The BONEZ、10年前にスタートを切っ
た“聖地”下北沢SHELTERに帰還 47
都道府県ツアーの開催も発表

1月11日、東京は下北沢SHELTERにてThe BONEZが2023年最初のライヴを行なった。この公演に掲げられたタイトルは『The BONEZ 10th Anniversary Live Stand up 2023』というもの。その言葉からも明らかであるように、The BONEZがバンドとして最初の重要な一歩を踏み出したのが10年前の同じ日、同じ場所でのことだった。
より正確に言うならば、2011年11月11日にJESSEが始動させていたプロジェクト、JESSE and THE BONEZがT$UYO$HI(b)、ZAX(ds) を伴う布陣で、初めてワンマン・ライヴを行なった瞬間からちょうど10年を経ていたのだ。今回は会場の収容人数ギリギリの200名限定、しかも1,111円というBONER感謝価格でのライヴ実施ということでチケットは争奪戦となり、当日は10倍以上の競争率の中で幸運を勝ち取ったファンが集結。このご時世ゆえにマスクの常時着用は求められたものの、ライヴハウス本来の熱気や親密感が取り戻されたことを、その場に居合わせた誰もが実感させられる一夜となった。
開演定刻の20時を5分ほど過ぎた頃、BGMの音量が大きくなり、場内は暗転。咆哮をあげるZAXを先頭に現れた4人を出迎えたのは、その収容人数に見合わないほどの音量の拍手だった。そしてステージ中央の配置に就いたJESSEが「行こうか、SHELTER。2023年、こんな感じでやって行こうか」と呼びかけると同時にフロアのあちこちから歓声があがり、新たな状況の始まりを象徴するに相応しい“Adam&Eve”が炸裂する。
 Photo by Yoshifumi Shimizu
今現在、ライヴにおける“声出し”の規制については主催者や会場側の裁量に判断が委ねられているところがあるが、「マスク着用のままであれば、ある程度の発声はOK」というのが平均的な解釈となりつつある。その限られた自由を謳歌しようとする気持ちはステージ上の演者もオーディエンスの側も変わらない。封印を解かれた歓びが声になり、クラウドサーフになる。のっけからの熱い反応にはJESSE自身も目を丸くして「まだ1曲目だけど大丈夫か、おまえら?」と言い、彼の「10年前に戻ろうか」という一言に導かれながらKOKIが“BOSSMAN”のイントロを弾き始め、T$UYO$HIの低音とZAXのビートがそこにグルーヴを纏わせていく。このバンドの起点となったJESSE and THE BONEZ名義での作品「Stand up」からの選曲だ。10年前にはKの他界という信じ難い出来事により岐路に立たされながらステージ上にいたこの屈強かつ柔軟なリズム・セクションと、同じ場面をフロアの側から見守っていたKOKIがこのバンドの一角を担っているという現実は、時間の流ればかりではなく運命的な何かを感じさせる。
2013年1月11日(Jesse and The BONEZ 、Shelterにて)

The BONEZは、おそらく開演前から適度以上に温まっていたはずのエンジンの駆動力を発揮しながら、あらかじめフロアに広がり始めていた火に油を注ぐように容赦のない演奏を続けていく。冒頭の3曲を演奏し終えて改めてJESSEが「We are The BONEZ!」と自己紹介した頃、彼の顔はまるでサウナから出てきたかと思えるほどに紅潮していた。しかしここで水風呂に飛び込むのではなく、さらに熱を高めていくのがライヴにおけるルーティーンである。T$UYO$HIも10年前当時を想い出し噛み締めているような、満面の笑顔でグルーヴを先導していく。以降も彼らは畳み掛けるように必殺曲の数々を惜しみなく繰り出し、オーディエンスもそれに応戦していく。しかもその場に漂っているのは、まずいことが起きるんじゃないかという不穏な空気ではなく、ライヴハウスの空気を心底楽しめるという無邪気な喜びであり、ステージ上の4人の表情からも笑みが絶えることがなかった。それは、彼らの視界が200人の笑顔で埋め尽くされていたからでもあるはずだ。 Photo by Yoshifumi Shimizu
下北沢SHELTERというライヴハウスは、The BONEZの歴史を語るうえで欠かすことのできない聖地のひとつではあるが、現在の彼らの身の丈を考えれば、幼少期の頃に履いていた靴のようなサイズ感の場所ともいえる。メンバー・チェンジをはじめとする紆余曲折を経ながらも、段階を踏まえながら自らにとっての“遊び場”を拡大させ続けてきた彼らであれば、10周年と新たな年の到来を祝う場はもっと大きな場であって然るべきだろう。ただ、このバンドにとっては今もライヴハウスがホームであり、それは経年後に卒業することを前提とするような場所ではない。コロナ禍において彼らがさまざまな制限と向き合いながら比較的大きなサイズの会場でライヴ活動を続けてきたのは、全国で彼らを待ち続けている共鳴者たちと各地のライヴハウスで再会するためでもあったし、彼らは常にそれを約束してきた。その最初の場所が下北沢SHELTERだった、ということなのである。
 Photo by Yoshifumi Shimizu
だからこそ、アンコールに応えてステージに戻ってきたJESSEの口から47都道府県ツアー開催が宣言された際には大きな歓声の声が上がっていたし、筆者自身も納得させられていた。最後の最後、“Zenith”では、人で埋め尽くされた狭いフロアに小さいながらもサークルピットが発生。「今年1年よろしく!」とフロアに告げて4人がステージから姿を消したのは、開演から90分ほどを経過した頃のことだった。その後も場内には轟音の余韻と熱が充満し続けていた。そして終演直後のJESSEに話を聞くと、次のような言葉が返ってきた。

「子供が久しぶりに公園に行って遊具と戯れてるような感じに、やっとなれたかな。これを取り戻すために、普段からみんな守んなきゃいけないことを守って、誰にも迷惑をかけないよう心掛けながら頑張って生きてきた。そんなみんなに“ここでだけは遊べる!”っていう場所を提供したい」
その場所こそが、まさに“Place of Fire”であるはずだ。筆者がそう指摘すると彼は笑顔で「間違いない」と言い、次のように言葉を続けた。
「だけどそれは、今後はいつでもどこでも好き勝手をしていいという意味じゃないし、昔に戻るわけでもない。窮屈だろうけどまだマスクもしなくちゃいけないし、ライヴの後には手洗いとうがいもしないとね。ルールというのは好きじゃないけど、暗黙の了解に基づいた新しいルール、新しい常識みたいなものを作っていかないといけない。47都道府県ツアーはそのためのものだし、全国のBONERたちにそれを伝えに行くよ」
全国津々浦々をくまなく巡るライヴハウス・ツアーは5月に幕を開け、春季と秋季に分けて繰り広げられていく。そこで彼らがどんな物語を経ながら新たな常識を構築していくことになるのかを楽しみにしていたい。しかも現在のThe BONEZは、10年前のような困惑を伴う複雑な心境にはなく、楽しむこととそれを分かち合うことだけを動機としている。彼らの新たな一歩に、改めて祝福の拍手を贈りたい。
 Photo by Yoshifumi Shimizu

文/増田勇一 写真/Yoshifumi Shimizu

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