宝塚歌劇団の宙組初代トップスター姿
月あさと、苦しみ抜いたその座につい
て振り返る「舞台の上だけが安全な場
所だった」

宝塚歌劇団の宙組初代トップスターで、2000年の退団後は女優や歌手として活動している姿月あさと。3月3日(金)〜6日(月)によみうり大手町ホール、3月11日(土)〜14日(火)に宝塚バウホールにて上演する『Cosmos 25th Special Concert「明日へのエナジー」』では、同組2代目トップスターの和央ようか、宙組スターとして活躍後に星組トップスターに就任した湖月わたると共演する。同公演はそのタイトル通り、1998年に宝塚歌劇団の新たな組として宙組が誕生してから25周年を迎えたことを記念し、創設時に中核を担った3名が揃うスペシャルなコンサートだ。そこで今回は、同公演を提案したという姿月に、宙組在籍時のことや退団後に受けたさまざまな影響について話を訊いた。
姿月あさと
「退団した日に「自分なりの役目は終えられたかな」とホッとしました」
――今回の『明日へのエナジー』は姿月さんが企画段階から携わっていらっしゃるそうですね。
1998年に宙組の初代トップスターとなり、宙組の道なき道を作ってから、25年が経ちます。『エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』(2021年)のとき、和央さん、湖月さんと「また一緒に舞台やりたいね」という話をしたことがキッカケで、企画を提案しました。世界中がコロナ禍で公演が延期、中止されていたなか、「「明日へのエナジー」という歌自体が活力になるのではないか」と思い、「それを伝えたい」というコンセプトを立てました。
――姿月さん、和央さん、湖月さんがそろって舞台をに立たれることは、たしかに多くの方の活力になりますね。
チラシを見るだけでも、その迫力がわかると思います(笑)。25年前のことは、今でこそ笑って「大変だったね、つらかったね」と話せるようになりました。やっぱり宙組という道なき道を作って歩んだ3人なので、一緒にお稽古していた思い出がすごく多いです。
――道なき道を歩んでいた当時は、どのような心境でしたか。
「誰かが一歩を踏み出さなければいけない」という感覚でした。1998年のお披露目公演では、文字通り全員で一歩を踏み出したのですが、怖さもありながら、挑戦しなければ何も始まらないという思いでした。
姿月あさと
――宙組の宝塚大劇場1作目『エクスカリバー-美しき騎士たち-』での感触は、いま振り返っても非常に特別なものがあるのではないですか。
歌詞も含めてまさに「新しい物語が始まる」という気持ちで、幕開けにふさわしい作品でした。ただ、関係者のみなさまや、相手役の花總さん、和央さん、湖月さんなどまわりの方がすごくしっかりしていらっしゃったので、そんなに気負いはしていませんでした。
――宙組の初代トップスターとしての重圧はいかがでしたか。
私がトップを務めることへの非難の声もたくさんあったので、重圧というより怖さを感じていましたが、認めて頂く為には結果を出してこそと考えていました。日々の舞台は同じ物語の繰り返しであるからこそ、本来は目に見えないようなところまで完成されたものをお届けしようと。​何かを多く語るより、とにかくお客様にそれを感じてもらおうという気持ちでした。退団した日に「自分なりのお役目は終えられたかな」と思ってホッとしたことを覚えています。
「同期の天海祐希が自分の励みになっていました」
姿月あさと
――姿月さんは1993年に花組から月組へ、そして1998年に月組から宙組へと組替えしていきましたよね。ファンのみなさんからよく「姿月あさとは組替えで覚醒していった」という声も聞きますが。
それは衣装の装飾品が増えていっただけでしょう(笑)。私は組替えがあっても何も変わっていなかったのです。それに自分で「私は何番手なので」とか口にしませんから。そういった見え方はまわりの方々がおっしゃってくださること。みなさまの見方が変化していっただけではないかなと。ただ、私が月組へ組替えしたときのトップが同期の天海(祐希)でしたから。「天海があれだけやっているのだから」と自分の励みにしているところはありました。すごく尊敬していました。月組新人公演のとき「こういうことを毎日やっているなんて、どれだけ大変なことか」と実感しました。
――2000年の退団後は音楽、CMなどさまざまな分野にチャレンジされましたね。特に近年はプロデュース的な立ち位置で制作などをおこなっていらっしゃいます。
経験として特に大きかったのが2002年に石井竜也米米CLUB)さんと組んだユニット、MOON STONESです。石井さんはコンサートのセット、衣装、作詞・作曲、演出などをご自身でプロデュースなさっていて、私はその姿に刺激を受けました。何より石井さんは、それまでと違う姿月あさとを引きだしてくださいました。
姿月あさと
――石井さんとのお仕事で、プロデュース的な立場の奥深さに気づいたわけですね。
そのあとも私自身、オーケストラと共演させていただいたり、コンサートなど様々なことを経験し、その一つひとつが身になっていきました。ほかの舞台も観させていただいて、その都度、自分なりに勉強していきました。舞台に立ったとき、どのようにライトが当たるのかなど客観的な目線を身につけることができたと思います。逆に宝塚歌劇団にいたときは、演出家の先生方がおっしゃることをいかに忠実に表現できるかがポイントでした。何歩歩いて、そこから何をするのかなど、細かい部分までこだわりぬかれていたので。両方の立場や演出の仕方を知れたことが大きかったです。
――姿月さんがここまでたどってこられた道のりが、今回の公演では感じられるのではないかと思います。
このコロナ禍、みなさんと同じように自分もつらかったし、しんどくもありました。ただそのなかであらためて、演じるということは一つひとつの丁寧な積み重ねだと気づきました。それを心がけることが、自分のモチベーションになっています。そんなメッセージやエールをみなさんに伝えられるような公演にしたいです。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=福家信哉

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着