the shes goneが歌い届ける、喜怒哀
楽の深さーー約2年ぶりのミニアルバ
ム『HEART』の制作を経て得た実感

兼丸(Vo.Gt)、マサキ(Gt)、Daishi(Ba)、熊谷亮也(Dr)の4人からなるthe shes goneが、約2年ぶりとなるミニアルバム『HEART』をリリースした。今回は兼丸にインタビューを敢行。彼らが本当に楽曲を大切に思い、扱っていることが伝わるインタビューとなった。先日ベースのDaishiの脱退が発表されたが、彼らのコメントは仲間に寄り添った、思いやりのある言葉ばかりだった。『HEART』から感じるあたたかな温度感や距離の近さはきっと、そんな関係性の彼らが心を込めて紡いだからこそ溢れるものだろう。
楽曲に向き合いながら作られたミニアルバム
ーー『HEART』の収録曲には以前からあたためていた楽曲も多いそうですね。
あたためていた曲というと、2曲目の「春よ、恋」と7曲目の「どの瞬間も」、最後の8曲目の「これから」ですね。制作に年単位かかってます。「春よ、恋」に関しては構想が2年前からあって、演奏部分のアレンジはすぐできたんですけども、演奏とちょっと高めのキー設定が、それまでの自分たちの技量では足りず、やりたいことができなくて。あとは、この曲は他の曲に比べて歌詞に暗い部分が1つもないんですが、それが意外と僕の中では難しくて。明るい言葉が出てこなかったんです。そんなこともあって、急いで作るよりもちゃんと大切に作りたい曲だったので、時間がかかってまして。「どの瞬間も」は前作の1stフルアルバム『SINCE』(2021年)の時に作っていて、でも「タイミングが今じゃないよね」と話していたのが今回入ってきました。
「これから」は弾き語りなんですけども、5〜6年前から僕がたまに出る弾き語りライブ用に作った曲で。でも人前では2回ぐらいしか披露したことがなくて、ストックとしてずっとあったんですけど、皆でバンドアレンジをしてもガッチリこなかったんですよね。この曲は1番で終わってる曲なんですけど、だからこそ完結してるんじゃないかという話にまとまりまして。あと「どの瞬間も」でしっかり4人のバンドサウンドができたので、それなら最後に弾き語りを入れても、ちゃんとthe shes goneの曲として聴いてもらえるんじゃないかなと。どの曲も敢えてあたためたわけじゃないんですけど、そうやって楽曲たちが入ってきました。
ーー完成に至っていない制作途中の曲たちは、いつも気にかける存在といった感じですか。
そうですね。ストックとして、ボイスメモとかにデモの音源があって。大体はスタジオのリハーサルの合間合間で、「この曲どう?」とセッション風に進めていって。メンバーの反応が良かったらそのまま進めたり。
ーー曲の候補には他にもありましたか?
意外とどんどんできた曲から出してった感じなんですよね。「栞をはずして」は去年リリースされた時に「この曲はゆくゆくはアルバムに入るだろう」ということでしっかり力を入れてできたので、他は力を抜いてトントントンとやりたい曲を書いていった感じですね。
ーー「栞をはずして」が起点になった?
「栞をはずして」のリリースがあって、次に書き下ろしの「サクラ、サク。」のお話があって、すぐそっちを手につけなければいけなかったので、順番的にアルバムのことを考えてるよりも、次の曲の配信をどうするかという話の中で作っていったんです。「ムスクの香り」も去年リリースして、既に配信リリースとして3曲出てたんですよね。なのでその曲たちが持ってるテーマ性に乗せていくわけじゃないですけども、特にバランスを考えず並べて作っていった感じです。それこそ1曲1曲はさっき言ったように2年がかりとかですけど、アルバムの新曲に関しては結構早めにできたと思います。
2年かけて、やりたいことがちゃんと達成できた曲
ーー先行配信の「春よ、恋」は、インスタの投稿で全部聴きどころだとおっしゃっていましたが、お気に入りの1曲なんですか。
カッコ悪いかもしれないですけど、勝負曲というか、しっかり力を入れて作った「これが僕たちのリード曲です」と言えるサウンドになりました。というのも、ずっとやりたかったジャンルがようやくできて。完全に暗いことを言わない歌詞と、ちゃんとギターソロがあって、アウトロもあって、それぞれのパートの見せ所もちゃんと作ってるところ。僕らは歌ユニットではないし、バンドとしてやってるので、それぞれの良さを出しながら。バンド感を追求するとちょっと男っぽいというかガツガツしてしまうんですけど、すごく爽やかにできました。言葉も爽やかなものが出てきて。やりたいものが時間をかけてやっとできた。そういう意味で全部聴きどころで、お気に入りです。
ーー明るいことを明るく歌いたかったみたいな気持ちがあるんですか?
明るい音に対して、それに見合う言葉を今までうまく100%当てられてなかった気がするんですよね。それが100%に近い、今の自分にできる限りの明るい言葉で、ちゃんと音に合った言葉が出たことに納得したんです。やっぱりどうしても途中の展開で、暗い自分が出てきてしまってたんですよ、今までは。​ようやく素直に、根暗にならずに出てくれた。
ーー作詞は難しかったですか。
個人的に明るい力を持つ言葉の方が、悲しい言葉よりも少ない気がするんですよ。「寂しい」を表現する比喩はいっぱいあるじゃないですか。「嬉しい」って意外と少ない気がするなと思って。「これは明るい言葉なのか」「ありきたりな表現なんじゃないか」「もう誰かが言ってる言葉なんじゃないか」という部分で迷っちゃいましたね。そういう意味では「ムスクの香り」みたいに後悔や感情に結びやすい歌詞はすぐ書けました。
ーー心境の変化などあったんですか。
いや、なかったと思います。ただ、これだけ長い時間1曲に対してずっと考えてたことはなかったので、やっぱりその賜物なのかなと。さっきの話で、常に気にかけてる存在という曲は「春よ、恋」だったと思う。気にかけてあげていた結果、ちゃんと時間をかけて選んだ言葉が出てきてくれたんだと思います。あと、なかなかしっくりこなかったのはキー設定ですね。「春よ、恋」は元々もう1音半ぐらいキーが高かったんです。喉が死んじゃうんじゃないかなと思って。やっぱり高い音の方がサウンドとして明るく聴こえるんですよね。声はお客さんからしてもわかりやすい音のフィルターで、1番近くにある存在なのですごく悩んだんですけど、音をちょっと下げた分、ギターを多く使った明るいサウンドを出すアレンジにしました。それでまとまってる感じです。
ーーひとつお聞きしたかったんですが、<12回の瞬きのサイン>の部分は兼丸さんも匂わせておられて気になっていまして。野暮な質問かもしれませんが、この意味というのは……?
一応、歌詞に書いてあるんです。
ーー<君のえくぼに住みたいな>?
そうです。わかりやすく鍵カッコで申しております。
ーーやはりここを示していると。
ちょっと現代文みたいになっちゃってます。わざわざ僕が「こうなんだぜ」と提示するもんではないなと思ってはいるんですけど、主人公が好きな子の隣にいる時に、1歩踏み込んじゃってるというだけです。
ーードリカムの名曲に「5回点滅、アイシテルのサイン」というのがありますが……。
まさに、オマージュです。もしかしたら10代の方は知らないかもしれない。そういう表現というのはわかりにくいかなとは思うんですけど、でも僕が納得してその景色がわかってれば大丈夫なのかなと思ったのと、どういう意味だろうかと考える時間がまた良いのかなと。
ーーそれもわかります。歌詞の意味を想像して楽しむというか。
それがバラードだったらすごく気持ち悪く聞こえてると思うんですけど。
ーーバラードだと確かに重みが変わってきますね。
ゆっくり歌われたら気持ち悪い。
ーーそんなこともないと思います(笑)。
「ん? 今なんか言った?」みたいな。「どういうこと?」でごまかしてる。
ーーこのテンションだから可愛く聞こえるんですね。
そうです。もう走り去って逃げてますね(笑)。
目には見えないけど、繋いでくれるものが確かにある
ーー「アポストロフィ」はサビと同じメロディーが続きますが、前半は演奏のテンションが落ち着いていて、最後にサビらしくなる構成が印象的でした。
どの曲も僕が基本的にずっとギターを弾いてしまうんですよね。なので「アポストロフィ」は、「ギターをイントロから弾かないでいいんじゃないかな」というアレンジから入りまして。僕のギターはサビから入ってくるんですけど、最初から華やかにいくんじゃなくて、大切に言葉を扱いたいなと。で、落ちサビ風じゃないですけどちょっと落ち着きつつ、だんだんコーラスや楽器の音が加わっていく構成になってる。そこを丁寧にやりたかったんですよ。それにメロディは同じなのに、バックで鳴ってる演奏の雰囲気が違うだけで、哀愁や華やかさが変わる。それは自分でもやりながら面白いなと思いました。
ーー本当に。ブロックごとに印象が変わっています。
「ラベンダー」(2021年)を作ってから、アコースティックギターを使うことが多くなっていて。バンドサウンドの中でアコギをどう使っていこうかという考え方で作った曲ではあったので、明るさも哀愁も、アコギがその役割をたくさん担ってくれてる気がします。
ーーファンの方に向けたメッセージが込められていますか。
タイトルを見ていただいたらわかってもらえると思いますが、2021年に「-apostrophes-」というファンクラブを設立しまして。「the shes gone」の表記は本来、「shes」のところにアポストロフィが入ってるんですよ。バンド的には見栄えが悪いので外したんですけれども、元々は「She’ s gone」という単語の略であって、アポストロフィが存在しなかったら「shes」という単語もなかったわけで。目には見えないけど繋いでくれるものが確かにあるということを、コロナ禍でライブをしながら感じていて。なので、僕たちを繋げてくれてる人たちはアポストロフィ的なものなんじゃないかと。普段は気づけないけど、​ライブに来て顔を合わせたらちゃんと存在してくれているんだなと気づける。直接的じゃないですけど、その人たちが僕たちの支えになっていることを曲で表現したくて。やっぱり音楽で恩返ししたくて。ちゃんと繋がっているんだよと提示したくて書き進めていったんですけど、「春よ、恋」の次に歌詞が書けなかったです。
ーーそうなんですね。
歌録りも1回延期して。やっぱり目に見えて届けたい人がいると、生半可な納得ができなくて書き直しましたね。ファンクラブが「-apostrophes-」ということで、誰に向けたどういう曲か想像しやすいとは思うんですけど、サビがちょっと抽象的ではあるんですよね。テーマを深掘りするほど、納得できる言葉が出てこなくて。自分で課した課題なのに全然答えられなくて。それにアルバムはファンクラブに入ってる方だけが買うわけじゃないと思うので、単体でも楽しんでほしいなと思って。で、遠距離恋愛というテーマも加えてダブルミーニングにしちゃったが故に、ファンに向けた方の答えは出てるけど、遠距離恋愛のストーリーとしての答えが出なくて、時間がかかりました。
ーーどちらも整合性を取りたいと。
曲の中の遠距離恋愛中の2人にもちゃんと答えを出してあげたい。じゃないとせっかく曲の中で生まれてきた感情があって、実際に当てはまる状況の人たちがいるのに腑に落ちないというか、他人事の言葉になっちゃうと思ったんで。ただの埋め合わせの曲にはしたくなかったんです。そう考えれば考えるほど、言葉が出てこなくなっちゃって。すっごく時間がかかっちゃいましたけど、最終的には納得しましたね。「目に見えないけど、目に浮かんできたよ」と最後に気付けたこと。想像して目に浮かべることはできるんだなとわかって、そこでやっと完成しました。この曲が2人にとってのアポストロフィになればいいなという意味合いにも受け取っていただければ嬉しいですね。
ーーすごく色んなことを考えて作られたんですね。
そうなんですよ(笑)。僕、情景を限定する言葉を使いたくなくて。わがままですけど、なるべく老若男女、聴いてくれる子の親御さんにも気に入ってほしいので。その観点で言葉を選んでいくと、LINEやスマホという言葉を出したくなくて。それで<親指の言葉>と書いたり。自分で枷を作ってしまったが故に時間がかかりましたね。難産でした。
ーー紆余曲折あったんですね。
そうね、ちょっと難しいことしちゃった。大きい括りでいったら恋愛観みたいなことなのかもしれないですけど、別にそう思って作ってないので。人生観や皆の生活の中にある言葉をなるべく入れたいと思ってやってる。その中で新しいものを作るからには自分もレベルアップしないと。これじゃダメだな、今まで通りだなと悩んでしまって、あまりやってない手法で挑戦しようと思ったんです。僕は枷や縛りが多いですね。
ーー自分で縛ってしまうタイプですか。
そうなんです、自分にドSで。
ーーそれは苦しくなる時もあるでしょう。
いやー、寝れないっすね。夢の中に歌詞が出てくるんですよ。で、起きて普通に忘れてるというのはよく繰り返してました。
ーー夢の中で歌詞が?
テスト勉強中、夢でもテスト勉強してるみたいな感じです。夢の中で、多分正解は出てないですけど、「お! できた」と思ってパッと起きるんですけど「何だっけ」って。この現象で苦しめられたりもしましたし、単に自分を追い詰めてオフの期間に勝手に寝不足になったり。本当に納得できるまでやっちゃうんで、できた時は本当に安心します。
ーー完成した今は、安心している。
はい! 今は寝れてます。
一曲入魂で時間をかけて、ちゃんと昇華してあげたい
ーー「これから」は、冒頭で5〜6年前からある曲というお話がありました。歌詞は2番は付け加えずに1番だけでいこうと?
そうなんです。何か余計なことをしちゃってると感じたんですよね。「栞をはずして」は6分あるんですけど、曲を締め括るためにその言葉が必要だったんです。だけど「これから」は1番だけでしっくりきちゃってる。メンバーに相談したら「このままで余韻があるから、お客さんも聴いた時にこの続きがどうなってるんだろうと思い浮かぶ。だからこそ良い作品になってるんじゃないか」という話になって、僕も納得できました。
ーー盤にすることができて、どんなお気持ちですか。
やっと仲間に入れてあげられたなという感じですかね。というのも、アレンジもハモリも歌詞も、9割以上そのまま入れられたので。皆の反応を聞いて、ちゃんとこの曲もthe shes goneの曲だと受け入れてもらえてるんだなって納得できたし、安心しましたね。the shes goneは、いっぱい曲を作ってその中から曲を選んでくよりかは、一曲入魂で時間をかけてちゃんと昇華してあげたいと思うバンドなんで。「これから」は本当に長い間眠っていたので、日の目を浴びさせられてあげて良かったです。枷とかを考えずに本当に一生懸命やってた時の曲ではあるので、心情というか風景に雑なものがないんですよ。難しい表現もないですし(笑)。ごまかしのきかないテンポ感でもありますし、1つのテーマに対してずっと一途に歌えてる。改めて歌ってみて、「5〜6年前にこんな綺麗な曲書けてんだ」という驚きも感じました。
ーーなるほど。
これがもう少し早い段階で録ってたら、もっと若々しく、もっと薄い意味を持つ曲になってしまってたのかなと。自分で「いつかこの曲を大切にちゃんと出したいな」という想いがあったから、気持ちを込めて作れたんじゃないかなと思ってます。
ーーレコーディングは1人でブースに入って、下を向きながら歌っていたとラジオでお話されていましたが、何回も歌われたんですか。
ギターと歌は別で録りまして。普通の曲はメトロノームみたいなクリックというテンポの正解を耳にもらいながらやるんですけど、弾き語りだとマイクが繊細すぎてクリックの音を拾ってしまうので、何も聞かずギターだけで何回か弾いて、そのギターに対して座って歌を歌いました。自分で弾いてるので、空気感が何となくわかるんですよね。それぞれ3回ほどのテイクで録りましたかね。息継ぎも全部繋がってるので、本当に空気感をごまかさないで、1回のテイクをまるっと録りました。それにこの曲の感情や言いたいことはもうわかってるので、丁寧なのにすごくすんなりと気持ちを込めて歌えましたね。2回ほどしかライブでやってないと言いつつも、雰囲気は自分の中で知っているので。やっぱり1回歌ってるのと歌ってないのでは違うなと思いました。
ーーテーマとしては失恋ですよね。別れた恋人が残っている温度感も感じられますが、<誰かとまた恋をする度に思い出せるのだろうか>というところで、忘れたくないのかなと感じて。
まだ作詞力が今よりない時に​書いてしまったので、自分でも分かりにくいかなと思ったんですけども、そこは<あの優しさも服の畳み方も>にかかっていて。誰しも1番優しくできるのは、大切な人や好きな人に対してだと思うので、その人がいなくなった時に自分の中にある優しさはちゃんと機能してくれるのかなという。「あなたじゃない他の人を好きになったとして、その人にあなたにしたことと同じ優しさはちゃんと自分の中にあるのかな。思い出して、それ以上の優しさで接することができるのかな」という言葉です。
ーーそうだったんですね。
未練があるわけではなくて、終わったことなので納得してるんですよ。でも僕の生活の中にはまだ君が残ってるし、このまま君と過ごしたものが息づいてって、また僕になるんだろうな、という受け入れ作業の途中。
ーー女性は上書き保存、男性は別名保存と言うので、そのことかなと思いました。
それで「うえーん」となって終わった後ですね。「落ち着いてもう終わったけど、元気にしてるかな」みたいな。別にヨリを戻したいとかそういうことではなく。
ーー新しい彼女がいても?
ですかね。自分が振った・振られた関係なく、どちらにも取れるような歌詞にしたいなというのは当時からあった気がします。振った側がそんなん思ってたら気まずいですけど、一旦落ち着いたらこういうことを思うのかなと思いながら書いてました。
ーー優しさも感じるので、良い恋愛をされたんだろうなと。
そうですね、多分。悪い終わり方ではなくて。それこそ色んな終わり方に当てはまってほしいなと思ってます。お互いが嫌いではなく納得して別れることもあると思うので。
ーー共感できる楽曲が揃った1枚になりましたね。
今までで1番感情の乗せ方に波があるんじゃないかな。今までよりも喜怒哀楽の深さが出せたんじゃないかなと思います。幅じゃなくて深さ。
ーーそれは、the shes gone的に何かに到達したような感覚ですか。
どうなんだろうな。この曲を作りながらワンマンツアーをしてたので結構ハードだったんですけど、常に音楽に触れてることで、何となくのグルーヴ感や音への理解は、メンバーの間で暗黙の了解として深まっていて。この制作過程があったことで、バンドとしての力はすごくついたと思います。それはすごくライブに活きている。ただ、どの曲もちゃんと今までの曲があったからこそ書けた。『DAYS』という1stミニアルバムから全てが延長線で繋がっていて、その結果で来てるイメージです。​多分「ラベンダー」がなかったら『HEART』にアコースティックギターを入れる発想もなかったと思いますし。意外とアコギと自分の声って合うんだなという発見もあったので、前作を活かせました。歌詞にも挑戦しましたし、1曲1曲クオリティを上げつつ、前より短くすることも出来た気がします。弾き語りでも出せる度胸がついたというか、メンタルが成長しましたね。
ーーバンドとして力がついている実感もありつつ。
自分たちの作った曲に「自信があります」とは言いたくないんですよね。僕はちょっと恥ずかしいというか。結局は自分のために歌ってるんですけど、お客さんの前でライブをする人間は少なからず、目の前の人のために歌わなきゃいけない、その人のための曲を作らなきゃいけない。義務じゃないですけど、僕はそう思うので。曲を評価するのは聴いてくれた人だと思うんですよね。だから僕は自信がありますってことじゃなくて、納得してます。「今のthe shes goneを見てください、聴いてください」というのは、今までと同じスタンスなんですけど、その声の大きさはデカくなってる感じです。前は「良かったら見てください」だったけど、「見てください、お願いします!」みたいな。
ーーその声の大きさで4月からワンマンツアーを回られるんですね。4月13日(木)の難波Hatchに向けて意気込みをお願いします。
コロナ前の、MCやギター持ち替えの間にわちゃわちゃ喋っちゃう大阪の雰囲気を知っているので、今一旦その雰囲気がなくなってしまってる気がするんです。声出しが可能になってきて、「栞をはずして」とかは一緒に歌える部分もある。歌うことで我慢していた気持ちが一緒に昇華できたらなとも思ってるので、また0から大阪の方たちと新しくライブのスタイルを作り上げるというか、ちゃんと向き合った上で盛り上げて、強制的じゃないけど声を出して一緒にその日を作れればなと。ライブが終わった後、あなたの心の一部になれるようなライブをしなきゃなと思っています。
取材・文=ERI KUBOTA 写真=ハヤシマコ

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