これまでの藍井エイルをぶっ壊す!5
thアルバム『KALEIDOSCOP』徹底解剖
【インタビュー】

本日、2023年1月11日に藍井エイル5枚目のアルバムとなる『KALEIDOSCOP』が発売となった。およそ4年ぶりとなる今作は「これまでの藍井エイルをぶっ壊す!」をテーマに様々な表現や歌唱法にチャレンジした意欲作だ。その名の通りに万華鏡のようにカラフルな全13曲は、聞き進めていくごとにコロコロと表情を変え、僕らを楽しませてくれる。今回はそんな『KALEIDOSCOP』を藍井エイル本人による全曲解説インタビューを敢行。ひと皮どころか、もはや”脱皮”と言えるほどに進化を遂げた最先端の藍井エイル像に迫る。
撮影:鈴木久美子
これまでの藍井エイルをぶっ壊す!
――5枚目かつ、約4年ぶりのアルバムだと思うんですが、まずはどんな1枚に仕上がったのかをお聞かせください。
今回のアルバムは、リリースよりも前にアルバムをモチーフにしたライブがあったので、ちょっと特殊だったんですけど、このアルバムの1曲目に入っている「Kaleidoscope」はライブのSEとして使っていた楽曲なので、遊びに来てくれてた人は「あっ、この曲は!」ってピンと来るんじゃないかなって思いますね。
――昨年12月に行われた10周年記念ライブ『Eir Aoi 10th Anniversary LIVE 2022~KALEIDOSCOPE~ History of 2011-2022』の事ですよね。私もお邪魔させて頂きまして、SPICEにてレポートを書かせて頂きました。
ありがとうございます!
――本当にタイトル通りなんですけど、まさに万華鏡のように色んな表情や表現を感じられるライブでしたし、もちろん今回のアルバムも、キャラクター豊かな楽曲が収録されているなと感じました。今作を表すキーワードを“万華鏡”以外で他に挙げるとすると、何になりますか?
う~ん、そうですね「ほぼベスト」かな(笑)。
――確かに(笑)。この4年間の中でもシングルのリリースも多かったですし、必然的にそうなってしまう感じもありますよね。逆に言い換えれば、それだけこの4年間はご自身としても色々な表現にチャレンジしてきた4年間だったという事にもなるんじゃないでしょうか?
『Kaleidoscope』の最後に「ギーッ、ガチャン!」って扉が閉まる音があるんですけど、そこから2曲目の「心臓」に繋がっていく表現なんかは、結構気に入っているんですよね。
藍井エイル『KALEIDOSCOPE』完全生産限定盤
――その流れは先日のライブを彷彿とさせるし、実質1曲目から最新楽曲の「心臓」という流れは、潔さを感じるというか、“現在”の藍井エイルで勝負していく! って感じがして、気持ちいいですよね。
楽曲的にもいつもと歌い方を変えてみたりした曲が何曲か入ってたりもして「今までの藍井エイルをぶっ壊す!」みたいなのは、確かに今回のアルバムのコンセプトとしてありますね。
――後で1曲ずつ詳しく解説を頂きたいと思っているのですが、先に具体的な曲名を挙げると「HELLO HELLOHELLO」なんかは思いっきりカントリーミュージック調で、その代表例として真っ先に思い浮かびます。
そうですね! あとは「Campanula」なんかも今までにない特殊な曲だと思います。個人的にこのアルバムの中で1番好きな曲でもあり……詳しくは後ほどお話しますね。
――「Campanula」の編曲はCöshuNieさんですが、今作は新たなクリエイターさんも参加されていますよね。一方で「月を追う真夜中」なんかは……。
藍井エイルっぽいですよね!
――ですね!(笑)こちらの作編曲は重永亮介さんですから、もう“これぞ”って感じで個人的には大好きなんですけど、やっぱり改めて振り返ってみても、本当に万華鏡のようにコロコロと印象が変わるアルバムだなと思うわけです。本作をより楽しむポイントをひとつ教えて頂けないでしょうか?
やっぱり、1曲目から通して聞いて頂きたいですね。ライブ同様に万華鏡の世界へ入り込んで欲しいというか、没入感みたいなものを大事にして聞いて頂けたら1番嬉しいです。ライブに来れなかったよって人は、よりその点を意識してもらえると、楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
撮影:鈴木久美子
言葉の持つ”力”を感じた
――先ほど“ほぼベスト”なんて話もありましたが(笑)、今回は新曲が13曲中4曲ということで、そちらの4曲はたっぷりお話を伺いつつ、1曲ずつ振り返っていけたらなと思います。
よろしくお願いします! まずは「心臓」ですね。最新楽曲で、SAOの劇場版の主題歌でもあり、気合いを入れた1曲ではありましたし、アルバムの方向性を決める上でも、割とこの曲ありきで考えていった感じでした。
――劇場版『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ』の主題歌です。先日のライブではバックの映像でMVも出てましたよね! 今回の初回限定版にはMVの他に収録されたスタジオライブの映像も入っているとお聞きしましたし、アルバムの核になっているというお話も納得です。
これまでこんなにAメロが静かな曲もそんなに歌ってこなかったですし、その分の反動がサビでドカン!と来る感じはn-buna節が炸裂してるな! って思いました。
――ヨルシカのn-bunaさんが作詞・作編曲ですよね。先日のライブも踏まえながらですが、実際に歌ってみた感じはいかがでしたか?
実際、めちゃくちゃ難しいです。歌詞のフレーズ的に結構、頬を上げることが多いんですけど、特に1番のAメロなんかはその影響か、イヤモニが浮いてきちゃってズレちゃうって悩みは未だにあるんです。2Aは全然そんなことないんですけどね。
――母音が“o”で伸ばす、みたいなパートが多いんですかね?
そうですね。改めて言葉の持つパワーや、歌うことの難しさに気付かされた曲でもありました。
藍井エイルNew Album『KALEIDOSCOPE』初回生産限定盤A
――続いて「星が降るユメ」についてお聞かせください!
この曲はTAMATE BOXさんに書いて頂いた曲なんですけど、結構わたしの中では斬新でした。1サビ前と2サビ前の拍数が違うんですよ。そこが間違えやすくて、この曲も歌ってる側としては難しいですね。初めて曲を頂いた時も「あ……ええっ! 2番は拍が違うんだ!?」って騙されました。
――聞いている側としては、逆にそこが引っかかって耳に残るというか印象的だし、多分TAMATE BOXさんもそこは狙ってる部分だと思うんですけどね(笑)。
もちろん、わざとやられている部分だとは思っていて「I will...」でもそうなんですけど……、わたしTAMATE BOXさんのことを“たま様”って呼んでるんですけどすごく「たま様っぽいな〜」って思う部分でもありますね。バンドメンバーに聞いたら演奏的にはそんなに難しくないらしいんですけど、歌だけがやたら難しいっていう……。
――エイルさんだけ難しいとなると、その苦労は誰にも分かってもらえないですね(笑)。
そうなんですよ! ぜひカラオケで歌ってみて欲しいです。
撮影:鈴木久美子
いや、ここまで強くないです!私の信念は(笑)
――次は「ANSWER」ですね。この曲は「滾るぜ!」って感じの印象があります。
いや~この曲は、作曲の篤志さんが休ませてくれないんですよ。でも『SAO』のゲームにはピッタリだと思いますし、信念がこの曲を表すテーマだと思うんですけど、それこそがアンサーなのかなって思いますね。
――こちらの曲はアプリゲーム『ソードアート・オンライン ヴァリアント・ショウダウン』の主題歌になっています。この曲も歌うのがしんどいって話ですけど、ある意味一緒に戦っているような感覚で歌えたりするんじゃないですか?(笑)
そうですね、歌っててパワーをもらえる曲ではありますね!
――“信念”がテーマの曲ということですが、今回のアルバムに絡めてお話させてください。途中お休みされた期間もありますが、こうして10年続けてきた藍井エイルとしての活動を踏まえて、ご自身が思う信念に対しての今のところの“アンサー”って何か見えている部分があったりしますか?
いや、ここまで強くないです! 私の信念は(笑)。
一同:(爆笑)
私なんかもう、豆腐メンタルなので……。確かに難しいんですが、歌ってて楽しいんですよ。ギタリストが作ってるので、もうゴリッゴリの曲なんですけど、こういう曲ってファンの方のウケが良いというか、ライブでやると盛り上がるし、喜んでもらえる曲なので、皆さんの楽しそうな顔を見て元気をもらえるというのもあるんですよね。
――5曲目が先ほども名前が出た「HELLO HELLOHELLO」です。とても温かくて……いい曲ですよね。
いや~嬉しい! 初のカントリーです。活動休止前には絶対に歌えなかった曲だなと思います。元々、ボイトレの先生に「エイルちゃんはロック歌いだよね」ってずっと言われてて「声量って大きくなくて良いんだよ。声を拡散させちゃうとただうるさいだけだから、マイクに向かって密度の高い声を集中させる方が大切なんだよ」というのを教わったんですよね。
――この曲もだし「YeLL」もそうだと思うんですけど、前の曲との落差があるから、そういう意味でもコロコロ変わる万華鏡っぽさの演出になっていますよね(笑)。
ですね。歌い方や声色も普段と違うので、歌う時には気持ちを入れないと、油断するとロック歌いのいつもの自分が出てきちゃうので、だから1発で切り替えられる声優さんって本当にすごいなって改めて思います。
撮影:鈴木久美子
藍井エイル流のラブソング
――続いて「PHOENIX PRAYER」ですが、こちらもCöshuNieさんの曲ですよね?
この曲、キーがすっごい高いんですよね。そもそも私、CöshuNieさんが大好きなんですよ! ボーカルの中村未来ちゃんがキー高くてミックスじゃないですか、だから「求められてる……!」と思って頑張りました。
――「泣きたくなるの~」とかめちゃめちゃ高いな! って思いました。
実はそこはファルセットなので、そこまでしんどくないんですが、サビの「どこまでも〜」というチェストの部分がキツいですね。加えて「Campanula」もそうなんですけど、未来ちゃんの作る曲ってレンジも広くて、かなり難しいですね。むりやり友達に歌わせてみたんですけど「歌えるわけないだろ!」って怒られちゃいました(笑)。
――この曲も“ロック歌い 藍井エイル”というのとはまた違った歌唱法のように感じました。
そうですね、低めのパートが新鮮! って言ってくださる方も多かったです。歌詞に合わせて、例えば「今夜はリィンカーネーション」って部分は優しく歌っているし、部分部分でニュアンスを変えてるのもポイントですかね!サビの部分は声出しライブができるようになったらみんなで歌いたいなって思ってます。
藍井エイルNew Album『KALEIDOSCOPE』初回生産限定盤B
――続いては「ロゼ」ですね。こちらは新録の曲になります。
はい! 須田景凪さんに書いて頂きました。この曲はまさに「今までの藍井エイルをぶっ壊す!」というオーダーで書いて頂いて、大切な人に対して素直な気持ちを伝えられなかった、それを後悔しているのが“ロゼ”という主人公になっています。
――具体的に“今までの藍井エイル”をぶっ壊せたな! と思う部分はどこになりますか?
Aメロですかね。ボソボソと切なく歌っていて、サビでは泣きそうな感じという歌い方を試みました。5~6回くらいデモを録ったんですけど、須田さんが「もっとエモく!」っておっしゃってて、それを表現するのが難しかったですね。実際にレコーディング時に須田さんからディレクションを頂いて、すごく納得いったんですけど、この曲は歌詞も須田さんに書いて頂いてるのですが、私はラブソング的にこの曲を捉えていて、藍井エイルの曲としても珍しいんじゃないかなと思いますね。
――確かに、いつも戦ってるようなイメージが強いです(笑)。
そうなんです。須田さんのおかげで、珍しく女性的な曲ができたなと思ってて、これも万華鏡を作る上で重要なピースのひとつになったなと思います。
――1人の女性としては、この曲の歌詞みたいに湿っぽいというか女々しい感じの心情って共感出来ますか?
いや、私はこういうタイプじゃないですね(笑)。どこでもドアとタイムマシンだったら、迷わずどこでもドアを選ぶタイプなので、その辺は案外サッパリしてるのかもしれないですね。後悔してもしょうがない!みたいな。だから表現としても自分の中にある引き出しというよりは、ロゼという主人公を歌いきったってイメージですかね。
――やっぱり藍井エイルは主人公キャラなんですね(笑)。マインドが主人公キャラというか。
いやいや、そんなことないです……、次行きましょうか!(笑)
2つの“藍井エイル”
――次は「月を追う真夜中」です。「藍井エイルをぶっ壊す!」がテーマではあると思うんですが、個人的にはこの曲がすごく好きで……。
いや、ありがとうございます! 重永さんも喜ぶと思います。この曲はTVアニメ『グランベルム』のOPテーマなんですが、私自身もすごく楽しみながら歌詞を書き進めてた印象が強いですね。
――アニメの内容をかなりピックアップされてる歌詞かなと思ったのですが。
そうですね! 月がテーマになっている作品なので歌詞のあちこちに散りばめつつ、最終的に「もう真夜中は月を追いかけない」って書いてみたり、本当に楽しみながらスラスラと書けたんですよね。割と重永さんの曲はいつも歌詞が書きやすいというのもあるんですよね。
――続いて「アトック」です。
この曲はこのアルバムで最もどんよりとした歌詞ですね。過去の自分の事とファンに向けてのメッセージを込めました。
――ここで言う「過去」はどのくらい前を指しているのでしょうか?
デビュー前ですかね。「吐き気がするほど嫌いな自分を見えない場所に隠して」という歌詞も、見ないふりして自分をごまかすような、騙し騙し頑張る自分に嫌気がさしつつ、それでもやるしかない……みたいな負のスパイラルに入っちゃってて。今思えば無いものねだりだったな~と思うのですが。
――なるほど、じゃあ10代の頃の自分という事ですよね。でもそういう“若さゆえの驕り”みたいなのは誰しも経験あるんじゃないでしょうか。
「アトック」は歌詞を書き上げてみたはいいものの、自分でも思ってた以上にダークな感じになってしまって、スタッフさんとかに「これ、大丈夫ですか……?」って恐る恐る見せてみたり……(笑)。
――ちょっと“闇”出しすぎちゃったかな? みたいな(笑)
でもファンの方は全然、そんな心配してなかったみたいで。多分、活動休止前の自分が歌ってたらめちゃくちゃ心配されてたかもしれないですけど。今は元気いっぱい! っていうのが伝わっているので、ひとつ壁を乗り越えたからこそ、自信を持って出せる曲だったりします。
――お待たせしました! 続いてエイルさんイチオシの「Campanula」です。ぜひ存分に語って頂けると……!
未来ちゃんと5時間くらい電話をして、色々と聞いてもらったものを第三者目線で曲にしてくれたのが個人的にはすごく面白いなと思っていて。活動休止中のことだったり、仕事が忙しすぎてシンドかったり、思うように歌が歌えなくなってしまったり、辛いことも今になって振り返ってみると、ちゃんと糧になって成長できたなって思えるので、それを未来ちゃんにお話して、作ってもらったって感じです。
藍井エイルNew Album『KALEIDOSCOPE』通常盤
――「駆け下りた フラフラと今にも転びそうな足で」という歌い出しは、まさにそのお話を表していそうですね。
デビューからずっと駆け抜けっぱなしで、走り続けることしか出来なかった私なんですけど、今はちゃんと自分のペースで歩くことも出来るようになったと思っていて、この曲の歌詞を見る度にそのことを思い出しますね。
――自己紹介的な曲は、変な話自分で書けばいいですけど、誰かに自分を表現してもらうって、信頼関係がないとなかなか納得いくものを作ろうにも難しいと思います。
いや、5時間の電話ってなかなかですよね(笑)。
――でも、アルバムの1番に挙げられるくらいには納得いく仕上がりになりましたから。
「真っ二つ 乖離する錆びた影」という歌詞も、歌は歌っていたいけど、疲れ果てて何もしたくない自分が存在してた時期を思い出したりしますね。だけど「君がいる今に繋がっているんだから」という歌詞にあるように、やっぱりファンの皆さんの前で歌いたい気持ちが現在に繋いでくれたっていう私の中の想いまで、全部汲み取ってくれてるなって感じますし、おっしゃる通り、自分で書いたら絶対こうはならないだろうなって歌詞だと思います。
――なんとなく「アトック」と対照的な仕上がりにもなっているように感じますよね。
確かに! この並びは意図的ではなかったんですが、「アトック」も「Campanula」も自分のパーソナルな部分について触れている楽曲ではあって、前者は私が主観的に歌詞を書いてて、後者は未来ちゃんに第三者目線での藍井エイルを描いてもらったのが、客観的な感じがより際立っていますよね。
――曲順はどのように決まっていったのでしょうか?
『KALEIDOSCOP』ということで、カラフルで飽きがこないアルバムにしたかったので、曲のジャンルがコロコロと変わるような並びにしたかったんですよね。それで当てはめていった結果、「アトック」と「Campanula」が並んだって感じなんですけど、それ以上にいい並びになったような気がします!まあ、どっちにしろダークっていう。
撮影:鈴木久美子
令和のアニソンの作り方
――11曲目はTVアニメ『バック・アロウ』2nd OPテーマの「鼓動」です。
これはすごい藍井エイルらしい楽曲かなと思いますね。この曲は山田竜平さんに書いていただいた曲なんですが、同じく山田さんの曲で「翼」という曲があるんですけど、「翼」同様にこの曲もブレスが全然なくって。山田節が効いてますね。
――篤志さんもですが、山田さんも息をさせてくれないんですね(笑)。
そうなんですよ、なんか皆わたしに厳しいんですよね(笑)。ブレスもですが、がならせて歌うパートもあるので、喉にも負担がかかる曲なので、やっぱりライブとかではキッツイですね~。
――初っぱなからフルスロットルな感じで、藍井エイルらしさ全開! ですよね。
サビ始まりですし、そうですよね。藍井エイルの曲、サビ始まりなことが多いですからね。この曲に関しては私の希望で「サビ始まりにしてください」ってお願いしているんですけど。というのも、最近はサブスクでアニメを見る方も多いと思うんですが、OPってスキップしたくなっちゃうじゃないですか。いかにスキップボタンを押させないか? みたいなテーマもあって。それで最初から全速力で、ギアを落とさず最後まで駆け抜ける曲にしたかったんですよね。
――確かに、最初の5秒で掴まれるようなキャッチーさが令和のアニソン事情には求められてるかもしれませんね。
飛ばさないで! って思いますけど、飛ばしちゃいますよね(笑)。それで言うと「I will...」も同じです。この曲はEDテーマですが、EDはボタンを押さなくても勝手に飛んじゃうじゃないですか。それをさせたくない! っていう。
――あれ、結構困るんですよね! 聞きたいのに! って時も勝手に飛ばされちゃうから。
飛ばさせない工夫として「何か欲しい!」と思って、出来たのがイントロの「wow wow~」だったんですよね。でも入れてみたらそこが1番キツいっていう。
――「I will...」はTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』第2クールのEDです。
私、この曲は歌うといつも泣いちゃいそうになるんですよ。ユージオのことを思い出してエモすぎて……。
――ユージオ……(泣)。アリスも出てきましたけど、アリシゼーションはやっぱりキリトとユージオの物語だったなと思います。
「どれだけ遠く 離れてしまっても 変わることなく 繋がっていく 繋がっている」という部分が1番グッと来ちゃいますね。この曲はもちろんユージオをモチーフに、そんなユージオからキリトへの手紙をテーマにして歌詞を書き上げていったんです。「長い眠りは どれ程の想いを作ったのだろう」とか「夜を乗り越えるたびに 酷く怯えてしまう君」って歌詞はキリトが置かれた状況を表していますよね。そこから「泣かないで誰より優しい人よ」って歌詞に繋がるんですが、出来上がったEDの映像を見た時に、もう鳥肌が立っちゃって。
撮影:鈴木久美子
藍井エイルから父への“YeLL”
――映像とバチっとハマってましたよね……。そして最後が「YeLL」です。先日のライブではサプライズ演出もありました。
タイアップさせていただいている日本工学院さんのダンスパフォーマンス科の生徒さんにご協力いただいて、一緒にライブを盛り上げて頂いたんですが、一個ずっと後悔してることがあって。最後に「ダンサーの皆さんにお見送りをしてください! 拍手おねがいします~」って言ってるつもりだったんですが「お出迎えお願いします~!」って言ってて、しかもそれでハケていくという(笑)。よくわからない状況すぎて、やっぱり私は何かしらドジをするんだな……と。
――その前にトロッコでぐるりと会場を回られてた時も、最後に階段から降りるときも結構足元が危なっかしくて、ヒヤリとしました(笑)。
階段が急で怖かったんですよ! なんかクスクスされてるの聞こえてましたからね!(笑)
――話がそれちゃいましたが、万華鏡がテーマのアルバムの最後がこの曲っていうのは非常に意味があるなと感じています。
やっぱり学生の皆さんだったり、夢を持つ人への応援歌のつもりで作った曲なので、ハッピーな気持ちでアルバムが終えられたらいいなと思いまして。例えば両親だったり、大切な人への感謝の気持ちってなかなか面と向かって言うには勇気がいるじゃないですか、だから「今から私の手紙を読みます 恥ずかしがらずに聞いてくれるかな」と手紙形式にしたんですけど、夢って大きければ大きいほど後ろ指をさされがちじゃないですか。それを恥ずかしがらずに、胸を張っていいんだよ! というのを伝えたくて、こういう曲の入りにしましたね。
――特に今のSNS世代の人たちにとっては、余計にそういう面と向かって感謝を伝える機会は少ないかもしれませんよね。
本当に、結婚式くらいなんじゃないですか? 私の場合は、父親がずっと歌手になることを応援し続けてくれてて、奇跡的に歌手として10年も続けることが出来ているので、ぜひ夢を持つ皆さんの背中を押せるような曲が歌えたらなと思って作りましたね。
――ではある意味、この曲はエイルさんからお父さんへのメッセージでもあるわけですね。
うーん……まぁ、そういうことにはなるんですけど、絶対にこのインタビューは読んでほしくないですね(笑)。
――大丈夫ですか、書いちゃっても?(笑)
書いちゃっても大丈夫なんですけど、絶対に読ませないですね(笑)。

撮影:鈴木久美子
――-夢がテーマの曲ですが、それでこそ先日の10周年ライブは「アリーナでやりたい!」という夢をまたひとつえられたわけですし、11年目を迎えた今後の夢は何かありますか?

それで言うと、熊本でライブがやりたいです! 3rdアルバムの「D'AZUR」ツアーの時に、ちょうど大地震が起きちゃって、熊本公演が出来なかったということがありまして、絶対に熊本でライブがやりたいんですよね。
――なるほど、それは絶対に叶えて頂きたい夢ですね。最後になりますが、そんな11年目に向けての意気込みや、ファンの方へのメッセージをひと言お願いします!
正直に言うと、ここまで歌手活動を続けられるとは全然思っていなくて。過去の自分に「あなた10年も歌手続けられるよ!」と言っても信じてもらえないくらいなんですけど、何よりも歌手を続けていられるのは応援してくれる人がいるからで、私のファンの皆さんは本当にマナーがよくて優しい方々ばかりなので、そんな皆さんが私の誇りでもあります。そんな皆さんへの恩返しのアルバムになったのかなと思いますので、今後とも何卒よろしくお願いします……!
取材・文:前田勇介 撮影:鈴木久美子

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