【追悼 ジェフ・ベック】
ロック史上最高のギタリストとして
世界を魅了し続けた人生
ジャズ、ブラックミュージックを
消化したジェフ流の
ハイテク・クロスオーバー
ベックのコンサートには大人になってからも何度か足を運んだ。後学のためとして洋楽に興味を持ち始めた息子を連れて行ったこともある。「すごすぎてどうやって弾いてるのか分からなかった」と言っていたっけ。それは私だって未だに分からないのだ。アルバムもいろいろ買ったが毎回違うことに挑戦しているベックには感嘆しきりだった。昔はメンバーをすぐクビにしたり、バンドをつぶしたり、あまり笑顔も見せず、どこか近寄りがたい一匹狼、ギター求道者のようで、そんなイメージも彼の魅力だったけれど、近年のライヴ、『ライヴ・アット・ロニースコッツ(原題:Performing This Week...Live At Ronnie Scott's)』(‘08)や『ライヴ・アット・ハリウッド・ボウル(原題:Live At The Hollywood Bowl )』(‘16)などを観ると、共演者に屈託のない笑顔を向ける場面が多い。まあ、ベックの共演者もひと筋縄ではいかない凄腕の持ち主ばかりなので、均等の力量を称え合うシーンに見えなくもないのだけれど、本当は心優しい人だったと聞く彼の素の部分が見え、またベックのことが好きになった。
パッケージ作品ばかりでなく、動画サイトのおかげでベックのライヴを好きな時に探し、観ることができる便利な時代になった。それでも、48年前、遠くから見たあの姿、神がかった演奏の記憶は消えることなく、今もなお頭の中で残響している。
今は感謝の気持ちしかない。ありがとうジェフ、あなたは私たちにギターはもちろん、音楽の素晴らしい世界の、その視界を広げてくれた偉大なアーティストのひとりです。これからも、あなたのサウンドは響き続けるでしょう。
TEXT:片山 明