迫力の恐竜絵画が観られる特別展『恐
竜図鑑―失われた世界の想像/創造』
3月に兵庫で開幕、各章の見どころを
紹介

3月4日(土)〜5月14日(日)の期間、兵庫県立美術館にて特別展『恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造』が開催される。
人類誕生の遥か昔、約2億5000万年前~6600万年前の中生代の地球を支配していた恐竜たち。その姿に人間は魅了され、恐竜が発見された19世紀前半以来、彼らの姿を再現しようという人間の試みは、現在に至るまで絶え間なく続けられてきた。今日では、国内外の自然史系博物館に化石標本や復元モデルがメインで陳列され、エンターテイメントとしても世代を超えて多くの人々に愛されている。恐竜たちは昔から現在の姿で知られていたわけではなく、この200年の間に多様な姿で想像され、様々な表現方法で創造されてきた。
同展は、これまで美術館で取り上げられる機会があまりなかった恐竜に着目し、過去200年に描かれたパレオアート(=古生物美術)の名作や珍品を展示する。「第1章 恐竜誕生ー黎明期の奇妙な怪物たち」、「第2章 古典的恐竜像の確立と大衆化」、「第3章 日本の恐竜受容史」、「第4章 科学的知見によるイメージの再構築」という4つの章で構成する。今回は同展の見どころを紹介する。
見どころ1:君たちは誰?初期の奇妙な復元画
展覧会の冒頭は、19世紀の恐竜発見から間もない時期に描かれた、パレオアート黎明期の作品群が飾る。
ロバート・ファレン「ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)」 1850年頃 油彩・カンヴァス 190x268cm セジウィック地球科学博物館、ケンブリッジ (c) 2022. Sedgwick Museum of Earth Sciences, University of Cambridge. Reproduced with permission.
地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチの原画による「ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)」は、英国の女性化石採集者メアリー・アニングの功績を讃えるために制作された版画だ。古生物の生態を復元した史上初の絵画のひとつと言われ、魚竜イクチオサウルスが首長竜プレシオサウルスを捕食する様子が描かれている。同展では、デ・ラ・ビーチの原画に基づくジョージ・シャーフの版画に加え、これを拡大したロバート・ファレンの油彩画を出品する。
ジョン・マーティン 「イグアノドンの国」 1837年 水彩・紙 30.2x42.6cm ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ、ウェリントン Gift of Mrs Mantell-Harding, 1961. Te Papa (1992-0035-1784)
他には、聖書や神話を題材とした作品で人気を博した有名画家ジョン・マーティン作の「イグアノドンの国」も展示される。マーティンが描いた太古の世界は、風景もロマンティックに描き出され、多くの人々に古代への関心をもたらした。19世紀の復元画は現代の我々から見るといささか奇妙に映るものの、歴史的な価値とともに、その奇妙さもまた魅力だ。豊かな想像力で太古の世界を描き出した、初期のアーティストたちの作品の数々を観ることができる。
見どころ2:ナイトvsブリアン! パレオアートの2大巨匠が夢の競演
19世紀末から20世紀前半にアメリカで活躍したパレオアートの最大の巨匠であるチャールズ・R・ナイトと、20世紀中盤から後半にかけてチェコスロバキア(現チェコ共和国)で活動したズデニェク・ブリアンの、2大巨匠の作品をメインに展示。
チャールズ・R・ナイト「 白亜紀 モンタナ」 1928年 油彩・カンヴァス 38.1x96.5cm プリンストン大学美術館 (c) Trustees of Princeton University / image courtesy of the Princeton University Art Museum
もともと野生動物画家だったナイトは、生物学的知見に基づいて恐竜を生き生きとした姿で描き出した。彼の作品はアメリカ自然史博物館やフィールド博物館で使用されたほか、映画『ロスト・ワールド』(1925年)や『キング・コング』(1933年)などにも影響を与えた。
チャールズ・R・ナイト 「ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)」 1897年 グアッシュ・紙 40x58cm アメリカ自然史博物館、ニューヨーク Image #100205624, American Museum of Natural History Library.
ティラノサウルスとトリケラトプスの対決を描いた「白亜紀─モンタナ」や、躍動感あふれる「ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)」は、恐竜画の記念碑的な立ち位置となっている。
ニーヴ・パーカー 「ヒプシロフォドン」 1950年代 グアッシュ、インク・紙 52.7x37cm ロンドン自然史博物館 (c) The Trustees of the Natural History Museum, London
また、ズデニェク・ブリアンが活動した東欧圏は、化石発掘の中心地だったアメリカから遠く離れており、直接化石を研究できる機会が限られていた。そんな環境でも、ヨーロッパ美術のリアリズムの伝統を踏まえた彼の作品は強い説得力を持つものとして、国際的に高く評価された。
さらに同章では、イギリスで活躍したイラストレーター、ニーヴ・パーカーの恐竜画も展示。彼らの作品は日本の図鑑などにも模写され、恐竜イメージの普及に大きな影響を与えた。かつての少年少女が夢中で読んだ恐竜図鑑に描かれたオリジナル画が、一堂に会する。大人も童心に戻れること間違いなしの章だ。
見どころ3:書籍、玩具からアートまで、日本に溢れた恐竜たち
国内有数の恐竜アイテムの収集家である田村博のコレクションをもとに、明治から昭和にかけて日本文化史に登場する様々な恐竜を紹介。
福沢一郎 「爬虫類はびこる」 1974年 アクリル・カンヴァス 181.8 × 227.3cm 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
19世紀に欧米で成立した恐竜のイメージが日本に入ってきてからは、恐竜を主題にした出版物がジャンルや対象年代問わず、幅広く刊行された。これと並行して、今日の恐竜人気を支える中心的アイテムのひとつとなった、恐竜の姿を模した玩具模型が多数制作されたのだった。
立石紘一 「アラモのスフィンクス」 1966年 油彩・カンヴァス 130.3x162cm 東京都現代美術館
さらに、恐竜がテーマの漫画を多く手掛けた、所十三の代表作「DINO²(ディノ・ディノ)」の貴重な原画も展示。美術における恐竜のシンボリズムについても、福沢一郎や立石紘一の作例を用いて紹介する。
見どころ4:現代の恐竜画の旗手たちが集結
1960年代から70年代にかけては、恐竜のイメージに「恐竜ルネッサンス」とも呼ばれる大きな変革がもたらされた。恐竜像が「鈍重な生き物」から「活発に動く恒温動物」へと変化したことで恐竜画もさらなる進化を遂げ、新しい表現のアーティストが次々と登場した。
ダグラス・ヘンダーソン 「ティラノサウルス」 1992年 パステル・紙 36.8 × 68.6 ㎝ インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション) Courtesy of the Children’s Museum of Indianapolis (c) Douglas Henderson
展覧会の最後を飾る「第4章 科学的知見によるイメージの再構築」では、インディアナポリス子供博物館や、福井県立恐竜博物館のコレクションから、ウィリアム・スタウト、ダグラス・ヘンダーソン、グレゴリー・ポールなど、現代の恐竜画の旗手たちによる、バラエティ豊かな作品群が集結する。また、現代日本を代表するパレオアーティスト・小田隆の迫力ある作品も特集。CGを用いずに圧倒的な迫真性を生み出す肉筆画は必見だ。
小田隆 「篠山層群産動植物の生態環境復元画」 2014年 アクリル・カンヴァス 115x160cm 丹波市立丹波竜化石工房 (c) 小田隆/丹波市
会期中には有識者によるトークショーや、学芸員による解説会も行われる。詳細はHPをチェックしてほしい。
前売チケットは、現在イープラスほかプレイガイドで発売中。特別展『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』は、2023年3月4日(土)〜5月14日(日)に兵庫県立美術館にて開催後、上野の森美術館に巡回する。

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