栗田貫一&戸田恵子、アニメ『ルパン
三世VSキャッツ・アイ』二人が語る必
然のコラボレーション

昭和から時を超え、令和に夢のコラボレーションが実現したアニメ『ルパン三世VSキャッツ・アイ』。だが『ルパン三世』と『キャッツ・アイ』、どちらも泥棒と怪盗という題材は交わるべきものだったのだろうと、今回の作品が発表され改めて思う。今回はそんな歴史的作品の魅力を探るべく、ルパン三世役の栗田貫一、キャッツアイ、来生瞳役を演じる戸田恵子にインタビュー。お二人が語るルパン一味とキャッツアイ3人の出会いとはどんなものだったのだろうか。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会

――『ルパン三世』と『キャッツ・アイ』のコラボレーションが実現したわけですが、まずはこの組み合わせが実現する、と聞いたときの感想からお聞きしたいです。
栗田:僕的にはいつか来るだろうなとは思っていたんです。絵面的に(峰)不二子ちゃんとキャッツアイが並んでも遜色がないというか。ちょっと前に 『シティーハンター』と『キャッツ・アイ』が共演(2019年の『劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉』でキャッツアイが登場)していて。ああいう時代背景というか、あの人間ぽい画って不二子ちゃんとは合うなと思っていました。
――ルパン一味がキャッツアイの3人と絡むシーンで印象的なところはありますか?
栗田:実は戸田さんが演じる瞳さんとはちょっとしか絡むところはなくて、ほとんど(来生)愛ちゃんとの絡みなんですけど、何とも言えないルパンの父性愛というか、自分の娘を見守るような、妹を想うようなそんなルパンが垣間見れたのかな?というちょっと不思議な感じはありました。
――戸田さんはこの組み合わせが実現する、と聞いたときいかがでしたか?
戸田:私はもうビックリが大きくて。「長く生きているといろんなことがあるんだなぁ」と思いましたね。ルパンと一緒にお仕事できるっていうのは夢にも見てないくらいですから。
――2019年の『劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉』もありましたが、またキャッツアイを演じるというのはいかがでしたか?
戸田:そうですね、『劇場版シティーハンター』で心の準備はもう出来ていたのですが、あの時も三十何年ぶりにやるということで本当にひっくり返ったので。「そんなこと大丈夫ですか?」って。今回は憧れのルパンと一緒に、同業者じゃないけど、ルパンとキャッツアイって世代って同じくらいなのかな、どうなのかな、と思いつつ完成した作品を見たら、安心感のある出来上がりになっていました。驚きはあったのですが、なによりイベントとして楽しんでやれたらいいなと思いました。
撮影:荒川潤
――戸田さんとしてルパン一味との絡みで印象的なシーンはありましたか?
戸田:さっき栗田さんが仰ったように、今回は愛ちゃんとルパンの物語が軸になっていて、瞳と泪はサポートする感じなんです。でも、同じ画角にルパンがいて私たちキャッツアイがいるっていうのは、なんかちょっと……キュンとしますよね。あと峰不二子さんと、私達三人が一緒に並んでいるシーンがちょっとだけあるんですけど、私達より更にお姉さんみたいな感じで、すごく面白いなと思いました。
――当時、お互いの作品は見てらっしゃいましたか?
栗田:申し訳ないのですが、あまり真剣に見たことはなかったです。極端な話、『アンパンマン』の方が見てたかな(笑)。
――『アンパンマン』も戸田さんの代表作ですからね。では今回はコラボレーションするということで改めて確認したり、ということはされたのでしょうか?
栗田:当時テレビ放送されていたのは何回か見たことはあるんです。だから改めて見ることはなかったですね。ただ『水戸黄門』とかじゃないですけど、作品によってだいたいパターンがあるじゃないですか。そういう意味で、この三姉妹の盗みに対する姿勢だったり、どういう風にお宝を盗んでいくのか、ということは探しましたけどね。当時はまだルパンをやってなくて、そういう目で見てはなかったので。
撮影:荒川潤
――作品の世界観であったり、魅力であったりを確認したと。
栗田:まあ絶対絵はなじむと思ったんです。今回のようにCGじゃなくてもたぶん共通性のある作品になるだろうとは思っていました。
――なるほど。では戸田さんはルパンの印象はどのようなものでしたでしょうか?
戸田:私はもちろん前から存じ上げていました。それに一度、栗田さんがルパンを始められてすぐの頃に出させていただいて。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――1999年放送の『ルパン三世 愛のダ・カーポ~FUJIKO'S Unlucky Days~』で栗田さんと共演されていて、その前にも1991年放送の『ルパン三世ナポレオンの辞書を奪え』に出演されています。
戸田:そうなんですよね。
栗田:僕はその頃もう、右も左も前も後ろも全くわからない、スタジオに立たされただけな感じで……ごめんなさい、本当に。戸田さんにご挨拶をした記憶もないくらいで……。
戸田:ちゃんと挨拶はしていただきました(笑)。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――戸田さんは栗田さんとの出会いを覚えてらっしゃる(笑)。
戸田:やっぱり『ルパン三世』というビッグな作品に出るってことはすごく嬉しいことなんです。そんな長く続いている作品に呼ばれるっていうことはちょっとワクワク感があるんですよね。だからワクワクしながら出かけて行って。内容のことはもう私も覚えてないんですけど(笑)。 栗田さんが始められて間もない頃でしたけど、他のメンバーは、旧メンバーが揃ってましたからね。
栗田:旧レジェンド(声優)が。
戸田:そうそう(笑)。だから、そういう現場に行けた、っていうことはすごく思い出に残っています。あの頃は全員で録ってましたし。今はコロナ過で一人ずつしか録らないから誰とも会えませんけど、当時はみんながひとつのスタジオで録っていたので、最高の思い出として残っています。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――思い出の残る共演だったと。では、そんな戸田さんから見る『ルパン三世』という作品の魅力ってどういうところだと思いますか?
戸田:今回、改めて思ったんですけど、ルパンそのものにもすごく色気があるんですよね。キャッツアイの私達三人はお色気風的なことよく言われますけど、色気があるのは一番上の泪姉さんだけで、私(瞳)と愛ちゃんはたいしてない……昔風に言うとおきゃん(活発な女性を指す言葉)なんですよね。それに他のキャラクター、作品としても大人だと改めて思いました。
――確かに今回は特にルパン、そしてルパン一味は大人の魅力がありますよね。
戸田:本当にかっこいいなと思って。なんで愛ちゃんじゃなくて、私が一緒に行かなかったのかしら?くらいの思いはちょっとあります(笑)。ルパンと一緒に過ごせてうらやましいなって。
――今回の作品の舞台設定、時代は両作品が交わるということで1980年代くらいかなと思ったのですが、当時の演技を意識されるというか、若々しく演じよう、というのはあったのでしょうか?
栗田:特に若々しくした覚えはないかな。
戸田:私もそういうのはなかったですね。もうそれをすると多分みんなに咎められるので(笑)。とにかく無理のない程度にいこうかなと思っていました。愛ちゃん(坂本千夏)はプライベートで話した時、かなり苦しんでやりましたって言ってましたけど。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――『劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉』ではキャッツアイの三人は、海坊主の喫茶店のオーナーという立場での出演だったので、多少年齢的に落ち着いている印象があったのですが、今回はテレビ放送当時の感じというか、「そうそう!僕らの大好きなキャッツアイ、瞳さんです!」っていう。
戸田:それは絵と設定のお陰かも(笑)。出来上がった絵に合わせてこっちも演じさせていただいているからかもしれないですね。そういうことはあまり意識せずにやろうっていうことでやっていました。
――アフレコの時はある程度絵は出来上がってたのですか?
栗田:あんまりなかったような気がするけど……でもあまり絵がありすぎるとちょっと合わせるの大変だなと(笑)。緊張感が増すっていうか。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――なるほど。今回は全編3DCGで作られていましたが、すごくルパンとキャッツアイが自然な感じにアップデートされているなと感じました。もうお二方は見られましたか?
栗田:勿論見ました。
――いかがでした?
栗田:キャッツアイの三姉妹たちとルパンファミリーが、こんなにマッチ出来るんだなって。いやもうこれはすごいことだなって自然に観れちゃいました。本当はもっと泥棒対決的な内容が多いのかと思ってたんです。不二子が三姉妹と対決する、で、ルパンたちはそれを遠目に見ながら不二子を助ける……とかそういう想像をしてたんですけど。おっと違う、こっちかあ!みたいな。だいたいウチの不二子(沢城みゆき)さんは、どんな不二子でもできてしまうので。で、また(次元大介役の)大塚明夫っていうのがね、もう本当に小林(清志)さんのことをリスペクトしてくれて、小林さんにしか聞こえないようなセリフ回しが多くて、やっぱりすごいよなぁって。まあ山ちゃん(銭形警部約の山寺宏一)が凄くないとかじゃないですよ(笑)。山ちゃんもすごいのよ。浪川(大輔)はまあどうでも……ちょっと置いといて(笑)。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――そんな(笑)。
栗田:でもほんとに、すごいレジェンドたちがルパンを作ってくれてるんだなあって。僕、ルパンを演じて28年目なんですけど、よく「大リーグのマウンドに大谷の代わりに急に投げさせられた」って言ってるんですよ。マウンドからキャッチャーまで届かないのになんで俺出るのよここに? みたいな。で、今は周りがまた声優界の超レジェンドたちがいるじゃないですか。久々に俺でいいのかな?ってまた思い始めてますよ。
――戸田さんもレジェンド声優ですしね。
栗田:そうなんだよ。
戸田:いやいや、私なんて全然レジェンドじゃない。
栗田:『名探偵コナン』とのコラボもあったんですけど、あの時はルパンたちが子供相手に降りて行った、みたいなイメージがあったんですけど、今回の『キャッツ・アイ』とのコラボは、みんな大人ですし、ライバルでもあり……なんだろう、対等な感じがしましたね。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――確かに。個人的にキャッツアイのほうで一番印象的だったのは、喫茶店でのやりとりでした。あれがすごく嬉しくて。やはりああいう日常的なやりとりはスッとはいってくるもんなんですか?
戸田:個人的にも喫茶店のシーンはレギュラーでやってる時から大好きなシーンなんです。ホッとするというか。今回も何の違和感もなく安心して見られたというか。あとやっぱりルパンのチームは大人だっていうことを改めて意識しました。だから不二子さんが出てきた時にの私達3人との絡みは、やっぱり不二子さんの方がお姉さんだなと言う感じがすごくしました。うちの泪姉さんよりお姉さんだなっていう。歳の事じゃなくて雰囲気としてね。不二子さんも、ルパンも先ほども言いましたけど、色気がありますよね。だからみんな憧れるんでしょうね。
――確かにルパン三世の長編作品は特に色気があるというか。そして壮大な物語とか世界観が多いイメージがあるのですが、今回の作品もやっぱり見ていくと世界観が壮大で、更にキャッツアイのハインツ・コレクションの設定ってこのために作られたんじゃないか?くらいのハマり方でしたね。
戸田:そうですよね。ネタバレになるのであまり言えないですけど、最後のルパンの愛ちゃんに対するお父さんのようなお兄さんのような、ハートウォーミングな感じがググっときました。
撮影:荒川潤
――話を戻しまして、今回はアクションも激しいので、演じる側も大変だったのでは?
栗田:今回は何遍死にかけてんだっていう(笑)。
戸田:かなり血がブワってでてましたよね。
栗田:あんだけ撃たれたら死ぬだろって(笑)。最後はね、次元と五ェ門も、そしてルパンのクッタクタになった三人が「やんのか、俺たちこっからが強えぇんだぜ」って言って脅かすっていう。そこに台詞はないんだけど「三人が集まったらすごいんだぞ」「どんなに弱っててもお前なんか目じゃないんだぞ」みたいな三人が集まるとあるなって。あと音楽が、いつの間にかルパンから『キャッツ・アイ』に変わっている。
戸田:すごい自然でしたね。
栗田:あれキー合ってたのかな? って考えちゃうくらい自然に入れ替わっていて。僕いつも思うんですけど、アニメーションは絵と音と声優さんたちの声の三つ巴が出来て初めて完成するんだなって。これは歌手の世界もそうでしょうけど、作詞家と作曲家と歌手の三つ巴が成立しないとヒットしないんですよね。その時代の売れた一曲っていうのは必ず三つ巴ががっちりあいまった時にヒットしてるらしいです。だから今回もキャッツとルパンっていうのが組んだ上で音楽と絵が三つ巴になったんじゃないかなとは思います。
撮影:荒川潤
――ネタばれになりますが、トシ(内海俊夫)と銭形警部のコラボというか、絡みがあるのも嬉しかったです。
戸田:面白かったですよね、また「熱海」って何度も間違って言われていて、面白かったです。そういう小さなところも全部残してくださっていて、瞳とトシのささやかな掛け合いみたいなものもちゃんと小さく残してあってそれがすごく嬉しかったです。「相変わらずトシはキャッツアイがわかんないんだな」みたいなこととか(笑)。そういうことがちゃんとちりばめられていたのがすごく嬉しかったですし、楽しかったです。
――では最後に本作の見所と、お好きなシーンは?
栗田:見どころはルパンとキャッツアイの3人、そこに不二子も入ってきて、さらにそこに次元たちが合流してという、そのありえないけどありえちゃったなっていう絵面ですかね。あとルパンが愛に対してずっと抱いている気持ち、ルパン三世として今回はあんまり盗んでないんですけど、盗まれていた過去を盗み返してあげた、みたいなところが見所かなと思います。
(c)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世 VS キャッツ・アイ製作委員会
――やはり愛とのシーンが印象的ですか?
栗田:そうですね。僕は(坂本)千夏さんと一緒に収録させてもらったのですが、コロナ以降、今は個々に別録りの時代なのですが、あえて一緒にやらせていただいた意味はそこに実はあって。一緒じゃないと伝わらない何かがあるんだなっていう。
戸田:見どころはやっぱりルパンと愛ちゃんとの絡みだと思います。そして、さっきも言いましたけど、ところどころにそれぞれの作品の要素がちゃんと散りばめられているので、個々のファンのみなさんも喜んでいただけると思います。
撮影:荒川潤
――では最後にもう一つ。今回のコラボレーションは両作品をテレビ放送から観ていた人たちはもちろん嬉しいのですが、テレビ放送を観ていなかった若い人たちにはどんなところを楽しんでもらいたいと思われていますか?
栗田:CGで描かれた作品ということで若い人も入りやすいと思うんですよね。ルパン達、キャッツ達の活劇というのは新鮮に見てもらえると思います。この作品を通して、それぞれの作品も見直して、時代も感じてもらえると嬉しいですね。
戸田:そうですね。『ルパン三世』も『キャッツ・アイ』もハイセンスというかすごくオシャレな作品だと思うんですよね。そんな二つの作品が組み合わさることで、よりオシャレな作品、大人な作品を楽しんでいただきたいです。
取材・文:林信行 撮影:荒川潤

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