​​「先に進むしかない」ザ・モアイ
ズユー、全国ツアー「為せば鳴る」完
走ーーファイナルは大阪で盟友アイビ
ーカラーと対バン

ザ・モアイズユー『Live House Tour 2022 “為せば鳴る"』2022.12.17(SAT)大阪・梅田CLUB QUATTRO
12月17日(土)、ザ・モアイズユーの全国ツアー『Live House Tour 2022 “為せば鳴る"』が梅田CLUB QUATTROでファイナルを迎えた。約1年ぶりに行われた本ツアーは、10月の名古屋を皮切りに全国7箇所を廻る対バンツアー。ファイナルの対バン相手は大阪出身のバンド・アイビーカラーだ。ライブ中も話に出ていたが、アイビーカラーは初日の名古屋に引き続き、2度目の出演。10年来の付き合いで、盟友とも言える両者の奏でる音楽は圧倒的なメロディセンスに溢れていたし、初日とファイナルを同じメンバーで迎えたからこその一体感も感じられる夜となった。そして、ザ・モアイズユーの不屈の決意と感謝の想いが伝わるエモーショナルな公演だった。
冬本番の寒さとなったこの日、会場には2ヶ月に及ぶツアーの集大成を目撃しようとする多くのファンの姿があった。ロビーには「最後の“1音”まで、あなたに向けて!」というメッセージとメンバーの直筆サインが入ったボードが飾られていた。ツアーを駆け抜けようとする彼らの熱い想いが、こんなところからも伝わってくる。
ザ・モアイズユーは、心から一緒にのし上がっていきたいと思うバンド
アイビーカラー
定刻になり、いよいよライブスタート。先攻はアイビーカラーだ。SEのピアノの音に合わせて、ライトが楽器の置かれたステージを幻想的に照らす。やがてメンバーが登場し、全員で丁寧にお辞儀をする。全員がブルーのアイテムをあしらったリンクコーデが素敵だ。
「ツアーファイナル飛ばしていきましょうか!」と佐竹惇(Vo.Gt)が一声放つ。幕開けの楽曲は、爽やかで疾走感溢れる「青い風」から。透明感のある歌声とキャッチーなメロディが会場を満たす。碩奈緒(Ba)のコーラスも美しく響きわたり、早くも素晴らしい時間になる予感が湧き上がってきた。続いて「街角のラプソディ」で華やかにステージを彩る。指先から流れるように奏でられた川口彩恵(Key)のソロもバッチリ決まる。さらに酒田吉博(Dr)のシンバルが鮮やかに空間を貫き「short hair」へ。グルーヴィなサウンドに体が揺れる。佐竹が「トップバッターからこの盛り上がりは、最高のツアーやったんでしょうね!」と笑顔を見せるほどに、客席の一体感は高まりを見せていた。
MCのあと佐竹の弾き語りから始まった「東京、消えた月」では、それぞれの音が際立つ楽器構成で魅了する。スッと心に届く、疾走感のあるメロディに牽引されて、サビでは客席から手があがる。切なげな佐竹の歌声と川口のキーボードが情緒豊かに響いた「はなればなれ」をじっくりと聴かせ、大人の気配を感じる「ライター」を経て、バスドラとピアノのシンプルな編成から奏でられた「帰り道」を披露。夕陽にも似たオレンジ色のライトがステージを黄金に染め上げる。とにかく良質な音楽の連発で耳が喜ぶ。どこを切り取ってもグッドメロディで、オーディエンスの心を潤わせた。
来年2月には7周年を迎える彼ら。佐竹は「真央くんもいとちゃん(以登田)も、10代でモアイズユーとアイビーカラーになる前の、高校生でコピーバンドやってて、オリジナル曲を作るか作らへんかの時から、10年一緒にやってる仲間です。決して付き合いが長いだけではない、深いところまで繋がっている関係だと僕は勝手に思ってます。心から一緒にやっていきたい、のし上がっていきたいと思うバンドはそんなに多くないです。一緒のステージで戦わせてもらってすごく嬉しいです」と盟友への想いを述べて、最後は11月にリリースしたばかりのクリスマスソング「白い街」をプレイ。柔らかい甘めの歌声をたっぷりと聞かせてステージを終えた。高い演奏力に裏打ちされた極上のピアノロックサウンドで、会場の空気を豊かに彩ったアイビーカラーだった。
ザ・モアイズユーという名前を掲げてステージに立ってると、全てが嬉しい
ザ・モアイズユー
そして、ザ・モアイズユー。SEが流れ、オザキリョウ(Dr)、以登田豪(Ba.cho)、本多真央(Vo.Gt)の順に登場。ステージに掲げられたザ・モアイズユーのフラッグが3人を後ろから見守る。オザキの元に集まって気合いを入れると、いきなりエッジーなギターリフが火を吹き「fake」をドロップ! オザキは激しくビートを叩きつけ、本多は前に出て勢いよく、ぶつけるように歌う。その姿からはファイナル公演に対する3人の想いの強さを感じずにはいられなかった。オーディエンスもしっかり手を挙げてその熱量を受け止める。「いくぞ!」と本多が叫び、続けざまに「MUSIC!!」を弾けさせる。一度聴いただけで覚えてしまうキャッチーなメロディとカラフルな照明演出に引っ張られ、オーディエンスはクラップ&ジャンプ! あっという間に楽しい空気で満たしていった。
MCで以登田は「ファイナルがCLUB QUATTRO。バンドマンからすれば憧れの場所で、そんな場所でファイナルができて、皆さんに見ていただけて本当にありがたく思ってます!」と感謝を述べる。本多は「俺たちのこのツアーの集大成を見せて帰る。だから最後の1音まで受け取って帰ってほしいなと思います。俺たちが良い日にするんじゃなくて、俺たちとあなたで最高の1日にしましょう!」と「19」を力強く投下した。
ザ・モアイズユー
情熱的なファンクナンバー「movin’ on」で大人の男のムードを漂わせかと思えば、鍵盤の同期が切なさを引き立てたミディアムナンバー「求め合うたび」ではラップ調のボーカルを歌い上げて空気を揺らす。「秒針に振れて」では、メロウでノスタルジックなサウンドと3人のアンサンブル、切ない歌声が彼らの世界観に誘う。どんな曲調でも心象風景を浮かび上がらせるソングライティングのセンスはさすがとしか言いようがない。
「冬になると思い出す人がいて、思い出すことがあって。ようやくこの歌が似合う季節になった」と披露されたウィンターソング「雪の降る街」に続いては、初期からの名曲「花火」を披露。照明もドラマティックに演出して楽曲を彩り、2曲続けて季節感の異なるサウンドスケープを見事に描き出した。
2度目のMCではアイビーカラーに感謝を述べる。「ツアー通して(同じバンドに)2箇所出てもらうの初めてなんですよ。昔から一緒に地元大阪でやってきたアイビーカラーとファイナルを迎えられたことを本当に嬉しく思います!」と本多。
さらに「俺もアイビーカラーとは通じるものがあると思ってて。人間的にも音楽としても、音楽の向き合い方的にも。来年も一緒に面白いことやれたらなと思います。アイビーカラー本当にありがとう」と何度も感謝を口にした。
ザ・モアイズユー
そして「俺たちが本気でこの先も音楽と向き合って、音楽に悩んで、音楽を信じていればきっと、モアイズユーの音楽は止まることなくあなたに届くと、心の底から俺は信じてます。10月からツアーやって、振り返ると悔しい日もありました。でも、そういう日は取り返せないのでこの先に進むしかない。だから俺は「為せば鳴る」というツアータイトルをつけました。これからの俺たちに期待しといてください。モアイズユーを好きになってくれた分、こうやって目の前にいてくれてる分、今日は来れへんかったかもしれへんけどモアイズユーを好きやと思ってくれてる分、絶対にあなたの期待を超えていきます」と力強く語り、「今ここにいる、今生きてる俺たちの最新作」と「青に咲く花」を披露。握った想いを心の奥から届けるように丁寧に演奏し、素晴らしい空気感で会場を包み込んだ。
バンドの現在地を表明した後は本多の叫びから、勢いよく「すれ違い」を投下。キレのあるグルーヴィなサウンドで会場の熱を引き上げる。本多が「来いよ来いよ!」と煽るとさらにヒートアップ。ラストの「何度でも」まで、一気に駆け抜けた。<今この場所で歌うことの意味 ずっとずっと見失わぬように>と、目の前にいるファンに向けて、自らの決意を示すように、懸命に声を張り上げる。会場はものすごい一体感に包まれ、倒れこむほど全力を出し切って演奏を終えたメンバーに、鳴りやまぬ拍手が贈られた。
アンコールでは、喋ると泣きそうと言いつつも「無事完走しました! 来年もやりたいです。本気でやりたいし、あなたにもまた会えることを楽しみにしてますんで、これからもよろしくお願いします!」とオザキが挨拶。以登田は「今回のツアー全箇所、超楽しかった。トラブルもあったけど、それも含めて全て楽しかったと思えるのはほんと……僕、好きなもの少ないけど、この空間がめちゃくちゃ好きなんですよ。普段人から「あいつおったっけ?」みたいな存在で見られるんですけど、今僕が喋ってこんなに見てくれて。普段の僕ならできないんですよ。ただ、モアイズユーという名前を掲げてステージに立ってると、全てが嬉しいんです。自分すっごいなと思うんです。普段緊張することが1番楽しいことに変わる。それがライブのすごいところ。その素晴らしい空気を作ってくれていつも感謝しています。QUATTROでやることができたのは皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」と、目を潤ませながらファンに向けて感謝を伝えた。
本多は「僕も全く同じ気持ちです。悔しい想いもして、でもその分色んな人と出会って色んなこと感じて最後を迎えるのがツアーかなと思います。自分が音楽好きで、中2くらいの時にギター始めて、好きなバンドに憧れて、自分も歌を作って誰かに感動を与えられたら嬉しいなと思って、自分のために始めた音楽なんです。でもそれがいつのまにか、「モアイズユー聴いてたら元気出る」とか「明日も頑張ろうと思える」と、そんな声をもらえるように。それは俺らにとって当たり前のことではない。こんなに素晴らしいことはないと思ってます。だからこそ俺たちは、これからもあなたに向けて歌いたい。この3人でこれからも、悩んでぶつかって進んでいきます。だからまた音楽でライブハウスでザ・モアイズユーと再会してください」と言い終えると、本多の目には涙が。3人とも感極まっていたが、それだけこのツアーは彼らにとって心に触れるものがあったのだろう。
ふーっと涙をこらえ、「トーキョー・トレイン」を奏で始める。客席の眼差しがとても温かく、この場所にいた全員がメンバーを応援している優しい空気に包まれた。そして「ラスト1曲!!」と「光の先には」をプレイ。生命力を感じさせるように大きくステージを動き回り、叫びまくる本多と以登田。未来へとつながる確かな希望を込めて全力で叩き込み、やりきった!とばかりに吠える。
ザ・モアイズユー
3人が前に出てきて一列に並び、「今日は皆さんありがとうございましたー!!!」と地声で叫び、大団円……と思いきや、客席からダブルアンコールを求めるクラップが発生。「予定外のことしなさんな、あんたら〜」と困惑しつつも嬉しそうな表情でメンバーが登場。本当に何も決まっていなかったようで、その場で相談を始める。あまりの決まらなさに、「皆が呼んだんやで?皆で責任とっていこな(笑)」と本多が客席を巻き込む場面も。最終的に今日やってない曲がいいという客席の意見で「環状線」に決定。3人とも笑顔で気持ち良さそうに伸び伸びと演奏していた。ライブの冒頭で「俺たちとあなたで最高の1日にしよう」と本多が言っていたが、まさにオーディエンスとメンバーで創り上げた尊い時間。温かい空気の中、全員笑顔で過ごしたスペシャルなダブルアンコールだった。
初期の楽曲から最新曲まで、ザ・モアイズユーの歴史を網羅したようなセットリストで構成された約1時間半。彼らの決意と覚悟が存分に伝わる素晴らしいライブだった。どんなことでも強い意志を持ってやれば、必ず結果がでるという「為せば成る」を元にした「為せば鳴る」。全国を廻り、様々な体験をしてきたからこそ、今回の情熱的なファイナルに帰結したのだろう。間違いなく珠玉の音楽は鳴っていたし、彼らの想いは客席に届いていた。彼らが今後見せてくれる景色が楽しみで仕方ない。
取材・文=ERI KUBOTA 写真=オフィシャル提供(photo by 日吉"JP”純平)

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