L→R 招鬼(Gu&Cho)、狩姦(Gu&Cho)、黒猫(Vo)、瞬火(Ba&Vo)

L→R 招鬼(Gu&Cho)、狩姦(Gu&Cho)、黒猫(Vo)、瞬火(Ba&Vo)

【陰陽座 インタビュー】
20年を経た陰陽座を
そのままかたちにした
作品を作りたかった

黒猫(Vo)の喉の不調により活動を休止させていた陰陽座から4年半振りとなるアルバム『龍凰童子』が届けられた。彼らならではのメロディアスなメタルチューンを核としながら、より表情の幅を広げた同作はブランクを感じさせないどころか、さらなるパワーアップを果たしたことを実感させる。リーダーを務める瞬火(Ba&Vo)が新作について語ってくれたインタビューをお届けしよう。

王道ではなく覇道を歩んでいる
バンドだという自覚がある

『龍凰童子』はどんなテーマのもとに作られたアルバムなのでしょうか?

“次のアルバムはこういうタイトルで、おおむねこういう内容で…”ということは、もう数年前から決めていました。いろいろあって実際に着手するのは予定よりも遅くなりましたが、結成20周年を超えて最初に出すアルバムであることは分かっていたので、自分たちは20年も続けられると思ってはいなかったけれども、一歩一歩前を見ながら歩んできたから、バンドが20年を経て今なおそこに立つことができているということを、そのままかたちにした作品を作りたいと思っていたんです。タイトルの“龍凰童子”というのも、陰陽座の家紋があるんですが、龍と鳳凰が象られていて、それはそのふたつの霊獣の力を身に纏った、ある意味音楽シーンの中で鬼のような立ち位置…王道ではなく覇道を歩んでいるバンドだと自覚があるからなんですね。なので、“龍凰童子”は“陰陽座”という名前を言い換えただけとも言えるタイトルなんです。

アルバムに込めた想いの深さを感じます。では、新作に向けて曲を作っていく中で、キーになった曲などはありましたか?

しばらく活動が止まっていた中で、また黒猫が歌うんだということを宣言する役割を担っているのがアルバムの実質的な1曲目の「龍葬【りゅうそう】」です。この曲の最初の歌い出しが浮かんだ時、このアルバムはこの曲で始まるんだと確信を持ったし、これで始まるということは想定しているとおり、あるいはそれ以上のアルバムになると確信を持つことができた。そういう意味で、「龍葬【りゅうそう】」の存在は大きいですね。

「龍葬【りゅうそう】」は力強さと抒情性を併せ持った魅力的なファストチューンで、アルバムの幕明けに相応しいです。歌詞は“龍よ、身空を駆けろ”ということを歌っていますね。

龍には音楽を司る霊獣という側面もあるんですね。この曲は龍が雨を得て、雷を身に受けて、天に昇る情景を描いていて。それはまさに、しばらく歌えなくなっていたけれど、歌声を取り戻してまた歌う黒猫のこと、もしくは黒猫の歌声が龍となって天に昇っていく情景をそのまま歌っているような感覚なんです。だから、龍という空想上の生き物について歌っているというよりは、自分たちの信念であるとか、自分たちの状況を龍になぞらえて歌っている曲なんです。

歌詞も必見ですね。そんな「龍葬【りゅうそう】」を筆頭に、『龍凰童子』は流麗なメロディーとへヴィ&ソリッドなサウンド融合させた良質なメタルチューンが核になっていて。

そこに関しては基本的に黒猫というヴォーカリストが歌うことが前提なので、メロディックなものにしかならないというか。それもありますし、個人的に聴く立場で言えば、ずっと叫んでいるメタルとか、まったくポップさの欠片もないようなものも好きなんですよ。でも、それをそのままやるのは陰陽座ではないので、例えばアグレッシブな要素を取り込むとしても、あちこちをフラフラしているというような印象ではなく、“それもこれも陰陽座なんだ”というかたちにしています。激しくても、静かでも、何にしてもメロディーがあって、そうかと言ってメロディーを聴かせたいからと他が軟弱にはならずに、あくまでもヘヴィメタルとしての猛々しさを備えて…というのが、自分たちがずっとやってきたことなので。最近はいろんなスタイルのメタルがありますが、それに左右されて陰陽座が本筋から離れていくことはないと思います。

頼もしいですし、正統的なメタルテイストを保った上でモダンなテイストを巧みに散りばめていることも陰陽座の魅力になっています。

そう言っていただけると安心です。ただ、仮にレトロな雰囲気だと思われることがあったとしても、それも別に2020年代だから80年代っぽいことをやってはダメだということはないし、逆に今っぽいことをやるのがダメだということもなくて。確かに80年代には80年代の、90年代には90年代の匂いがありますが、“こういうリフは80年代だ”とはっきり選別できるわけでもないですから、あまり年代的なことは考えていないですね。日々いろんな音楽を聴いたり、自分でギターを弾いたりしている時に、面白いと思ったものを取り入れていくだけです。

バンドの可能性を自ら狭めることはされないんですね。実際『龍凰童子』はいろいろな曲が入っていて、例えばピアノとストリングスを使った美麗な世界観からヘヴィに展開する「月華忍法帖【げっかにんぽうちょう】」はどこか演劇的な雰囲気もあります。

僕は演劇はあまり明るくないので積極的に意識したことはないですけど、結果的にそう感じていただけるとしたら、それは楽曲の物語を黒猫が演じるように歌っているからだと思います。ずっと陰陽座を追いかけてくださっている方じゃないととらえづらいと思いますが、陰陽座の過去の作品に、無敵の強さを誇りながら葛藤や懊悩を抱えたくノ一が何度も登場しているんです。シリーズ的にそのストーリーが語られてきていて、今回の「月華忍法帖【げっかにんぽうちょう】」はその最後の戦いの一歩前を描いているんですよ。そのキャラクターの背景とか心情の部分、それに加えて戦いの部分を描くために必然と物語的になるというか、演劇的になっているんだと思います。ただ単に楽曲展開のギミックとして静かになったり、激しくなったりするんじゃなくて、ストーリーを語っているという背景を感じ取っていただけたんじゃないかと。

だからこその深みが生まれていることは間違いないです。それに、今作で陰陽座と出会ったリスナーは、そのくノ一が主人公の過去曲も聴きたくなるでしょうね。

ぜひ聴いてほしいですね。いくつかのバンドさんやアーティストさんでも、自らの音楽世界の中で人物だったり、テーマだったりを脈々と楽曲を通してつなげている事例があると思うんですよ。陰陽座の中にもそういうものがいくつかあって、黒猫がそのくノ一の役になって心情を歌うシリーズという意味では、今回のアルバムに入っている「静心なく花の散るらむ【しずこころなくはなのちるらん】」という曲も実は同じ物語の延長線上にあって、その曲を経てこのシリーズの物語は完結するんです。

えっ! 終わってしまうんですか!?

はい、終わりました。

ちょっともったいない気も…。

でも、いつ作品を作れなくなるかもしれない中で、出し惜しみをしてストーリーが完結しないまま終わってしまうのはもっともったいないですから。今回のアルバムを久しぶりに作れたこと自体が当たり前ではないし、もう曲もできていたので、そのストーリーはここで完結させることにしました。
L→R 招鬼(Gu&Cho)、狩姦(Gu&Cho)、黒猫(Vo)、瞬火(Ba&Vo)
アルバム『龍凰童子』

OKMusic編集部

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