原恵一監督(左)と辻村深月氏

原恵一監督(左)と辻村深月氏

「かがみの孤城」と藤子・F・不二雄
作品に共通する原恵一監督の演出に、
辻村深月「ものすごく感動!」

原恵一監督(左)と辻村深月氏 辻村深月氏のベストセラー小説を劇場アニメ化した「かがみの孤城」のティーチインイベントが1月27日、都内で行われ、原恵一監督(「河童のクゥと夏休み」「カラフル」)と辻村氏が出席した。
 本作は、学校で居場所をなくして部屋に閉じこもっていた中学生のこころが、見ず知らずの中学生6人と一緒に、迷い込んだ“鏡の中の城”で経験する出来事を描くファンタジーミステリー。
 鑑賞後の観客からたくさんの反響を受け取っているという原監督は、原作者の辻村氏が喜んでくれたことがなによりうれしかったという。辻村氏は「思った通りの、こころの感情と孤城の仲間たちがそこにいました。原監督にお願いできて本当によかった」と最敬礼。「原監督のアニメーションを観ながら育ってきた」と幼少の頃から原監督のファンだったそうで、「原さんと、大人同士として一緒にお仕事ができたことがとてもうれしい。原監督が妥協なく、試行錯誤しているお仕事ぶりを間近で見られてうれしかった」と感激しきりだった。
 会場からの質問にも答えたが、「登場人物たちのように、私も不登校だった。原作を読んだときに、とても救われた」という観客は「どうしてこんなにも、不登校の子の心情を明確に描けるんですか?」と問いかけた。辻村氏は「こころが見舞われたような出来事が、自分の身にあったわけではないんですが」と前置きし、「学校がものすごく楽しかったというタイプではない。学校がものすごく楽しくて、順風満帆という感じだったら、きっとこんなに学校を舞台にした小説を書いていないだろうなと思います。なにか大きな忘れ物をしてきたような気持ちがあるから、何度も青春小説や10代の子たちを書く小説に戻ってくるんだと思います」と明かした。
 本作には「学校に行きたくない」という子どもに寄り添う大人の姿も描かれているが、原監督は「そういう大人や友達が周りにいるだけで、救われる子がいる。別にヒーローにならなくていいんです。でもちょっとだけ寄り添ってあげることはできる。皆さんもできることをやってくれるとうれしい。僕らは映画でそういうことを伝えたり、辻村さんは本を通してメッセージを送っている。それを受け取ったら、誰かにお裾分けしてくれたらとてもうれしい」と真摯な面持ち。辻村氏は「『かがみの孤城』を自分の話として理解してくれる監督だからこそ、この映画ができたんだと改めて感じた」としみじみと語っていた。
 原監督は1984年にアニメ「ドラえもん」の演出としてデビューし、辻村氏も「映画ドラえもん のび太の月面探査記」で脚本を担当するなど、藤子・F・不二雄作品と縁が深い2人でもある。
 辻村氏は、こころが鏡の中に吸い込まれていく際の描写で「とてもグッときたところがある」という。「こころは最初、靴下の状態で鏡に吸い込まれていく。でも2回目からは、靴を用意してから(城に)行く。この描写、どこかで見たことがありませんか?」と会場に問いかけながら、「私は『ドラえもん』の脚本をやったからわかるんですが、これは『ドラえもん』でどこかの世界に冒険に行くときには必ずやるルーティンのひとつ。さすが原恵一、ぬかりない! とものすごく感動しました」と目を輝かせると、原監督は「『ドラえもん』のテレビのときなどは、靴問題をごまかしていたところもある。ドラえもんとのび太がタケコプターで窓から出入りするときに、シーンがわりで急に(のび太が)靴を履いたりもしている。『エスパー魔美』ではごまかさずにやろうと思った。(魔美が)家の中で靴を履いてから、テレポートをするようにした」と“靴問題”に関する裏話を明かし、辻村や会場を喜ばせていた。

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