1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by 折田琢矢

1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢

PENICILLIN、
30th anniversary TOUR最終公演の
レポートが到着

 楽園たる空間はそこに確かに存在していた。2022年に30周年を迎えたPENICILLINが、フルアルバムとしては実に8年ぶりの作品となる『パライゾ』を発表し、そのうえでこれまた3年ぶりに臨んだ全国ツアー[30th anniversary WINTER TOUR「パライゾマスター」]は、本来であれば昨年12月16日にSpotify O-EASTにてファイナルを迎えるはずであり、しかもその当日はフロントマン・HAKUEIのバースデーライヴとしての意味合いを持っていたものの、なんと不遇にもこれはHAKUEI本人の体調不良によってキャンセルとなってしまうことに…。とはいえ、これまで30年もの間シーンの中で生き抜き続けてきたPENICILLINはすぐに臨機応変な対応をとることで、2023年1月13日にその機会を持ち越すことを決めたのだった。かくして、このたび東京キネマ倶楽部に場を移して開催されたツアーファイナル+HAKUEIのバースデーライヴは、そのままPENICILLINの描きだすパライゾ=楽園世界の復活を意味していたとも言えよう。

「こんばんは、PENICILLINです。会場に来てくださったみなさん、配信でご覧になっているみなさん、あけましておめでとうございます。昨年の12月16日はわたしの誕生日であり、今回のツアーファイナルが行われるはずだったんですが、その節はコロナ感染ということでお越しになるみなさんの予定を潰してしまうことになってしまいました。もちろん、自分としてもなりたくてなったわけではないですし、本当に悔しかったです。体調不良でライヴをトバすなんてこの30年あんまりなかったんですけど、今思うとあれは大学を卒業してすぐくらいの頃に麻疹になって、42度くらい熱が出て入院してSIAM SHADEとの対バンをトバした時以来ですね。あの時はSIAM SHADEのメンバーも協力してくれて、サイコロトークみたいなのをみんなでやってくれたらしいんですけど、今回に関してはさすがにそういうわけにもいかなかったんで(苦笑)、大変申し訳なかったんですが延期をさせていただきました。ほんっっとすみませんでした!でも、今日こうしてみなさんと会えうことが出来て凄く嬉しいです。ありがとうございます!!」(HAKUEI)

 アルバム『パライゾ』でも冒頭を飾っていたアグレッシヴチューン「憂鬱と理想」で幕を開け、そこから「パライゾ -30th ver.-」というかたちに転生したアルバム表題曲や、少し懐かしい「Rosetta」が場内へと投下されたのち、今宵の初MCにてHAKUEIがこう述べた時にみせた彼の笑顔と、その様子を見守る千聖とO-JIROのやわらかな表情から得も言われぬ安堵感がうかがえたのは何も筆者だけではあるまい。

「気持ち的には、やっと今日ここで誕生日を迎えられた気がしてます。52歳になりました。(中略)まぁ、コロナにやられっぱなしというのはちょっと悔しいですし、この経験から何かを得たいなと思って実はタバコをヤメたんですよ。今まで以上に1本ずつのライヴを大切にしなければ、という気持ちも今回のことで思い知りましたしね。本日も思い切り楽しんでいきましょう!!」(HAKUEI)

 転んでもただでは起きない、良い意味でのしぶとさや逞しさ。それはこの場でのパフォーマンス全編から存分に感じられたところで、HAKUEIの歌の魅力が特に際立っていた「border line」や、爛熟しすぎのSNS文化がもたらす功罪をPENICILLIN流にシニカルな視点で描いた「Social Networking Suicide」をはじめとして、アルバム『パライゾ』の各収録曲を軸としながら、この30年の間に生まれてきた「バラ」や「サファイヤアンドロイドの夢~JULIET II~」なども随所に織り込まれたセトリは、確かなキャリアを持つロックバンド・PENICILLINの強い個性をいかんなく打ち出していたように思う。

 また、今回のライヴではアルバム『パライゾ』のリリースから程なく発表された3曲入りパンフレットCD『カタストロフィ』から、いちはやく新曲「Why」が披露される場面もあったのだが、この『カタストロフィ』は『パライゾ』との相関関係を持つものでもあるため、PENICILLINの創りだす楽園世界のより深い部分にもこのライヴを通して触れることが出来たのではなかろうか。

 本編ラストを〈止まらない 止められない ここからは君次第さ〉という歌詞が印象的な「Time Machine」で締めくくったあとには、アンコールにおいてHAKUEIの誕生日を約1カ月遅れで祝う豪華なバースデーケーキがメンバーから贈呈される微笑ましい場面もありつつ、PENICILLINの歴史を語るうえでは外すことの出来ないヒットチューン「ロマンス」までが聴けたこのライヴは、結果的にライヴ空間というものこそがPENICILLINと彼らを愛する人々にとってのかけがえのない楽園なのだ、ということを実感させてくれたものだったと確信する。

 ちなみに、来たる2月1日にはPENICILLIN 30th Anniversary BEST『30 -thirty- Universe』が発表となるほか、2月11日と12日はPENICILLIN自体の生誕を祝うライヴであると同時にバレンタインの要素も盛り込むという贅沢な企画ライヴ[PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2023]を新宿ReNYにて開催し、さらには2月18日から4月16日の新宿BLAZE公演まで続く全15本の全国ツアー(タイトル未定)も敢行するというPENICILLIN。30年という月日に培われた底力、そしてコロナ禍を超えてますますの胆力を得た彼らが、ここからより魅力的な楽園世界を創世していってくれるのは間違いなさそうだ。

photo by 折田琢矢
text by 杉江由紀

【セットリスト】
1. 憂鬱と理想
2. パライゾ
3. Rosetta
4. サファイアアンドロイドの夢
5. LIVING DOLL
6. Screaming Dead
7. バラ
8. border line
9. CRASH
10. Social Networking Suicide
11. J. I. S
12. WHY? (新曲)
13. heart beat
14. 快感∞フィクション
15. Time Machine
<ENCORE2>
1. 想創シンドローム
2. Samurai Boy
3. ロマンス
<ENCORE2>
1. For Beautiful Mad Human Life

【ライブ情報】

『PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2023』
2月11日(土) 新宿ReNY
開場17:30/開演18:00
2月12日(日) 新宿ReNY
開場16:30/開演17:00
<チケット>
オールスタンディング:9,000円(税込/D別) ※未就学児入場不可

『PENICILLIN 30th Anniversary Tour 「30 -thirty- Universe 」』
2月18日(土) 西川口Hearts
開場17:00/開演17:30
2月19日(日) 柏PALOOZA
開場17:00/開演17:30
2月23日(木祝) 京都MUSE
開場17:00/開演17:30
2月25日(土) 福岡DRUM Be-1
開場17:00/開演17:30
2月26日(日) 福岡DRUM Be-1
開場16:00/開演16:30
3月05日(日) 仙台MACANA
開場17:00/開演17:30
3月11日(土) 浜松窓枠
開場17:00/開演17:30
3月12日(日) 名古屋BOTTOM LINE
開場17:00/開演17:30
3月18日(土) 札幌cube garden
開場17:00/開演17:30
3月19日(日) 札幌cube garden
開場16:00/開演16:30
3月25日(土) 大阪umeda TRAD
開場17:00/開演17:30
3月26日(日) 神戸VARIT.
開場17:00/開演17:30
4月08日(土) 岡山YEBISU YA PRO
開場17:00/開演17:30
4月09日(日) 広島Live space Reed
開場17:00/開演17:30
4月16日(日) 新宿BLAZE
開場17:15/開演18:00
<チケット>
オールスタンディング:8,500円(税込/D別) ※未就学児入場不可
※福岡・札幌 各2DAYS通し券[FC先行のみ・整番は2日間共通]:15,000円(税込/D別)

1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
1月13日@東京キネマ倶楽部 photo by  折田琢矢
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OKMusic編集部

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