音大の卒業制作として完成した1st「
MUSEUM」での挑戦、多彩なルーツにつ
いて語るーーシトナユイがゲストで登
場『speakeasy podcast』×SPICE連動
企画

海外音楽情報専門Podcast『speakeasy podcast』とSPICEの連動インタビュー企画。今回のゲストは、シトナユイ。幼少期よりヴァイオリン、フルート、ギター、ベース、ピアノといった楽器に触れ、英語も堪能で、クラシックバレエやHIPHOPなどダンスも習得、そして現役音大生ながらアーティストデビューを果たした異例の経歴の持ち主だ。3月15日(水)には、この春に卒業する、大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻の卒業制作として完成させたEP「MUSEUM」をリリース。今回は、卒業制作だからこそ今までにないチャレンジができたという本作についてはもちろん、音楽的ルーツや作曲家としてのアプローチ、大学生活で学んだことなどインタビュー。SPICEでは、ポッドキャストの内容を一部ダイジェストでお届け。より詳しく内容を知りたい人は、Spotifyにて配信中の『speakeasy podcast』をチェックして欲しい。
幼少期の習い事から、音大に進学、そしてアーティストデビューの経緯
ーー音楽の入り口はクラシック音楽で、幼少期からピアノやバイオリン、フルートなど様々な楽器を演奏されていたとプロフィールにありますが、ご家庭が音楽家庭だったのですか?
それが全くそうではなくて、私が(家族の中で)突然変異でした(笑)。
ーーそんなパターンもあるんですね! まずはどこから始めたのですか?
3歳でピアノを始めました。それも親から周りの子がやってるからやりなさいという感じだったので、私はあまりにも練習をしなくて、「ピアノが大っ嫌い」と泣いたそうです。それならバイオリンにしてみようと、5歳から始めることになりました。
ーーピアノはそこでストップした?
高校生までは続けたんですけど、ほんまに練習が嫌いで……。基礎の本も終われなかったんですよね。
ーーフルートもしていたんですよね?
フルートは父が2年ぐらい習っていたので、「使ってみな」と言われて中学生の時に習っていました。
ーー加えてバレエもやっていたと。
これも周りの子がやってるからと(笑)。小学生の頃にしていました。本当に習い事をめちゃくちゃしてたんです。他にもストリートダンスやヒップホップ、クランプ、ハウスとか。音楽とは関係がないスポーツだとテニスやゴルフとか、絵画、陶芸もしていましたね。今は、茶道をしています。
ーーすごいですね! 習い事の話も広げたいところですが……ストリートダンスということは、ヒップホップやR&Bですよね? ということは音楽的ルーツもそういったところに?
クラシックと半分半分ですね。作曲のルーツとしてオーケストラを作ることもあるし、シトナユイ名義のような楽曲を作る日もあります。
ーーポップミュージックをよく聴いていたとか、ブラックミュージックに影響を受けているのかなと思っていたんですけど、そういうわけでもないんですね。
そうですね。ダンスのレッスンで使う曲しかしらないぐらいで。J-POPも全然知らずに大学に入ったので、すごく浮いてましたね。みんなはバンドをやっていたり、バンドの曲を聴くのが好きだったりして、課題でも「J-POPを作りなさい」というのが多いんですけど私は(聴いてこなかったから)作れなくて……。
ーー自分で音楽制作を始めたのは大学に入った時からですか?
大学の課題が初めてです。
ーー気になったのが、家族に言われてピアノなど習い事を続けていたのが、音大に入って、ミュージシャンになられたのはどういったキッカケですか? 最初からミュージシャンを目指していたわけではないのですよね?
大学の進学をどうしようか迷っていた時に、テレビで『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)でナカタヤスタカさんがDTMを使った曲の作り方についての話をされていて、童謡を編曲していたんです。それを観た時に「すごく面白そう!」と思って、やってみたいなと思ったのがキッカケです。あとは映画も好きで、こういうことを学べば映画音楽が作れたりするのではないかなと思ったりしました。
ーー今ではポップミュージックを作っていますが、クラシックに影響を受けているとなると、海外のクラシックポップにも影響を受けていたり?
めちゃくちゃ影響を受けていますね。壮大な世界観でやりたいなとずっと考えています。
ーークリーン・バンディットとか。
大好きです。あとは、2CELLOSというチェロ奏者が2人で弾くインストなんですけど、ポップス寄りで、いいなぁと思いながら聴いていたりします。
ーーアーティスト活動の音楽制作については、どういうところからスタートして作り上げていくのですか?
作家脳なので、「溢れるパッションを表現したい!」というのはなくて、こういう曲が作りたい、という自分の中だけの企画書を作って、参考曲をいっぱい探したりどこに当てるか、どの人に向けて作りたいかを細かく考えながら、ライブでやったらどうみえるか、編成がどうかを考えてから組み立て始めます。作家の考え方かもしれないですね。
ーー作詞については?
英語で作詞して、英語のリズム感をキープしつつ日本語にしたいところは日本語にしています。まずは、サウンドの前にタイトルを決めることが多いですね。タイトルを決めたら、迷っても戻って来れる気がするので。
ーー最初にコンセプトを決めておくと。こういうタイトルで、こういう世界で、それにあったサウンドを……と。
そうですね。タイトルからジャンルを決めて、音色を決めていきます。
ーーシトナユイ名義で世に出たのは、DJ HASEBEさんとの「Crying Over Moonlight feat.シトナユイ」が最初ですよね。これはどういった流れで参加されたのですか?
事務所の社長がHASEBEさんと仲が良くて、HASEBEさんが私の声を気に入ってくださったと聞いて、できればご一緒させていただきたいです、といった流れで決まりました。
ーーなるほど。大学では事務所にたくさんデモテープを送る課題があったと聞いたのですが。
10社にデモテープを送らないと進級ができないという課題がありました(笑)。送料を学校が負担するので、絶対にCDに焼いて10社出さないといけなくて。封筒に「二つ折り厳禁」と書くように言われたり、送り方のフォーマットも教えてもらいながら送りましたね。
ーー大阪音大おもしろ!(笑)。デモテープはどこに出してもいいんですか?
どこに出してもいいんです。みんなメジャーに出していたりしましたね。
ーーそれはすごい有効な授業ですね。今に繋がっているということですもんね?
そうですね、10社のうちの1社がいまの事務所なので。でも、実際にデモテープを受け取ってくれた人に聞いたところ、CDデッキを取り出さないといけないからめんどくさかったと言っていました(笑)。
ーーそれでもそうやってデビューしていくわけですからすごいですよね! ちなみに、ライブにもよく行かれますか?
行きます。好きなアーティストが幅広いというのもあるんですが、トム・ミッシュは来日したら絶対にライブに行ってます。あと、iriさん、SIRUPさん、Kroiさん、BREIMENとかめっちゃ好きで行っています。
ーー個人的には、iriさんはすごく影響を感じました。
影響を受けています! 日本語の曲をぜんぜん聴いてこなかったので、iriさんの音楽から日本語の曲を聴くようになりました。というのも、ずっと低い声がコンプレックスで、歌うにも声が通らないし、どうしようかと思っていた時に、iriさんを見つけて「めっちゃ声が低い! 超かっこいい!」となってすごくハマりました。
卒業制作だからこそ、存分にチャレンジできたEP「MUSEUM」
シトナユイ - MUSEUM 【Music Video】
ーーEP「MUSEUM」は、卒業制作で作ったということですが誰かに提出するんですか?
提出しました、単位をもらうために(笑)。無事、卒業もできました!
ーーリリースる前に、先生に聴いてもらったわけですね(笑)。制作はいつ頃から?
4年生の授業が始まった4月からですね。まずはワンコーラスを提出するように言われて。
ーー制作の過程も卒業制作の一環として、先生に共有していくのですね。
そうですね。「こうしたいんですけどどうですか」と質問して、アドバイスをいただいたり。ちゃんと提出時間とかも守って進めたり。
ーーシトナユイ名義では最初の作品でもある「morning moon」など、今まではいろいろなジャンルを横断しながらDTMで作っている印象が強かったんですけど、今作は生音の印象がすごく強くて。これは今回、やりたかったことだったのでしょうか?
ずっとチャレンジしてみたかったことではあります。なにより卒業制作でもあるので、実験の場だと思っていて、失敗しても卒業制作だからと思えるからチャレンジは絶対にしてみたいというのと、他の専攻の友達と一緒に作りたいなという思いもあって。
ーー先ほど、楽曲ごとにテーマを設けるとおっしゃっていましたが、今作はEPとしてのコンセプトがありますよね?
「MUSEUM」という単語が「M」から始まって「M」で終わるので、曲のタイトルも全て頭文字に「M」があって、「M」に始まり「M」で終わる構成にしました。それと最初にこのトラックを管理する時に、M1、M2といった名前で管理していたのもあり、そのまま「M」で始めちゃおうと。
ーーその上で、EPを通してミュージアムが舞台の作品になっていると。
そうです。ミュージアムが舞台で、この作品が展示されているというコンセプトで作りました。先行シングルでリリースした、1曲目の「MUSEUM」の最後に<Your ego in the MUSEUM Until when it’ s over>というコーラスの通り、人間のエゴというか、動きたくないとか、だるいとか、そういったエゴが飾られているテーマで歌っています。
ーー2曲目の「MonaLisa」だと、生と打ち込みになっていますよね?
そうです、ベースとサックスとキーボードが生で、あとはすべて打ち込みです。
ーー3曲目の「METAVERSE」は、さらに生音の印象が強く感じましたが……。
実はギターが打ち込みで、弾いているように聴かせています。実際にギターは弾けるんですけど、弾いた感じのなまった感じよりは無表情の方がいいなと、打ち込みのギターを採用しました。「MANNERS」は全部打ち込みで、後半にギターの歪んだ音が入っているぐらいですね。「MELTDOWN」は、溶けちゃいそうなだるい感じにしたくてラテンなイメージ。
ーー今までと違った挑戦といいますか、実験的な側面が大きいということですよね。
そうですね。今回はバンドサウンドを引き立たせるために、どんなメロディを作るか、メロラップから始めるのか、すごいキャッチーなメロをつけるのかということに悩みました。洋楽的な曲を作ってきたので、めちゃくちゃ強いサビがあるというわけではなく、アレンジでカッコよさを出していたんですけど、「MUSEUM」に関してはメロディとサビが命、みたいな。それぐらいキャッチーなものが作りたいというのがありましたね。
ーー今作のEPを機に、これからはアルバムを制作したり、アーティストでありながらも、プロデューサー的な視点もあると思うのでそういった活動も考えられていますか?
シトナユイとして今までの活動を続けたり、客演で呼んでもらえることも多いのでシンガーとしてもやりたいし。プロデュースにも興味があって私が誰かの曲を作ったりもしたいなと、裏方への憧れもあります。
ーーEPのリリースイベントとして、3月22日(水)には東京・下北沢 BASEMENT BARで、23日(木)には大阪・NOON+CAFEでライブが決まっていますね。これからは、どういったライブになるのでしょうか?
私のライブは、同期のパソコンを置いてギター1本でするんですけど、今後はバンドを入れて全部生音でやってみたり、ライブでしか観れないパフォーマンスをやってみたいなと思っています。
ーーライブを想定した楽曲作りにもなってくるかも? 
ライブアレンジだけやってみるのも楽しいやろなと思います! いろいろなライブを観にいく過程でセットや照明とかも考えて作られているので、私もそうやってライブを作ってみたいですし、ファッションにも興味があるので衣装もこだわってやってみたいなと思います!
取材=竹内琢也 文=SPICE編集部(大西健斗)

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着