「THE FIRST SLAM DUNK」ポスター © 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

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トレパク?オワコン?ーー『スラムダ
ンク』の駄作っぷりを検証【前編】

エンタメとして「オワコン」 公開中のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットしている。
 いくら原作マンガ『SLAM DUNK』(スラムダンク)が「バスケ漫画の金字塔」であるとはいえ、連載終了から30年近く経過した過去の作品だ。なぜ、今さらスラダン?
 アニメ化自体は連載とほぼ並行して行われていたし、劇場版もスピンオフが90年代に数本作られている。スラムダンクは、とっくのとうに「終わった」作品だ。連載が終了しているという意味ではなく、エンタメとして「オワコン」なのだ。
お騒がせ漫画でもある 連載終了後にスラダンが話題になったことと言えば、20005年、『ちはやふる』で知られる少女漫画家・末次由紀の過去作に、スラムダンクからの盗用が発覚した件。元の絵や写真をなぞるようにトレースする、いわゆる「トレパク」だ。
 この騒動でスラダン作者の井上雄彦は「被害者」として扱われたが、一方で井上自身もバスケ専門誌などに掲載されたNBA選手らの写真をそっくりそのままトレースし、スラダンの誌面や表紙に数多く取り入れていたことが判明。
 リバウンドを両手で掴み取る湘北・赤木、ドリブルで速攻をかける陵南・仙道、レイアップシュートを決める海南・牧。いずれも元ネタの写真にピタリと合致し、「参考」や「模写」の言い逃れは難しい。井上の作画、特に試合中の選手の動きを「経験者だから描ける!」と絶賛していたスラダンファンは、すっかり恥をかかされた形だ。
 ちなみに、前述の末次には全単行本の絶版・回収処分という「極刑」が下されたのに、井上にはお咎めなし。最近でも「YOASOBI」のキービジュアルを担当したイラストレーター、古塔つみのトレパクが騒動になったが、弱小絵師を潰す前に、スラダンのトレパクを清算しろ!」との声も。
 末次が過去作に遡って処分されていることを考えれば、時代的な甘さは「井上セーフ」の理由にはならない。やはり、コミックス累計1億2000万部超えという売り上げが、スラムダンクのトレパクを黙認させている可能性は否定できない。
安西先生はクズ 時代のズレを顧みず、トレパク疑惑も握り潰し、劇場版アニメが製作されている『スラムダンク』。本作のファンが鬱陶しいぐらいに熱く語るのが、数多の「名台詞」や「名シーン」だ。
「あきらめたらそこで試合終了だよ」(第69話/安西光義)
 試合を諦めかけた中学時代の三井を励ました安西の台詞だが、「努力すれば夢は必ずう」と同様、偽善と欺瞞に満ちた無責任な言葉だ。叶わないこともあると教えるのも大人の仕事。安西が「諦めるな」という呪いをかけたから、三井は無理をして膝を壊したのでは?
「安西先生…!! バスケがしたいです……」(第71話/三井寿)
 不良仲間と古巣のバスケ部を潰しにきた三井が、恩師と仰ぐ安西の登場で本音を吐露する。さっきまでバスケ部を出場停止に追い込み、ついでに女子マネージャーも集団レイプしようとしていた男が、敗色濃厚になるや泣いて許しを請うなど虫がいいにもほどがある。
 本当にバスケ部に復帰したいなら、傷害事件の主犯として罪を償ってからだ。ついでに言えば、三井は陵南戦で途中離脱した際も、「なぜオレはあんなムダな時間を……」とか言いながら涙している。悲劇の主人公気取りのかまってちゃんか!
「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本のときか? オレは……オレは今なんだよ!!」(第270話/桜木花道)
 山王戦で背中を負傷し、ベンチに下げられた桜木が強行出場を訴える場面。負傷に気づいていたのに、あえて代えなかった安西監督。「あと少しで一生後悔するところでした…」ともっともらしいことを言いつつ、結局、桜木を出場させる。
 失神寸前の痛みを背中に感じるなか、激しい運動など絶対にNG。日常生活にも支障が出る後遺症が残ったら、どうするつもりだったのか。将来のある若者を次々壊していく安西先生、クズだな。
桜木と流川との力強いタッチがキモい 美化して伝えられてきたこれらの台詞も、都合よく作られた「漫画」のなかで読むから妙に刺さって感じるだけ。改めて冷静に読み返せば、子供だましで荒唐無稽。少なくとも、大のオトナが心に刻むほどではない。
 本作の名シーンとして最も人気を集めるのは、山王戦のクライマックス、決勝ゴールを決めた桜木と流川が力強いタッチを交わす場面だろう。
 盛り上がりのピークとして描かれているのは、見開き2ページを使っていることからもうかがえる。裏を返せば、作者の「名シーンにしてやろう」という狙いが見え見え。いがみ合っていた主人公とライバルが、最後に協力して勝利を掴むという展開も、いかにも少年漫画チックで幼稚だ。
 この場面は、約40ページに渡り、台詞、ナレーション、擬音をほぼ使わない「無音」で描かれていることでも知られる。確かに工夫はされているが、「こんな描き方、今まで見たことがない!」と特段に賛美するほどのものでもない。そもそも、この無音描写は第184話の陵南戦でも用いられている。
 スラダン好きをアピールしようと「こんなの見たことがない」とか言うと、ちゃんと読んでいない、ただの「にわか」だってことがバレますよ!

【後編記事「リアルとは程遠い茶番劇ーー『スラムダンク』の駄作っぷりを検証【後編】」に続く】

画像/「THE FIRST SLAM DUNK」ポスター (c)2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners初出/実話BUNKA超タブー2023年5月号
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