【ODD Foot Works インタビュー】
今の、これからの自分たちそのもの
明るい未来を
描くことの意味を知った
M9「Summer」はメロウな曲調とメロディー、やさしくもスパイスを効かせるベース、柔らかい歌声とコーラスなどからゆったりと季節の趣を感じます。歌詞には生活感やパーソナルな感じもありますし、『Master Work』の中では違ったアプローチの曲にも思えました。
Pecori
曲調は極限までシンプルにしていて、バースではひとつの情景がばっちりと見えていて、それを文字に模写していく感覚で作りました。悲しいお別れの曲なんですが、四季としてではなく“Summer”の概念を個人解釈できる曲になっています。
榎元
トラックに関してはトリッキーなものが多い今作ですが、「Summer」と「音楽」は方向性は違いながら結構真っ向勝負で作った曲だと思っています。特に「Summer」は一番日常的な、普段の自分たちが生活の中で思うことをトラックからも感じてもらえるように作りました。全部の楽器がほとんど繰り返しで、突拍子のないことも起こさず、シンプルな抜き差しと構成のみで意思の強さを演出したつもりです。大きな声は出してないけど、こっそり拳を握りしめて、生きているというか。リリックの内容も日常にいる等身大の自分たちで、個人的にはメンバーと一番つながれたのはこの曲なんじゃないかと思っています。
『Master Work』の歌詞はかなり時間をかけて心の内を素直に綴っているように感じました。それは、「Heavenly Bluetooth」「SEE U DAWN」のような痛みに向き合って作られたように感じる曲だけでなく、心強い「I Love Ya Me!!!」、この先を思い描くような「GOLD」など、自信や今の意気込みを込めたものも然りです。Pecoriさんの中で作詞への向き合い方に変化はありましたか?
Pecori
痛みや苦しみを乗り越えてできたのは間違いないんですが、その上で明るい未来を描くことの意味を知りました。ネガティブなことをなかったかのようにするのは、ただの嘘になるので、聴く人にリアルを届けたい気持ちも強く、そこはバランスを考えましたね。
M10「音楽」は予想を裏切るようなインパクトのあるパンクロックナンバーですが、このアルバムを作ったODD Foot Worksの今と、これからも持ち続けるであろうマインドが直球で届く楽曲だと思いました。すでにライヴでも披露されていると思いますが、やってみての感覚はいかがですか?
Pecori
あまりないというか、どストレートなパンクロック自体が完全に初めてで、音源を出した時の高揚と、伝わるかどうかの不安同様、ライヴでも初披露まで不安でしたが、アカペラ後にドカーンとイントロが始まると全ての不安が消し飛び、“音楽だぁー!”って気持ちになりました。イントロが始まって泣いている人も客席にちらほらいて、ライヴでやるべき曲だったことに確信を持てて嬉しかったです。
有元
歌唱のパートがあるのですが、ライヴしていくうちにどんどんうまくなっていく感じが楽しいですね。
榎元
マネージャーの三宅正一さんが歌詞を書いていることもあり、どこか自分自身に対しても演奏しているというか、演奏していながら自分もリスナーであるような不思議な感覚になります。ツアーの名古屋公演ではバンドインした瞬間に想像を遥かに超えた衝撃があって、“ついにこのアルバムはリリースされたんだ”とか、“やっと生で聴けた”とか、いろんな感情が入り混じってなぜか泣きそうになっちゃいました(笑)。自分もその音を出しているひとりなのに不思議なものです。