写真左上段より時計回りに、ラミ(Per)、山浦聖司(Ba)、柴田昌輝(Dr)、大瀧真央(Syn)、熊木幸丸(Vo)、松崎浩二(Gu)

写真左上段より時計回りに、ラミ(Per)、山浦聖司(Ba)、柴田昌輝(Dr)、大瀧真央(Syn)、熊木幸丸(Vo)、松崎浩二(Gu)

【Lucky Kilimanjaro インタビュー】
バンドというもの自体を
もっと新しい方向に持っていきたい

真の意味でのミクスチャーロックと呼ぶに相応しい、他に類のないダンスミュージックを展開しているLucky Kilimanjaroが新作『Kimochy Season』を発表する。そのアルバムタイトルが示すとおり、誰もが初めて耳にするであろう“Kimochy”グルーブが満載の作品だ。そんな“新世代のロックバンド”の創作意欲の根源と制作の背景をコンポーザーの熊木幸丸(Vo)に訊く。

僕が好きな音楽と、
日本語の美しさをどう混ぜていくか

本誌初取材でもありますので、アルバム『Kimochy Season』はもちろんのこと、“Lucky Kilimanjaroとはどういうバンドか?”というところにも突っ込んでいけたらと思っております。まず、今回のアルバムタイトルについて。これは2曲目の「Kimochy」から来ていると思うのですが、“気持ち良い”を英語形容詞風にしたところにどういう想いがあったのかをうかがいたく思います。

はい。まず、2曲目の「Kimochy」は『Kimochy Season』の主題ではないんです。アルバム全体には“変化”というコンセプトがあって、「Kimochy」はそこを補完的に支える曲なんです。“Kimochy”を英語表記にしているのは、普通に日本語で“気持ち良い”と漢字で書いた時に、意外と言葉の感じはあんまり気持ち良くないという感覚があって。字面の感じですね。このほうが滑らかに聞こえるというか。質感的に気持ち良いものを音楽も含めて大事にしているバンドなので、こっちのほうがそこのニュアンス…言葉のニュアンス、文字のニュアンスが、今回のアルバムで僕らが表現したいトーンに合うというところで、“Kimochy”にしています。

なるほど。この取材にあたって過去作から今回の『Kimochy Season』まで聴かせていただきましたが、Lucky Kilimanjaroは…ちょっと硬い言い方をしますと、既存の言葉では表現しきれないものというか、新しい言葉の定義とか感情の定義みたいなものまでも標合しようとするバンドなのかなという印象が強くありました。なので、この“Kimochy”にもこだわりがあるんだろうとは思っていました。

そうですね。言葉もサウンドも含めて“みんなが知っているものを如何に新しいかたち、面白いかたちで出力するか?”というのは、僕がクリエイティブをやる上で非常に大事にしていることで、そこが伝わったのかなと思います。今回の収録曲も他では見られないようなタイトルをつけていたりするんですが、いろいろな意味、いろいろな景色がひとつの言葉に含まれている日本語の美しさだったり、すごさだったり、英語の持つ言葉のグルーブというものから編み出されるサウンドや楽曲…そうした僕が好きな音楽と日本語の美しさをどう混ぜていくかというところを自分なりに出力しているのが、特に本作ではよく出ているのかなと思っています。

具体的に言いますと、「山粧う」とかですかね。

あと、「咲まう」ですね。

この辺りの言葉は“かつてポップミュージックにこうした言葉を取り入れた人はいたのか?”と思うくらいですね。とても面白く思います。

そうですね。でも、それをダンスミュージックというかたちで表現することで、みんなの中にひとつ別の扉ができるというか、“こういうふうに言葉が響くことがあるんだ!?”とか、言葉の意味が持っている世界観とダンスの世界がつながったりすることを気づいてもらったり、面白いと思ってもらえたりできると思っていて。そこに対して挑戦することが僕は面白いと常々思っているし、それがやりたいことのひとつですね。

“ダンスミュージック”とおっしゃられましたが、大きく括ればLucky Kilimanjaroの音楽はまさにダンスミュージックでしょうね。

“踊れる音楽”と自分では解釈しています。

その“ダンスミュージック=踊れる音楽”というのは、一定のリズムのもとでキャッチーなメロディーのループであるわけですが、それがずっと続くんじゃなくて、時に離れたり時に群がったり、テンポが微妙に変わったりする。そうすることによって、まさに気持ち良さがそこにいろいろと出現してくるという。Lucky Kilimanjaroの音楽はほぼ全編がそうだと思うのですが。

ハウスやテクノというダンスミュージックの持続性みたいなものがベースにありつつも、徐々に変化していくスタイルだったり、言葉など表現ごとにちゃんとレイヤーが変わったり、内容が変わったりするところを大事にしているので、そういう変化している場所と変化していない場所が楽曲の中に存在しているというのは、Lucky Kilimanjaroの特徴だと思いますね。

いわゆるJ-POP、J-ROCKはメロディーを聴かすものが多いじゃないですか。A→B→サビ→C→サビといったような。Lucky Kilimanjaroはそうしたメロディーやコード展開を聴かせるものとはまた別の音楽ではありますよね。

そうですね。基本的に僕はワンアイディアで踊らせたいと思っていて、そのアイディアを“どういうふうに膨らませていくか?”というところでやってるので、むしろコードやそれに付随するものを完全に変えないように…というか、僕がループ性を面白いと思っている部分をLucky Kilimanjaroでは出力しています。

そこがこのバンドの大事な部分であると思ったところではあります。具体例を挙げますと、今作の5曲目「掃除の機運」。これは今申し上げたJ-POP、J-ROCKでもイケそうなメロディーじゃないですか。でも、アルバムの広報資料に載っている熊木さんのコメントによれば、それをそのままJ-POP、J-ROCKとするのではなく、サンプリングのもととして使っているということですよね?

自分で想定して作ったものをメタ的な視点で見るというか、メタ的な視点でサンプリングし直して構造の一個に組み入れちゃうっていう(笑)。

そういうことをやるところにこのバンドの心意気と言いますか、熊木さんの取り組み方はすごく感じますね。

僕はそんなふうに一回、構造として俯瞰するのが好きで(笑)、そういうところも含めた表現として面白いと思ってもらえるようにしたいなと。僕はサンプリングミュージックがハウスに限らず、ヒッポップとかも好きで、サンプリングって曲の持っている要素を別の構造の中に入れられちゃう…先ほど言った言葉の使い方も言葉をサンプリングしてるような感覚と似たようなものだと思うんです。そういうことで新しい世界が広がるところが僕は好きで、非常に面白いと思っていて、そこがLucky Kilimanjaroの特徴だと思ってもらえた部分なのかなと。
写真左上段より時計回りに、ラミ(Per)、山浦聖司(Ba)、柴田昌輝(Dr)、大瀧真央(Syn)、熊木幸丸(Vo)、松崎浩二(Gu)
アルバム『Kimochy Season』

OKMusic編集部

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