ダニエル・ハーディング、サンタ・チ
ェチーリア国立アカデミー管弦楽団・
合唱団の新音楽監督へ

世界最古の音楽団体の一つ、サンタ・チェチーリア国立アカデミーがローマで記者会見を開き、同団体のサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団・合唱団の新音楽監督に、ダニエル・ハーディングを指名したことを発表した。
2005年から2023年まで18年間、音楽監督のポストにあったサー・アントニオ・パッパーノは今後、名誉指揮者となる。ハーディングの任期は2024年10月から5年契約でスタート。
オペラの国イタリアのトップ・オーケストラ及び合唱団としてサンタ・チェチーリア国立アカデミーのコンサート・シーズンは、演奏会形式のオペラで開幕するのが慣例となっており、2024年秋のハーディングの音楽監督としての初お目見えも、プッチーニ《トスカ》となる。来年はプッチーニ没後100年の記念年であり大きく注目されそうだ。
ハーディングとサンタ・チェチーリア国立アカデミーは今後、ドイツ・グラモフォンと新しいコラボレーションを始めるそうで、この《トスカ》を含む一連のお披露目コンサートは録音が予定されている。
サンタ・チェチーリア国立アカデミーの総裁ミケーレ・ダッロンガロは、「今日、優秀な指揮者よりも優秀なオーケストラの方が多いと述べることは、言い過ぎではないと思います。その中でも、自身の熱意と創造性、そして厳密さをもって、成長と発展の道程を保証してくれる優れた指揮者はもっと少ないでしょう」「今、ダニエル・ハーディングに焦点を当てるということは、私たちにとって、現在最も偉大なる才能を持った一人と共に仕事をする機会を得るということだけでなく、新しい刺激を得ることによって、これまでの道を変えるのではなく、これまでとは違う新しいアイディアで私たちの音楽生活を豊かにすることを意味します」と喜びを表した。
記者会見の様子
ハーディングはクラウディオ・アバドのアシスタントをしていた22歳の時にサンタ・チェチーリア管を初めて指揮して以来、このオーケストラと合唱団との共演を重ねている。
会場にこやかに現れたマエストロは、「今日は英語で話します。でも2024年までにはイタリア語をしっかり操れるようになりますから」と挨拶し、「マーラー交響曲全集などを含む19世紀、20世紀の傑作の演奏に加え、現代音楽までの幅広いレパートリーをサンタ・チェチーリアと一緒に探求していきたい」と述べた。
エアフランス航空のパイロットというもう一つの、指揮者としては異色の顔を持つハーディングに、記者からは「二つの職業はどう影響しあっているのか?」という質問も飛び、ハーディングは「僕の家族がご質問に答えたら、その二つのバランスは全然取れていない、と言うでしょう」と客席を笑わせながらも、「この仕事の経験は、同僚の指揮者たちや、人前で権威を持って振る舞う類の仕事の人には特にお勧めです。パイロットはチームの中の小さな一員として、人々を安全に運ぶという仕事を完遂する。その体験から、オーケストラで皆を前にしているときに、100人の優秀なプレーヤーたちがそれぞれの経験や意見を持っていながら、自分を抑えて仕事に身を捧げていることがよく理解できた」「パイロットの仕事によってより良い音楽家になれたかどうかは分からないが、より良い指揮者になれたのは確か」と語り、自分にとって両方の仕事をすることは非常に大切であると語った。
ハーディングとサンタ・チェチーリア国立アカデミーの今後のコラボレーションが実り多いものになることを期待したい。
ダニエル・ハーディング (c) Julian Hargreaves
文=井内美香

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