーンはまったく別のものになっていた”という旨を多くの人が語る理由も、本作を聴けば納得できるのではないだろうか。
「I Want Your Love」や「So Sweet So Lonely」などに反映されているギターのアルペジオ、繊細なコード感、空間系エフェクターを効果的に活かしたサウンドメイキングは、下の世代に多大な影響を与えた要素の一例だ。また、DEAD ENDファンの間で絶大な人気の「Serafine」も、たくさんのバンドマンたちが憧れて止まない表現力が冴えわたっている。
「前作までまだまとっていたメタル的なものを意識的に払拭しようとしたアルバムで、制作中から“これが最後になるかもしれない”という予感めいたものがあったことはあったので、旧来のファンの多くが離れ、ファン層が一新するような、良くも悪くも破れかぶれ的な内容になったと思います。良いというのは、一発録りに近いレコーディングでダビングも極力少なく、バンドの生々しさがパッケージされたカテゴライズできない音を作れたところ。悪いというのは、達成したことの先への可能性についてバンド自体がイメージできず解散に至ったことでしょうか」(MORRIE)
「まぁ、賛否両論あると思うけど、別にポップにしようとか、そういうのは考えていなかったと思うけど…。新境地を開いたアルバムだったなとは思います」("CRAZY"COOL-JOE)
『ZERO』は前作『shámbara』に続き、岡野ハジメ氏がプロデューサーとして参加。レコーディング作業はロンドンで進められた。いくつかの曲の作曲クレジットには、YOU、MORRIEと並んで岡野氏も名前を連ねている。
「それまでのリフ主体で押す曲でなく、コード進行でメロディックに展開していく曲などでは岡野さんの持つノウハウをより必要としたということです。ロンドン行きが迫ってきてもなかなか曲がまとまらず、自分はちょうどMTRを買って自宅録音を始めた頃で、久しぶりに曲作りに参加しました。ちなみに初めてMTRで録音した曲は「Sleep in The Sky」でした」(MORRIE)
リリースされた1989年の時点では戸惑い気味に受け止めるリスナーもいた『ZERO』だが、この進化が意義深いものであったという事実は、90年代以降のバンドシーンがはっきりと証明している。しかし、DEAD END自体は本作のリリース後、ひとつの区切りを迎える。1990年1月に中野サンプラザで行なわれたワンマンライヴのあと、MINATOがバンドを脱退。レコーディングがすでに終了していた「Good Morning Satellite」と「原始のかけら」を収録したシングルが同年4月にリリースされたものの、長期にわたる空白期間が続いた。復活は2009年8月15日に開催された『JACK IN THE BOX 2009 SUMMER』まで待たなければならない。数々の名曲と名演を生んだYOUが2020年6月16日に永眠したのは、本当に悲しくて寂しい。しかし、過去の作品の数々は永遠に輝き続ける。そして、DEAD ENDが鳴り響かせる音楽は、これからも我々の胸を高鳴らせてくれるはずだ。
「全体をまとめるプロデューサーがいなかった前作の反省から、次作ではプロデューサーをつけようということになり、当時のマネージャーがバラバラな個性のこのバンドをまとめられるのはこの人しかいないだろうと紹介されたのが岡野さんです。メンバーそれぞれの関心を共有できる稀有な存在として、このアルバム制作においては微に入り細に入りお世話になりました」(MORRIE)
作詞:MORRIE、作曲:YOUを基本体制としつつ、"CRAZY"COOL-JOEが作曲した「Night Song」も存在感を放っている本作。制作過程での岡野氏との作業が刺激に満ちあふれていたことは、精緻に構築された各曲に耳を傾ければ自ずと感じ取れる。
「メタルからの脱却というような暗黙的合意があったようにも思いますが、ジャンルに関係なくクオリティーの高い音楽を作ろうという意志はあったはずで、岡野さんも初めてのDEAD ENDのプロデュースということで、かなり入れ込んでかかわっていただき、全ての曲の全てのパートについて岡野さんと作っていきました。リズムの構築の重要性とか、具体的なレコーディングの手順とか、曲の目指すところの明確なイメージにいかに近づけていくかとか、いろいろと学ばせてもらいました。アルバムの完成度、世界観の構築ということでは最高の作品だと思います。これを作ったことにより次作の『ZERO』であそこまで変わったというか、変わらざるを得なかったようなところがあると思います」(MORRIE)
「いろんな要素が入っているアルバムやと思う。バンド的には分からんけど、自分としては、音色的にも作品的にも、すごく身になったアルバムやと思う」("CRAZY"COOL-JOE)
1曲目「Embryo Burning」が鳴り響いた瞬間に味わえる、“非日常の扉が開かれた”というようなゾクゾクする感覚は、ぜひ実際に噛み締めていただきたい。そして、そのあとにも素晴らしい曲が続く。約5分にわたる展開を経て壮大なクライマックスへと至る「Psychomania」。80年代風味のダンスビートが印象的な「Blood Music」。サイケデリックな旋律が、妖しい高揚感を誘う「Heaven」。…などなど、“メタルからの脱却”というMORRIEの言葉の意味が、聴けば聴くほどよく文かる。そして、全篇を締め括る「I Can Hear The Rain」が美しい。多彩なニュアンスの演奏と歌唱表現で彩られたこの曲は、『shámbara』が永遠の名盤であることを鮮烈に認識させてくれる。
『shámbara』で示されたDEAD ENDの進化は、1989年9月にリリースされたアルバム『ZERO』によって、さらに劇的に加速していく。“メタルからの脱却”が『shámbara』以上に明確に具現化された作品が『ZERO』であるという言い方もできるだろう。2023年のタイミングでこのバンドに触れる若いリスナーにとっては、もしかしたらもっとも馴染み深いものを感じるのが『ZERO』かもしれない。なぜなら、LUNA SEA、L'Arc〜en〜Ciel、黒夢など、彼らへのリスペクトを表明しているバンドたちが90年代以降に確立し、彼らに憧れたさらに下の世代が継承したサウンドに通ずる要素をさまざまな曲から感じ取れる作品だからだ。“DEAD ENDがいなければ、現在の国内のバンドシーンはまったく別のものになっていた”という旨を多くの人が語る理由も、本作を聴けば納得できるのではないだろうか。
「I Want Your Love」や「So Sweet So Lonely」などに反映されているギターのアルペジオ、繊細なコード感、空間系エフェクターを効果的に活かしたサウンドメイキングは、下の世代に多大な影響を与えた要素の一例だ。また、DEAD ENDファンの間で絶大な人気の「Serafine」も、たくさんのバンドマンたちが憧れて止まない表現力が冴えわたっている。
「前作までまだまとっていたメタル的なものを意識的に払拭しようとしたアルバムで、制作中から“これが最後になるかもしれない”という予感めいたものがあったことはあったので、旧来のファンの多くが離れ、ファン層が一新するような、良くも悪くも破れかぶれ的な内容になったと思います。良いというのは、一発録りに近いレコーディングでダビングも極力少なく、バンドの生々しさがパッケージされたカテゴライズできない音を作れたところ。悪いというのは、達成したことの先への可能性についてバンド自体がイメージできず解散に至ったことでしょうか」(MORRIE)
「まぁ、賛否両論あると思うけど、別にポップにしようとか、そういうのは考えていなかったと思うけど…。新境地を開いたアルバムだったなとは思います」("CRAZY"COOL-JOE)
『ZERO』は前作『shámbara』に続き、岡野ハジメ氏がプロデューサーとして参加。レコーディング作業はロンドンで進められた。いくつかの曲の作曲クレジットには、YOU、MORRIEと並んで岡野氏も名前を連ねている。
「それまでのリフ主体で押す曲でなく、コード進行でメロディックに展開していく曲などでは岡野さんの持つノウハウをより必要としたということです。ロンドン行きが迫ってきてもなかなか曲がまとまらず、自分はちょうどMTRを買って自宅録音を始めた頃で、久しぶりに曲作りに参加しました。ちなみに初めてMTRで録音した曲は「Sleep in The Sky」でした」(MORRIE)
リリースされた1989年の時点では戸惑い気味に受け止めるリスナーもいた『ZERO』だが、この進化が意義深いものであったという事実は、90年代以降のバンドシーンがはっきりと証明している。しかし、DEAD END自体は本作のリリース後、ひとつの区切りを迎える。1990年1月に中野サンプラザで行なわれたワンマンライヴのあと、MINATOがバンドを脱退。レコーディングがすでに終了していた「Good Morning Satellite」と「原始のかけら」を収録したシングルが同年4月にリリースされたものの、長期にわたる空白期間が続いた。復活は2009年8月15日に開催された『JACK IN THE BOX 2009 SUMMER』まで待たなければならない。数々の名曲と名演を生んだYOUが2020年6月16日に永眠したのは、本当に悲しくて寂しい。しかし、過去の作品の数々は永遠に輝き続ける。そして、DEAD ENDが鳴り響かせる音楽は、これからも我々の胸を高鳴らせてくれるはずだ。
文:田中 大
■DEAD END 特集記事の一覧
・【DEAD END特集 vol.1】ライヴハウスシーンへの注目を集める起爆剤になった『DEAD LINE』
https://okmusic.jp/news/513931
・【DEAD END特集 vol.2】唯一無二のサウンドの萌芽! メジャーデビューアルバム『GHOST OF ROMANCE』
https://okmusic.jp/news/515455
・【DEAD END特集 vol.3】唯一無二の世界を確立した傑作アルバム『shámbara』
https://okmusic.jp/news/515537
・【DEAD END特集 vol.4】メタルからの脱却 多大な影響を与え続ける『ZERO』
https://okmusic.jp/news/515542
・【DEAD END特集 vol.1】ライヴハウスシーンへの注目を集める起爆剤になった『DEAD LINE』
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・【DEAD END特集 vol.2】唯一無二のサウンドの萌芽! メジャーデビューアルバム『GHOST OF ROMANCE』
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