斉藤和義

斉藤和義

【斉藤和義 インタビュー】
今回はアコギのロックアルバムに
したいと思っていた

アコースティックを前面に出しつつも、そのサウンドはしっかりロック。歌詞は日常の描写の中にも時代をえぐる視点、郷愁、ヒューマニズムが、押しつけがましくなく散りばめられている。そんなアルバム『PINEAPPLE』はデビュー30周年を迎えるアーティスト、斉藤和義の貫禄を感じる大傑作! まさに2023年の必聴盤である。

タイアップは期間が決まっているけど、
こっちはそれをこの先も歌っていく

今作は本当にいいアルバムだと思っております。巨匠監督の映画作品を見終わったような感触と言いますか、高いレベルでの安定感を感じたところでございます。13曲収録されていますが、似たものがない。それにもかかわらず、確かに斉藤和義作品を聴いているという感覚がある。このアルバムは繰り返し聴いて楽しいです。とにかく、とても良かったです。ご本人の感触はどうですか?

“いい感じかもなぁ”とは思っています。もともと前作(2021年3月発表の『55 STONES』)からこのアルバムの間にタイアップとかで先に配信になっていた曲も結構あったので、“その辺もやっぱりアルバムに入れたいしなぁ”と思っていたし、“それがうまく混ざるような感じになるといいけどなぁ”みたいなのはぼんやりあって。先に配信した曲が全部が入るわけでもないだろうけど、“これとこれは入れたいしな”みたいなことをいろいろ考えてはいましたね。

確かに今おっしゃられたとおり、このアルバムには2021年の秋から配信してきた楽曲も収録されていますね。ですので、ゼロからアルバムを作ったというよりは、ここまで作ってきた曲があって、それがアルバムにまとまった印象もあります。

そうですね。4年前くらいかな? 事務所にリハーサルスタジオを作って、リハーサルがない時は作業場にしていて。ドラム、ピアノ、ギター、アンプと全部セッティングしてあって、パソコンを持って行ってつないで録音だけすればそれなりの音で録れるような状況を作ったんですよ。特にコロナになってからは時間もあったし、ちょこちょこ行っては…それは曲を作るというよりも、買ってきたマイクを“どんな音するか試してみよう”とか、“このプリアンプ、どんな感じだろう”とか、そういう機材チェックとかも兼ねて。楽器もそうですね。ギターを買ったから“ちょっと何か録ってみたい”とか、そういう感じで適当に録音したり、曲らしきものを適当に録ってみたりして。でも、頭からお尻まで完成することはないまま、“ひとりジャム”じゃないですけど、そういうのはちょこちょこやったりしていましたね。昨年のツアーがない間は、そこにフラッと行っては“今日この辺までできたぞ”とか繰り返しているうちに何曲かポツポツできてきて。そうやって適当に録っていたものが、いざレコーディングでちゃんとまとめようとした時に結構あったし、聴いてみたら“ここをいじればもうできるな”という状態で、歌詞も“何でもいいや”と思って適当に歌って録ってみたら“あれ? これ、だいたいできているな”みたいなのが感じだったんですよ。だから、自分でもアルバム用に作ったというよりは、何となく日々作ってたものがまとまった感じですね。

そのアルバムの作り方は、過去30年間、これまでの21枚のアルバムとは違う感じでしたか?

その作業場ができてからわりとそういうことが増えてきました。それまでは本当に何となく家で録ったり、何となく鼻歌で録ったりしても、基本的にはレコーディングスタジオへ行ってから曲を作り出して、3日間で録るとしたら、1日目は曲を作って、2日目はデモを録って、それがそのまま本チャンになって出来上がるみたいな感じで、家で完成させることはほぼなくて、だいたいスタジオへ行ってやっていましたから。その作業場での音も結構なクオリティーで録れるから、そこのテイクがそのまま使えるし、ドラムもそこで録れちゃったり、アコギもそこで録ったテイクだったりとかで、それをレコーディングスタジオに持って行ってデータを流し込んで、ミックスはそっちでやったり、歌入れはスタジオでやったりとか…数年前までは昔ながらのやり方でやっていたんですが、最近はそういう感じですね。

今作の収録曲でもっとも早く配信されたのが「寝ぼけた街に」「Over the Season」「朝焼け」の3曲で、これらは2021年10月に配信されております。3曲ともタイアップがついていますし、これらは別にアルバムに入れる前提でできた楽曲という感じではないんですね。

“いずれは次のアルバムに入るんだろうな”という感じではありましたけど、その頃はアルバムのイメージは全然なかったので、“もし全然違うアルバムを作りたくなったら、これはもう入らないかもしれないしなぁ”とは思っていましたね。

ちなみに、「寝ぼけた街に」「Over the Season」「朝焼け」はこのアルバムに5曲目、7曲目、8曲目と、真ん中辺りにまとまって並んでいますね。

あぁ、そうですね。何となく並べていったら“この感じかな?”ということで、そうなっていました。

加えて言いますと、それらに続く「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」は昨年7月に配信されたもので、そのあとの「100年サンシャイン」は配信されていないものの、オタフクソース創業100周年記念ソングの書き下ろし。タイアップものがアルバムの中盤にまとまっているのはちょっと印象的ではありましたね。

タイアップどうこうとか先に配信していたどうこうじゃなくて、アルバムの駒として…というか、“どう並べたら一番聴きやすいかな?”とか“リズムの流れ、歌詞の流れ的にもどうかな?”とかを考えて並べたのがこれで、タイアップがあって先に配信で出ていたということは一回忘れて並べました。

ただ、タイアップはそれぞれに内容も違うので、楽曲のテーマもサウンドも当然違ってくるからバラエティー感は出ますよね。その辺の面白さはあると思います。

あぁ、そうかもしれないですね。タイアップは向こうからお題が出てきて、それは自分からは出てこないお題なので、どこかしらでかかわってくれた人たちに喜んでもらいたい気持ちもありつつ。とはいえ、タイアップって期間が決まっているけど、こっちはそれをこの先もずっと歌っていく曲にしなきゃいけないわけで。入口としてはそのお題を利用させてもらうけど、出口としては“自分の曲にします”という感じなんですよ。無意識か意識的かどうか分からないんですけど、タイアップということで“ちょっと分かりやすくしなきゃな”とか、そういう気持ちも働いているとは思うんですけどね。

斉藤和義さんのメロディーは決して難解なものではなく、とても親しみやすいものが多いので、タイアップに寄り添うことができるんだろうなと思ってはいるんですが、タイアップは企業それぞれにお題がバラバラでしょうから、その辺がうまくサウンドのバラエティーさに作用するのかなと勝手に思ったところではあります。

どれも個別に作っているので、アルバムになった時にどうなるかってことを考えずにやっていますからね。一曲一曲、作っている時期も違うから、のちにそれをアルバムにしてまとめるわけで…自分でも「寝ぼけた街に」はだいぶ前の曲だけど、アルバムに入ると“なんかアルバムで聴くほうがいいなぁ”と思ったりするし、アルバムの中でちゃんと収まっている感じに思えたんで、全部入れてもいいかってなったんですよね。
斉藤和義
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OKMusic編集部

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