新生 藤枝梅安、豊川悦司に「ぴった
り!」ーー映画『仕掛人・藤枝梅安』
共演の田山涼成が太鼓判、天海祐希の
気風の良さもこぼす

累計発行部数600万部超えの大ヒットベストセラーとなった、池波正太郎の時代小説シリーズ『仕掛人・藤枝梅安』。これまで何度も映像化されてきた同作だが、2023年の池波正太郎生誕100年を記念して新たな『仕掛人・藤枝梅安』が二部作となって誕生した。
2月3日(金)に映画『仕掛人・藤枝梅安』第一作の公開初日を迎え、4日(日)には大阪ステーションシネマにて、藤枝梅安役の豊川悦司、水茶屋の主人である善四郎役の田山涼成、河毛俊作監督が登壇しての舞台挨拶が行われた。
豊川悦司
大阪出身の豊川はまず、前日の公開初日に東京で舞台挨拶が行われたことに触れ、「大阪は僕のホームなので、昨日よりはちょっと気が楽です」と笑顔を見せる。そして「今日は皆さんが(映画を)ご覧になった後ということで、緊張しながら会場に入ってきたのですが、皆さんのお顔を拝見して、大丈夫だったのではないかなと思います」とほっとした様子を見せつつ、自信をのぞかせた。
急きょ登壇が決まった田山は「出たがり田山」と自称し、「(舞台挨拶が決まって)とても嬉しくなって飛んでまいりました!」と声を弾ませる。「素敵な作品でしたでしょう?」という田山の問いかけに、会場からは拍手が沸き起こる。その気持ちに応じるように「おもしろいですよねー。私も出ていますが、皆さんと同じ立場になってワクワクとしておりました」と笑みを浮かべた。
(c)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
梅安の魅力を問われると、「自分が抱えている矛盾に対して、きちっと向き合おうとしているところがすごく男らしいなと思う」と豊川。自分の欠点や迷いに目を背けないところがすごく好きだという。
料理屋「万七」の内儀、おみの役の天海祐希と、田山が扮する善四郎のシーンも好きだと続ける。
「内容的にはちょっとコメディタッチな部分もあります。ですがその奥には、愛だけでは繋がらなかった男と女の切なさみたいなものが、おふたりの中に見えてすごくじーんときました」
田山涼成
田山は天海とのエピソードを語る。「私が携帯電話を持ち始めたときに、初めて女優さんと電話番号の交換をしたのが天海さんだったのですよ」と打ち明ける。「多分、ご本人は覚えてないと思いますよ(笑)」という豊川のツッコミもなんのその、「当時はショートメールで連絡を取り合っていたのですが、いったん断ち切れて。今回、出演のチャンスをいただいて、天海さんからご連絡がきました! 嬉しかったですねー。撮影では、天海さんの着物の中に手を入れる、ちょっと色っぽいシーンもあったのですが、ちゃんと胸に手を入れた方が観ている方もドキドキすると思って、現場で「絶対、触りませんから!」と言ったのですが、「大丈夫ですよ!」と言ってくださって。共演者としてはものすごくやりがいのある、楽しい現場でございました」と、天海の気風の良さに感心したという。
田山は豊川が演じる梅安についても、こう続けた。「これまで何人もの梅安を見てきましたが、こういう場所だからお世辞を言うわけではなくて、豊川さんはもうぴったり! 見てください、この体つき。冷たい眼差し。ぴったりだと思いませんか?」という投げかけに万雷の拍手で応じる観客に、作品への満足度の高さもうかがえた。
河毛俊作監督
『仕掛人・藤枝梅安』には「人は善い行いをする一方で、悪い行いもする」という池波正太郎の哲学も盛り込まれている。この哲学の見解を河毛監督に尋ねた。
「ダークヒーローものとして梅安を見たとき、単に悪い人をやっつけて、正義の人だという顔を梅安も彦次郎(片岡愛之助)も絶対にしない。いつかは自分も同じような死に方をしていく覚悟はしつつ、それでも自分の行為によってわずかながらでも誰かが救われたり、失われた魂が報われたりすればいいという、すごく謙虚なダークヒーローなんですね。そういう池波先生の哲学を意識して作りました」
(c)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
そんな梅安を通じて豊川は、「互いの体温が感じられる距離感のコミュニケーションが大事」という。
「人は昔も今もほとんど変わってないと思いますが、コミュニケーションということで考えると、昔と今では全く違っていて。映画でも描かれていますが、人と人がちゃんと向き合って、手の届く範囲で一緒に行動することは、ものすごく大事なことだなと改めて思います。今はSNSとかで繋がっていることは繋がっているのでしょうが、それだけでは足りない繋がりが存在していて。もう一度、原点に立ち返って、人と人が向き合う。「会う」とか「出会う」という言葉を大事にしてもいいのじゃないかなと思います」
(c)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
緻密な人物描写もさることながら、河毛監督は映像美にも注目してほしいという。
「僕が映像を作る上ですごく意識したのは、光と影です。江戸の風景は葛飾応為の浮世絵などを見て、あの時代の人が見ていたであろう光と影、町の灯り、座敷の奥に最後ひとしずくのように残った太陽の光とか、そういうことを意識しました。撮る前には谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』を読み返して。文学的な意味も含めて光と影を意識して、それが気持ちよく(映像として)上がっているような気がします」
(c)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
二部作の本作。4月7日(金)には梅安と彦次郎が江戸から京へ出立する映画『仕掛人・藤枝梅安』第二作の公開が控える。「第二作では、第一作とは全く違う展開が待っております。梅安さんと彦さんで旅をしながら、いろんな事件に巻き込まれていくという、すごく面白い作品になっておりますので、第二作の方もぜひよろしくお願いいたします」と豊川。
最後に河毛監督、「数ある映画の中からこの作品を選んで、ご鑑賞いただき本当に嬉しく思います。この映画を気に入っていただけたら、ご友人、ご家族、いろんな人にご感想を伝えていただきたい。「できれば見た方がいいよ」と薦めていただければ、こんなに嬉しいことはありません」と締めくくった。
映画『仕掛人・藤枝梅安』
取材・文=Iwamoto.K 撮影=佐藤純子

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