古川雄大にしかできない、唯一無二の
“エンターテインメント・ショー”が
誕生!~『古川雄大 The Greatest C
oncert vol.2 -A Musical Journey-』
渡辺大輔ゲスト回リポート

古川雄大 The Greatest Concert vol.2 -A Musical Journey-』が、日本青年館ホールにて開催中だ(2023年2月17日~2月26日)。当公演は、数々の大作ミュージカル作品に出演し、代表作を多く持つ古川雄大のミュージカルコンサートの第二弾となる。チケットは早々に全公演ソールドアウトし、会場は連日満員。多彩なゲストを迎え、初日から熱気に包まれたステージとなっている。ここでは、古川が若手時代から親交のある渡辺大輔をゲストに迎えた2月24日の公演の模様をお届けしよう。
赤い一輪の薔薇と大きなトランクを持った一人の青年が、急いで地下鉄に飛び乗る。“旅人”に扮した古川の登場だ。車内の席に着くと、ウトウトし始める旅人。ジョージ・ガーシュウィンのミュージカル『Oh, Kay!』の「Someone to Watch Over Me 」のメロディが、彼を文字通り“夢の世界”へと誘う。目を覚まし気が付くと、そこは1940年代のニューヨーク…! 隣人たちが突如エンターテイナーへと様変わりし、華やかで躍動感溢れるナンバー「New York, New York」(『On the Town』)と共に、会場を一気にエンターテインメント・ショーの世界へ連れて行く。
“ミュージカルの歴史を辿る旅”というコンセプトのもと、第一部ではストーリー仕立てで名作ミュージカルのナンバーが年代順に歌い繋がれる。公演前の取材時に「ミュージカルに馴染みがある人も、そうでない人も楽しんでもらえるセットリストになっている」と古川が語っていたとおり、絶妙なバランスの多彩な曲が揃った。
誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「雨に唄えば」(『Singin' in the Rain』)では、街ですれ違う人々を演じるアンサンブルキャストと息の合った踊りを軽やかに披露。また、ボブ・フォッシーの代表作の一つ『スウィート・チャリティー』からは「Big Spender」を、椅子を使った色気と気品のあるダンスで魅せる。古川の長い手足が映え、大人の艶やかさに溢れたこのシーンは見応え抜群だ。
真っ白な衣装に包まれて、どこか神聖ささえ感じさせる姿で高らかに歌い上げるロックなナンバー「Heaven on Their Minds」(『ジーザス・クライスト=スーパースター』)ではカリスマ性を発揮し、突き抜ける高音の迫力に圧倒される。これまでの出演作とは毛色が違うこともあり、きっと新たな一面に驚かされるだろう。
『古川雄大 The Greatest Concert vol.2 -A Musical Journey-』より
前回の公演でも、女性が歌うナンバーを柔らかな歌声で表現し好評を博したが、今回は『レ・ミゼラブル』から「On My Own」を披露。エポニーヌが想いを寄せるマリウスへの切ない感情を歌う、劇中でも印象深いナンバーだ。孤独や悲哀の表現に長けた古川が届ける「On My Own」は、思わず本役で演じてほしいと思ってしまうほど惹きつけられた。感情を爆発させるような、真っすぐに届く力強い歌声と表現力に心が揺さぶられる、注目の一曲だ。
出演作からの楽曲も忘れてはならない。先月まで出演していた人気のウィーンミュージカル『エリザベート』から「愛と死の輪舞」を、女性キャストのダンスと共にロマンティックに聴かせ、作品ファンも喜ばせた。また、タイトルロールを演じた『モーツァルト!』からは、「影を逃れて」を本編さながらの熱量で聴かせ、代表作としての貫禄を感じさせる時間となった。
他にも、ディズニー作品や宝塚歌劇団で馴染みのある人気作、近年の話題作からなど、多種多様なナンバーを披露し客席を魅了。曲から曲への繋ぎにも物語性があり、シームレスでわくわくさせる展開が観ていて心地良い。アンサンブルキャストとのチーム感や、コミカルなやり取りも見どころの一つだ。『1789 -バスティーユの恋人たち-』や『エリザベート』で幾度と作品を共にしてきた演出の桜木涼介との相性の良さも感じられ、古川の魅力を最大限に引き出すことに成功している。
まさに「夢のような時間」を旅し、歌にダンスにとエンターテインメント性にあふれたこのショーは、ダンサー出身の古川雄大だからこそ実現できたのではないだろうか。“ショースター”としての魅力も存分に堪能できる盛りだくさんの内容で、余韻たっぷりに第1部は幕を閉じた。
『古川雄大 The Greatest Concert vol.2 -A Musical Journey-』より
昨年、日本版が初上演され人気を博した『ヘアスプレー』の「Good Morning Baltimore」から幕を開けた第2部は、ショーからコンサートへと趣きを変えてスタート。続けて同作のポップで楽しいナンバー「You Can't Stop the Beat」を披露。とここで、初めて古川から挨拶があり、「一緒に踊りましょう!」と観客を笑顔で誘う。古川によるペンライトを使った簡単な振付の指導が行われ、観客の習得の早さを褒め称える場面も。会場全体が黄色の光に染まり、ステージと客席との一体感を味わえる楽しい時間となった。
トークコーナーでは、「映像作品などで知っていただいて、僕のことを今日初めて観た方もいらっしゃると思いますが、話すとこういう“体操のお兄さん”みたいな感じです(笑)」と自己紹介すると、客席からも笑いが漏れ、一気になごやかな空気に。そして、「ミュージカルをより深く知ってもらう機会になれたら」と、今回のコンサートにかける想いが語られた。
続いて、初めて大きな作品で主演を務め、自身を成長させてくれた思い入れのある作品として紹介したミュージカル『黒執事』より、「絶望の果て」「私はあなたの駒となり剣となる」(『ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス2015-』)のドラマティックなナンバーをメドレーで披露。作品の硬質な世界観へ客席を誘った。
前回のvol.1に続き、今回も第2部では日替わりで豪華ゲストが登場する。この日のゲストは、デビュー時から15年の付き合いになる“親友”、渡辺大輔が出演した。
渡辺が登場すると、ステージの両サイドから二人にテニスのラケットが投げ込まれる。彼らの出会いのきっかけにもなったミュージカル『テニスの王子様』の「Do Your Best!」のイントロが流れると、客席からは大歓声が沸き起こり、会場は一気にヒートアップ! 曲中の各キャラクターのフレーズをすべて二人で体現し、そのたびに客席からは笑いと熱い反応が。テニミュ時代からのファンにはたまらない時間となった。
トークでは、古川も「家にいるみたいな感じ」と言うほど、渡辺とのリラックスした空気感を大いに楽しんでいる様子で、グッズ紹介での“大喜利”など、渡辺に無茶ぶりする場面も(どんな想定外なフリも受け止めて返す、渡辺の心の広さと対応力の高さ…!)。そして、テニミュ時代の秘蔵エピソードや、古川から(照れもあり)今まで語られることのなかった、渡辺への感謝や尊敬の念も明かされた。予定の時間をオーバーするほど盛り上がり、二人の歴史や仲の良さがうかがえる“胸熱”なトークタイムとなった。
続いて、渡辺が古川との共演作でもある『ロミオ&ジュリエット』から、自身が演じたティボルトのナンバー「本当の俺じゃない」を熱く歌い上げた。そして最後のデュエットでは、『エリザベート』の「闇が広がる」を披露。トートとルドルフのパートを交互に歌うなど、この日限りの特別な「闇広」を聴かせてくれた。
ゲストコーナーの後は、出演作の『エリザベート』や『マリー・アントワネット』からの曲を交えつつ、「最後は楽しい曲で締めたい」という思いで選曲したという「Raise You Up」(『キンキーブーツ』)をダンス付きで披露。共に舞台を作り上げたアンサンブルキャスト一人ひとりを紹介し称え、明るく華やかに会場を盛り上げて2部を締めくくった。
『古川雄大 The Greatest Concert vol.2 -A Musical Journey-』より
鳴りやまないアンコールの拍手に応えて再び登場すると、前回の公演でも最後に披露した『モーツァルト!』の「僕こそ音楽」を、情感豊かに、伸びやかな歌声で届けた。自身の代表作のナンバーでもあり、この先もこの曲を大切に歌い続けていきたいという思いが伝わるアンコールの時間となった。
今回は自身が出演したことのないミュージカルナンバーが多く盛り込まれた内容となったが、新鮮な姿に触れ、コンサートならではの醍醐味を感じるとともに、今後の活躍への、そしてコンサートの続編に向けた期待が更に高まった。先日には、自身にとって帝国劇場での初の単独主演作となる『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』の上演が発表されたばかり。着実に階段を登り目標をえていく姿は、眩く頼もしいかぎりだ。『1789』をはじめとするフレンチミュージカルで人気を誇る作曲家のドーブ・アチア氏と、古川が恩師として敬愛する小池修一郎氏がタッグを組んで作り上げる大型新作ミュージカル、こちらも大いに期待して待とう。
なお、本コンサートは2月26日(日)14時から行われる千穐楽公演のライブ配信(アーカイブなし)が決定している。ゲストには元宝塚歌劇団トップスターで、舞台やドラマでも活躍中の明日海りおが出演する。二人のデュエットやなごやかなトークも楽しめる時間になりそうだ。ぜひ画面を通して極上の“Musical Journey”を味わってみてほしい。
取材・文=古内かほ

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