L→R 招鬼(Gu&Cho)、狩姦(Gu&Cho)、黒猫(Vo)、瞬火(Ba&Vo)

L→R 招鬼(Gu&Cho)、狩姦(Gu&Cho)、黒猫(Vo)、瞬火(Ba&Vo)

【陰陽座 インタビュー】
20年を経た陰陽座を
そのままかたちにした
作品を作りたかった

黒猫の歌が好きで、聴きたいから
陰陽座の音楽を作っている

この機会に、陰陽座の大きな魅力のひとつになっている黒猫さんと瞬火さんによるツインヴォーカルの成り立ちについてうかがいたいのですが。

僕は最初に始めた楽器はギターだったのですが、陰陽座を結成する時になぜか突然ベース兼ヴォーカルがやりたくなったんです。それは、黒猫という絶対的なヴォーカルがいるからできたことで、僕だけが歌うバンドはまったくやろうとは思っていなかった。そういう感じで始まって、今に至っています。

思い立ったことが、いい結果を呼びましたね。“この曲はふたりで歌おう”というようなことは、曲を作る段階から決めるのでしょうか?

曲を作っていく中で自然に決まりますね。浮かぶメロディーは声で聞こえてくるので、黒猫の声が聴こえたらそこは黒猫パートだし、うるさいおっさんが出てきたと思ったらそこは自分だなと(笑)。曲を作ってから“どっちにしようかな?”となることは、ほぼほぼないです。ヴォーカルがふたりいるからって、均等にパートを割り振ることはまったく考えていないですし、むしろツインボーカルではあるけど、とにかく黒猫の声があれば間違いないという信念が僕の中にはあって。男性の声で歌ったほうが説得力が増す、あるいは情景が浮かびやすいところは僕が歌えばいい、そういう配分になっています。

とはいえ、瞬火さんはとても歌がうまくて…

いや、それはないです!(笑)

ええっ!? “うまい”と言われることに抵抗があるのでしたら、“いい歌”を歌われます。

抵抗があるわけではなく、黒猫と比べれば“うまい”と言われるのがおこがましい気がするだけです(笑)。もちろんありがたいですし、“いい歌”という表現もさらに嬉しいです。

歌声がすごく魅力的ですし、ストレートな歌唱からシャウトまで幅広いスタイルをこなされますよね。歌にも高い意識を持って向き合っていることを感じます。

いやいや。僕の中の率直な気持ちで言うと、やっぱり黒猫の歌が本当に好きなんですよ。黒猫の歌しか好きじゃないというほど好きで、それが聴きたいから陰陽座の音楽を作っているくらいなんです。ただ、人間のことを歌うには…男女が人間の全てという意味ではないですが、生物としてオスとメスという意味で言うと、メスだけが歌うのでは人間の全てを表現できるとは言い難いですよね。オスが歌うということも活かして人間というものを広く歌おうとしているので、僕が絶対的に信頼している黒猫の歌に挟まって自分のパートがあることで自分の作りたい音楽になっているんですけれども、自分の歌い手としての能力はさして期待しておらず。必要なところに必要なものを充てているだけの感覚です。あまりに自分を卑下すると聴いてくださっている方に失礼なので、“いい声だね”と思って聴いてもらえるのは心から嬉しいですけど、僕は歌い手としてというよりも、曲を作ったり、プロデュースしたりする目線で自分に役割を与えている意識が強いです。

瞬火さんの歌も本当に魅力的です。では、今作の楽曲でご自身の歌唱面で特に印象の強い曲を挙げるとしたら?

強いて挙げるなら「白峯【しらみね】」ですね。この曲は「白峯」という物語に出てくる西行法師の役を黒猫がやっていて、怨霊の崇徳院の役を僕がやっているんですけど、その崇徳院が自分の恨みとか怒りといったものを吐露して、どんどん怒りが増していって、それこそ雄叫びを上げたりもするんです。そんな崇徳院の気持ちを考えて歌ったり、叫んだりしているんですけど、そこの部分を歌っている時に、自分の中に崇徳院が入ってきて、自分ではなくて崇徳院が想いを吐き出しているような感覚になった瞬間があって。そういう意味で、印象が強いですね。でも、むしろ黒猫は全曲ずっとそうなんですよ。彼女は常にそれができる歌い手なんです。

いわゆる憑依タイプですね。もうひとつ、『龍凰童子』のベースのプレイについてもお願いします。

ベースは何も語るべきものがないというか(笑)。ベーシストとしてうんぬんよりも、完全に楽曲に対して何が必要かという観点で弾いているんです。もちろんいろいろなスタイルがあって、もっとベースが主張する音楽も好きで聴きますし、陰陽座でそれをする余地がないこともないでしょうけど、それよりも歌であったり、他のものが主張するほうが自分の作りたいものに近い。なので、自分のベースは文字どおり楽曲のベース部分を支える役割でよくて、むしろそれが自分の誇りになっています。

確かに、重厚さやスケール感を増幅する役割を果たされています。さて、『龍凰童子』は4年半待った甲斐のある上質な一作になりました。本作のリリースから始まる2023年は、どんな一年にしたいと思っていますか?

こういうアルバムが完成して、発表することができたので、当然次はライヴのステージに立つということをファンのみなさんは期待しているでしょうし、それは僕たち自身も同じです。なので、ライヴの再開を実現できる年にしたいですね。ただ、まだ世の中の状況が微妙だということがあって、特に音楽イベントは規制がある状態じゃないですか。いつになれば自分たちとしても、世界的にももとに戻ったと言えるのかはまだ見えないけど、一日も早くライヴができるようになってみなさんと会えることを熱望しています。まずは、『龍凰童子』をじっくり聴いてもらえると嬉しいです。

取材:村上孝之

アルバム『龍凰童子』2023年1月18日発売 KING RECORDS
    • KICS-4092
    • ¥3,300(税込)
陰陽座 プロフィール

オンミョウザ:1999年、大阪にて結成。“妖怪ヘヴィメタル”という惹句を掲げ、人間のあらゆる感情を映す“妖怪”を題材とし、道なき道を切り開く信念を“ヘヴィメタル”の名の下に貫く。正統的ヘヴィメタルを音楽性の基盤としながらも、男女ツインヴォーカルとツインリードギターによる変幻自在な表現により、日本文化に徹底的に拘った唯一無二の世界観を結成時から現在まで淀みなく展開。自主製作で2 枚のアルバムを発表した後、 2001年にシングル「月に叢雲花に風」でメジャーデビュー。以降、精力的な音源制作はもちろん、すでに全都道府県を2 周しているという事実が物語るように、生粋のライヴバンドとしても歩を緩めることなく邁進中。安易な“変化”よりも“進化”と“深化”を信条とし、“上”ではなく“前”に向かって着実に歩み続けることを最大の理念として実行する、極めて希有なバンドである。陰陽座 オフィシャルHP

『龍凰童子』SPOT CF

「茨木童子」MV

OKMusic編集部

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