80年代の名作アニメとともに、スタジ
オジブリ設立の原点を辿る 『アニメ
ージュとジブリ展』レポート

アニメ雑誌のパイオニア『アニメージュ』の創刊初期から1980年代に焦点をあて、同誌と関わりの深いスタジオジブリの誕生ヒストリーを紹介する『アニメージュとジブリ展』が、1月23日(月)まで東京・銀座の松屋銀座8階イベントスクエアで開催されている。大人世代のアニメファンには懐かしく、子ども世代のアニメファンには発見の多い本展。その概略を実際の会場の様子とともにお伝えしていこう。
『アニメージュとジブリ展』がパワーアップして帰ってきた!
2021年の春に松屋銀座で初開催された『アニメージュとジブリ展』。しかし、その際は緊急事態宣言発令によって、わずか10日で閉幕。その後、全国6都市への巡回を経て、内容やグッズをバージョンアップした上で待望の再開催を迎えた。
松屋銀座の館に入ると、展示会場に着く前にひとつの驚きが。1階から7階まで吹き抜けのスペース・オブ・ギンザには、藍師・染師「BUAISOU」とコラボしたジブリ仕様の巨大暖簾が飾られており、エスカレーターで展示会場のある8階まで上がる間、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』のシルエットがワクワク感を高めてくれる。
巨大暖簾のインスタレーション
さらに会場の入り口では、『となりのトトロ』に登場するネコバスの立体フォトスポットが来場者をお出迎え。行先表示には「銀座」の二文字というスペシャル感。サツキとメイになった気分で思い出の一枚を残そう!
創刊時から“ブレない”姿勢でアニメファンの心を掴んだ『アニメージュ』
1978年に創刊し、今年で45周年を迎える徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』。日本初の本格的アニメ雑誌として誕生した同誌は、アニメ作品の自体はもちろん、その制作に関わる裏方の人々にも光をあてた誌面作りで各世代のアニメファンの支持を獲得。現在もアニメファンのニーズに応える情報を届け続けている。
創刊当時に副編集長を務めていたのは、現在、スタジオジブリの代表取締役プロデューサーである鈴木敏夫。スタジオジブリは徳間書店在籍中の鈴木らによって設立され、その立ち上げのきっかけとなった『風の谷のナウシカ』もアニメージュの連載から生まれた作品であるため、スタジオジブリの誕生を語る上でアニメージュの存在は欠かせない。
会場風景
本展では、アニメージュ創刊からスタジオジブリ誕生につながるまでの流れを軸に、同誌の創刊から1980年代の歴史を多数の資料や立体展示で振り返っている。まず序盤では、アニメージュの誕生前夜や初期の編集部の風景、そして数々の伝説的アニメが彩った初期のアニメージュが当時の誌面とともに紹介されている。なお、一部の展示は撮影可能だ。
懐かしいアイテムが詰まったアニメージュ編集部の再現展示
『デビルマン』『サイボーグ009』『バビル2世』などのアニメ関連ムックや、アナログなアイテムが満載な編集部デスクの再現展示など、シニア世代には懐かしいもの連続で最初から見どころが尽きない中、「アニメージュ誕生」コーナーの最初には、1978年5月に発売された記念すべき創刊号の展示が。
『アニメージュ』創刊号の展示
表紙を飾った作品は第一次アニメブームの火付け役となった『宇宙戦艦ヤマト』の続編映画。宇宙空間の中を、波動砲のある船首をこちらに向けて進んでくるような勇姿が何ともカッコいい。創刊時のアニメージュのフォーマットは「A4判・122ページ・580円・7万部・想定返品率21%」だったそう。前例のないジャンルの雑誌で7万部という発行部数は、当時でも強気の設定だったに違いなく、そんなところに当時のアニメファンから寄せられた期待感の大きさを感じる。
「アニメージュ誕生」の展示風景
その隣の壁には創刊号の誌面が紹介されている。創刊のお祝いコメントの中には、手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子不二雄、赤塚不二夫など、錚々たる顔ぶれが。一方、中面では、『宇宙海賊キャプテンハーロック』や『ヤッターマン』の関係者から制作の裏話を拾ったり、あるいは「えみこ・伸一のアニメ塾」なるアニメーター志望者に向けたようなコーナーがあったりと、創刊当初からアニメファンの“もっと知りたい”に応える誌面作りを徹底していたことがわかる。
ちなみに、その中には、先月惜しくも亡くなった“アニソンの帝王”水木一郎の若き日の姿も。声優やアニソン歌手が今よりも裏方に近かった時代性を考えれば、アニメージュは彼らのようなスターにも初めて光をあてた媒体といえるだろう。ここは偉大なレジェンドに敬意を込めて、絶対にチェックするんだゼーーーーーット!
『ガンダム』『マクロス』など、初期の誌面を飾った名作たち
初期のアニメージュは、独自の視点で新しさのある作品をキャッチしながら、作り手と読者のつなぎ役として支持を獲得していった。『機動戦士ガンダム』や「超時空要塞マクロス」というロボットアニメの二大巨頭も初期のアニメージュにとって重要な作品だ。
『機動戦士ガンダム』の展示風景
今でこそ誰もが知る“ファーストガンダム”だが、TVシリーズの放送時は打ち切りという憂き目にあっている。それに対してアニメージュは、放送後も監督の富野由悠季や作画監督の安彦良和らを追い続け、「ガンダム『映画』構成案第1稿」という特集を企画。ガンダムブームを起こすきっかけとなり、3部作による映画化を後押しした。
『機動戦士ガンダム』の展示風景
本展では、当時掲載された富野監督のインタビュー記事や貴重な設定資料のほか、同作で美術監督を務め、後に『風の谷のナウシカ』でも美術監督を担当した中村光毅によるイメージボードなどを見ることができる。
「アニメージュ中吊り広告大集合!」の展示風景
全体の中間に設けられているのは、「アニメージュ中吊り広告大集合!」の展示だ。『あしたのジョー』『ルパン三世』『うる星やつら』など、往年の人気キャラクターたちが両側の壁にズラッと展示された景色は壮観。なかには戸田恵子、小山茉美、麻上洋子という当時を“アイドル声優”をピックアップした広告もあり、当時を知る人であれば、ノスタルジーに浸れるはず。
貴重な資料で! リアルなフォトスポットで!『ナウシカ』の世界に没入!!
後半の展示は、大塚康生、高畑勲、宮崎駿など、アニメージュが初期から応援し、後のジブリ作品に結集していくアニメーターの特集展示からスタート。さらに『風の谷のナウシカ』公開からスタジオジブリ設立に至る流れへと続いていく。「アニメージュ手帳」や「ガンダム効果音集」など懐かしい付録の展示も見逃せないポイントだ。
懐かしい付録の展示風景
宮崎駿らの功績については、ここで改めて語るまでもないが、彼らを特集した記事を見ていると、創刊時から一貫したアニメージュの“密度の濃さ”に驚かされる。どのページも右から左まで文字と写真、イラストをびっしりと詰め込んだ内容で隙間なく各作品を徹底考察した誌面に、アニメの作り手の情熱と呼応するかのような当時の編集者たちの熱量が伝わってくる。
宮崎駿関連の展示風景
そして『風の谷のナウシカ』の展示では、「雑誌編集部が映画を作る」という前代未聞のプロジェクトを多数の資料とともに紹介。特に、同作の制作過程が分かる絵コンテや背景美術のセル画が70点以上展示されている空間は感動のひとこと。当時アニメージュの表紙になったナウシカの原画も下絵とともに展示されており、公開から40年近くが経つ今も色褪せない名作の世界をじっくりと堪能できる。
『風の谷のナウシカ』の展示風景
終盤にはナウシカの世界観を再現した空間や、ジブリ作品のアニメージュ表紙の巨大パネルなどフォトスポットがいっぱい。また、前回の開催からプラスされた『となりのトトロ』以降のジブリ作品に関するコーナーもあり、最後の最後まで充実の内容となっている。
『風の谷のナウシカ』フォトスポット
とにかく展示数が多い本展。ここでお伝えできたのは全体の半分程度だ。純粋なジブリファンはもちろん、かつて少年だった人も少女だった人、どちらも楽しめる展示はファミリーのお出かけにも最適。新年の銀座観光と合わせて出かけてみてはいかがだろう。
『アニメージュとジブリ展』は1月23日(月)まで東京・銀座の松屋銀座8階イベントスクエアで開催中。

(c)Studio Ghibli
文・撮影=Sho Suzuki

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