とた

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【とた インタビュー】
成長が生んだ
1stフルアルバム『oidaki』

“今は死ねない”と思って生きている

とたさんの作る楽曲の主人公たちは、どの子もいつもちょっと悔しさを抱えていたり、負けず嫌いな気がしましたのですが。

私自身がすっごく負けず嫌いで、負けず嫌いすぎて戦いに出たくないレベルで(笑)。最近は“戦わなきゃ始まんないだろうな”“新しい世界には飛び込めないんだろうな”とは思っています。でも、誰かに勝ちたいとか、負かしたいわけではないんですよね。ただ負けたくない(笑)。

だからかもしれませんが、どの主人公もただ純粋に“成長したい”と思っていますよね。家から出られない「あしたてんき」の主人公も、諦めの中で変わりたいと思っているから葛藤しているんだと思います。

“今は死ねない”と思って生きているので、そういうところがあると思います。中学の頃は視野が狭くて、目の前のことしか見えていなかったけど、いろんな人とかかわってくうちに、いろんなものを見るようになって、大切なものも増えていって、この先のことを考えるようになって…だからこそ、その気持ちがすごく大きくなってきましたね。

「紡ぐ」の《ここで生きたいの/あなたとの幸せを諦めてないから》という歌詞も、 “今死ねない”というマインドを思わせます。

物語の締め括りにある“お空で幸せに暮らしました”に対する皮肉です(笑)。“自分は空じゃなくてここで生きたいんだ! 物語になってたまるか~!”って気持ちがあるんですよね。物語みたいな曲の作り方をしているのに(笑)。

とたさんが見つかるきっかけにもなった「紡ぐ」はフルバージョンで収録されていますが、これはもう完全に新曲ですね。

そうですね。もともとはサビだけで、それこそTikTokに投稿したショートバージョンのところだけだったんです。音楽で少しでも聴いてくれる人に影響を与えられたり、何かが動き出すきっかけになったらいいなという、私の活動に対する想いを書きました。でも、漠然としたものを曲にしただけだったし、当初は投稿するつもりもなかったくらいだったので、フルサイズを作るつもりもなかったんですが、すごくたくさん反響をいただいて、いろんな人がそれぞれの解釈で聴いてくださって。だから、フルサイズにするにあたり、聴いてくださった方々がさらに自分に重ねて聴いていただけるように作りました。

個人的な曲が多くの人の気持ちが重なったことで新しい意味を持ち始めて、それらを全てを包含するフルバージョンができたと。まさに“oidaki”ですね。

あははは、そうですね。長い時間をかけて作ったような感覚があって、“これが「紡ぐ」という曲の辿り着くべき場所だったのかー”と思いました。ひとりじゃできなかった歌詞なので、聴いてくれた人と気持ちを紡げたという意味でもタイトルどおり“紡ぐ”だなと。これから活動続けていく中で、何回聴いても始めた時の気持ちを思い出せる曲かなと思っています。

そして、締め括りは「薔薇の花(in the bathroom)」。4曲目の「薔薇の花(in the bedroom)」と呼応する楽曲ですが、ベッドルームもバスルームもとたさんの思考を刺激する空間ですよね。

これからも楽曲制作をしていくにあたって、常に思い返したいことを曲にしたのが「薔薇の花」です。親身に思って言ってくれた言葉が、自分にとって重荷に感じちゃった時があったんですよね。自分のために言ってくれていることは分かっていても、それを素直に受け取れなかったというか。

そういうことありますね。

自分が誰かに言葉を渡す時も、人からもらう時も、同じ言葉や同じ意味なのにもかかわらずうまくキャッチボールできないことがあって。でも、それが変わっていくタイミングがあると思うし、少しずつそれを実感しているんです。大人になったら分かることもあるし、今だから受け取れるものもある。同じ言葉でも受け取るタイミングによって意味は変わっていくことが、私の曲でも起こるんじゃないかと思ったんですよね。だから、今回はひとり反省会をしがちな“寝室”と“お風呂”のふたつのバージョンを作って、今後もその時その時で新しい「薔薇の花」が作れたらいいなとは思っています。

“薔薇”が漢字なのもポイントですね。

自分の感じた刺々しさがより伝わると思ってタイトルは漢字にしました。文字の選び方は自分的にも気にかけていて、例えばあみだくじをモチーフにした「せーかいせかい」は“一本、棒を増やしただけで全然違う意味になっている”というのをタイトルでも表現したかったんです。

わっ、本当だ!? そこまで考えられているなんて、完全に一本取られました。『oidaki』はいい湯加減のとたワールドを体感できる作品になったのではないでしょうか?

感情的に共感できる部分があると言っていただけるのも嬉しいし、そういう字面や言葉遊びに面白さを感じてもらえる聴き方もできる曲になったらいいなとも思っているので、どっちも両立させていきたいですね。今回初めてアルバムを作って、“こんなこともできるんだ!?”という発見がたくさんあったんです。インストを組み込むことも、CDのデザインを自分の作りたいように作れることもすごく面白かったし、自分の作りたいものが作れました。ぜひぜひみなさんにもゆっくり浸かっていただきたいです。

取材:沖さやこ

アルバム『oidaki』2023年2月22日発売 RAINBOW ENTERTAINMENT
    • REP-065
    • ¥2,500(税込)
とた プロフィール

とた:2000年生まれのベッドルームアーティスト。DAWを用いた楽曲制作に加え、アートワークや映像に至るまでにセルフプロデュースを行ない、等身大ながらも文学的な詩世界を表現する。21年2月、インターネット上にて自身のオリジナル楽曲やカバーの投稿を始める。動画共有サイトやSNSのみでの活動にもかかわらず、同年6月に投稿した「紡ぐ Short Ver.」が一年足らずで合計270万回以上再生され注目を集める。23年2月に「紡ぐ」のフルバージョンも収録した1stアルバム『oidaki』を発表。とた オフィシャルTwitter

「紡ぐ」Short ver.

「紡ぐ」MV

「こうかいのさき」MV

「せーかいせかい」MV

「あしたてんき」MV

「ブルーハワイ」MV

「君ニ詠ム。」MV

OKMusic編集部

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