写真左上段より時計回りに、sindee(Ba)、はやしゆうき(Fl)、だいじろー(Gu&Cho)、猫田ねたこ(Vo&Key)

写真左上段より時計回りに、sindee(Ba)、はやしゆうき(Fl)、だいじろー(Gu&Cho)、猫田ねたこ(Vo&Key)

【JYOCHO インタビュー】
一番トレンディーなかたちの
JYOCHOを見せられている

緻密に構築された楽曲や透明感を湛えたヴォーカル、高度な演奏力などが折り重なって生まれる独自の音楽性が光るJYOCHO。彼らの最新作『云う透りe.p』はアニメ「伊藤潤二『マニアック』」のED曲を含んだ趣の異なる4曲が収録され、JYOCHOの魅力を堪能できる一作となっている。バンドのブレインを担うだいじろー(Gu)をキャッチして、本作を軸に彼のコンポーザー、ギタリストとしての魅力に迫った。

ホラーに対して明るい曲を充ててみる
というのをやってみたかった

『云う透りe.p』のリード曲「云う透り」はNetflixシリーズ「伊藤潤二『マニアック』」のED曲ですが、曲を作るにあたってアニメサイドから曲調や歌詞についてリクエストなどはありましたか?

今回は特になくて、“自由に曲を作ってデモを出してください”と言っていただけました。僕たちは「伊藤潤二『コレクション』」という過去に放送されたTVアニメのエンディングを務めさせていただいて、「互いの宇宙」(2018年3月発表のEP『互いの宇宙 e.p』収録曲)という曲をリリースしていて。その時はJYOCHOらしい楽曲でありつつも「伊藤潤二『コレクション』」の世界観に合うようなものというお願いをされましたけど、今回はもうまったくお任せだったので、僕なりに考えてデモを3曲作って、その中から選んでいただきました。

その3曲というのはそれぞれテイストが違っていたのでしょうか?

違っていました。もちろん伊藤潤二さんの作品はチェックさせていただいていて、それに合う3パターンの楽曲が自分の中で思いついていたんです。ひとつめのデモは本当に暗くて怖い、どんよりしたイメージのもの。ふたつめはきれいなもので、前回の「互いの宇宙」の時と同じようにきれいなイメージで作りました。伊藤潤二さんの作品はホラーなだけじゃなくて、すごく心にグッとくるような話もあって、それを意識したきれいな楽曲として書きました。3つめは狂気というか、ホラーに対して明るい曲を充ててみるというのをやってみたいと思ったんです。溌剌としたものとホラーが合わさると不気味さが生まれたりするじゃないですか。ホラー映画とかで登場人物が笑いながらものすごく残酷なことをしたりすると恐怖感が増しますよね。僕はそういう化学反応が好きなので、3曲目はそういうものにしました。その3曲目が「云う透り」で、化学反応を起こしたくて、溌剌としていて、明るくもあって、少し狂気的なものを感じさせるところを狙った曲で、歌詞もあえて前向きなものにしました。

歌詞は“人はそれぞれの人生を精いっぱい生きる”ということを歌っていますね。「云う透り」は注目ポイントがたくさんありまして、まずはタイアップ曲でいながらAメロ→Bメロ→サビというような一般的な構成になっていないことが印象的です。

楽曲の構成は狙いつつ作っている部分もありますが…なんて言うんだろう? もともと僕は説明的な楽曲が好きではなくて、全体で完結していればいいという想いのもとに曲を作っているんです。なので、Aメロ、Bメロみたいなセクションごとに作っていく意識はあまりないんですよね。

それが奏功して独自の魅力が生まれています。さらに、メンバー全員が有機的に作用し合って、強固な世界を構築しているアレンジも秀逸です。

JYOCHOに関しては基本的に僕が全部のパートをいったん打ち込みで作っていまして、それをメンバーに投げて、“ここはもっとこうしてほしい”と…例えばベースであれば“ここはタッピングしてほしい”というようなことを伝えるんです。一応打ち込みでもタッピングっぽいフレーズを入れるんですけど、“sindeeさんだったらもっといいアイディアが出るんじゃないかな?”というところで、アレンジしてもらったりする。全部のパートがそんな感じですね。

各パートの基本的な方向性などは、だいじろーさんが考えているんですね。「云う透り」はギターもすごいことになっていて、コードをまったく弾かずにずっとクリーントーンで速いフレーズを弾いていて驚きました。

最初からそういうことをやろうと思っていたわけではなくて、最終的にああいうギターになりました。僕は曲を作る時は弾き語りのバッキングみたいなところからスタートするんです。コードっぽいものを弾いて、そこからアレンジを組んでいって、歌メロを乗せて、“ギターはここはもっと攻められるな”とか“ここはいらんな”とか考える。「云う透り」のギターもそうやってかたちにしていきました。

テクニカルなフレージングでいながら、決して歌の邪魔をしていないこともポイントです。

僕はギターと歌をセットで考えていて、長くいろんなプロジェクトをやってきたことで、バランスの判断基準が自分の中にはあるんです。歌が入っている場所は上モノのピロピロしたタッピングとかではなくて、コード感のあるタッピングやアプローチを考えたりとか。あと、イントロとかアウトロでは上モノっぽく1~2弦を使ったメロディーがはじけるとか、その辺りのバランスは考えているつもりではあります。

歌のことを踏まえつつ「云う透り」のようなギターアプローチを考えられるのも、それを実際に弾けるのもすごいとしか言いようがありません。しかも、誤魔化しの効かないクリーントーンで弾いていて、さらにダブルにされていますよね。

そこに気づいてくれる人はなかなかいないですよ!? でも、そこが結構ポイントだったりするんです。僕はクリーントーンとかクランチトーンが好きで、歪ませるよりもクリーントーンを選んだりしているので、音の質感とかを考えるとダブルで録ったほうがいい曲ではあって。でも、ダブルだと気づかれないようにしたかったんです。ちょっとでもずれるとダブルだって分かってしまうから、そこはしっかり合わせて弾きました。

ダブルのシンクロ率が非常に高いことも注目です。ちょっと突っ込んだことをお訊きしますが、ピッキングは強いほうでしょうか?

ピッキングに関しては、どちらでもいけます。でも、強く弾くほうが好きなんですよね。もともとソロギター出身なので丁寧に弾くこともできますけど、バンドで演奏する時は基本的に強い。パキーン!という汚い音とか、倍音が一番活きる弾き方をすることが多いです。

やはり強いですか。それも「云う透り」のギターの心地良さの大きな要因になっていると思います。

そうかもしれない。この曲のギターは躍動感だったり、生き生きとした感じを出したかったんです。
写真左上段より時計回りに、sindee(Ba)、はやしゆうき(Fl)、だいじろー(Gu&Cho)、猫田ねたこ(Vo&Key)
配信EP『云う透り e.p 』

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着