斉藤由貴インタビュー~『X’mas li
ve 2022』が早くもオンエア

《嘘》をテーマにした前半とカバーにも挑戦した後半。いつもと違うライブの模様を楽しんでください

歌手・女優として活躍する斉藤由貴。CSホームドラマチャンネルでは、彼女の貴重映像を4ヵ月にわたりセレクション放送中だ。2023年2月には、2022年12月にビルボードライブ横浜で開催された『X’ mas live 2022』が早くもオンエアされる。当日のセットリストのこだわりをはじめ、恒例となったクリスマスライブへの思い、さらには同じく2023年2月に放送される名作短編映画『LOVE』や『漂流姫』の撮影エピソードについて、話しを聞いた。
ー- 斉藤由貴さんの『X’ mas live』も回数を重ね、いまや恒例のイベントとなりました。
昨年でなんと8回目を迎えました。ただ、“クリスマス”と銘打っている割にはクリスマスソングをそれほどたくさん歌っているわけではなくって(笑)。どちらかというと、年の瀬のクリスマスの時期に開催しているライブという感覚のほうが強いです。誰しもが「今年ももう終わるなぁ」という気分のときにライブ会場に集まり、一緒に音楽を楽しむ。そうした気分を味わってもらいたいというのがコンセプトとしてあります。
ー- そうしたなか、今回放送される『X’ mas live 2022』の選曲はどのように決めていかれたのでしょう?
いまの時代って、いろんな窮屈さを感じるようになったなと思うんです。たとえば、“こんなことを遵守しなきゃいけないの?”というような変な決まりがたくさん生まれ、生きづらい厭世観が蔓延している感じがして。そんなモヤモヤとした感情を抱いているときに、《嘘》をテーマにしたら面白いかも……と思ったのが始まりでした。代表曲のひとつである「AXIA〜かなしいことり〜」もそうですが、私が歌ってきた曲には恋愛における女の子の嘘をテーマにしたものが多くて。ですから、それらを選んで並べてみたら、いつもとちょっと違ったセットリストになるかもって思ったんです。
ー- なるほど。その一方で、ライブの後半には1991年のアルバム『LOVE』から「Yours」と「Julia」の2曲が選出されていますね。
これはたまたまなんですけどね(笑)。ライブ前半のテーマが《嘘》なので、後半はもう少し軽やかさがありつつ、ちょっと冷ややかな空気感も出せたらいいなと思ったんです。そうしたらこの2曲がしっくりときて。ただ、その結果、今度は全体の構成が妙に小洒落た雰囲気になってしまったので(笑)、“これは少し毛色の異なる曲も入れなきゃいけないぞ”と思い、カバー曲にも挑戦しました。
ー- そのカバー曲として選んだのが松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」とNOKKOさんの「人魚」です。これはどういった経緯で決めていかれたのでしょう?
「SWEET MEMORIES」にはちょっとした思い出があるんです。私が所属している東宝芸能は女優が在籍する事務所であって、音楽活動をするという感覚がもともと方針としてなかったんです。ただ、デビューしてほどなくして、いろんなところから「歌を歌いませんか?」というお話をいただき、なんとな〜く音楽活動を始めていくことになって(笑)。そうしたなか、私の声やイメージに合う曲の方向性を探るために当時のヒット曲をいくつか歌うことになり、そこに「SWEET MEMORIES」もあったんです。作詞が私のデビュー曲「卒業」を書いてくださった松本隆さんでもありますし、その縁もあって、今回選ばせていただきました。
「人魚」に関しては非常にシンプルな理由で、私がNOKKOさんの大ファンだからです。本当にものすっごくファンなんです(笑)。この「人魚」はNOKKOさんがソロになられてから筒美京平さんに書いていただいた曲ですが、きっと女性アーティストの誰もがいつかカバーをしてみたいと思っていたはずで、私もその1人でした。また、NOKKOさんは私にとってずっと憧れであり、眩しい存在だったのですが、少し前から思いがけずお友達になることができて。そうしたタイミングもあり、“歌うならいまだ!”と、カバーさせてもらいました。
ー- 3年前の2020年にはアーティストデビューから35周年を迎え、いまなお、こうして音楽の分野で活躍されていますが、デビュー当初から比べて、ご自身の中で音楽に対する変化にはどのようなものがあると感じていますか?
率直に思うのは、デビューから何十年も経ったいま、私の人生の中でこれほど音楽の割合が多くのキャパを占めるとは想像もしていなかったということです。私は女優としてこの世界に入ってきたわけですし、当時から漠然と、お仕事をいただける限り、一生女優を続けていくんだろうなと思っていたんです。だからこそ、アイドル歌手としてデビューをし、音楽活動をしていた自分に対して、当時は違和感しかなかったんです。アイドル歌手として求められる表現や受け答え、佇まいなどに自分が馴染んだということが一度もなくって。それがやがて、時間が経つにつれて少しずつ音楽から離れていったわけですが、“そういえば、歌手をしていた時期もありました”と思えるぐらいになったタイミングで、思いがけず「また歌ってみませんか」と声をかけていただいたんです。正直に言うと、“いまさら?”という思いも多少はありました。でも、そこから気づいたら、また歌を歌っていく時間が増えていったんです。これは本当に自分の中で想定外のことで、いまでも不思議な気持ちです。
ー- ホームドラマチャンネルでは『X’ mas live 2022』のほか、アルバム『LOVE』をテーマにした短編映画(1991年)や、1986年に作られた『漂流姫』も合わせて放送されます。当時の撮影で印象に残っていることはありますか?
たしかに撮ってましたね。懐かしい〜(笑)。『漂流姫』は故 市川準監督に撮っていただいたんです。当時はまだ映画監督になる前でCMやPVの世界で活躍されていたんです。ですから、発想も豊かで。すごく覚えているのが、最初の打ち合わせで、「今回、由貴ちゃんは何もしゃべらなくていいから」って言われたんです。「ただひたすら香港の街を逃げ回って、ときどき姿を見せては、また消えていくだけ。最後の最後に『はい』って言うだけでいいから」って。面白いことを考える人だなぁって思いました(笑)。その頃の私は倒れるぐらい忙しかったこともあって、何もしゃべらなくていいというのは本当に嬉しかったです(笑)。それと、もうひとつ印象に残っているのが、私のことをまじまじと見て、「由貴ちゃん、撮影までにもうちょっと痩せてきて」と言われたんです。“え〜、そんなことはっきり言う?”と思って(笑)。でも、言われたとおりにランニングをしたり、食事制限をしてかなり体を絞っていったんですが、撮影当日に私を見て、「あんまり変わらないね」って。あのときはホントに悲しかったです(笑)。
ー- 初めて映像をご覧になる方は、そのあたりも注目しそうですね(笑)。では最後に、あらためて『X’ mas live 2022』の見どころをお聞かせください。
今回のクリスマスライブの大きな挑戦のひとつに、バンド編成をガラリと変えたというのがあります。いままではお友達のようなサポートメンバーでお送りしていたのですが、あえて少し雰囲気を変えてみようと思い、新たなピアニストやいつもはいないドラムを入れてみたり、フルートやアルトサックスといった管楽器にも参加していただきました。そのことでアレンジや楽曲の印象にも変化が生まれましたし、いつもご覧になってくださる方にとっても、新鮮さを感じていただけるのではないかと思います。また、これは個人的な好みで恐縮ですが、大好きな楽曲のカバーにも挑戦してみましたので、ぜひそこにも注目していただきたいです。

取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:冨永朋子(アルール)
スタイリスト:石田純子(オフィス・ドゥーエ)
衣装クレジット:
ワンピース/メムロード(ストックマン)☎︎03-3796-6851
靴/アンテプリマ(モーダ・クレア)☎︎03-3875-7050

【斉藤由貴プロフィール】
Yuki Saito/1966年 9月10日、神奈川県出身。女優・歌手。1985年、『卒業』で歌手デビュー。同年、ドラマ『スケバン刑事』や映画『雪の断章 -情熱-』で初主演を務め、各映画賞で新人賞を受賞。翌年、連続テレビ小説『はね駒』でヒロインを演じ、人気を不動のものに。2月21日に2011年のオリジナルアルバム「何もかも変わるとしても」を再リリース。また、今春より『連続ドラマW フィクサー Season1』がWOWOWにて放送開始。

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着