YAJICO GIRLとodol、『YAJICOLABO 2
023』大阪公演で残した余韻と未来

12月18日(金)に、大阪・梅田クラブクアトロにて開催された『YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』のオフィシャルレポートが到着した。
YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』2022.12.18(FRI)大阪・梅田クラブクアトロ
多彩な音楽性をないまぜにしたグッドミュージックを鳴らす大阪出身の5ピース・バンド、YAJICO GIRL。彼らがシンパシーを感じるアーティストをゲストに迎えたツーマン・イベントの第2弾『YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』の大阪公演が、12月18日に梅田クラブクアトロにて開催された。2022年1・2月に行われた第1弾では、BBHFYONA YONA WEEKENDERSを迎えた2DAYSで、対バンならではのケミストリーを見せてくれた彼ら。今宵のお相手・odolについて、四方颯人(Vo)は「(odolのライブ後は)いい小説を読み終わった後やいい映画を観た後の帰り道と同じ感覚になって、「音楽っていいなあ」と思った。帰った後もまだ余韻が残っていて、YAJICO GIRLにもそういう部分はあると思ってるので、「よかったなあ」って染みる一日を作ることができれば」とコメント。コラボレーションとラボ(=実験室)をかけたタイトルの通り、この日だからこそ、この組み合わせだからこそ生まれた一夜となった。
■odol
odol
柔らかなライティングがステージを満たす中、「光の中へ」からodolの時間が始まる。マーチング風のドラミングを起点に、じわじわとこの夜への期待感を増幅。続く「泳ぎだしたら」では、ミゾベリョウ(Vo.G)と脇を固めるサポートの西田修大(G)のドラマチックなツインギターに、森山公稀(P.Syn)が奏でる澱みのない音色が絡み合い、全身が心地よく浸食されていくようだ。続く「four eyes」では、「皆さん、自由なスタンスで楽しんでください」(ミゾベ)との言葉どおり、立って全身に音を浴びる者、着座で魅入られたようにじっと聴き入る者と、思い思いに過ごすオーディエンスの姿が何とも印象的。Shaikh Sofian(B)やサポートの深谷雄一(Dr)の躍動するリズムに思い切り身を任せたくなる衝動と、サイケデリックなサウンドメイクに段々と思考が溶けていく中毒性が往来。そこからシームレスに続く「幸せ?」では、ポップなメロディが歌詞に忍ばせた悲壮感を浮き彫りにし、胸の奥底まで揺さぶっていく。

odol
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どこまでも透き通る手触りの「未来」では、ナイーブなミゾベの歌声が高鳴る鼓動のようなアンサンブルと重なり、続く壮大なハーモニーの「小さなことをひとつ」へとつなげ、odolの本流を見せつけていく。時折、メンバーを見てにこやかな表情を浮かべるミゾベに、観ているこちらへも笑顔が伝播。「生活」では壮大なサウンドスケープを描き、ミゾベが今宵への感謝を口にする。
「我々odolは、大阪でライブをするのがめちゃくちゃ久しぶりで。今回、YAJICO GIRLの皆さんが誘ってくださり出演がかないました。僕らを連れてきてくれてありがとうございます」
会場から温かな拍手が起こる中、続いては普遍の名曲「望み」へ。各々の楽器隊が粒立った音を出し、ささやかなドラマを丁寧にすくい上げていく。ミゾベがエレキギターに持ち替えた「三月」、デジタリックなSEにすら温かみを感じる「夜を抜ければ」を経て、「時間と距離と僕らの旅」でエンディングへ。リバーブを効かせたギターがシャワーのように聴く者へと降り注ぎ溶けていくような、不思議な音楽体験。四方が表現した“染みる”ステージングをまさに体現し、改めて鮮やかな存在感を大阪の地に刻みつけたodolだった。

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■YAJICO GIRL

YAJICO GIRL

キーボードにあしらわれたIndoor Newtown Collectiveのロゴが暗転中のステージに浮かび上がるや、この日の首謀者・YAJICO GIRLの5人が姿を現す。初っぱなの「NIGHTS」から、両手を広げ甘い歌声を響かせる四方。「最後までよろしくお願いします! どうぞ立ち上がって」(四方)と促すや、新曲「幽霊」ではハンドマイクでステージ中を軽やかに駆け巡る。客席の一人一人と目線を合わせ、おもちゃ箱をひっくり返したようなきらめく音像の「VIDEO BOY」では、情熱的なボーカルワークとのギャップもたまらない。ファンキーな「美しき町」では一層パーティー感を増幅させ、クラップが沸き立っていく。
「ようやくやって参りました、『YAJICOLABO』。odol見た? めちゃくちゃよかったなぁ。元々好きだったのでお誘いしたんですけど、(出演が)決まってから以前にも増して念入りに聞くようになって。より好き度がマシマシになってからの今日。何か感慨深いというか、めっちゃ染みましたね……今日は音楽に浸りつつ、素敵な1日にできたらと思っています」(四方)
YAJICO GIRL
メロウな「街の中で」や、センチメンタルなメロディが中毒性の高い「セゾン」を経て、「ただいま」へ。榎本陸(G)の爪弾くアコギに合わせ、ゆっくりと横揺れになる客席。彼らの地元・大阪で聴く原点回帰的なリリックに、なおエモーションは強まる。
「この『YAJICOLABO』に向けて、odolのミゾベさんとの対談企画もさせてもらって、その中でミゾベさんが「自分たちは壮絶な生まれがあったりするタイプじゃないし、何者でもないところからただバンドがしたくて、そこから表現が始まってる」なんてことを話されていて。自分たちもそうだなって、勝手ながらシンパシーを覚えたというか。何も特別じゃなかったんですけど、大阪のとある高校で出会って、何となく5人でバンドを組んで。今年で出会って10年になるんですが、こうやって活動できることが改めてうれしいなと、しみじみ思います。聴いていただけて、本当にありがとうございます。そんなことを振り返りながら、自分たち5人の関係性について歌った曲を」(四方)
YAJICO GIRL
そう続けて歌うは「FIVE」。吉見和起(G)と榎本が鳴らすギターの美しき調べは、先のミゾベとの言葉も交え、決して平坦ではなかったバンドワゴンの道のりを、何ともまばゆいものだと気付かせてくれるようだ。サビのリフレインが心地よい「Airride」では古谷駿(Dr)のドラムが冴えわたり、緩急自在に届けるグルーヴィーな「Better」では武志綜真(B)の太いビートがクアトロを揺らし、クライマックスを更新し続けていく。
YAJICO GIRL
YAJICO GIRL
「ふと気付いたら、今日は『M-1』とかぶってましたね(笑)。お笑い好きが多いだろうこの大阪で、来てくださって本当にうれしいです。改めて思うけど、今はたくさんのコンテンツがあって、いっぱい面白いものがある時代。自分自身も一番大切なものは音楽である上で、いろんなものに興味がいくなと思うし。そんな時代の中で、こうやって音楽にこの夜を使おうと思ってくれた皆さんのことが、一人のミュージシャンとしてすごくうれしくて、すごく大切に思っています。これからも皆さんと一緒に、もっと大きな景色やもっと面白いこと、YAJICO GIRLのチームでYAJICO GIRLにしかできないことを少しずつ規模を広げながら、やっていけたらいいなと思っております」(四方)

YAJICO GIRL

そう続け、本編ラストに送ったのは「わかったよ / PARASITE」。5人の集中力は最高潮に達し、スモークのかかった幻想的なステージは神々しいほどだ。演奏前に四方が、「この曲は、YAJICO GIRLが大きな会場、例えばアリーナでライブができるようになったとき、すごく映えるんだろうなと思いながら作りました」との言葉に大きく頷きたくなる切々としたロッカバラードで、彼らの強い意志と目的地が見える重要な1曲で本編は締められた。
YAJICO GIRL
アンコールでは、2023年3月にニュー・アルバムを発売、5月からは東名阪ワンマンツアー「ヤジヤジしようぜ!vol.8」の開催を発表したYAJICO GIRL。
「新作は『インドア』(2019年)ぶりに盤としても発売されます。うれしい! むちゃくちゃいいアルバムになってると思うので楽しみにしていてください。そして「ヤジヤジしようぜ!」はvol.2までは大阪・江坂MUSEでやっていて、戻って来れることになりました」 (四方)
「俺の実家のすぐ側やから、マジありがたいわ(笑)」(榎本)
そんなハッピーなニュースの多幸感を最大限に高めてくれた「ニュータウン」では曲の終盤にodolの「小さなことをひとつ」の一節を歌い、ラストを飾った彼ら。
「来年もどんどん進んでいきます!」(四方)と、満面の笑顔で『YAJICOLABO』を締めくくった。
YAJICO GIRL
なお、次回の『YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』は、1月7日(土)に東京・渋谷CLUB QUATTROでDATSと共演。前述のとおり、3月にはアルバムを発表し、5月からは『ヤジヤジしようぜ!vol.8』にて、5月13日(土)に大阪・江坂 MUSE、5月21日(日)に愛知・3STAR IMAIKE、5月28日(日)に東京・代官山UNITでのステージが控えている。今宵の化学反応を新たな糧に、躍進するYAJICO GIRLから目が離せない。
『YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』
取材・文=後藤愛 撮影=渡邉一生

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