俺たちのライブハウスが戻って来た!
『PLAYLIST presents“ヘッドフォン
を外して”vol.2』はMakiとKOTORIが
Z世代を熱狂させる

PLAYLIST presents ヘッドフォンを外してvo.2 2023.01.26(tue) 渋谷CLUB QUATTRO
こんなにも満員な会場で、歓声が飛び交い、活気溢れるライブハウスを見るのは久しぶりだ。Instagram音楽メディア・PLAYLISTが贈る新世代イベント「ヘッドフォンを外して」。昨年9月の第一回はマルシィreGretGirlリュックと添い寝ごはんの3組で、今回はMakiとKOTORIの2組。サブスク世代のリスナーにより深くコミットする、ロックでエモーショナルなラインナップだ。
Maki
「ヘッドフォン外して来たかい? ここはライブハウス!」
1曲目「朝焼け」からエンジン全開、ライブバンドのプライドをかけて勝負に出たのは名古屋発のスリーピースバンド・Makiだ。すでにZeppクラスの動員を持つバンドの支持は絶大で、ほぼすべてのオーディエンスが歌詞をシンガロングする光景は圧巻。ブルージーで魅力的な声を持つベース&ボーカルの山本響を中心に、ドラムのまっちが堅実にリズムを支え、ギターの佳大が時折テクニカルなソロを織り交ぜて色を付ける。青春パンク、エモ、メロディック、J-POPの要素も加えた音楽性は、初見のリスナーをも巻き込んで加速する。
Maki
「来てくれてありがとう」というMCに「こちらこそ」と掛け声が飛ぶ。バンドとオーディエンスの距離が近い。猛烈なスピードで突っ走る「斜陽」から「虎」へ、イントロのリフだけで大歓声、サビが来れば大合唱。Makiの歌詞は等身大で不退転のメッセージと、叙情的で内省的な物語の二重奏。聴くだけじゃない、みんな歌いに来ている。盛り上がりすぎて一旦中断、そして再び全力疾走。熱いだけじゃない、「Landmark」のように静かに聴かせる曲もある。夢から覚めても僕達は夢を見続ける。ナイーヴでありながら力強い歌詞がリスナーのハートを直撃する。
Maki
「誰かを責めるんじゃなくて。いろんな奴がいるから。話して、歌って、自分の知らないことを知って。人間として共にかっこよくなっていきましょう」
盛り上がるオーディエンスへの率直な想いも含め、ライブならではの喜怒哀楽を盛り込みながら、ラストチューン「憧憬へ」まで疾風怒濤の全9曲。Makiならではの生きざまと思想をさらけだす、すがすがしい全力疾走の40分だった。
KOTORI
「スピーカーから出てくる音を、体で感じ取って。知ってたら全部歌っていいんで」
二番手に登場したKOTORIは、ライブバンドとしてすでに両国国技館や昭和女子大学人見記念講堂のワンマンライブを成功させている実力者。クアトロで見られるのはラッキーだが、ハコの大きさなど委細構わずすさまじい熱量でフロアを制圧する。ギター&ボーカルの横山優也に言われるまでもなく、1曲目「さよなら」から「高鳴る胸に鐘を鳴らせ」へ、シンガロングの声が盛大に響き渡る。横山も時折歌うのをやめ、笑顔でみんなの声を聴いている。激しいのに温かい、KOTORIらしい空気。
横山と上坂仁志のツインギターの、パンクとは異なる系統の、オルタナティブでソリッドなリフがとても刺激的。メロディックなベーシスト・佐藤知己と、全身全霊でドラムを叩く細川千弘の対比も鮮やか。オルタナ、グランジ、シューゲイズの雰囲気もありながら、キャッチーなメロディとポジティブなメッセージがまっすぐ届く。「1995」のような青春賛歌もあれば、「トーキョーナイトダイブ」のようにメランコリックな孤独を歌う曲もある。とても詩的で情景が浮かぶ歌詞。
KOTORI
「ほんとに、全部歌っていいんで。最後まで、爆踊りしていってください」
ツインギターのアルペジオと美しいメロディが、エモさ満点のスピードチューンへ変貌する「RED」。うまくいかない日があったって、これくらいがちょうどいい。等身大のメッセージが沁みる「素晴らしい世界」。そしてシューゲイズめいた歪んだ爆音と、強烈な逆光の中で歌うアンセム「We Are The Future」。踊れて、騒げて、沁みて、噛みしめる、これがKOTORIの世界。
KOTORI
「初めてライブ観たって人います? 一回見ちゃったら終わりですよ。オレらはライブやりたくてやってるんで、ここまでたどり着いてくれてありがとうございます」
ガソリンタンクが空になるまで盛り上がったアンコール2曲を含め、全13曲で50分の濃密時間。ジャンルではくくれない音楽性と、生粋のライブバンドの貫禄を見せてくれたKOTORIとMakiのツーマンは、お互いに近い音楽性だからこそ、個性の違いがはっきりわかる組み合わせだった。6月1日に3回目の開催を控えている当イベント。次の組み合わせはどうなるだろう?と、さらに興味をかきたてられる。〈PLAYLIST presents “ヘッドフォンを外して”〉は面白い。次も観たい。
取材・文=宮本英夫 撮影=Ryohey

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