大地真央×花總まりに聞く『おかしな
二人』2023年版にかける意気込み そ
して互いの印象や舞台への思いとは

2020年に上演され、宝塚出身の大地真央と花總まりのコメディエンヌぶりが好評を博した『おかしな二人』が帰ってくる。コメディの名手ニール・サイモンの代表作である『おかしな二人』を、劇作家自身が1985年に“女性版”と銘打ち発表した戯曲がベース。舞台設定を70年代に変更、ファッショナブルな衣裳と舞台装置が楽しめる作品だ。3年ぶりにタッグを組む二人に、舞台への意気込みを聞いた。
ーー初演の際に心に残ったことは?
大地:ニール・サイモンの戯曲が非常におもしろいというところがありました。それから、8人の出演者、それぞれのキャラクターがおもしろくて、おかしな2人どころかおかしな8人という感じで。チームワークも非常によくて、70年代のお話なんですけれど、女子会的な中で、それぞれが自立していく姿みたいなものが描かれていて。ご覧になる方が、それぞれのキャラクターに自分を置き換えてみたり当てはめてみたりして楽しむこともできる、そんな舞台だったと思います。
花總:有名な、歴史のある作品の女性版ということで、大地さん率いるチームワークで、おかしなメンバー一丸となって作っていったので、お客様にもすごく楽しんでいただけたと思います。今回再演ということで、メンバーもまた変わるので、2023年版『おかしな二人』を新たに作っていけたら、新たなおもしろさをお届けできたらと思いますね。本当にセリフがたくさんあるので、もう一回気合を入れて、緊張感と集中力でまた頑張っていきたいと思っています。
ーー演じる役柄への思いをお聞かせください。
大地:私が演じるオリーブはキャリアウーマンで、一応敏腕プロデューサーという感じなんですが、仕事以外のところはもうどうでもいいみたいな、すごくぐちゃぐちゃの家に平気で住んでいて、大らかというか大ざっぱというか、こだわりがあるところとないところの差があるんです。そんな中でも、友達とゲームをしたりすることがキャリアウーマンとしての一番のリラックス・タイムで。汚い家なのに、みんながオリーブのところに集まってくる。何か落ち着くというか、そんな不思議な魅力のある人なんじゃないかなと思います。
大地真央
花總:私が演じるフローレンスは、悪気はないんですけど、人からかなりウザく思われる、ちょっと豆台風的な存在で。オリーブの家で同居が始まるんですが、本当に憎めない、ちょっとちゃっかりしているところもある人。ウザさと愛らしさをうまく同居させてフローレンスという人が成り立っていると思うので、そこは大切にしていきたいなと思います。
ーー共演されてのお互いの印象は?
大地:(宝塚での入団)学年も歳もすごく離れていますが、最初からふっと、相性がいいなあみたいな感じがあって。コメディは初めてとおっしゃっていましたが思いっきり演じられるので、最初の印象としてはすごくかわいいなと思いました。全然初めてじゃないでしょという感じで。一生懸命さっていうか、体当たりでやっていてね。
花總:(頷く)私のすべてを受け止めてくださって、本当に大きな愛がありました。愛が確かにありました。もう毎日感じていました。
ーー初演の2020年はコロナ禍が始まった年でした。
大地:もう3年経ったの? という感じですね。ちょうどコロナ禍が始まったころだったと思うんですけれど、お稽古のときに、向き合っちゃだめとか、ソーシャル・ディスタンスがとか、そういう条件の中で、いかに2人のやりとりをおもしろくするか。いろんな枷もあったんですけれど、結果、それもよかったのかなと思う仕上がりになったんじゃないかなと思います。ただ、お客様には、大声を出さないでとか、笑い声も抑えてとかということがあったのが、本当に申し訳ないと。もっとリラックスして自由にこの作品の世界に溶け込んでいただきたかったなと。ちょっとはこの3年で変わったかなと思うので、今回は、マスクはしていただきますけれども、リラックスしてより楽しんでいただければと思っています。
花總:前回は観に行きたくても観に行かれないというお客様もいらっしゃったので、今回はぜひ皆様に観ていただきたいと思います。この3年の間で、最初はけっこう押さえつけられていた演劇界もだいぶ負けないぞという空気になったので、その勢いも今回の『おかしな二人』に乗せたいと思いますね。3年というとかなり空いたという感覚があるので、一から取り組む緊張感のある稽古場になるんじゃないかなと思います。初日とかまたすごく緊張しそうですね。
花總まり
ーーニール・サイモンの戯曲の魅力をどんなところに感じますか。
大地:セリフの応酬というか掛け合いがやっぱり本当におもしろいんです。ですから、それを素直にやればもうすでにおもしろいと思うんですけど、それを生かすも殺すも私たちのテンポとか間とか、そういうものですね。今回、青木さやかさんが初めて入られて、初演のときのチームワークもすごくよかったのですが、今回も絶対おもしろくなると思っています。
花總:今、大地さんがおっしゃった通りで、本当に生かすも殺すも私たちのテンポ感、確かにそうだなと。あとはお客様と作っていく、舞台ならではのよさが絶対あるので、お客様の雰囲気によっても変わってくると思うので、一段アップした作品のよさを、そのときそのときで一緒に作っていけたらと思っています。
ーーオリーブは大ざっぱ、フローレンスは几帳面と、正反対のところがあるキャラクターです。
大地:私は割とオリーブに似ているなと思うところがありますね。意外とフローレンスも彼女に似てるのかなと。全部ではないですけど、似ているところはあるぞみたいな感じで。ただ、彼女とも稽古場でしか会っていないんです。とにかく、一緒にお食事も行っちゃだめ、これもだめみたいなところがあって、役としての付き合い方しかできなかったんです。稽古場に入ったら役になるというか、完全になりきったりはしないんでしょうけど、そういうところもあるんですよね。あなたは、帰ってきたらお掃除するんでしょ?
花總:チャカチャカ、チャカチャカ動いているところがありますね。もしかしたら、私生活で大地さんと共同生活しても、フローレンスみたいにチャカチャカしているかも。こまこま動いていそうな気がします(笑)。
大地:縮小版オリーブと縮小版フローレンスみたいなところは多分あるんだと思います。私は、仕事に関しては、完璧主義というわけではないですけど、ぐわーっとそこに入るんです。それ以外は割とどうでもいいんですよ。そういう意味ではキャリアウーマンのオリーブと似てるなと思いますね。床までは汚しませんし、賞味期限も気にしますし、そこまでオリーブではないんですが(笑)。でも、役を演じると、やっぱり一番共感してしまうんですよね、役に入りたいので。自分に引き寄せるというよりは、そっちに行きたいので、オリーブってこうよねって自分の中で理解者になろうとする。私もこういうところがある、みたいな。そういう意味で、やっぱり、自分はどっちかというとフローレンスよりはオリーブ寄りかなと。
大地真央
ーーテンポや間といったコメディ要素につき、初演の際に苦心したことなどあればお聞かせください。
大地:とにかく、ドンと落ちることなく、くっと上げた、いい意味の緊張感をもった上で、リラックスしてだらっとしているような、自然に出てきている会話にする、みたいなところですね。そこの、くっと持ち上げている緊張感というものが、全体としてのテンポであったり間合いであったりに必要なので。それによって、作品全部が、最初から最後までおもしろかったという結果になると思うんです。
花總:とにかくストレートプレイであれだけのセリフをいただいたのが初めてだったので、自分の中では、例えば一幕で自分はこうでこうでというところは本当にたたみかけるというか、テンポ感を大切にしないといけないと思いながらやっていました。そのへんはすごく緊張していましたね。セリフの多さにけっこう苦労していて。
大地:多いよね、って言っててね。
花總:間違えちゃいけないというのがあったので、毎朝ずっとぶつぶつ言っていた記憶がすごくあって。またその日々が始まるんだと思うと、わあ大変と思います。でも、すごく楽しかったし、いい結果につながっていたと思うので、また挑戦できてうれしいです。
ーー再演にあたってどんなところを深めていきたいですか。
大地:お稽古が始まって気づくんじゃないかな。今から、あそこはどうだったという感じはあまりないと思うんです。初演は初演で完成していたので。でも、せっかく再演させていただくので、より欲を出して、みんなでよりおもしろく深く掘り下げてという思いでやっていきたいと思っています。
花總:再演ってけっこう難しくて、課題がたくさんあるのがわかっているので、逆にあまり意識しないで、新鮮に取り組めたらいいなって思っています。メンバーも変わっていますし、3年前とは環境もまた変わってきているので、あまり振り返らずに、今回は今回ということで取り組んでいった方がいいかなと思っています。
花總まり
ーー大地さんは2023年、初舞台から50周年を迎えられます。
大地:周りに言われて、振り返ってみると、あ、50年だっていう、正直そんな感じなんです。本当に私は運がよかったんだなと思いますし、今まで携わってくださった方々のおかげだなと改めて思いますね。ですので、50年経ったから何なんだというのもあるんですけれど、まあ、おめでたいことなんでしょうね(笑)。そんな感じ。これからもあまり変わらず行くかなという感じですね。
ーーそんな大地さんにとって、舞台とは?
大地:なんでしょうかね。宝塚という舞台から始まっているので、私たち。映像もすごくおもしろいんですが、やっぱり私の基本は舞台かなって。私にとっては猫と一緒で、切り離せないのかな、みたいな。ただ、一つひとつの作品に真摯に向き合ってきたという自負はあります。それがたまたまつながっていった。絶対に、前やった作品より次という、自分で自分のライバルはひとつ前の作品の自分みたいな、そういう意識で、今回の舞台が一番おもしろいと言われたいという思いでやってきた。一つひとつ大事にやってきただけですけど。びっくりです、50年って。
ーー舞台のどんなところがそんなにお好きなんですか。
大地:ライブ感です。同じことは二度とできませんし、ご覧になる方も、やっている側もスタッフも全員が人間でやっていることなので、そのライブ感ですね。
ーーでは、花總さんにとって舞台とは?
花總:そうですね、なんなんだろう……。もちろん楽しいこともあるけれども、つらいことはその何倍もあって。
大地:身を削るよね(笑)。
花總:自分で、なんでこんなにつらいことやってるんだろうって思うことも、正直言うとたくさんあります。でも、なんでやめないでやっているんだろう、これは何なんだろうという。私なんて大地さんに比べたらまだまだ経験も全然浅いので、10年後、20年後、30年後になったら、もうちょっと、自分にとって舞台ってもしかしたらこういうものだったのかなって、やっとそのとき何か言葉が見つかるかなと。逆にそのとき、何か自分の中で、自分にとってこういうものだったんだと言えるような、そういう風に歳を、経験を重ねていけたらいいのかなと思いますね。まだまだ中途半端で。
大地:ええ~?
花總:こうなのかなと思うときもあるし、定まらないんですよね。定められないというか。まだ途中という感じで。
ーー楽しいのはどんなときですか。
花總:楽しいというか、今日もがんばってよかったと思えるのはやっぱり、お客様の拍手だったり、お手紙やコメントで、自分の想像以上の言葉をかけていただけたとき、こんな私がそんな風に言っていただけるようなことをやれた、こんな自分の舞台がそういう風に思っていただける、そんな影響を与えられたと思うとき、楽しいというか、今日も舞台でがんばってよかったと思えますね。
(左から)花總まり、大地真央
大地真央、花總まりが出演する『おかしな二人』は、2023年4月8日(土)~4月26日(水)シアタークリエにて上演。その後、宮城、富山、大阪でもツアー公演が行われる。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)     撮影=池上夢貢

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