【鈴木みのり インタビュー】
5周年を迎えるタイミングで
歌手になる前からの
夢が全部叶えられた
「夏のばね」をいただいた時は、
すごく驚いたと同時に運命を感じた
ラストに収録した尾崎雄貴(Galileo Galilei、BBHF)さんが作詞作曲と編曲を手がけた「夏のばね」も思い入れの深い一曲だそうですね。
はい。私の人生の中で三大大事な人が、坂本真綾さん、やなぎなぎさん、尾崎雄貴さんなんですね。真綾さんとなぎさんは楽曲を提供していただいたり、ご一緒させていただく機会があったんですが、尾崎さんは自分からつなごうとしないと縁がないと思っていて。でも、今まではオファーさせていただく勇気がなく、“今じゃない”と思いながら年月が経っていったのですが、今なら自分に自信もついたし、5周年というタイミングでもあるので、今しかないと。それに5周年のスタートを切るアルバムの最後を尾崎さんの曲で飾れたなら、私の歌手人生、声優人生はもっといいものになるんじゃないかと思って、思いきってお声がけをさせていただきました。尾崎さんの曲のどんなところが好きか、なぜ今回オファーしたかなど、ラブレターのような長文を書いて、それをそのままスタッフさんにメールしていただいたのですが、それを読んだ尾崎さんチームの方々がとても喜んでくださり、曲を書いていただけることになりました。
とてもチル感のあるやさしい曲なのですが、どうして夏だったんですか?
尾崎さんによると“夏のばね”というタイトルではあるけど、決して季節感を意味しているのではなくて、一年を通して跳ね続けている私をイメージして書いてくださったそうです。私の心の中で巡っている季節が夏なんじゃないかと。
なるほど!
実は私自身、夏ということにすごくシンパシーを感じたんです。と言うのも、尾崎さんの作品で一番印象に残っているのがGalileo Galileiの「Mrs. Summer」などを収録したミニアルバム『See More Glass』で、それは夏をテーマにした作品だったんです。声優としてデビューする前に1年間だけ東京の声優養成所と地元を行き来した時期があったんですけど、行き帰りの新幹線ではいつもそのアルバムを聴いていました。一番思い出深い作品が夏の作品で、尾崎さんにその話はしていなかったのに「夏のばね」という曲をいただいた時は、すごく驚いたと同時に運命を感じました。
他にもご自身で作詞された「はじめよう」などが収録されていますが、鈴木さんにとってこの3rdアルバムはどんな一枚になりましたか?
「はじめよう」は1stシングルの「FEELING AROUND」(2018年1月発表)のカップリング曲「20才の約束」で初めて作詞をしてから5年が経って25歳になっての決意と、頑張っている人の背中を押す曲にしたいという想いで作詞しました。このアルバムができたことによって、これからの歌手活動および声優活動が、より豊かなものになっていくだろうという確信を持つことができました。5周年を迎えるタイミングで歌手になる前からの夢が全部叶えられて、ここから先、何をどうやっていけばいいのかが少し見えた一枚になりました。
そして、TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』OPテーマのシングル「ミュージカル」も同時リリースされますね。
こういう明るい曲は久々で、“明るい曲のみのりちゃんが好き”と言ってくださる方は喜んでくださっています。どちらかと言うと女性ファンの方が多いアニメで、そういう作品のテーマソングを歌うことは私の夢のひとつだったから、それが叶ってとても嬉しいです。以前から“同性の背中を押したい”とか“女の子同士だから分かるものを共有したい”という気持ちがあったので、これを機会に同性のファンが増えたらいいなと思っています。
もともと少女漫画とか好きですもんね。
はい。『シュガーアップル・フェアリーテイル』はライトノベルなんですけど、白泉社からコミカライズ版が出ていて読んだことがあって、アニメ化決定の発表があった時から“テーマソングは私が歌いたい!”と密かに思っていたんです。私の愛称は“みのりんご”なのでアップルつながりだし(笑)。しかも、岩里祐穂さんの作詞なのですが、岩里さんの歌詞はワルキューレではいっぱい歌っていますけど、ソロでは今回が初めてなので、“岩里さんの言葉を歌える日がついにきた!”と思ってすごく嬉しいです。
カップリングの「季節のカルテット」はユーモアたっぷりですね。
レコーディングの時には作曲・編曲のONIGAWARAのおふたりが立ち会ってくださって、UFOの音が入っていたり、“宇宙人っぽい声をお願いします”と言われてそれっぽく歌ったり、とても楽しいレコーディングでした。
このシングルの2曲も入っていていいくらいアルバムと親和性が高いです。
シングルとアルバムはほぼ同時進行で作っていて、「季節のカルテット」が最後に収録した曲なんです。歌詞の最後に《それじゃまた春から始めよう!》というフレーズがあって、いい締め方ができたなって。最初はそんなに季節を意識して作り始めたわけではなかったんですけど、タイトルしかり、曲しかり、歌詞しかり、全部がきれいにつながった感じです。
3月にはライヴも控えていて。
そもそも「季節のカルテット」は“ライヴで盛り上がるものにしたい!”とお伝えして作っていただいた曲なんです。アルバムに収録の「Shout!!!」もライヴを想定していて、今までの私からハミ出して作詞をした、ちょっと口の悪い私もいたり(笑)。あと、ボカロPのいよわさんに作っていただいた「わだちの花」は意外とダークな内面を見せていたりするから、ライヴで聴いてほしい曲がたくさんあるので、3月のツアーにも足を運んでもらえたら嬉しいです。
取材:榑林史章