オーイシマサヨシ

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【オーイシマサヨシ インタビュー】
まとめて聴いていただきたいと思い、
全部がA面のつもりで収録した

配信されて好評の「ギフト」と「碧い砲撃」に加え、3月24日公開の劇場版『グリッドマン ユニバース』主題歌の新曲「uni-verse」も収録するEP『ギフト』。数多くのアニソンを手がけるオーイシマサヨシだからこそのバラエティーに富んだ一枚について、楽曲制作に込めた想いを語ってもらった。

まとめて聴いていただきたいと思い、
全部がA面のつもりで収録した

今回のEP『ギフト』は、曲調も世界観もまったく異なるアニメ/ゲームのテーマソングを詰め込んだ一枚になりましたね。

あまりにも全部の味が濃すぎて、ミニアルバムと言ってしまいそうなくらいです(笑)。特にコンセプトがあったわけではなく、たまたま同時期に手がけた作品があったので、せっかくだからみなさんにまとめて聴いていただきたいと思い、全部がA面のつもりで収録しました。

「ギフト」はアニメ『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』オープニングテーマとして好評ですしね。

最初にテーマとしてあったのは多幸感です。そして、アニメ制作側からは主人公の藤宮 周の視点やヒロインの椎名真昼に向けた気持ちはもちろん、視聴者目線も加えてほしいという要望もありました。原作を読んで思ったのは、甘々としながらもなかなか自分の気持ちに気づけないじれったい展開があまりにも続くので、登場人物たちについ横槍を入れたくなるんですよ。“それってもう恋じゃん!”とか“気づけよ!”って。真昼の天使様加減に思わず叫びたくなったり、僕自身もすっかり真昼推しになっているので、実際に自分の目の前に天使様が現れたらどうなってしまうのか想像したりしながら、多幸感とともに“天使様ファン”としての楽曲を作りました。話数が進んでふたりの関係が進展するにつれて、どんどん歌詞の受け取り方が変わっていく曲なので、最終的に視聴者さんが“これは俺たち目線の曲なんだ!”と思っていただける時が来たらすごく嬉しいです。

ジャズ、ファンク、ソウルなどの多彩な楽曲展開があって、目まぐるしく展開するサウンドも聴きどころですね。

はい。例えばAメロで静かめなパートがあったと思ったら、Bメロでいきなりジャズになって、サビ前のCメロではちょっとファンキーな感じの16ビート、そしてサビは古き良きポップスのメロディーになり、最後は少し開けたファンクの感じの合唱になって終わっていく。89秒というTVサイズの中で、これだけ場面チェンジが多彩に展開する曲は、今だかつてなかったのではないかと思います。自分がこれまでに作った曲と比べても、よくできたと思いますね(笑)。

アニメの中でクリスマスにプレゼントを渡すシーンがありましたが、タイトルの“ギフト”の由来はそういうところから?

そのシーンからも着想を得ています。アニメでは主人公が女の子にプレゼントを渡したいけど何を買ったらいいのか分からなくて、親友の彼女に相談するんです。これってラブコメあるあるですよね。それに、ほとんどの男子が経験していることだと思うので、きっとみんなに共感してもらえるんじゃないかと。もちろん僕にもそういう経験はあって、中学生の時にペンダントを贈った覚えがあります。今思い返すと中学生でペンダントはちょっと重かったと思うんですけど(笑)、当事者にとっては何でも嬉しいもので。でも、結局は相手の幸せな笑顔が見たいんですよね。あげているようで、もらっている。等価交換以上のものを受け取っていると思います。

2曲目の「uni-verse」は劇場版『グリッドマン ユニバース』の主題歌ですが、オーイシさんはTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』の主題歌「UNION」をOxTとして、同シリーズ第二弾『SSSS.DYNAZENON』ではオーイシさん名義で主題歌「インパーフェクト」を担当しました。そして、「uni-verse」はシリーズ最新作となる劇場版の主題歌という。曲はスケールが大きく、ゴスペルのように大勢で合唱するコーラスが一体感を生んで、最後に大団円を迎えるようなイメージで、個人的には映画『グレイテスト・ショーマン』の雰囲気を感じました。

それが伝わって嬉しいです! 実はコーラスを録る時に参考にしたのが、まさしく『グレイテスト・ショーマン』の主題歌「THIS IS ME」のリハーサル映像です。YouTubeで2,000万回以上の再生数を記録している映像で、それがめちゃめちゃ良いんですよ。『グレイテスト・ショーマン』は世の中からはじき出された人たちがサーカスを通じて、“これが私だ!”とメッセージし、人気を獲得していくじゃないですか。『グリッドマン ユニバース』にも“これが僕たちの宇宙なんだ!”と言いきる力強さがあるんです。ちょっと先に歌詞の話になってしまいますけど…例えば子供の頃にヒーローごっこをして遊んだことは、大人になると黒歴史になりがちですよね。“幼稚なことをしていたんだな”と茶化されたり、“あの頃はあんなことをしていたな~”って酒の肴になったり。でも、その経験は紛れもない本物で、公園の砂場や滑り台に怪獣が現れたし、あの頃の僕らは毎日のように怪獣と戦って地球を救っていたんです。そういう経験を噓にしちゃダメだと思うんですよね。いい大人になった今だからこそ、恥ずかしげもなくそういうことを誇らしく語れるくらいのほうがいいし、なおかつ経験として“俺たちが生きた証なんだ”と言える大人になっていくべきだと思うんですよ。映画の内容的にも、それに通じるものがあるので。

アニメ『SSSS.GRIDMAN』では主人公の響裕太たちが暮らしていた世界が、実は同級生の新条アカネが作り出した世界だったという展開がありましたね。

はい。でも、そこで暮らしている裕太たちにとっては、紛れもない本物の世界でした。そういうアニメの世界観が、たまたま僕が思っていたこととリンクし、僕のドキュメントとしてこの「uni-verse」の歌詞が生まれました。“ジャンク”とか“ビッグバン”など作品のキーとなる言葉を使って映画に寄り添いつつ、僕自身の経験や思いを歌ったことで、今は大人になってしまった全ての少年たちに贈る楽曲になったかと思います。あと、歌詞でひとつポイントになっているのが、サビの最後に出てくる《独りじゃない いつの日もどこまでも》という一節です。これはアニメ『SSSS.GRIDMAN』のキャッチコピーをそのまま使わせていただいたのですが、そもそもは『SSSS.GRIDMAN』の原作となった特撮アニメ『電光超人グリッドマン』の主題歌「夢のヒーロー」の歌詞から抜粋された言葉なんです。劇場版『グリッドマン ユニバース』が生まれるには、特撮アニメ『電光超人グリッドマン』という原点があったことも噓にしちゃいけないと思って、気づく人だけ気づいてくれたら嬉しいなと思って入れました。

サウンドやメロディーについてですが、大勢で大合唱するようなコーラスのアイディアはどこから浮かんだのですか?

劇場版『グリッドマン ユニバース』には『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』というふたつの作品のキャラクターが登場します。単純に計算しても登場人物が2倍になるので、そのみんなが最後に肩を組んで歌っている様子が浮かんで、“合唱がしたい!”という想いから制作が始まりました。合唱ありきで、最近の合唱曲で感動したものは何だろうかと思い返したら「THIS IS ME」が浮かんで、そこからどんどんアイデアが湧いてきました。

物語に登場するヒーローであるグリッドマンはジャンクのコンピュータの中から現れるので、随所で聴こえてくるシンセベースなどのレトロな音がグリッドマンっぽさを感じさせます。

ちょっと懐かしいコンピュータ音を演出するにあたって、モーグというビンテージシンセの音を使っています。音楽シーン的にもレトロな音がリバイバルしている中で、そこに合唱が乗るというギャップとミスマッチ感を、サウンドとして楽しんでもらえたらいいなと思いました。

曲名を“uni-verse”と言葉をふたつに分けたのにはどんな意味を含ませたのですか?

“uni”は“単一の”という意味で、“verse”は“世界”や“音節”という意味があり、僕らもAメロやBメロの部分をワンバース、ツーバースと言うことがあるんです。Dメロで《ワンバース ツーバース スリーバース ユニバース/繋ぎ合わせて この歌になるよ》と歌っているとおり、いろんなバースが集まってひとつの曲になっているという意味を込めました。もちろん『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』というふたつの世界が、劇場版『グリッドマン ユニバース』でひとつになっているところも含ませています。

この大人数感はライヴではどういう感じになるんでしょうね。

今はマスクありで声出しができる状況になったので、すごく期待しています。こういう合唱曲はライヴではめちゃめちゃ強いんですよ。みんなで歌ってなんぼで、一緒に歌うことでボルテージが上がり、同じ空間を共有できている実感が湧くんです。それがより感じられる曲なので、ライヴで披露するのがすごく楽しみです。
オーイシマサヨシ
EP『ギフト』【通常盤】
EP『ギフト』【天使盤】
EP『ギフト』【GRID盤】

OKMusic編集部

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