THE BACK HORN、『マニアックヘブン
vol.15』全公演が終了 最終公演(G
ORILLA HALL OSAKA)の公式ライブレ
ポートが到着

THE BACK HORNが2023年1月から開催してきた東名阪ツアー『マニアックヘブンvol.15』の大阪公演が、2月11日(土)にGORILLA HALL OSAKAでファイナルを迎えた。
『マニアックヘブン』はTHE BACK HORNのメンバー自らが企画・演出を手掛け、これまでツアー形式も含めて16回開催されてきた恒例のイベント。2005年12月の初開催以降、選曲から演出までの全てをマニアックに構成する内容や、メンバーが手がけてきた絵画などを展示するギャラリーコーナーも楽しむことができる公演となっている。
また、今回の最終公演を受け、ライブのセットリストを配信サービスにて再現するプレイリストも公開。以下、最終公演の公式レポートをお届けする。

THE BACK HORNが自ら企画と演出を担当して、普段のライブとは違うマニアックな選曲でライブを行なう『マニアックヘブン』。Vol.0として2005年12月に始まり、今年はVol.15として1月14日に東京・中野サンプラザ、1月27日に愛知・名古屋DIAMOND HALL、ツアーファイナルとして2月11日に大阪・GORILLA HALL OSAKAで開催された。今回、東京公演では初のホール開催で全椅子席を試み、逆に名古屋と大阪は今まで通りライブハウス開催ではスタンディングと、よりマニアックな雰囲気を楽しめる様に趣向が凝らされている。新しい可能性を追求する『マニアックヘブン』は、バンド結成25周年となる2023年の幕開けとして最高でしかない。
ツアーファイナルの会場となったGORILLA HALL OSAKAは今年1月にオープンしたばかりで、もちろんTHE BACK HORNは初めての登場であり、同ホールにとっても初のワンマンライブ公演となる。開演前にはイベンターの清水音泉の男湯こと田口氏が、会場を運営するIn the village合同会社の代表でオーナーの中村氏を紹介する一幕も。中村氏はブランド『KiU(キウ)』も展開しており、数々のフェスに協賛・参加しているが、THE BACK HORN 20周年ではコラボグッズも制作するなど、既に関係性がある事も明かされた。イベントマスコットのマニアッ君と会場の店長でもあるマスコットのゴリラ君も現れて、記念撮影が行われるなど和やかな雰囲気に包まれる。2階には過去のツアーの写真が展示されたブースもあり、開演前から会場は盛り上がっていく。メンバー全員が考案のオリジナルドリンク4種も毎回楽しみであるが、コロナ禍の為、今回は実施されずも、帰りしなに4種のレシピが掲載されたフライヤーが配られたのは、嬉しいサプライズであった。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
いよいよ開演時間となり、『マニアックヘブン』オリジナルのかっこいい登場SEが鳴り響き、1曲目「カウントダウン」へ。緩やかながら重厚なサウンドに、山田将司(Vo)の声がねっとりと絡み合っていく。始まったばかりだが、観客のボルテージが上がっていっている事が手に取る様にわかる。マニアックな選曲であるはずだが、早くも次の「運命複雑骨折」で松田晋二のドラムが叩きこまれた瞬間に観客からは歓声が起きた。THE BACK HORNを本当に心から愛している人間しか、この場には集まっていない。観客からしたら、どの曲もマニアックではなく、ど真ん中なのだ。まだ2曲目であるのに、山田の全身全霊で吠える姿も凄すぎるし、なので観客もヒートアップするしかない。
「ペルソナ」然り、硬派で漢な音が鳴らされていくが、MCでは人間味ある可愛げに溢れていて、そのギャップもバンドの魅力である。この日も松田の“一喜一憂”という言葉の使い方によって、先程まで真剣に音と向き合っていた山田、菅波栄純(G)、岡峰光舟(B)が思わず吹き出していた。だが、何事も無かったかの様に、岡峰の渋いベースから始まる「白夜」と、やはり、このギャップが堪らない。この曲で特筆すべきは、サビの部分で観客が全力で声を出してレスポンスをしていた事。マスクをした上であれば声出しが可能である事が開演前に告げられていたが、いざ約1000人の観客による大きな声による歌を聴くと、3年ぶりにライブハウスの醍醐味が戻ってきたのだなと感無量になってしまった。声出しが無くても、バンドと観客が完全にひとつになる事は出来るが、声出しというわかりやすい形でバンドと観客がひとつになった時の迫力は凄まじすぎる。間違いなく、この日のハイライトシーンであった。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
冒頭の打ち込みによるサウンドが不穏で堪らない「がんじがらめ」では、自発的に観客全員から手拍子が起きるなど、もうとにかくライブハウスがガンガンに盛り上がっている。「神の悪戯」での山田の激しい動きと叫びに虜になっていたが、曲が終わった瞬間、観客が解き放たれたかの様にメンバーそれぞれの名前を叫び始めた。黄色い声援というよりは野太い野郎の声援であり、その感じもライブハウス独特の男臭さを久しぶりに浴びれて、とても感激してしまった。山田も『久しぶりの声出しライブで、いつも以上に嬉しいです』と笑顔を見せる。
気付くとライブ本編も折り返し地点に差し掛かっていた。「コンクリートに咲いた花」や「クリオネ」では、山田もギターを持って歌い始めるが、衝動的な歌とはまた違う、真っ直ぐに聴かせる歌であり、その歌の振れ幅に驚かされる。「ヘッドフォンチルドレン」では、山田はギターではなくピアニカに持ち替えて、ダブ的な浮遊サウンドを鳴らしていく。このたゆたう感じはチルアウト感もあり、衝動で暴れて火照った心身を心地よくクールダウンさせてくれる。こんな素晴らしい音楽にどっぷり漬かった後のMCは、やはりTHE BACK HORNならではの岡峰いわく「雑談すぎるだろ!」な展開に。もはや4人のトークショーでもあり、ギャルっぽい発音でイベント名を略してみたりと脱線し放題。そして、再度、松田の“一喜一憂”という言葉の使い方が話題になり、岡峰と菅波が延々とイジり、たまらず山田は笑っている。ライブの鋭さとMCの和やかさ、この両方を持ち合わせるTHE BACK HORNに我々観客は惹きこまれてしまう。山田カンパニーとも言われる山田主導のグッズ制作についてもたっぷりと話されて、いよいよライブは終盤に入っていく。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
ギターを持った山田は青くて神秘的であり妖艶なライトに照らされて、「フリージア」では“フリージア”と声を絞り出して何度も何度も唱える様に歌う。“フリージア”という言葉が、僕らの脳に心に張り付く様に入ってきて、聴いているだけで持っていかれる感覚に陥る。その流れで「泣いている人」も歌われるが、「フリージア」同様にじっくり聴かしていく。「どうか明日は幸せでありますように」と心からの想いを歌として囁きかけられると、もうグッとくるしかない。こんなに感情を揺さぶられる時間も間もなく終わると思うと寂しくなってくる。山田も「寂しいな。『マニアックヘブン』が今日で終わるの」と漏らす。まだ発表は出来ないと前置きしつつも、25周年イヤーに色々な楽しい出来事が控えている事は教えてくれる。
「みんなから祝って欲しいので、たくさん祝って下さい」
シンプルでストレートな言葉だが、この言葉はとても素直で、本当に好きだった。この何気ない言葉で、もっともっとTHE BACK HORNを祝いたいと誓った人は多かったはずである。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
静な音を堪能した後は、動な音が押し寄せてくる。「突風」では観客から拳が突き上がりまくる。「一つの光」も速いビートで駆け抜けていく。真っ直ぐ真正面から届く山田の歌声が本当に好きだ。そんな常に感極まった状態に陥るTHE BACK HORNのライブには、スポーツの試合で観客が声を揃えて掛け声や応援歌を捧げるみたいな不思議な高揚を感じられる瞬間がある。「閃光」で「オーオーオーオー」と観客が一丸になって歌う場面は、まさしく、その不思議な高揚感に会場が包まれていた。そして、遂にラストナンバー「カナリヤ」。最後の最後にも関わらず、駆け抜けていく力強さはどんどん増していき、聴いている我々の心を解放してくれる。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
「俺は俺のままで いつでもお前の側にいる また会う日まで」
この歌詞で締め括れられる「カナリア」は粋でしか無かった。
アンコールでは山田がドラム、菅波がベース、岡峰がギターをムーディーに演奏していき、その中で松田が登場して「天気予報」の歌詞を朗読していく。4人全員が違うパートを担当しているのに、他のバンドには絶対に無い異様な力を発揮していく。2006年の楽曲であるが、17年経ち、より熟していっている。イレギュラーな楽曲だが、観客は声を出して大興奮しており、それはそれは美しい胸騒ぎの光景であった。松田は最後に歌詞を叫び、山田も力が入りスティックを折ってしまう。岡峰は「調子に乗るからだ!」と山田に激を飛ばすも、メンバー全員笑顔で本気で楽しんでいる事が伝わってくる。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
曲終わり、2月22日(水)に発売されるLive Blu-ray『マニアックヘブンvol.13 & vol.14』の告知をするが、松田の「観て頂き、永遠にみなさんの中に『マニアックヘブン』を!」という語り掛けは印象的であった。ライブで体感するにこしたことは無いが、家でもこの感動を味わえるならば寂しくない。
アンコール2曲目「上海狂騒曲」。これぞTHE BACK HORNという魂の叫びの爆発的エネルギーがこれでもかと浴びせられる衝動的ナンバーだが、19曲目という大終盤で、まだまだ大爆発を起こせるのは物凄すぎる…。「今年もよろしくね。また生きて逢おうぜ!」と20曲目「さらば、あの日」へ。3人の演奏を聴きながら、仁王立ちする山田は、とてつもなく絵になる。23年前のインディーズ時代の楽曲であるが、全く色褪せる事なく、初めて聴いた頃と同じく鼓舞してくれる。時計を観ると2時間も経っていたが、あっという間の時間であった。マニアックと謳っているものの、THE BACK HORNの王道を味わえた夜。ここから始まる25周年イヤーにはドキドキとワクワクを抑えきれない。
マニアックヘブンvol.15ライブ写真
文=鈴木淳史 撮影=オイケカオリ

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