山崎育三郎、濱田めぐみらが歌唱披露
「自分の根本を見つけてもらえるよう
な作品」ミュージカル『ファインディ
ング・ネバーランド』製作発表会レポ
ート

ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』の日本初演が、2023年5月15日(月)に東京・新国立劇場 中劇場にて開幕する。
本作は『ピーターパン』の作者で劇作家のジェームス・バリが、ある家族と出会って物語を作り上げていく姿をドラマチックに描いたミュージカル作品。アラン・ニーが手掛けた戯曲『The Man Who Was Peter Pan』とジョニー・デップ主演の同名映画(邦題「ネバーランド」)を元に、2015年にブロードウェイで誕生した。音楽はイギリスの人気ポップスグループ「テイク・ザット」のゲイリー・バーロウと、グラミー賞受賞作曲家でシンガー・ソングライターのエリオット・ケネディが務める。今回の日本版公演は、小山ゆうなによる新演出となる。
本公演の製作発表会が3月27日(月)に都内で開催され、山崎育三郎、濱田めぐみ、武田真治、夢咲ねね、杜けあき、子役キャスト全8名(4役ダブルキャスト)、小山ゆうな(演出)ら総勢14名が登壇した。その模様を写真と共にレポートする。
製作発表は3曲の歌唱披露から始まった。1曲目はバリ役の山崎育三郎とシルヴィア役の濱田めぐみによる「ネバーランド」。ある日、バリはケンジントン公園でシルヴィアとその4人の子どもたちと出会い親交を深めていく。父を亡くした寂しさから心を閉ざしてしまった3男のピーターを見たバリが、シルヴィアに語りかけるナンバーだ。山崎は優しく温かみのある歌声で、遠くを見つめながら自分の心の拠り所であるネバーランドの世界を語り始める。そこに濱田が加わり、「夜空の海へ 月の波間へ 星を辿って船をだそう」とロマンティックな歌詞を美しいハーモニーで歌い上げた。
山崎育三郎

(左から)濱田めぐみ、山崎育三郎
続いては、シルヴィアのソロナンバー「行くべき場所」。自身の病は治らないことを悟ったシルヴィアは、残される4人の子どもたちを想い不安を抱く。しかし、自分を支えてくれるバリや子どもたちの存在に勇気づけられ、前を向いて行くべき場所を見つけ出そうと決意する力強いナンバーだ。迫りくる死の恐怖に怯えるシルヴィアが希望を見つけて道を切り開いていこうとする様を、濱田はその伸びやかな歌声と表現力で見事に体現していた。
濱田めぐみ
濱田めぐみ

最後に披露されたのは、バリ役の山崎とピーター役ダブルキャストの小野桜介と長谷川悠大による「足元が揺れるとき」。3男ピーターは母シルヴィアの病が治らないことを知り、父の死を思い出して不安に襲われてしまう。そんなピーターに対し、バリが想いを語りかけるナンバーだ。山崎演じるバリの熱い歌声に応えるかのように、ピーター役の小野と長谷川はまっすぐで透明感溢れる歌声を響かせ感動的なシーンを作り出した。
(左から)長谷川悠大、小野桜介、山崎育三郎

山崎育三郎
歌唱披露後は、ホリプロ社長の菅井敦から挨拶があった。

菅井:キョードー東京様からお声がけいただきまして、2017年にフジテレビジョン、キョードー東京、弊社の3社で招聘公演をさせていただいたのが最初の出会いでした。榊原郁恵をスタートに40年以上も上演を続けている『ピーターパン』、弊社にとってその誕生秘話とも言えるこの作品に出会えたことは本当にこの上ない喜びでした。そして時を経て、念願であった日本でのオリジナル版の公演を、今最も旬な演出家である小山ゆうなさんにお引き受けいただいて上演する運びとなりました。主演のジェームズ・バリ役には、ご本人も新作が7年ぶりとなります山崎育三郎さんにお引き受けいただきました。そして濱田めぐみさん、杜けあきさん、夢咲ねねさんなど、今のミュージカル界を牽引する素晴らしい方々にお集まりいただいております。武田真治さんには元々『ピーターパン』でフック船長を演じていただいていたのですが、11年ぶりに本作でもまたフック船長で復帰していただきます。3曲聴いていただきましたが、本当に素晴らしい音楽でありまして、涙なしでは語れない素晴らしい作品に仕上がると自負しております。
その後は山崎育三郎をはじめとするキャスト陣と演出の小山ゆうなら14名が登壇し、トークセッションへと移った。
ーーまずは大人キャストのみなさまに質問させていただきます。現在は歌稽古、歌入りの本読みを経て、数日前に立ち稽古が始まったところと伺っております。作品を深めていく中で感じるこの作品の魅力はずばりどんなところにあると思われますか? また、それぞれの役についても注目ポイントなどありましたら教えてください。
山崎:魅力は語り尽くせないですけれど……今みなさんに聞いていただいた3曲、怖い顔をした大人が見ている中で(子役たちが)よく歌いきったなあって(笑)。緊張したねえ。偉かったねえ。
本読みがあったのですが、僕、ミュージカルの本を読んで涙を流すのは初めてで。それくらいとにかく泣ける物語に魅力を感じています。最近あんまり泣くことがなくて。大人になると涙を流すことって少なくなるじゃないですか。この間のWBCで村上様が最後打ったときは泣いたんですけど(笑)、それを超えるぐらいの本当に涙なしでは観ることができない作品。誰にとっても自分自身の作品として観れるといいますか、自分が本当に大切にしているものに改めて気付かされたり、何のために生きているのか、何で今この仕事をしているのか……そんな自分の原点に返るような作品になっております。
バリは大人にもなりきれず子どもでもないような、行ったり来たりしているような人物なんです。僕自身、子ども心を持っている方にすごく憧れていて。好きな人だと、木梨憲武さんや所ジョージさんのように生きられたらいいなって。バリはそんな方ですね。自分がこんな大人になりたいと思えるような遊び心満載の人物なので、そんなバリに近づけるようになりたいなと思っています。
(左から)杜けあき、山崎育三郎、越永健太郎
濱田:つい最近、本読みで幕明けから幕締めまで全員で読んだときに私も泣いてしまいました。とにかく楽曲が素晴らしいんです。その楽曲で彩られるストーリーで私が一番感じたのは、素直に生きていくことの難しさと勇気。それを大人が子どもたちから教わって、バリがそれを体現して勇気を持って『ピーターパン』という作品を作り上げるまでのお話なんです。子どもたちと一緒に演じていると、やっぱり嘘ではいられない。お芝居なんですけれども本当に心が動いて、我々大人の心の中の子どもの部分と、子どもたちの大人の部分が会話をして、嘘のない世界を繰り広げられるということがすごくわかりました。この作品を通じてみなさんに「勇気を持って自分に素直に生きていく」ということを感じていただけたらなあと強く思いました。
私は母親の役で、4人の子どもを置いてこの世を旅立ってしまうというラストになっちゃうんです。けれど、その子どもたちに未来を託し、託された子どもたちが夢と希望を持って次の世代を作っていくというテーマにも繋がっているなと思います。とにかくこの『ファインディング・ネバーランド』という世界は、みなさんが心の中で待ち望んでいたとても素敵な世界なので、ぜひ我々と一緒に舞台上で経験して旅していただきたいなと感じています。
(左から)越永健太郎、濱田めぐみ、ポピエルマレック健太朗
武田:見どころはもちろんたくさんあるんですが、美しく日本語に訳された訳詞は本当に素晴らしいなあと思います。楽曲のメロディの素晴らしさに負けないくらい素晴らしい訳詞が付いているんです。それを育三郎さんや濱めぐさんの歌声で綴られたらもう、僕も本読みで涙してしまったんですよね。このデリカシーのなさそうな僕がですよ?(笑)席が育三郎さんの隣だったので耐えられなかったですね。
武田真治
あと、聞き流していただきたいのですが、たまに何のメロディもないまま説明台詞みたいなミュージカルもあるじゃないですか。そういうのはないんですよ。
山崎:何の作品?
武田:いやいや、やめて(笑)。たまにあるじゃない? 何の時間だ? みたいな。
山崎:ちょっと僕は知らないですね。
武田:裏切り者ー!(笑) もしミュージカルシングルリリースみたいなものがあったら、どれもシングルカットされるべき素晴らしい楽曲が並んでいて、それが最大の魅力かなと思います。
個人的には、先程のご紹介にもあったように2012年以来11年ぶりにフック船長を演じます。今回のフック船長はですね、ジェームズ・バリのクリエイティビティが常識を超えるときに、それを導く彼のダークな一部分として現れるんですね。この登場の仕方が本当にかっこいいんです。そこも見どころのひとつとして付け加えさせてください。一生懸命頑張ります!

つれない山崎さんに「裏切り者ー!」と叫ぶ武田さん

夢咲:私は子どもの頃から『ピーターパン』が大好きで、結構な頻度で家で流して見ていた記憶があります。すごくファンタジーな作品の裏側に「こんなに感動的な実話が存在していたんだ、ドラマティックなストーリーがあったんだ」ということで、私自身この作品に携わって物語を読んでまた感動しました。本読みでもいろいろ考えさせられ、みなさんそれぞれに受け取る感情も違うのではないかなと感じつつ、 大人になるってどういうことなんだろう、と。自分では大人になったと感じなくてもいつのまにか大人の感情になっていて、自分が好きだったこと、やりたかったこと、楽しいことを押さえつけて生きているところもあるのかな?って。やはりこういう職業をさせていただいているので、根底にあったものを思い出させてくれた作品です。先ほどの歌唱披露の3曲目は私もすごく心に刺さって、自分の中でリピートしてしまうというか、すごくグッとくるというか。とても素敵な作品に巡り逢うことができたなと思っています。
私が演じる役はメアリー・バリというバリさんの奥さんの役です。大人という立場を理解して過ごしている中、バリさんの子ども心を理解しようとするんですけれどなかなかそこまでついて行けなくて・・・・・・という、子ども心と大人心の対比という立場なのかなと思っています。
夢咲ねね
杜:本読みはもちろん泣きましたけど、今も袖で子どもたちとバリさんの歌を聴いて一泣きしてまいりました(笑)。一言で言うと、この物語を観たあとは確実にみなさま心が洗われ、若返っていると思います。そして、老若男女全てのみなさまにお楽しみいただけると思います。私がとても感じていることは、この作品にはさざ波のように愛がたくさん詰まっていて「どんな年齢になっても経験から成長できるんだ」というメッセージがたくさん隠れていると思うんです。
個人的にはこんなに孫がいる役は初めてさせていただくんですけれど、存分にその大変さ、楽しさ、喜びを経験したいと思っています。最近はWBCでたくさんの夢をいただいたので、このパフォーマンスの世界から、今度はまた違う素敵な夢をみなさまにお届けできればと思っています。
杜けあき
ーー演出の小山ゆうなさんにお伺いします。2017年には招聘版が上演され大きな反響を呼んだ作品ですが、今回はこの豪華キャストのみなさまと共に新演出版として手掛けられていらっしゃいます。稽古序盤の段階ではありますが、現状描かれているビジョンなどがありましたら教えていただけますでしょうか?
小山:2017年に招聘版のオリジナルのダイアン・パウルスさんの演出が本当に素晴らしくて、ファンの方もとても多いと思うんですね。痕跡を見るとダイアン・パウルスさんとクリエイティブチームが試行錯誤しながらみんなで作っていった作品だと思います。なので、そのオリジナルバージョンへのリスペクトや敬意をしっかり持ちつつ、だいぶ年月が経っているので、今私たちにできる『ファインディング・ネバーランド』をどのように良い作品にできるか模索していきたいと思っています。
バリもシルヴィアも、あと実は子どもたちもなんですけれども、みんなかなり深い傷を持っています。実際にいた人物たちで、その人たちが毎日これからを生きていく為にすごく強烈な圧倒的なファンタジーをみんなのイマジネーションの力で生み出していく、という作品なんです。なので地に足がついた一人ひとりの人間ということと、ファンタジーの部分をしっかり描き出せればなと。カンパニーのみんなで一緒に作っていければなと思っています。
小山ゆうな
ーーお稽古が始まって今感じていらっしゃる手応え、そして日本版ならではの見どころはどんなところだと思いますか?
山崎:まず、とにかく子どもたちが出てくるだけで稽古場が盛り上がるんですよ。あと、今回はバリの飼い犬として本物のわんちゃんも出てきますので、犬と子どもがいればもう間違いないのではないでしょうか(笑)。
武田:さっきと言ってること違うじゃん(笑)。
山崎:(笑)。
濱田:とにかく雰囲気がすごく良くて! 常にこういう感じで和気あいあいと進んでいてみんな仲が良いんです。あと、やること一つひとつにみんなワクワクしながら取り組んでいるので、その中でいろいろな化学変化が起こったり、それぞれの役者から出てくる良さで積み上がっていけるような稽古場なんじゃないかなと感じています。
山崎:日本版の見どころは、やっぱり日本語なのでダイレクトにメッセージを伝えられるという意味で、楽曲にマッチしたより強い感動を届けられるんじゃないかなと思っています。
(左から)夢咲ねね、武田真治、山崎育三郎、濱田めぐみ、杜けあき
ーー次に子役のみなさんにお話を伺いたいと思います。シルヴィアの子どもたちの4人兄弟として劇中でも大活躍する役どころと聞いておりますが、楽しみなこと、そして頑張りたいことなどを聞かせてください。
越永健太郎(ジョージ役):この舞台では楽器を弾くシーンがあるんですけど、歌やダンスや芝居もそうですが、楽器も頑張りたいと思っています。この役では一番最年長なので、チームワークよく、みんなをまとめ上げられるように頑張ります。
ポピエルマレック健太朗(ジョージ役):まずジョージはお兄さんの役で、みんなをまとめ上げる役。でもまだヤンチャな部分もあって、そういう役を頑張って演じます。そして楽器はウクレレを弾くシーンがあるので頑張ります。 楽しみなことは、やっぱり初日が一番楽しみです。
生出真太郎(ジャック役):僕の演じるジャックという役は、4兄弟の中でどんな存在でどんな動きをして、ということを小山さんに毎日教えてもらったり、自分でも台本を読んで想像したりして、最終的にどんなジャックができあがるのかというのが、今自分でもとても楽しみなところです。あと、それをさらにお客様に観てもらえるというのもとても楽しみです。
豊田侑泉(ジャック役):僕はこの『ファインディング・ネバーランド』のミュージカルが初めての舞台で、一緒に頑張っているみなさんと実際の舞台に立てることがとても楽しみです。ちょっとだけ緊張もしますが、たくさんの人に観に来てもらえるように元気いっぱいジャックになりきって頑張りたいです。
(上段左から)越永健太郎、ポピエルマレック健太朗(下段左から)濱田めぐみ、小野桜介、長谷川悠大
小野桜介(ピーター役):僕は小さい頃から『ピーターパン』がすごく大好きだったので、この作品でピーター役を演じることがとても嬉しいです。 この作品が一生忘れられない素晴らしい作品になるように頑張ります。
長谷川悠大(ピーター役):もう稽古がすごく楽しくて、本番がすごく楽しみです。頑張りたいことは歌です。なぜかというと、僕は歌が大好きで、その歌を使ってみんなを感動させられたらいいなと思うので、歌を頑張りたいです。
奥田奏太(マイケル役):頑張りたいことは、いっぱい拍手をもらいたいので、歌とダンスを頑張りたいです。楽しみなことは、犬と一緒に舞台に出れることを楽しみにしています。
谷慶人(マイケル役):歌がいっぱいあって、みんなと歌えるのがとても楽しみです。初めての舞台なのでちょっと緊張するけど頑張ります。 みんな観に来てください。
(上段左から)豊田侑泉、生出真太郎(下段左から)谷慶人、奥田奏太
ーー最後にみなさまを代表してジェームズ・バリ役の山崎育三郎さんから、作品を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
山崎:本当に子どもたちがこんなに立派に喋れることにびっくりしました(笑)。自分自身が25年前に12歳のときに子役としてミュージカルデビューして、そのときの脚本家が今回の日本語翻訳の高橋亜子さんなんです。僕のデビューを迎えたときの脚本家の先生とこうしてまた再会できるということに、本当に運命を感じています。僕もあのときにミュージカルという仕事をやりたいと思った感覚は今でも覚えているんですけども、この作品で改めて「何でこのステージに立つと覚悟を決めたのか」とか、自分の原点に返るような気持ちになっています。この作品を観た方にとってもきっと「自分で最も大切にしている何か」、「何で日々を生きているのか」といった自分の根本を見つけてもらえるような作品だと思います。本当に、2023年最も泣けるミュージカルです。間違いありません。最高の作品をみんなで作って初日を迎えたいと思っております。
取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

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