仁藤夢乃氏著書『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)書影

仁藤夢乃氏著書『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)書影

フェミニスト仁藤夢乃氏による女性支
援団体Colaboの会計に物申した富裕オ
タク=暇空茜の主張

令和の日本でもっとも活動的なフェミニスト・仁藤夢乃が、自身が代表を務める女性支援団体の不正会計問題に揺れている。東京都から多額の公金を受け取っている彼女らに疑義を申し立てたのは、一人のオタク男性だった──。(文中敬称略)
損害賠償1100万円 2022年11月29日、若年女性を支援する「一般社団法人Colabo」(以下、コラボ)の代表・仁藤夢乃が、衆議院第二議員会館で記者会見に臨んだ。彼女のもとに集まったのは、7人の凄腕弁護士たち。議員会館を使うには国会議員の関与が不可欠であり、この点からも大きな力の存在が窺える。
 会見の口火を切った弁護団の神原元によれば、仁藤とコラボはネット上でデマを流され、膨大な中傷や嫌がらせを受けており、その発生源である「暇空茜(ひまそらあかね)」を名乗る人物を提訴したという。
 暇空は、「コラボは高校生に生活保護を不正受給させて毎月6万5000円を徴収している」「生活保護ビジネス・貧困ビジネスである」「タコ部屋に少女を押し込めている」という趣旨の情報を発信。これを弁護団は「荒唐無稽なデマ」「リベンジポルノと同等であり、女性差別」「女性の権利のために立ち上がった仁藤さんとコラボの信用を貶めてその活動をつぶすのが動機」と断罪し、記事の削除と謝罪文の掲載のほか、損害賠償1100万円を求めている。

フェミニスト仁藤夢乃とは 仁藤を知らない方のために補足すると、彼女は中高生時代に家庭にも学校にも居場所がなく街をさまよった経験から、10代女性を支える活動に取り組んでいる人物。明治学院大学を卒業した2013年3月に一般社団法人コラボを設立して以来、夜の街で少女たちに声をかけ、自前のバスに招いて食事や居場所を与え、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供など、手厚く面倒を見ているという。
 彼女の高い志には多くの賛同が寄せられており、弱冠32歳ながら、これまでにパルシステム、丸紅基金、日本たばこなどの有名企業をはじめ、パチンコ業界団体や日本財団の助成金も獲得している(コラボHPより)。また、冒頭で述べたように法曹界や国会議員にも多数の応援団がおり、まさに若手社会活動家のエース格と言えるだろう。
 そんな立派な社会貢献を手掛ける人物を襲った今回の騒動。なぜ、このような異常事態になっているのか。仁藤サイドの主張は朝日、毎日、東京、赤旗などの有力紙にすでに報じられているため、小誌は被告の暇空茜に接触を試みた。

暇空茜が憂うツイフェミ炎上の数々 暇空の情報発信のプラットフォームは、テキストならnote、動画はYouTube。それぞれ「暇な空白」で検索すればヒットするので、興味のある諸兄はご覧いただきたい。暇空が初めてコラボに関する記事「仁藤夢乃さんのコラボと共産党について調べてみました」をnoteにアップしたのは2022年8月14日。「仁藤夢乃さんが代表を務める団体の20年と21年度の活動報告書が(HPに)あがってたので見てみたんですが色々疑問に思った」と書いている。
 以来、暇空はコラボの会計についての調査結果を精力的にネット公開。弁護団の集計によると、提訴にいたる3カ月半の間に、noteに27記事、YouTubeに30動画がアップされ、その合間には900以上のツイートがあったという粘着ぶりだ。
 暇空のリアル社会での顔は、とあるスマホ向けゲーム企業の創業メンバーで、億単位の資産を持つ人物。悠々自適に生きているはずの彼が、コラボの会計に疑問を抱いたのはどんなきっかけだったのか。
「僕は漫画が好きなのですが、自分の趣味をおびやかす人がいるということは、その一点において戦う理由になりますよね。これまでツイフェミと呼ばれる人たちが、漫画やアニメなどいろいろなコンテンツを燃やしてきたことをご存知の方は多いかと思います」
 ツイフェミとは、ツイッター上でフェミニズム的な発言を活発に流す者を指すネットスラングで、類語に、「クソフェミ」「ネトフェミ」などがある。ミサンドリー(男性嫌悪)とも取れる言動が少なからずあり、例えば、最近では、週刊少年マガジン『生徒会にも穴はある!』公式アカウントによる「賞味期限が切れてない食材を探して深夜冷蔵庫を漁るアラサー女性教師の図」が炎上。「女は自宅でブラジャーの後ろだけ外したりしない」「女は自宅で洗濯バサミで髪を留めない」などのツイートが飛び交った。ツイフェミには、この絵はリアルな女を描いたものではなく、男性を性的に興奮させるための道具に見えるのである。

不正会計疑惑の中身とは 仁藤にも類似の傾向があり、かつて「温泉むすめ」にこう憤っている。
   *   「出張先で『温泉むすめ』のパネルを見て、なんでこんなものを置いているのと思って調べたらひどい。スカートめくりキャラ、夜這いを期待、肉感がありセクシー、ワインを飲む中学生、『癒しの看護』キャラ、セクシーな『大人の女性』に憧れる中学生など。性差別で性搾取」   *   
 標的になった「温泉むすめ」とは、日本全国の温泉地や地方都市の魅力を国内外に発信するために作られた、地域活性化プロジェクトである。各温泉地にキャラクターがおり、それぞれの漫画やアニメ、グッズなどが制作されている。日本の神話を取り入れるなど工夫が凝らされているのだが、若き社会活動家の目にはNGだったようだ。「ツイフェミって、お色気漫画が不謹慎だから連載をやめろとか言うでしょう。でも、いろんな人と関わって作品を作っている以上、作者は自分の思いだけで言い返すのは難しい。クライアントとの関係や世間的なイメージなどが人質に取られているわけだから。フェミニストってそういう反論できない人に向かって石を投げるようなところがあるので、これは許せない。じゃあ、僕が代わりに戦おうと思ったわけです」
 だが、星の数ほど存在するフェミニストの中で、彼はなぜ仁藤を狙ったのか。
「戦いのセオリーは、影響力がある人物に挑むこと。であれば仁藤夢乃さんがよいだろうと目星をつけたんです。コラボのホームページなどを見ていたら、案の定、活動報告書類におかしな点がありました」
 単純な計算ミスが多数あったり、人件費が1年で1.5倍に増えているのに交通費は1割も増えていなかったりと、突っ込みどころだらけだったという。
「もし、コラボの会計に不正があるのなら、そんな団体に僕が納めた税金が助成金や民間委託費として支払われるのは不適切。そう考え、詳細な調査を始めました。コラボは東京都の若年被害女性等支援事業の委託先として、2021年度は2600万円を受領しているんですよ」

支援対象者は減り予算は増える ちなみに、若年被害女性等支援事業を推進する内閣府男女共同参画局によると、「若年被害女性等」とは、「JKビジネス被害者、家出少女、AV出演強要被害者等」のことである。
 しかし、JKビジネスは社会的に問題視された2013年頃から規制強化が進み、15~16年頃には壊滅。現在働いているのは18歳以上の女性のみで、彼女たちが女子高生のコスプレをして、リフレやお散歩などを通して萌え文化を提供している。JKカフェやコンカフェと呼ばれる店には18歳未満もごくわずかにいるが、いずれもガールズバーのようにカウンターを隔てて女の子が接客するスタイル。密室で2人きりになったり、屋外でデートしたりするようなサービスはない。当然、裏オプなど性的な交渉もない。
 16年に世間を騒がせたAV出演強要も同じだ。現在、国内流通の約85%を占める適正AV作品は、厳しい自主規制下で制作されており、各メーカーやプロダクションは、出演強要などの被害を起こさないよう細心の注意を払う。残りの15%の多くを占める同人AVについては、そもそも撮影者も出演者も、趣味嗜好の近い愛好家同士。強要して作れるものではない。
 あとは、個人撮影やパパ活のオプションでの撮影などが問題にされがちだ。たしかに、22年6月の「茨城23歳女性監禁死事件」のように、悪質な性暴力や性犯罪が起こり得る。しかし、これは個人売春とその撮影から発生したものであり、AV出演強要による被害とするのは無理がある。
 つまり、「若年被害女性等」のうち、現実の問題として保護が必要なのは家出少女ということになる。警察庁による10代の少年少女の行方不明者届け数(=旧・家出人捜索願。10年から呼称変更)の推移を見ると、長期的には大きく減少している。
 これらをまとめると、支援の対象となる「若年被害女性等」の総数は、16年以降は激減のはず。なのに若年被害女性等支援事業の予算は、増える一方。東京都に公文書の開示請求をした暇空は、同事業に関する書類を手にしてこう言う。
「20年度の予算総額は3210万円だったのに、21年度は1億697万円、22年度は1億9296万円に達しています。そのうち、22年度の同事業を受託するにあたって、コラボは東京都に4557万円(前年比75%増)ほどの事業計画書を提出して契約を結んでおり、年度末に提出する実施状況報告書をもって支払いを受けます。その際、事業実施に伴って支出した経費の領収書を提出する必要はないので、事実上ノーチェックです」

フェミ4団体への事業委託の謎 コラボの弁護団は、東京都から若年被害女性等支援事業を委託された経緯を、こう説明している。
   *   「もともとコラボが自主事業としておこなっていたが、厚労省や東京都がその必要性を認識。2018年10月から東京都のモデル事業となり、21年度から正式に委託事業となった」   *   
 仁藤の人脈と社会的信用があれば、自主事業に公金がつくのも当然か。なお、この事業には、コラボの他に3団体(特定非営利活動法人BONDプロジェクト、特定非営利活動法人ぱっぷす、一般社団法人若草プロジェクト)が参加。暇空によれば、いずれも1団体あたりの予算上限いっぱいの4600万円ほどで受託しているという。「これら4団体で事業総予算の9割以上を消化していることも含め、東京都の委託事業の妥当性自体に疑義があると思います。また、不正な会計を疑われる事例は、コラボだけなのだろうか、それとも公金を受け取っている他の団体にも及んでいるのだろうかという疑問も湧いてきますよね。こうした点をクリアにするため、僕は東京都に住民監査請求をしています」
 住民監査請求とは、地方公共団体が税金を適正に使っているかどうかをチェックするよう、住民が監査委員に求める制度だ。地方自治法第242条は、住民の正当な権利としてこれを規定している。
真っ向対決で刑事事件化も 一方、コラボ弁護団は、住民監査請求に関して東京都から問い合わせがあれば、誠実に対応する姿勢。今後は誰もが納得する丁寧な会計報告や領収書の公開など、信頼回復のための手を打ちつつ、暇空による誹謗中傷に対しては徹底的に争っていくのだろう。
 暇空もまた、11月29日のコラボ記者会見で自身への名誉毀損があったと認識しており、「絶対に許さない」と真っ向から戦う決意だ。しかも、コラボ擁護派と思われるアカウントから殺害予告を受けて警察に被害届を出し、刑事事件としても進行している。両者の正義が大きく食い違うなか、事態は泥沼化しそうだ。
 生きづらい日常にあえぐ女性を救い出す活動は、社会に必要とされる仕事だろう。その点で、仁藤の志は尊い。そんな彼女が表現の自由を踏みにじり、クリエイターの仕事や生活の糧を燃やしてきたことに、筆者は違和感を持つ。
 どちらの仕事が尊く、どちらの仕事が必要性が高いと比べるのではなく、どちらの仕事も必要としている人がいて成り立ち、どんな仕事であってもその仕事で生きる糧を得ている人がいる。このことを、まずは誰もが尊重すべきだ。暇空が投じた一石は、仁藤が社会活動家としてひと皮剥ける契機になるだろうか。
[取材・文/中山美里]
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