大竹しのぶが二人の娘に夢を託す“勝
手な女”ローズ役に挑む! エネルギ
ーに満ち溢れたミュージカル『GYPSY
』の魅力とは

大竹しのぶ主演のミュージカル『GYPSY』が、2023年4月〜5月に東京・大阪・愛知・福岡にて上演される。
『GYPSY』は実在のストリッパーであるジプシー・ローズ・リーの回想録を基に、彼女の母ローズを主人公にしたミュージカル。ジュール・スタイン作曲、スティーブン・ソンドハイム作詞、アーサー・ローレンツ脚本で1959年にブロードウェイで初演された。初演でエセル・マーマンが主演のローズを務めて以来、世界の名だたる大女優がローズを演じ続けてきた歴史ある作品だ。
今回、2023年日本版でローズという大役に挑む大竹しのぶに話を聴くことができた。大竹は、時折過去のミュージカル出演作の思い出話に花を咲かせながら、飾らぬ自然体で『GYPSY』出演への意気込みを語ってくれた。

▼あらすじ
ローズ(大竹しのぶ)は、2人の娘ルイーズ(生田絵梨花)、ジューン(熊谷彩春)をヴォードヴィルの世界で活躍させようと躍起になるステージママ。オーディションで知り合ったハービー(今井清隆)と一座を作り、あちこちの地域の劇場へ娘たちを売り込んでまわる、……その姿は、まるでジプシーのよう。
やがて、下の娘ジューンが脚光を浴び始めるが、結局自分のわがままで売れるチャンスをふいにしてしまう。
様々な出来事の中、ジューンが愛想をつかし一座の青年タルサ(佐々木大光(7 MEN 侍/ジャニーズJr.))と駆け落ちし出て行ってしまう。それでも諦めず、ルイーズと再起を図る、ローズ。しかし、ジューンの持つ歌唱力やダンスの技術はルイーズにはなかった。
そんな時、ルイーズがある手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまう。ローズは抵抗するが、お金のためにルイーズは舞台に立つと宣言するのだった……
「ローズは本当に勝手な女(笑)」
――『GYPSY』は大竹さんにとって「大好きな作品」とうかがっていますが、以前からご存知だったんですか?
そうですね。「Some People」という歌をどこかで聞いて、すごく素敵だなと思ったのが最初です。もう30年くらい前じゃないかなあ。私、この曲を歌ったこともあるんですよ。そのことがきっかけで『GYPSY』という作品を知りました。前々から「いつかローズをやれたらいいな」という想いはあったんですけれども、それがついにったという感じです。
――ローズのどういうところに惹かれましたか?
とにかくエネルギーの塊みたいな人というところ。あとコメディ要素がある作品なのと、ユーモアと、バイタリティと、生活感と(笑)。そういうところにやっぱり惹かれますね。
――ローズは二人の娘を成功へ導こうとするステージママという役どころですが、どんなステージママだと思いますか?
勝手だと思います(笑)。実は自分がやりたかったことを娘に押し付けてスターにしようとして、最初は妹ばかりかわいがって「あなたはスターよ」と言い、姉は「ダメな地味な子」みたいな扱いなのに、妹が出て行ったら今度は姉に「あなたがスターよ」って。本当にひどい親なんです(笑)。今井(清隆)さん演じるハービーにも「結婚するから」と言いながらお金だけもらっちゃう感じとか、本当に勝手な女ですよね(笑)。だからお話自体は本当に単純なんですけど、でも「じゃあ私の人生は一体何?」と最後にローズが気付くところがすごく面白いなって思いますね。
――そんな勝手なローズに共感できるところはありそうですか?
あります。ローズはすごくはっきりとした、子どもをスターにするという夢を持っているんです。「それが私の夢だから、こんなところにいるわけにはいられないの」というような人。私がこの作品を知るきっかけになった「Some People」という歌の中で、「♪私には夢がある」「♪平凡な人生なんて嫌なの」とローズは歌います。それが彼女の生き方。いくつになっても夢を持っているところにすごく惹かれます。だから全ての楽曲がエネルギーに溢れているんでしょうね。明日から走ろうかなあ(笑)。体力つけなくっちゃ!
――ローズの二人の娘は、姉のルイーズを生田絵梨花さんが、妹のジューンを熊谷彩春さんが演じます。お二人との面識は?
まだお稽古も始まっていないので、(生田)絵梨花ちゃんしか会っていないんです。絵梨花ちゃんとは少し前にドラマでちょっとご一緒できたんですけど、第一線で活躍していても、普通の感覚を持っている素敵な子。舞台での共演も楽しみです。熊谷さんはまだお会いできていなくて……。
――生田さんと熊谷さんは『レ・ミゼラブル』で共演されていますね。(※2019年は生田さんと熊谷さんが共にコゼット役。2021年は生田さんがエポニーヌ役、熊谷さんがコゼット役を務めた)
へえ〜、そうなんだ〜! じゃあ、私が一番劣等生になると思います(笑)。今井さんをはじめみんな歌がお上手な人ばかりだから、ちゃんと教えてもらわなきゃ。
初ミュージカルの『スウィーニー・トッド』のときは難しくて全然歌えなくて、でもみんなが「こうやって声を出したらいいよ」といろいろ教えてくれたのがすごく楽しかったんです。私と武田真治くんだけが劣等生でいつも居残りでした(笑)。(宮本)亜門さんに「じゃあ二人残って」って言われて。しんちゃん(武田)はまだ子どもっぽかったから、稽古中に突然「嫌だー! みんな嫌いだー!」って寝っ転がっちゃって(笑)。「(城田)優もソニンも歌上手いし、もうみんな大嫌いだ! 好きなのは(大竹)しのぶちゃんだけだ!」って言ったの。ひどくないですか?(笑)それくらい居残りだったので、今回もそうなるかもしれません。
「ソンドハイムさんと出会えて良かった」
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――『GYPSY』という作品に対して、大竹さんが抱いている挑戦は何ですか?
歌ですね。やっぱり“芝居で歌う”には、プラスの技術がないとできないような難しい楽曲ばかりなので、それをちゃんとクリアしていかないといけないなと思います。私はミュージカルをそんなにたくさん経験しているわけじゃないので、挑戦です。
――それでもこうしてまたミュージカルに出演しようと挑戦されるのが素晴らしいです。
あんまり考えていないのかもしれないですね。怖いという思いはなくて「やりたいからやる」って言っちゃう。言ってから「しまった〜」みたいな感じでもあるんですけど(笑)。でもね、挑戦できるってすごく幸運なこと。本当に幸せだなあと思います。
――特にローズは歌詞のボリュームも多くて大変そうですね。
そうですね。海外で演じられたキャストの方を見ると、やっぱり全部芝居で歌っているんですよ。それがすごくかっこいいなあって。ミュージカルというものは、私は絶対に芝居だと思う。だから、一生懸命歌のレッスンをやって技術を身に着けて、芝居で軽く歌えるようになりたいなと思うんです。
――なるほど。芝居として歌うために、歌の技術を身に着けるんですね。
全部芝居で「わあー!」って叫びたいんです。「 ♪○○なのよー!」というのが、ただたまたま音に乗っているということができたらいいなって思います。やっぱりミュージカルの歌詞って、“この心がこの音になった”という台詞なので。だから台詞で歌えたら良いなとすごく思うんです。
――スティーブン・ソンドハイムさんは『GYPSY』で作詞を務めていますし、大竹さんは彼の作品とご縁がありますね。
本格的なミュージカル出演は、(彼が作詞作曲を務めた)『スウィーニー・トッド』のミセス・ラヴェット役が初めてだったので、本当にソンドハイムさんと出会えて良かったなあと思います。
「劇場で人間のエネルギーを感じてほしい」
――先程ローズは夢を持っているというお話がありましたが、大竹さん自身の夢はありますか?
何だろう……現実は厳しいですね、一日一日を生きていくのが精一杯かもしれません(笑)。 最近ドラマ(『犬神家の一族』)を撮っていて、吉岡秀隆くんとご一緒しているんです。彼も割とのんびりしてるタイプで、ボーっとしているのが好きな人。私もどっちかと言えばそうなので「仕事がないとダメダメ人間だね」と話していました(笑)。旅行へ行ったり、温泉へ行ったり、そのくらいの夢しかないですねえ。しいて言うなら、息子に結婚してほしいことかな(笑)。もうすぐ38歳になっちゃうから本当に心配。それが結構気がかりです(笑)。
――(笑)。大竹さんからは、逆に夢を与えてもらっている感じがします。年齢を重ねても訓練によって歌の技術は向上していくものでしょうか?
歌うための筋肉って、割と70〜80歳くらいまで大丈夫だと聞いたことがあります。もちろん訓練すれば、ですけどね。2015年のロンドン公演でローズ役を務めたイメルダ・スタウントンさんは私より一つ年上ですけど、50代後半から60代の頃にローズを演じられていましたし、私もキーは前よりも出るようになっているんです。
――なるほど。改めて大竹さんがどのようにローズを演じられるのかが楽しみです。それでは、『GYPSY』での一番のポイントを教えてください。
先ほどのイメルダ・スタウントンさんもそうですし、アンジェラ・ランズベリーさん、パティ・ルポーンさん……、過去にローズを演じられた方々はみなさんすごくエネルギッシュな人たちなので、(ローズは)そういうキャラクターなんでしょうね。私、エネルギーは溢れるくらいあるんですよ。ローズの気持ちもわかりますし。だからポイントは、それをちゃんと歌に乗せられるかというところですね(笑)。それが今の大きな目標です。頑張って上昇気流に乗りたいと思います!
――最後に、お客様へ向けてメッセージをお願いします。
「うお〜!」という感じに、私たち役者のエネルギーで劇場が包まれればいいなと思います。劇場でしか味わえない波動やエネルギーをかぶって欲しいです。そしてお客様自身の中で血が駆け巡ってほしいなと思います。それこそが劇場の良さなので。今はなんでも個人になっちゃったり、一人で居ることも多くなっちゃったりしているけども、やっぱりみんなで歌を歌うことやエネルギーを発散させるという、芝居の基本的な喜びを伝えられたら嬉しいなと思います。もうコロナ禍が始まって3年が経ち、一人でいることが当たり前みたいになってしまっているのがすごく寂しいなと思うんです。だから劇場では、みんなで一緒に何かを作るという人間のエネルギーを感じていただけたらと思います。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=池上夢貢

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