元仮面ライダーの須賀貴匡、舞台『若
き日の親鸞』で悪役をどのように演じ
るのか「悪人にも自分なりの正義があ
る、その筋を通しておきたい」

五木寛之の人気シリーズ小説の舞台化『若き日の親鸞』が4月10日(月)から4月29日(土・祝)まで、京都の南座にて上演される。動乱の京都に生まれた親鸞の若き日の苦悩や葛藤にスポットライトをあてた同作。3月10日(金)には記者発表会見がおこなわれ、出演する藤山扇治郎、はいだしょうこ、須賀貴匡、春本由香、三林京子、藤川矢之輔が出席した。会見後には、須賀貴匡に単独インタビューを実施。あらためて今回の役について話を訊いた。
藤山扇治郎 15
親鸞役の藤山扇次郎は「私生活で嫌なことを思っていたら、それが舞台に出てしまうはず。だから普段から品や優しさを意識しないといけない。舞台に立っていないときが大事になってくるのではないでしょうか。悪い人間には見えなくて、万人に愛され、愛嬌がある親鸞を、純粋な気持ちで役作りしていきたいです」と役のアプローチについて語れば、親鸞の妻、紫野役のはいだしょうこも「紫野は、親鸞さんの心を理解できる温かい女性。ただ、強くなくてはその愛は大きくなれません。親鸞さんが安心して一緒にいられるような妻を演じたい」と意気込みを語った。
はいだしょうこ 21
また紫野の妹、鹿野を演じる春本由香は「鹿野はお姉さん思いの強い女性。私にも兄がいますので、普段のきょうだい思いのところを作品に出したい」と話し、親鸞と対立する伏見平四郎(黒面法師)役の須賀貴匡は「伏見平四郎は世の中の悪を一手に引き受けたような極悪人。ただどんな人間にでも光と闇の部分はあります。彼も、ともすれば善人にもなれたかもしれない。しかし伏見平四郎は闇の部分を掘っていった。自問自答して悪に取り憑かれた人間だと考えています」と役についての解釈を語った。
『若き日の親鸞』 42
須賀貴匡「20代のときは役と普段の生活の境が分からなくなった」
須賀貴匡 9178
――先ほどの記者会見で、伏見平四郎について「世の中の悪を一手に引き受けたような極悪人」とおっしゃっていましたね。
いろいろな質の悪があると思います。原作には、人を殺すことへの罪の意識がまるでないと話す場面がありました。ただ、「じゃあ自分の死についてどう思っているんだろうか」など悪人としての生死の観点に興味が出てきました。単純に自分の欲を満たすために人を殺しているのか、それとも別の目的があるのか。なにをどういうふうにチョイスして生きているのか。そうやって考え、探っていくと「とてもおもしろいキャラクターだな」と。
――もしかするとなにかに怯え、その反動で悪があるのかもしれませんし。
そういう人間臭さが見えても良いかなと、現段階では考えています。それに、悪人にも自分なりの正義があるはず。そういう理由については、演じる上で筋を通していきたいです。そうすることで、たとえばどんな最期を迎えたとしても彼の本質がちゃんとあらわれるはず。ご覧になる方は、平四郎がどういうキャラクターになるのか楽しみにしてほしいです。
須賀貴匡 9255
――悪人を演じることで、その闇の部分に向き合いすぎて、須賀さん本人の日常や本質の部分にまで影響を及ぼすという恐れはないでしょうか。
作品でなにか役を演じるとき、僕はひっぱられてしまうタイプなんです。ただ俳優はみんな、多かれ少なかれそういうことってある気がします。それも含めて演じることって楽しいものなんです。20代のころは役と普段の生活の境が分からなくなったときもありましたが、今はある程度、切り替えられるようになりました。
――20代といえば須賀さんは、『仮面ライダー龍騎』(2002年)を撮影されていましたよね。正義を演じるときも同じように、私生活でも正義感があふれたりするのですか。
いえ、実はそこは逆なところがあって。悪いことをするわけではないのですが、ただヒーローを演じるにあたって「正しくあるべきだ」と自分で自分を抑圧することが多くなるので、反動みたいなものからくる大変さはありました。
「この芝居を選択して果たして良かったのかと常に考える」
須賀貴匡 9463
――主人公の親鸞は若き日、いろんな辛抱を強いられました。10年経っても悟りがひらけず、仏とも出会えなくて苦しんだと言います。須賀さんは長年にわたって苦しんでいることはありますか。
苦しみというわけではありませんが、演じることに関しては、日々反省をしています。作品ごとに「このやり方で良かったのか」と。演技に完璧などなく、正解はないもの。だからこそ「この芝居を選択して果たして良かったのか」と常に思うのです。ただ落ち込むわけではなく、振り返りつつ前を向いています。
――なるほど。
たとえば演劇でも、日本にはいろんな劇団があり、それぞれ自分たちの色を出している。そこにはそこのやり方やお芝居の取り組み方がある。現場ごとにまったく違い、そのたびに気づきがあります。だから「この芝居で良かったのか」と考えつつ、せっかくなら、いろいろ発見しながら現場を楽しんでいきたいのです。
――『若き日の親鸞』は、今の時代にどんなことを訴えかける作品だと思いますか。
台本を読んだとき「今、上演するにふさわしい作品」だと思いました。なぜなら今、世界ではいろんな分断が生じ、また戦争も起きています。なぜ人は争うのか、どうして平等に生きられないのか。そういうことを考える機会が多くなっています。演劇で世界を変えるなんて大それたことは言えませんが、それでも『若き日の親鸞』にはそんなメッセージが詰まっていると感じています。なんとかそれを伝えられるように演じていきたいです。
須賀貴匡 9197
取材・文=田辺ユウキ 撮影=福家信哉

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