【moonriders インタビュー】
リハはするんだけど、
原曲どおりにやろうなんて
誰も考えていない
“自由に演奏する”ということこそ
緊張感が出る
「SKELETON MOON(Session1)」の話に戻せば、その凶暴なギターから始まって、きれいなメロディーを奏でるギター、ベース、バイオリンと弦楽器が絡み合っていく様子が面白いですよね。
白井
それね、優介くんのミックスでしょう? 今回のアルバムはミックスも醍醐味なんですよ。要するに自由に録ったものを担当したメンバーが懸命に考えて物語を作るようにエディット&ミックスする。新しいものを創造する作業も、このアルバムのひとつのトライなんですよ。彼がきれいに並べて再創造したと。
なるほど。そういうことですか。
鈴木
ポストプロダクション、ミックスも演奏みたいなもの。
DJのプレイに近い感じですか?
鈴木
そうそう。白井さんなんて、ひとつの曲で2曲作っているからね。
白井
うん。僕がやったSession4は10分くらいあったんですけど、山あり谷ありなんですよ。そこから山と谷が何回か繰り返されていて。パッと切ると、それぞれが1曲になることが分かって、それで即興的に作ったんですよね。
「Work without Method(Session4,Ver2)」と「Chamber Music for Keytar (Session4)」がそれですね。
鈴木
2日間でSession10までいって、もとの音源はまだ大量に残っているから“Vol.2”も出したいと思っています。実はミックスも終わっていたりするし。ヴォイスだけのやりとりもある…即興で作った歌詞を私が言って、他のメンバーに色を言ってもらうとか、そういうこともあったよね。このアルバムの中で1曲目と2曲目は言葉が入っているでしょ?
「Ippen No Shi(Session3)」と「SKELETON MOON(Session1)」ですね。
鈴木
それは録音前日、鈴木博文が“言葉があったほうがいいものもあるよな”と言ったので、“じゃあ、明日までに歌詞を書いてくる”って私が翌日までに書いていって、言葉をダビングしたのね。鈴木博文も2日目の朝、送信してきた。でも、同時にやっている言葉もある。意味の分からないでたらめの言葉とかね。
「SKELETON MOON(Session1)」の後半は歌というか言葉というか、不思議な声が聴こえてきますが、聴いているほうも意表を突かれますし、結構スリリングです。
白井
謎のロシア語みたいなのね。僕、あれ、好きだなぁ。
面白いですよね。今、私、“スリリング”と申し上げましたが、このアルバム収録曲はほぼ全てにおいて緊張感がありますよね。それがテーマ、主題でもあるように思います。
鈴木
録音中がスリリングだったから、それを記録したということだよね。記録したものをミックスする時に、さらに編集している場合もあるし、何か歪ませたりしていたり、いろんなこともある。それでまたより違うものになる。こういうものは、やはりリアルアイムの演奏自体にすごい緊張感があるんだよ。“自由に演奏する”ということこそ緊張感が出る。岡田くんがパーッと始めちゃったりして、みんなはそれをただ聴いているだけなんだけど、“どこから入ろうかな?”って何か画策してるわけだよね。
白井
反応したいと。無調だし、リズムもないから、耳をそばだてて集中するわけですよ、インプロの新人としては(笑)。
メンバー全員での演奏することに緊張感を持ちたいと。それゆえのインプロビゼーションであったわけでしょうか?
譜面を見ながらの演奏とは違いますか?
白井
全然違う。だって、どこにでもピークを持っていけるんだよ。
鈴木
ピークが来ちゃうと、それよりもさらにピークを作るのがまた大変。落としたり上げたりしてね(笑)。ダイナミックレンジが広いからミックスも大変だよ。クラシックみたいな小さい音もあるし。