俳優生活50周年の集大成! 市村正親
によるひとり芝居『市村座』が開幕へ
〜ゲネプロ&会見レポート

俳優生活50周年を迎えた市村正親によるひとり芝居『市村座』が2023年2月26日(日)から28日(火)まで日生劇場で上演される(その後、大阪・博多・川越・仙台公演あり)。初日を前にした25日(土)、ゲネプロ(総通し舞台稽古)と囲み取材が行われた。その様子を写真とともにお伝えする。
役者生活50周年を迎えた市村正親
ーー俳優生活50周年。今回はどんな内容になるのでしょうか。
市村正親(以下、市村):74ちゃい(歳)です。74歳にして、俳優生活50周年。と同時に市村座は今回で10回目。最初は高島屋アレーナホールというデパートのホールだったんですが、この日生劇場で俳優生活50周年記念の市村座を迎えることは本当にありがたいです。ただ、74ちゃい(歳)なので、体力が持つか心配で……。まさしく体力勝負だなという感じがしています。
それでもお客さんが待ちに待っている期待感が感じられるので、それにつられて、初日には自分でも思わぬ力がお客さから引き出してもらえるのではないかなと思っています。
 
ーーこれまでを振り返って、どんな俳優人生だったなと思われますか。
市村:まあ、やっぱり詰まってますね。24歳から数えて50年なんですけども、24までもいろいろなものが詰まっているし、劇団四季でスタートしてからも、詰まりっぱなしですよね。ただひとつ言えるのは、幸せな役者人生をいまだに送っているということ。市村座というひとりしかいない舞台に皆さん来てくださるわけだから。
会見に臨む市村正親
ーー今回は息子さん2人も出演されますね。
市村:僕が若い頃に歌った歌を歌わせたりしています。お兄ちゃんが歌っている後ろに、僕の若い頃の写真が出るんですけど、やっぱり似ている部分があって、親子だなと。きっとお客さんもそうお思いになるんじゃないかなと思います。弟は弟で、僕がやっていた役を2曲歌います。本人は初舞台ですから、緊張しているのかなと思ったら、口上のセリフは誰よりも一番最初に覚えて(笑)。(歌うことが)楽しいと言っています。
ーー兄・優汰さんは、同じ事務所のホリプロにも所属され、これから本格的に俳優として活動されます。
市村:優汰の踊りいいですよ。『ビリー・エリオット』のオーディションに落ちてから真剣にやり始めて。僕なんかよりもはるかに上手に(タップが)踏めるので、恐れ入りました。
ーー将来有望ですね?
市村:有望かどうかは分からないけど、これからいっぱい試練があると思います。試練があった方がいいんですよ。痛めつけられて、傷ついて、そんな中から「何くそ!」というのがあった方が実はいいんですよ。今のところ、こういう状況ですけど、これから世間の荒波にもまれてくれば、どこかに活きるんじゃないかなと思います。
『市村座』のゲネプロの様子
ーー今回の市村さんの姿を見て、息子さんもますます尊敬しているのでは?
市村:尊敬というよりも、僕がとにかくひたすら必死にやっている姿を見ていますから、それはきっといい勉強にはなっているのではないかな。余裕があるようにやってないから。最後まで行くかどうかという不安の中でやっていますから。いいところを見せようなんて思わないですよ。なんとか最後までたどりつこうとしているだけですから。
ーー息子さん2人に何かアドバイスはされましたか?
市村:「楽屋に入ったら、自分のものを畳んでおきなさいよ。誰が来るか分からないから」と今日言いました(笑)。歌唱は歌唱の先生、お芝居は演出家、踊りは踊りの先生に任せていますが、こっそりとね。親に言われると聞かないものでしょ? だから「ここは背筋を伸ばした方が」とか「ここはこうした方が」とか、先生を経由して伝えています(笑)。
『市村座』のゲネプロの様子
ーーちなみに次男さんはまだ俳優になるか決められていないと思いますが、市村さんからご覧になってどうですか。
市村:面白いことに、上と下はキャラクターが違うんです。上は用心深い、下は大胆。その繊細さと大胆さがうまく色を出しているので、面白いなと思ってね。僕だけではなくて、(元妻の篠原)涼子の血がしっかりと混ざっているんでね。歌のうまさは涼子似で、ひょうきんな部分は僕なのかなとか。楽しいですね。いろいろな発見をさせてもらっています。
ーー観劇を楽しみにされているお客様に一言お願いします!
市村:市村正親俳優生初50周年。市村座は10回目の公演ですが、74ちゃい(歳)、千秋楽まで精一杯務めます。僕の思い出を一緒に辿ってもらえたらと思います。一生懸命やりますので、よろしくお願いします。
『市村座』のゲネプロの様子
『市村座』のゲネプロの様子
『市村座』のゲネプロの様子
これまでの『市村座』では、落語「たらちね」の物語を『マイ・フェア・レディ』のミュージカルナンバーにのせて歌い上げる音楽落語や、芝居仕立人情噺と銘打った落語一人芝居「文七元結」「芝浜」「子別れ」、立体オペラ講談「市村座の怪人」や音楽講談「日生劇場の怪人」などバラエティ豊かな演目を通して、毎回さまざまな市村正親を魅せてきた。
10回目という記念すべき今回の『市村座』。1幕はお馴染みの口上から始まり(長男、次男も口上に挑戦!)、「文七元結」「芝浜」の作者である三遊亭圓朝の落語「死神」を一人芝居仕立てで披露した。
「死神」は、市村が付人をしていた恩師の西村晃がミュージカルで演じたこともあって、今回題材として選んだそう。「死神」は本自体が傑作ではあるが、それが市村の手にかかるとどうなるのかーー。死神自体は映像で表現しつつも、そのほかの登場人物を巧みに演じ分けた市村。ところどころ彼らしいユーモアが挟み込まれていて、面白かった。
『市村座』のゲネプロの様子
『市村座』のゲネプロの様子
『市村座』のゲネプロの様子
休憩を挟み、2幕は、市村がこの50年間で出演してきた40本以上のミュージカル全作品(!)を楽曲とともに振り返る。長男・優汰と次男(11歳)も所々舞台に立ち、父のサポートをするが、基本的には市村がひとりで最初から最後まで出ずっぱり。劇団四季時代の初舞台『イエス・キリスト=スーパースター』(1973)から始まり、『オペラ座の怪人』(1988)、『ミス・サイゴン』(1992)、『ラ・カージュ・オ・フォール』(1993)、『屋根の上のヴァイオリン弾き』(2004)、『ラブ・ネバー・ダイ』(2014)、『生きる』(2018)、『オリバー!』(2022)など、相当な数をノンストップで振り返る。
当時の舞台写真がスクリーンに映し出される場面も多く、市村が生きた50年の俳優人生を一緒に旅しているような感覚になる。観客自身が自らの観劇体験を振り返る時間になるだろうし、日本のミュージカル史を振り返る時間といってもいいかもしれない。いろいろと苦労もあったろう。いろいろと試練もあったろう。でもそれらを乗り越えて、日本のミュージカル界を牽引し、今もなお第一線で舞台に立ち続けている市村正親の姿は、それ自体がドラマチックで感動的だった。
連続して彼の出演作を見ていると、役そのものが降りてきていると感じる瞬間があった。彼が役を作ったのか、役が彼を作ったのか、それは分からない。ただ、市村正親は舞台を愛しているし、舞台から愛されているのだなぁとつくづく思う。俳優生活50年の集大成、ぜひお見逃しなく。
『市村座』のゲネプロの様子
取材・文・撮影=五月女菜穂

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