琴音

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【琴音 インタビュー】
聴いた瞬間、
自分の曲になるような歌を歌いたい

心がほどけていくような癒しの歌声を聴かせてくれる琴音。新作の『君にEP』は聴き進めていくと、その芯の強さに背中を押されるとても心地の良い一枚に仕上がった。そんな挑戦に満ちた今作について語ってもらった。

楽器のレコーディングを見て
より曲と近くなれた

『君にEP』はとても癒される一枚でした。ただ癒されるだけでなく、挑戦的な曲もあり、かなりの渾身作になったと思うのですが、完成させた今の心境を教えてください。

ありがとうございます。今作は6曲収録なのですが、私的にもその割には内容が濃いなと思っています。先日インタビューしていただいた方にも“内容が濃いね”と言っていただいて、“独りよがりじゃなくて良かった”と思いました。かなり挑戦的な曲もありますし、自作の曲と提供していただいた曲といいバランスで収録されているので、自身にとってもすごくいい経験になりました。

最初からこういった作品を作ろうと思っていたんですか?

「資生堂アネッサ ドラえもんデザインCM」楽曲の「君に」や、映画『金の国 水の国』の劇中歌(「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」)を歌わせていただけるとは思ってもいなかったので、前作(2021年9月発表のミニアルバム『君は生きてますか』)を作り終えた時から“次はどうしよう?”という話はしていました。でも、最終的に今作の方向性を決める時、弦が入っていて広がりのあるサウンド感で統一したいねという話はしていました。さらに、いろんな曲を集めたとしてもグチャグチャにならないように整合性を取ることも大事にしていました。

特に挑戦的だったのはどの曲になりますか?

「波と海」です。実はこの曲は最初、歌詞がないメロディーだけのデモだったんです。どちらかと言うと“アート”に全振りしているような世界観で、すごく難解な曲でした。

今までにここまで振りきったものはなかったですよね。

そうですね。私も最初に聴いた時は戸惑いがありました。ボカロが♪ラララ〜と歌っているようなデモ音源だったので、拍子が分からないし、どう覚えていいかも見当がつかなくて…。でも、そこに歌詞が入ってきたことで、かなり世界観が見えてきたんです。まだよく分からないなりに歌ってみたら、スタッフさんに“できそうだね”って言われて“あっ、できそうなんだ!”と思って(笑)。

あははは。それまでは確信がなかった?

なかったです(笑)。でも、プロデューサーの徳澤青弦さんも“特にイメージはない”とおっしゃっていたんです。そこで、“哲学的なものや葛藤がどうというよりも、抽象的かつ概念的な哲学性があったほうがいいかもね”とお話をさせていただいて、なんとなく輪郭が見えてきました。

抽象的でありながらも言葉はものすごく入ってきやすい印象を受けましたよ。

ありがとうございます。今回、初めて楽器のレコーディングを見学させていただきました。楽器を弾いてくださる方のこだわりを間近で見ることができて、より曲と自分が近しくなれたような気がしたんですよね。そこでまた大きなイメージが湧いて。実は、最初に仮歌を歌っていた時は野太い歌い方をしていたのですが、楽器のレコーディングを見学したり、歌詞をいただいたことによって、それではこの曲の世界観を反映することはできないと思って歌い方を調整していきました。そういったことを経てブラッシュアップされていく感覚はすごく新鮮でした。

タイトルにもなっている「君に」もすごく素敵な曲ですね。

この曲はCMタイアップのお話が決まってから曲を作っていただきました。これ実は、CM尺用とフル尺用とで計2回レコーディングをしているんです。しかも、その間に時間がかなりあったので、アレンジをどうするか、コーラスを入れるか、キーを半音上げるかどうかなど、ものすごく時間をかけてフル尺を制作していったように思います。すごく細かいこだわりが宿っている曲になりました。

CM尺とフル尺って、また印象が変わってきますよね。

そうですね。メロディーだけとっても、Aメロの次にサビがくるのと間にBメロが挟まれるのとでは、感情の揺らぎ方が全然違うんです。歌詞も弱さが出てくるので、より前向きさだったり、背中を押す感じが強くなると思うんですよ。そう言えば、レコーディングの時に使った歌詞の資料を持ってきました。

すごい! 歌詞にぎっしりポイントが書き込まれていますね。

提供していただいた曲は、より忠実に歌いたいからこそ、すごく書き込んじゃうんです。事前に全てを決め込んで、本番は出力するだけのロボットになりたいんですよね(笑)。なので、本番の前日までには何度も聴いたり、歌ったりして、本番では再現度を高めるような作業をしています。

建築した完成系のビルを見せるみたいな?

まさにそんな感じだと思います。逆に自分で作った曲はあまり書きこまないんですよね。自分の曲は、自分をそのまま出すことにしかならないので、肩の力を抜いて歌うことが出来るんです。なので、提供していただいた曲と自作曲って全然違うんですよ。

すごく勉強してから挑むタイプなんですね。

不安になってしまうので、ある程度決めておきたいんです(苦笑)。

プライベートでもそういうタイプですか?

う~ん…その要素は強いかもしれないですね。逆に、興味のないことって本当に適当なんですよ。好きな手芸用品は徹底して置く場所が決まっているのに、掃除機や歯ブラシはそこらへんに置いちゃうから、それを探すことに時間を取られちゃったりして(笑)。ちなみに、インスタライヴなどは話の進め方など、ちゃんと台本を書いてからやるんです。なので、“しゃべるのが上手だね”と言われることもあるんですが、“事前に全部決めていました!”っていう(笑)。事前に決めておかないと、何を言いたかったか分からなくなってショートしてしまうこともあるので。
琴音
EP『君にEP』

OKMusic編集部

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