「新日本プロレスの支配者」 グレー
ト-O-カーン×「アニサマゼネラルプ
ロデューサー」齋藤光二初対談 プロ
レスとアニサマを通じてみるライブエ
ンタメ 後編

夢の対談が実現した。SPICEで企画した新日本プロレスの支配者、グレート-O-カーン様による、世界最大のアニメソングの祭典、『Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-(以下アニサマ)』の完全レポートを受けて、アニサマゼネラルプロデューサーである齋藤Pこと齋藤光二氏が新日本プロレス10.10両国国技館で開催された『超実力派宣言』を現地観戦。お互いのフィールドを体験した後に直接対談が行われた。お互いのエンタメに対する思い。プロレスとアニサマの共通点と違いなど、実に2時間以上にわたって語り合った両者。注目度MAXの対談を前後編に分けてお送りする。
■グレート-O-カーン、齋藤Pにプロモーターを依頼?
グレート-O-カーン:まず1つ、齋藤Pに新日本のプロモーターをやってもらいたいと思ったな(笑)。
齋藤P:えー!(笑)
グレート-O-カーン:やっぱり、プロモーターの思考をしてると感じたんじゃ。なので1度やってみたら、大ハネするんじゃないかと思っての。あと今、入場曲を新しくしたいと考えているんじゃが、齋藤Pに手伝ってもらったら面白そうだとも思ったな。
齋藤P:入場曲ですか……今使われているのは、オリジナルの曲なんですか?
グレート-O-カーン:そうじゃ。ちょっと入場曲の話をしようか。プロレスの入場曲って、歌詞が無いものが多いんじゃが、それでもヒットする曲って、口ずさめるものが多いんじゃ。内藤哲也の曲(「STARDUST」)とかがいい例だな。
齋藤P:プロレスで有名なのは、「スピニングトーホールド」(ザ・ファンクスのテーマ)とか、長州さんの曲(「パワー・ホール」)とかもそうですよね、長州さんのって、作ったのは確か……。
――クレジットは異母犯抄名義ですが、実際は平沢進(テクノポップバンド『P-MODEL』のボーカル・ギター)さんですね。
齋藤P:あれ、本当凄いよね! あのシンセの感じとか、耳につくんですよね。
グレート-O-カーン:素人が聞いても複雑ではまったくないよな。
齋藤P:イントロってすごい大事ですよね。布袋(寅泰)さんが『KILL BILL』(2003年)で作った曲(「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」)とかもそうだし。ギターソロにしてもなんでもそうなんですけど、名演と言われるものは、ちゃんとメロディアスに歌えるかどうかっていうのも多いんですよ。アニサマで今年は大橋彩香ちゃんとマーティ・フリードマン(元メガデスのギターリスト、現在は日本に在住)でコラボをしたんですが。
――あれは良かったですね。
齋藤P:マーティのプレイってフレーズを何回も聴けば、覚えてしまうキャッチ―さがあるんですよね。掴みが大事、そう考えると入場曲っていうのは、重要ですよね。
グレート-O-カーン:プロレスで一番大事なのは入場の場面で、入場を見たいっていうファンもいるからのう、そこはやはり応えたいと思っておる。それで言うと今の入場曲はちょっと覚えづらいんだよ……。雰囲気はあるんだがな。
齋藤P:なるほど。
グレート-O-カーン:齋藤Pがもし、入場曲を作るとしたら、どんな曲を作る?
齋藤P:僕は音楽プロデュースっていうところで言うと、テーマソングがメインになってくるんですけど……テーマって、やっぱりすごい大事ですよね。アニサマは「COLORS」とか、「Sparkle」とか、「STORY」とか、ちゃんと自分の中での企画書があるんですよ。あとは、絵が見えるかどうかって大事ですね。絵が見えないときって、本当もやもやするんですよ(笑)。
齋藤光二
――なんかわかる気がしますね。
齋藤P:例えばこのリズムで、ライトをパーンってつけるとか。音がイメージを引き連れてきてくれるんですよ。そうだなぁ……「グレート-O-カーン」っていうキャラクターイメージ的な風味を入れた方がいいのか、それよりもっと「悪」というテイストに重きを置くべきなのかとか、そこらへんですよね。それでデジタル寄りなベース音にするのか、ハードロック的な感じにするのか?とかね。そういうコンセプトを自分の中でいっぱい書き出して、絵を作るんです。今年の「Sparkle」のときには、ポカリスエット的な感じで、屋上で、青空があって、高校生が「イエーイ!」ってしてるようなイメージで作りました。
グレート-O-カーン:わかるぞ!(笑)
齋藤P:あとはお客さんがどう迎え入れるかですね。恐怖に陥れるべきなのか、熱狂の渦に巻き込むべきなのか。アニサマはさいたまスーパーアリーナって、やり慣れてる場所だからイメージがしやすい。でもプロレスの場合は、興行するところによってサイズが変わってくるっていうのはありますよね。
グレート-O-カーン:そうなんだよ。日本各地を回ることは、凄く良いことだと思っとる。だが会場によって照明を落とせない場所もあるんだ。本当は暗い雰囲気の中、光が当たって入りたいのに、それが出来ない。単純に会場が小さくて、機材が入れられないので、入場を長くできないこともあるしな。
齋藤P:なるほど……でも両国でも思いましたけど、映像演出って大事ですよね。
グレート-O-カーン:大事だな。席によっては肉眼で見づらいときもあるからのう、スクリーンを見て確認する場合もある。
齋藤P:わかりやすく誰が出て来るっていうのも、名前とか煽りVで見せてくれるし。照明で言うと、プロレスって結構明転状態が多いじゃないですか。アニサマの場合には、さっきのReoNaじゃないけど、周りを真っ暗にして、本人だけ真っ赤に染めちゃうとかっていうのはできるんですけど、プロレスでは、そういうのはやらない?
グレート-O-カーン:いや、無いな。
齋藤P:まあ見づらくなっちゃいますよね。
グレート-O-カーン:ここが結構、アニサマとプロレスの違うところだと思うんだが、アニサマはアーティストひとりひとりに合うものをプロデュースしているんだろ? プロレスは「会場はここで、リングはこの位置で、ライトはこれです、あとはあなた方の好きにしてください」という感じなんじゃ。
齋藤P:そうか、鍛え上げた肉体だからこそ出せる表現っていうものを見てもらうものですもんね。もしアニサマ的な演出が入る余地があるとしたら、入場のところか。
グレート-O-カーン:そこをやってほしいと思ったんじゃ。試合は、余たちに任せてほしい。ただそれ以外の部分で新日本プロレスには、全く足りないものがあると思っておる。入場は音楽をかけるし、周りに映像もあるし、大きい会場だったら炎も出したり、霧を出したりできるんだけれども、なんかこう、人(選手)に合わせてないと思うんだよ。
――人に合わせてない、ですか。
グレート-O-カーン:入場も人によって違ってて、余だったら、ゆっくりゆらゆら歩いて入っていく。逆に走って走るヤングライオンもおるが、まったく演出が合ってない時がある。だからそこを意識するだけでもっと会場の満足度を上げることができると思うんだが、それをしないのかできないのか知らんけれども、やっていない! そこを手掛けてくれたら、また更に新日本プロレスが上のステージに行けるなというのは感じるな。
齋藤P:面白そうだけど、難しいところもあると思いますね。僕はクリエイター的な発想の人間だけど、運営をしなきゃってところもある。例えばアーティストと話すときに、「こんなことやりましょうよ」って言って盛り上がるじゃないですか。だけど、それどっちがお金持つかっていうことは結構問題なわけですよ(笑)。 ただその話のときにお金のこと言っちゃうと、「まぁ、でもできないっすねー」で終わっちゃうから、中間のバランスを取るんです。アイディアは大きくしていきたいから、金額感をスリムにしていっても、コア(核)だけは残したい。でも最初に「予算足りないし、難しそうですね」って終わっちゃうと、もう終わりなんですよね。
――そうですよね。
■アニサマの仕掛けと見立て
齋藤P:だから僕は、一点豪華主義でいく。例えば水樹奈々さんとかは、ソロアーティストなんで、「空飛びたい」つったら、空飛ぶ機構を作れるわけですよ。でもアニサマでそれ作ったら、毎回それで人飛ぶわけにはいかないし、費用対効果が合わない。だから汎用性の高いステージセットを作って、いかにそれで見立てを作るかなんですよ。
グレート-O-カーン:見立てだと?
齋藤P:例えば、ポップアップでマーティが出てきたら地獄からの召喚になるし、内田真礼がまあや姫の衣装で駆け込んできたら江戸時代になる、みたいなね。で、一点豪華主義っていうのは、「これだけはお金をかけよう」というもの。例えば2019年『SSSS.GRIDMAN』の時には、怪獣が出てきて炎が上がるという、ヒーローショーをやったんですよ。そこはお金をかける。でもこれを全部でやると、見ててお腹がもたれちゃうんです。
――それは思いますね、プロレスもアニサマも長時間ですしね、疲れてしまう。
齋藤P:そのバランスの取り方ですよね。あとオーカーン様の楽曲は、誰が作ったのかも知りたいですね。例えば、コンペで曲を応募するとしたら、オーカーン様の曲を俊龍(しゅんりゅう)さんが作るんだったら、みんなたぶん面白がると思うんですよ。オーカーン様って、アニソン界隈ではよく知られている存在なので。だからアニソン作家が作曲をしたら「あっ、面白い!」って、こちら側のターゲットは掴めると思うんですよね。その先入観があったうえで音を聴くと、よりブーストかかって曲がよくなるんです。米津玄師の「KICK BACK」もYOASOBIの「祝福」も、彼らの楽曲に対する高いクオリティと安心感というものがあるから、僕らの耳が再生する前に期待して待機しちゃうという。
グレート-O-カーン:確かに、まったく違う感じで出されても、「ん?」ってなるしな。
齋藤P:なんとなくですけど、例えばオーカーン様の曲を神前(暁)さんや上松(範康)さんが作るのも違う気がするんですよね。やっぱりオーカーン様のブランドがある。
グレート-O-カーン:余が求めているのは、ネームバリューではない。「モノ」だ。いい「モノ」が欲しい。
齋藤P:そうですね、いい「モノ」があったときに、それがさらにオーカーン様のブランドを後押しするようなものであったり、その作曲家がオーカーン様に選んでもらって嬉しいって発信したりだとかってなると、その界隈のファンも聴いてもらえる。ちょっとあざといかもしれないですけど、プロデューサーとしては、そこはすごい大事なポイントだと思います。
グレート-O-カーン:こっちが作曲家になにかメリットを出すとしたら、プロレスは年間150試合ぐらいあるからな、何回も何回も曲を流してやる、というのはあるかもしれん。
齋藤P:そうですね、単純接触が多いと、浸透しますしね。
グレート-O-カーン:勿論テレビで流れる時間もあるし、配信で流れる時間もある。世界中に流すことも出来る。あとこれは確約ではないが、プロレスは5~60歳、怪我さえしなければ戦い続けることも出来る。余が求める条件の一個に、若い奴の才能が欲しい。一緒に成長したいと思っておる。別に有名じゃなくてもいいんだ。ただ、そいつも5~60年やってほしい。それは絶対条件だな。一緒にアガっていきたいと思っている。
グレート・O・カーン
――一緒に上がっていきたいというのはいいですね、使い続けていける曲というのはある意味レスラーの名刺みたいなものですしね。
齋藤P:それこそ猪木さんの曲とかそうですよね。あれだけ長い間あの曲っていうのはずっと生き続けたんですよ。今では知らない人はいない曲になってる。レコーディングの初期投資はかかったかもしれないけど、やっぱりそのクオリティに耐えうる音になってますよね。
――そうですね。「もの」が素晴らしいと思います。
齋藤P:僕、変な話、猪木さんに特別な思い入れ無かったんですけど、両国であの曲を聴いた時に、「いやぁ、この曲いいなぁ」って、ちょっとウルッときましたよ。
――元々モハメド・アリの伝記映画の挿入曲だったんですが、猪木と対戦したアリから猪木に贈られて、それを日本側でアレンジしたという逸話のある曲です。
齋藤P:アリが「この曲やるよ」ってすごい逸話ですよね。オーカーン様も国際的なレスラーだから、外国人さんがアガるっていうような部分は大事かもしれないですね。
グレート-O-カーン:そうだな、余はグッズを作る時も、すげぇオーダーを出すんだ。だからグッズを作るやつにはめちゃめちゃ嫌われているというのはあるぞ。うるさすぎて。「これはダメだよ、これはダメだよ、こうしなきゃ」って。だから組んだやつは大変かもしれんな(笑)。
齋藤P:それは大事ですよ。うるさがられるっていうのは、クオリティが良くなってるということの裏返しなので。
グレート-O-カーン:こっちは売れるものを作りたいんだよ。見た瞬間「あ、これいい!」ってなったら別にそれでいいんだ。「これ、何か微妙だな」ってなったら「変えてくれ」と言う、それだけの話だ。
齋藤P:思い入れの量が多ければ多いほど、やっぱりいいものができると思ってて。それは、プロレスで言うと、どれだけ受け身の練習とか、鍛錬を積むのかって部分と同じかもしれない。でもプロレスって、どんなハードな練習をしてるかというところは、あんま見せないって言ってましたよね。
グレート-O-カーン:そうだ。あんまり見せん。
齋藤P:それがプロレスの良いところでもあり、歯がゆいところでもあるのかなぁ。
グレート-O-カーン:そうかもしれんな。
齋藤P:もっと、アピールできる材料って、いっぱいあるんだけど、その美学も大事ですもんね、難しいな。
■コロナ禍を経た「イベントの金額」という難しさ
グレート-O-カーン:余が歯がゆく思うところだが、余たちは個人事業主だが、団体に所属している以上は新日本プロレスと交渉しないと、出来んこともある。例えば、入場曲を作るのにも一苦労じゃ。あくまで余たちは自己プロデュースだからな。好き勝手やれることもあるが会社と交渉しなきゃならんことも多いのだ。
齋藤P:アニサマもそうですよ(笑)。 コロナの影響は確実に集客に響いていて、興行として成立させるためには、それを補填するような、例えば高額チケットを用意すべきでは、などの意見も出てくる。でもそれって難しい。それをやることによって、今まで積み上げてきたブランドに対してネガティブに作用するかもしれない、慎重に検討しなければと。
グレート-O-カーン:プロレスは席によっては値段がどんどん変わる。でも余は逆のイメージを持っておるのじゃ。不満は絶対出ていると思う。そんな高いチケットは払えない、お金がない。でも求めるやつも多いと思うのだ。お金さえ払えば、選手の近くに行けるわけだからな。
齋藤P:そこは保証されますしね。
グレート-O-カーン:でもどっちみち、文句は出てくるわけなんだよ。「俺、結構早めに買ったのに、こんな後ろの席かよ」みたいなやつだな。
齋藤P:経営する側に立つとしたらそういったことも含めて、前の席はぐっと高くしちゃえって思うかも知れないけど、僕は肌感として、例えば3万円ならひょっとしたらいけるかもしれないけど、5万円はヘイトの方が多くなると思ってるんです。結局、僕らの言語はクリエイターの言語なんですよ。O-カーン様はレスラーの言語を使っている。だけどそれはそれなりに一生懸命興業のことを考えて言ってるわけなんです。
――そうですよね。
齋藤P:でも経営だけのプロの場合、アニサマとかプロレスの現場は見たことあるかもしれないけど、ファンとレスラーの関係がどうなってるのかとかの機微まではわからないと思うんです。これがジレンマですよね。この話は、どこまで書けるかどうかわからないですけど(笑)。
――センシティブではありますが(笑)。
齋藤P:エンタメは、興行として成立させなきゃいけない。クリエイティブな発想っていうのは、完全なフリーダムなものですが、興行を成功させなければいけないという部分においては、エンタメは完全なフリーダムの中でできてるものではないんです。
グレート-O-カーン:そうだな。そこを、これを見ている奴だけでも、伝わればいいと思っておる。
■「環状線8号理論」から見る、開場に足を運んでもらうということ
齋藤P:でも、オーカーン様って、新日本の中でも急成長株ですよね。
――こんな人いないですよ。他に。
グレート-O-カーン:それはやっぱり、余の中のプロとしての矜持ってものがあるのだ。プロレスラーだから、試合を絶対に一番に考える。でも、これだけだと世間に絶対届かない。これはアントニオ猪木も言ってたが、「環状線8号理論」(「猪木環状線興行理論」)っていうものだ。プロレスによく行ってる人は、何やっても観てくれる。ただ、プロレスをたまに観てる奴ら、更に全く見ない奴らに届かせないと意味がないんだ。
齋藤P:なるほど。
グレート-O-カーン:これを意識しないと、人は増えない。だから、そのために余は……例えば今この場だってそうだな。アニソン関係のやつが見る。だからアニメ関係の仕事も、Vtuberとの対談もやるのだ。待ってても動かないから、どんどん自分から行かなければならん。
齋藤P:棚橋(弘至)さんとか真壁(刀義)さんとかは浸透している気がしますね。真壁さんがスイーツ好きとかいいギャップだと思います。オーカーン様が凄いのは、幼子を助けて、幼子の勇気を称えつつ、しかもパンケーキを差し出す優しさがあるってあの話。で、どういう人なんだろうって気になって観に行ったら、なんかすごい奇声を出して戦ってた。そのギャップっていうものにやっぱり気になるから、後から調べたくなる。
グレート-O-カーン:そうかもしれんのぉ。
齋藤P:『ウマ娘』がなんでこんなにヒットしてるかって言うと、やっぱり実際の馬の歴史とか、史実を大事にして作っているから。擬人化するって、結構チャレンジだったと思うんですよ。あれ権利関係、すごい大変だったはず。
――そうですよねえ。
齋藤P:でもそのおかげで、既存の競馬ファンだけじゃなくて、若い子達が『ウマ娘』経由で、実際に競馬に興味を持った。交流が本当に起こってるんですよね。プロレスに関しても、コアな毎回足を運ぶ人達をすごく増大させるのは難しいかもしれない。ただ、何か「今日は特別だからちょっと観に行こうか」っていう人たちが増えていくことが大事だとは思います。一緒に行ってくれる誰かがいる、と言うのは大きいんですよ。
グレート-O-カーン:プロレスは特にそうだな。体感でしか無いが、初めてプロレス見るやつの8~9割は人に誘われて来たやつだと思う。自分で「観に行こう!チケット取っていく!」っていうのは、なかなかない。
齋藤P:今回も、SPICEのお二人(アニメ―ゲームジャンル編集長の加東と総編集長の秤谷が齋藤Pの初のプロレス観戦に同席。二人とも生粋のプロレスファン)という心強い解説者がいたことで、すごい僕的には楽しかったですしね。
グレート-O-カーン:プロレス観戦のハードルはめちゃくちゃ高いんだよ。アニソンライブとかは、余はぜんぜん一人で遊びに行くから、個人的なハードルは低いんだが、ライブによっては、Blu-ray買わないと先行チケットが取れないものもある。という意味ではハードルは高かったりするけどな。
齋藤P:そうかもしれないですね。
グレート-O-カーン:だから、一番最初のハードルをいかに低くするかだ。余たちは楽しいものを見せてやってるって自信はあるからな。1回見せれれば、2~3回目は絶対来る。ただこの1回目のハードルが高いんだ。
齋藤P:昔、地上波のゴールデンとかで流れてた時の方がハードルが低かったんですかね。
グレート-O-カーン:うーん……やっぱりそれはあるかもしれんな。
齋藤P:目に触れることって、すごい大事ですよね。オーカーン様がブシロードの記者会見とかに出てくっていうだけでも違う。あとは報道ですね。人助けをしたっていう報道で出たっていうことは、偶然かもしれませんけど、素晴らしいことだったと思いますよ。
グレート-O-カーン:昔、『涼宮ハルヒの憂鬱』の曲がテレビで週間トップテン入りしたとき、あのときはやっぱり嬉しかったよな。ああいう感じなんだろうな。
齋藤P:アニサマも最初の時にはね、武道館で愛内里菜さんが出たんだけど、「武道館、愛内里菜で熱気ムンムン」って形でスポーツ紙に出たんです(笑)。 アニメファンからしたら、ひょっとしたら水樹奈々さんやJAM Projectの方がデカイ存在だったかもしれませんけど、やっぱりそうなった。
グレート-O-カーン:世間的にはそうだろうな。
齋藤P:今はアニソンとかサブカルの域は超えたと思いますが、まだまだこの一般の中には先入観とかあると思います。だからオーカーン様もそうですし、Snow Manの佐久間(大介)君とか、キスマイ(Kis-My-Ft2)の宮田(俊哉)君とかがアニサマとかのファンで、実際にチケット取って来てくれてたのは嬉しかった。彼らのファンが「すごいライブがあるんだな」と思ってくれるとか。あとは実際に出た氷川きよしさんとかスキマスイッチさんとか鈴木雅之さんとか、そういう一流の人達がアニサマのペンライトに感動したとか、いいライブだったって言ってくださることが、やっぱすごい大事なんですよ。異種格闘技、異種交流じゃないですけど、プロレスもどんどんいろんな人にその良さをわかってもらったほうがいいと思いますね。今回この対談が面白いなと思ったのは、アニサマとプロレスって、同じエンタメではあるんですけど、やっぱ違うところもあると感じられたこと。だけどすごい共通点も多いとも思いましたね。アニソンファンは、プロレス会場に足を運んだら絶対楽しめると思いますよ!本当に! 僕は今回のプロレス観戦で、ちょっとオイシイところは盗みたいなと思ってますし(笑)。
グレート-O-カーン:しっかり盗んでくれ(笑)。
齋藤P:オーカーン様にも、来年もレポートでも来て欲しいですが、なんか演出上で本気で発注するかもしれないですよ!
グレート-O-カーン:それまでに余も、頑張って知名度上げておくかな。「O-カーンが来た!」って言われんとならんからな。
齋藤P:今回のマツケンサンバも賛否両論巻き起こりましたけど、結局すべての人が踊らされちゃった。これすごいなと思ってて。踊らせたんじゃなくて、松平健に踊らされた。アニサマに行かなかった人達も、「何やってんねん」って言って、松平健に踊らされてるんですよ。それはすごいなぁと思って。あんなパワフルなものないじゃないですか。今年は「Sparkle」っていうテーマでしたが、あんなキラキラした衣装も滅多にないですし(笑)。 ビジュアル的なもので突き抜けてると、有無を言わせないんですよね。日本で一番キラキラしたアーティストですよ、間違いなく。
――間違いないですね。
齋藤P:こじつけでも、「日本で有名なキャラソン、マツケンサンバです」って言われたら、なるほどって思うじゃないですか。疑問符が一回なくなるっていうか。オーカーン様の個性も説得力があると思ってます。
グレート-O-カーン:最初は余という存在に対しての罵詈雑言が凄かったからな。なんだこいつは、ふざけるな! みたいな感じだったが、それを付き通してたら、もう全員、手のひらコロっとなったぞ(笑)。
齋藤P:手のひら返しっていうのは、結局マイナスが起点なんですよね。
グレート-O-カーン:余はそれを求めていたのじゃ。そうじゃないとダメだとも思った。最初からいいな! と思っていたものって、結構時間経過で評価が落ちてくるんだよな。でも、最初ダメだこいつ! と思っていたものが変わって上がっていくと、なかなか下がんないんだよ。
――あーそうかもしれないですね!
グレート-O-カーン:何でかと言うと、最初悪い部分を見てたからこそ「まぁこいつはそういうところもあるよね」って、評価がなかなか下がらないんだよ。藍染(惣右介、『BLEACH』の登場人物)が言ってたけれども「憧れは理解から最も遠い感情だよ」というやつだ。憧れのフィルターで最初に見てしまうと、あとは理解するたびに下に行くしかない。
齋藤P:確かに。エンタメってちょっとファンタジーの部分もあるじゃないですか。ファンタジーのフィルターっていうのは、いい感じで酔わせて、いい感じで僕らを楽しませてくれてる間はいいんですけど、それが消えたときに、「何だったんだろう」ってなりますよね。
グレート-O-カーン:うむ。
齋藤P:夢をえるとか夢を見させるとかって言うのは簡単かもしれないけど、それを付き通すっていうのは、大変ですよね。
■アニメのキャラクターになりたいと思っている
――ということで、そろそろシメにいきたいと思います。最後にアニメファン、そしてプロレスファンに向けて、一言ずついただければ。
齋藤P:今回、プロレスファンってすごい温かいなと思いました。マスクして、歓声できない中で、拍手とかで思いを伝えていた。お客さんがしっかり入って楽しんでるあの感じも良かったし、驚きのときに声が「おーっ」って思わず出ちゃったりとかっていうのも含めて、すごい楽しかったですね。新日本プロレスさんは50年続いてるんですけど、温かいコミュニティだなと思いました。アニサマのお客さまには、すごい近いものがあると思います。
――それは僕らも改めて感じました。
齋藤P:オーカーン様はその中でもすごい異色って言うか、非常に個性の強い人なんだけど、やっぱり隠しきれない優しさとか、良識みたいなものを僕は感じてしまいました。それは何に基づいてるかって言うと、プロレス愛だと思います。そこがあるから、ファンもオーカーン様の活躍を楽しみにしてるんじゃないかなと。今後も何かお互いに、知らない界隈も「なんかプロレス盛り上がってるね」「アニサマってすごいらしいね」っていう風な存在になれればいいかなと思います。
グレート-O-カーン:齋藤Pは「プロレス愛がある」と言ってたけれども、余は、プロレスが嫌いなんだよ。でも、何故ここまでやれてるかと言うと、アニメの存在が大きいんだよな。余は自分のことをプロだと思っているけど、プロレスラーに成り切りたくはないとも思っている。じゃあ、何になりたいかと言うと、アニメのキャラクターになりたいと思っているんじゃ。
齋藤P:アニメのキャラですか。
グレート-O-カーン:それはどういうことかと言うと、アニメのキャラクターは強い個性がある。今で言うと『チェンソーマン』のパワーちゃんとかの喋り方とかな。あとシルエットだな。『ドラゴンボール』の孫悟空がいい例だが、あれは影絵にしても、誰がどう見ても孫悟空だ!ってわかる。だからこそ、余も辮髪を付けたり、コスチュームも他に無い、モンゴルの様式や入場へのこだわりを持って余の世界を作っている。アニメファンに向けて何か言うのであれば、プロレスも本当にファンタジーの世界じゃ。余だけじゃなくて、全員が本気でファンタジー見せながら熱いバトル漫画みたいな戦いを見せている。しかもそれが1回じゃなくて、何話も続いているように日々戦い続けておる。たまに最終回っぽい戦いもあるが、そこからまた2期が始まるような展開もある。本当にアニメ見てる感覚に近いと思っておる。バトル作品が好きなやつは、ぜひプロレスも見て欲しいと思っておるぞ。その中には、グレート-O-カーンっていうアニメっぽいキャラもいる。余じゃなくても、かっこいいやつ、悪いやつ、好きな奴を探して楽しんでくれればこっちは御の字だよ。あと入場曲ももしかしたら、面白い展開になるかもしれないから、楽しんでくれよ?
インタビュー=加東岳史・秤谷建一郎 校正・文=加東岳史・林信行 撮影=荒川潤

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