SUPER BEAVERらしい美学を見た、アリ
ナーツアー最終公演をレポート

都会のラクダSP ~ 東京ラクダストーリービヨンド ~

2022.12.25 ポートメッセなごや 新第1展示館
柳沢亮太(Gt)、上杉研太(Ba)、藤原“34才”広明(Dr)によるオープニングのジャムセッションからなだれこんだ「東京流星群」――。このアンセミックなロックナンバーは2010年代の前半、まだSUPER BEAVERがライブハウスだけで戦っていた頃、シーンに一撃を食らわすために作った曲だった。その後、彼らの代表曲となってからはミラーボールを使って、流星群を演出しながら、ライブのクライマックスでやることが多くなった、その「東京流星群」をこの日、SUPER BEAVERはいきなり1曲目に――しかも、渋谷龍太(Vo)がメインステージからアリーナの真ん中に真っ直ぐに伸びた花道の先にあるセンターステージで歌いながら披露したのだから、今回のアリーナツアーに挑むバンドの向こう意気を感じずにいられなかった。
撮影=浜野カズシ
そして、そこから「楽しむ準備はできてますか!? あなたと一緒に最高の音楽を奏でにやってきました!」(渋谷)、「さあ、やろうぜ!」(柳沢)と、それぞれに声を上げながら、「スペシャル」「証明」とアップテンポのロックナンバーをたたみかけたところで、渋谷はこう言ったのだ。
「本日がツアーファイナルです。だからって特別なことをする気は残念ながら一切ありません。今までやってきたみたいに18年目の新人として、今夜を過去最高の夜にすることしか俺達にはできません!」
SUPER BEAVERの4人がこのツアーファイナルをどう位置付けているのかを物語っているような言葉だったと思う。実際、『都会のラクダSP ~ 東京ラクダストーリービヨンド ~』と掲げ、横浜、大阪、東京、名古屋と回りながら、各地2公演ずつ開催した4都市8公演という自身最大規模のアリーナツアーを大成功させるという特大のマイルストーンを打ち立て、その達成感をしっかりと噛みしめながら――早々と結論を言ってしまえば、SUPER BEAVERの4人がこの日、ステージで繰り広げたライブの一番の見どころは、ここまでたどり着いたという感慨よりもむしろ、18年目よりもさらに華々しい19年目に向かうための助走に思えたところにあったと思う。
撮影=青木カズロー
そんなことを考えながら、1曲1曲、胸の内に去来するさまざまな思いを噛みしめながら4人の熱演を見ていた筆者を含め、会場に集まった観客やWOWOWの生中継を見ていたファンを最後の最後にダメ押しで歓喜させた“重大発表”に、やっぱり!と快哉を叫ばずにいられなかったが、まずは順を追って、2時間の熱演を振り返っていこう。
「俺たちだけでやる音楽ではなく、あなたと一緒にやる音楽をやりたい。SUPER BEAVERの音楽とは何なのか? 18年目の今日、改めてこの場所で俺たちとあなたとで再提示できたら最高だと思ってます!」
改めて、この日のライブに臨む気持ちを渋谷が語ると、バンドは途中にリフで聴かせるグルーヴィーな演奏、人間が本能として持つ葛藤を歌う歌詞ともに変化球と言える「VS.」を織りまぜ、ライブの流れをうねらせながら、「ラヴソング」「突破口」、アリーナツアーの真っ最中にリリースした新曲「ひたむき」、そして「名前を呼ぶよ」といったアンセミックなロックナンバーの数々を披露。「ジャンプ! ジャンプ! 跳べ! 跳べ! もっと来いよ! 足りないぞ!」と檄を飛ばすように観客を鼓舞する柳沢をはじめ、4人が一丸となったエネルギッシュな演奏に加え、「ひたむき」の《いつだって今日が人生のピーク 超えて行け》をはじめ、1曲1曲に刻み込んだSUPER BEAVERの歩みそのものと言える、それこそひたむきなメッセージで1万人以上が集まったスタンディングのアリーナを熱狂させていく。
撮影=浜野カズシ
そして、中盤では、「誰に頼まれるでもなく、俺たちがライブを何本もやったり、新しい情報をいくつも出したりするのは、あなたに歓んでほしいと勝手に思っているから。もし歓んでくれたら、それが約束になるから。その約束は生きてないと果たすことができない。だから、何度も未来の話をしよう」と渋谷が曲に込めた思いを語った「未来の話をしよう」をはじめ、「人として」「your song」といったバラード/スローナンバーも披露。
「(最後列の観客までの)距離としては最大。ただ、アリーナでやると決めた時から、一番近くで歌えないならやらないと思ってた。一番後ろまでしっかりと一番近くで歌います」(渋谷)
渋谷らしい表現で観客に語りかけた、そんな思いととともに1曲1曲、暗転を挟んで、じっくり聴かせ、アップテンポのロックナンバーで熱狂させるだけがSUPER BEAVERじゃないとアピールするアリーナならではの演出も心憎い。
撮影=青木カズロー
「一緒に音楽できている感じがします。あなたがいなかったらできないと恥ずかしげもなく言えることがめちゃくちゃいいと思うんですよ。そういうことを素で思います。めちゃくちゃ感謝してます」(渋谷)
「メリークリスマス! そんな日に来てくれてありがとう。逆にクリスマスだから俺らに会いたかったのかな。うれしい! ひきつづき楽しんでね!」(藤原)
「人生でこんなに集中して、何かと向き合うクリスマスは初めて(笑)。とりあえずアリーナツアーがファイナルまで無事に開催できて幸せです。これからもバンドはいろいろと動いていくので、今年はもう終わっちゃうけど、来年もいっぱい楽しいことがあるので、これからもついてきてください」(上杉)
「自分たちにとって初めての規模の4都市8公演のアリーナツアーが無事開催できてうれしく思います。本当に、あなたのおかげだと思います。スタッフチームにも大きな拍手を! おかげで我々とあなたで楽しくやれてます。改めて、クリスマスに、こんなにいい顔を見せてくれてありがとうございます!」(柳沢)
撮影=浜野カズシ
メンバーそれぞれにアリーナツアーのファイナルを迎えた感慨を語ってからの後半戦は、「みなさん、ジャンプの時間です!」という渋谷の言葉から始まった。
「俺達はライブハウスから来たんだって言ったよな? 俺はここであなたとライブハウスを作りたい!」(渋谷)
「さあ、やるぞ!」(柳沢)
「全力を見せてくれますか!? お手を拝借!」(渋谷)
お手を拝借と来たら、ゴスペルのハンドクラップを織りまぜた「美しい日」だ。観客のハンドクラップがアリーナに鳴り響く中、渋谷がアカペラで歌いながら花道に躍り出る。そこから「アイラヴユー」を挟んで、繋げた「秘密」はSUPER BEAVERのライブには欠かせないシンガロングアンセムだ。観客が声を出せなくなったコロナ禍以降、セットリストから外されていたが、声を出せない観客の代わりにメンバーたちがシンガロングを加え、いつしかセットリストに復活。この日も柳沢、上杉、藤原が渾身のシンガロング!
「気持ちだけしっかり飛ばしてね!」という渋谷のリクエストに応え、精一杯、手拍子で応えた観客のことを、渋谷は曲間のメンバー紹介で、「ギター柳沢亮太、ベース上杉研太、ドラム藤原“34”才広明、ボーカル渋谷龍太と、あなたでSUPER BEAVERです!」と称えたのだった。
撮影=青木カズロー
「来年の4月1日で19年目に突入するわけですけど、これまでの時間、すごく助けてもらいました。あなたにね。期間ではなく、気持ちの厚さで助けてもらいました。そんなふうに助けてもらえて、支えてもらえたSUPER BEAVERというバンドをめちゃくちゃ愛しく感じます。俺が大好きな人に、俺たちが愛してると恥ずかしげもなく伝えられるような人に好きだと言ってもらえるバンドだからこそ、俺たちはSUPER BEAVERというバンドを心の底から愛することができてます。実はこれからも助けてもらいたいし、支えてもらいたいと思ってます。だからってやられっぱなしのバンドではイヤだから、俺たちの音楽が鳴っている時間は全力で支えるし、助けると心に誓います。まだまだ助けてもらいますし、支えてもらいます。俺たちも支えますし、助けます。これからも末永くよろしくお願いします!」(渋谷)
撮影=浜野カズシ
そんなふうに未来の話ができる関係を、《なんて贅沢な人生だ》と歌う「東京」から、「残り2曲は完全にライブハウスの時間です!」(渋谷)と「青い春」と「最前線」とたたみかけるように繋げ、本編は終了。ライブが終わったあと、観客を鼓舞するように明日に送り出す「最前線」では、ツアーファイナルの成功を祝うように銀テープが放たれる中、《行け 行け 行け 最前線を 行け》とメンバーたちが声を重ねる渾身のシンガロングがどれだけ観客の気持ちを鼓舞したことだろう。
撮影=青木カズロー
そして、前述したように来年7月22日と23日の2日間、富士急ハイランド・コニファーフォレストでSUPER BEAVERにとって最大のキャパとなる初の野外ワンマンライブ『都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~』を開催するという重大発表が! しかし、初の野外ワンマン2デイズを開催することもさることながら、それに対する気持ちを、バンドを代表して語った渋谷の言葉が重要なのだと思う。
撮影=浜野カズシ
「ライブハウスでもホールでもアリーナでもコニファーフォレストでも、前だろうが、横だろうが、後だろうがって、そんな気持ちです」
たぶん、そこでも渋谷はこの日と同じように、「特別なことをする気はありません」と言うのだろう。そして、僕らはまた、それを何らかの助走だと感じるのだと思う。思えば、これまでもSUPER BEAVERはそんなふうに、いつもと変わらない風情でバンドのキャリアにおけるマイルストーンと言える大舞台に立ってきたではないか。
「俺たちが、そして俺たちでSUPER BEAVER!」(渋谷)
アンコールは、「ロマン」ただ1曲のみ。《それぞれに頑張ってまた会おう》と約束するだけでよかったのだろう。それ以外の曲はただ蛇足になるだけだ。そこにSUPER BEAVERらしい美学を感じたりも。そして、柳沢、上杉、藤原がアウトロを奏でる中、渋谷の言葉がアリーナに響き渡った。
「最後に一言! めっちゃ愛してます!」
撮影=青木カズロー

取材・文=山口智男
撮影=青木カズロー、浜野カズシ

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