浜田麻里

浜田麻里

【浜田麻里 インタビュー】
“自分は一生をかけて
何を残せるのかな?”と
考える年代になったんです

群を抜く歌唱力と美貌で多くのリスナーを魅了し、国内はもとより世界を舞台に活躍している浜田麻里。デビュー40周年を迎える彼女が最新作『Soar』を完成させた。ハードネスやエモさ、切なさなどを纏った幅広い楽曲や人生をテーマにした深遠な歌詞、超絶的なヴォーカルなどをパッケージする同作は唯一無二の魅力を湛えている。今なお進化し続け、より輝きを増している浜田麻里の最新の声をお届けしよう。

今回は本当に全曲時間をかけて
丁寧に作り込んだ

『Soar』を作るにあたってテーマやコンセプトなどはありましたか?

肩肘を張って“こういうテーマ!”みたいな感じでは始めませんでしたけど、前回のツアーでバンドメンバーが変わって、“この人は曲作りのコラボ相手としてすごくいいな”と思った人がいたんです。バンドメンバーはミュージシャンとしてだけではなくて、そういうところも踏まえた人選をして、特にドラマーの原澤秀樹くんとは前のツアーのリハの時点から曲作りの話をしていました。そこを取っかかりとして自分でも曲を作りつつ…自分の担当はバラード系と、わりとメロディーがはっきりとしたハード系とだいたい相場が決まっているので、そういう曲を作って、曲ができたらアレンジ発注をするという作業を始めて。あと、もう私も40周年だし、年齢も随分と上になったから大人しくなっていくというのではなく、ちょっとガツッといきたいという想いはあって。なので、ハード系のギタリストで、曲もコラボできる人を紹介していただいて…というような流れで制作を進めていきました。

今なお攻めの姿勢でいるというのは本当に嬉しいことです。歌詞の面では“人生は限りあるものという枷をポジティブにとらえて生きる”ということがテーマになっていますね。

コロナ禍がきっかけになってそういうテーマにしたと思うかもしれませんが、そういうわけでもなくて、自分の年代的なところが大きいですね。“自分は一生をかけて何を残せるのかな?”と考え始める年齢になったんです。今回はその辺りがダイレクトに出ていて。それと、ロックミュージシャンは短命の人が多いじゃないですか。だから、人生を歌うロック曲というのはあまりない印象があって、ぜひトライしてみたいと思ったんです。その結果、トータルとしては死生観的なものがテーマになっていきましたけど、それは後づけ的な解釈で、最初から意識していたわけではありません。

おっしゃるとおり、そういう歌はいろいろな人生経験を経てきているアーティストが歌うことでより説得力が増します。

若い時に人生は歌えないと感じたことがあるんです。ポジティブに人生を応援するような曲は歴代あるんですけど、それを自分よりも上の世代の外国人の方たちの前で歌った際に、“なんか違う…”ってなったんです(笑)。すごく恥ずかしかった。その時に年齢を重ねないと歌えない曲というのがあると思ったんです。やっと自分もそれができる年代になったというのもありましたね。

今作の歌詞は、一見痛みや苦しみを描いたネガティブな歌詞のようでいながら根本はポジティブという在り方が絶妙です。

表面的には暗いとか、ダークだとか言われることが多いんですけど、それが自分の持ち味だと今では思っています。穴を掘っていくような暗さではなく、最終的には背中を押すような印象が残ればいい…というのはありますね。

楽曲の中に明るいセクションがあって、それに併せて前向きな言葉も入ってくるというかたちではなく、ずっと陰りを帯びた世界の中で光が射すようなことも歌っていますよね。それを違和感なく表現するというのは、誰もができることではないと思います。

どうなんでしょうね? それは自分では分からないです。

こういう歌詞をいい感じで聴かせるには文体や言葉のチョイスなども重要になってきて、その辺りにもセンスの良さを感じますし。

自分の使う言葉というのは口語というよりも、わりと文語が多いんです。それで、そういうふうに感じてもらえるのかもしれません。ただ、意識して文語を使っているわけでもなくて、私が自然体で書くとそういう歌詞になるんです。

リスナーの気持ちを上げるには“イェ~! 楽しくいこうぜ!”的な曲でもいいわけですが、まったくそうではないかたちでリスナーに光や希望を感じさせることに衝撃を受けました。

なんかしっくりこないんですよね、ポジティブだけの曲というのは。“やっぱりロックはカタルシスじゃん!”と私は思っているので(笑)。

歌詞の面でもオリジナリティーを持たれていることは見逃せません。では、アルバムに向けて楽曲を作っていく中で、キーになった曲などはありましたか?

今回は本当に全曲時間をかけて丁寧に作り込んだので一曲だけ挙げるのは難しいですけど、今回初めてtatsuoくんという作家さんとコラボして、それが新鮮だったというのはありましたね。「Tomorrow Never Dies」と「Escape From Freedom」がtatsuoくんとコラボした曲で、特に「Escape From Freedom」とそのドラマチックさが自分向きかなと思います。この辺りの曲ができてきて、またハードルを超えられる気持ちになりました。「Tomorrow Never Dies」はアルバムで一番ハードサイドの曲ということを頭に置きながらtatsuoくんと一緒にアレンジも詰めていったんですけど、もともとはテンポがすごく速かったんです。スラッシュメタルみたいな感じで、思いきり速くて。それを自分の中のファストソングの限界のところまでテンポを落としました。と言いつつ、それでも結構なファストソングですけど(笑)。テンポを落とすところから入って、tatsuoくんとは相当やりとりしましたね。間奏とかも、それこそサビと同じくらいの丁寧さで取り組んだんです。まぁ、それは全曲に言えることですけど。あと、音作りに関しては新しい感じにすることを、かなり意識しました。
浜田麻里
浜田麻里
アルバム『Soar』【初回限定盤】(CD+DVD)
アルバム『Soar』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着