LUNA SEA 12年ぶり“LUNACY”名義の
黒服限定GIGに見た、漆黒の世界から
の希望の光

LUNA SEA 黒服限定GIG 2022 LUNACY

2022.12.17 さいたまスーパーアリーナ
LUNA SEAが12月17日、18日と2日間にわたって『黒服限定GIG 2022 LUNACY』を埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催した。彼らが“黒服限定”というドレスコードをもうけ、“LUNACY”名義で大規模なライブを行なうのは12年前、東京ドームで前代未聞の“無料ライブ”として開催した『LUNACY 黒服限定GIG~the Holy Night~』以来となる。インディーズ時代のダークでゴシックでデカダンでパンキッシュなコア曲たちに加え、今回はそこからさらに振り切って、バンドの初期に生まれ未だ音源化されていない伝説となっている激レアな楽曲たちもフィーチャーし、黒服限定GIG史上、最狂にマニアックな漆黒の夜会となった今回の2日間。ここではその1日目のレポートをお届けする。
赤✕緑だらけのクリスマスマーケットやイルミネーションが煌めく通りを抜け、会場となったさいたまスーパーアリーナへ。そこは観客、コンサートスタッフ、警備員、売られているグッズ、場内にあるKFCのカーネルおじさんまで大きな黒マスクをつけ、見渡す限りどこもかしこも限りなく黒、黒、黒! 聖なるグレゴリオ聖歌をグラウンドビートにのせたBGMも相まって、場内はこれからミサでも始まるんじゃないかと思うほどおごそかな雰囲気に包まれている。
1日目は27分ほど開演予定時間を押したところで、客電が消える。映像も照明も暗いまま、音もない。闇のなかに広がる無音の時間が続いていく。こうしてLUNACYの世界観にオーディエンスをじんわりと引き込んだところで、SUGIZOがバイオリンを掻き鳴らす音が場内に響き渡る。バックにはカチッ、カチッと時を過去に戻すかのように、時計の秒針音が流れ、そこにINORAN、真矢、J、RYUICHIが粛々と音を重ね、闇がうねり始めたところから「THE SLAIN」へ、というインパクトあるオープニングでライブは幕開け。RYUICHIはロングヘアのエクステをつけ、前髪に青いメッシュ。真っ赤なルージュでフルメイクをした真矢は帽子もロングヘアも昔の姿を彷彿させる。メンバー各々、見た目までLUNACYへとタイムスリップしていた。続いて、いまもライブに残り続けている「FATE」で狂った夜の始まりを告げると、黒服限定とSLAVE限定のライブでしかほぼやらない「SLAVE」へ。ここでは声が出せないSLAVEに代わってINORANが全力でコーラスを熱唱してくれた。
RYUICHI
「最狂の夜を楽しもうぜ。ネクストソング、『MECHANICAL DANCE』」とRYUICHIがタイトルコールをして始まった「MECHANICAL DANCE」は、白煙の柱がステージを取り囲むように下から吹き上がる。この曲の主役はJのベース。Jが右手をパーンと掲げたあとバッキバキの音でベースソロを弾き、そこに真逆にあるクリアな音色でINORANがアルペジオを絡ませ、作り出すアンバランスな音像。この緊張感は初期の彼らのサウンドの特徴。続いて演奏した「BRANCH ROAD」もリズム隊が曲をリードしていくナンバーで、こちらは曲中すべての音が止まってサイレントを作るパートがあり、その緊張感がマックスに高まったところで音がブレイクしていくところがたまらない興奮を呼び起こす。その興奮をRYUICHIの深いディレイがかかった《絶望》という叫び声が締めくくっていく。キャッチーさはほとんどなく、あまりにも実験的な初期ナンバー。けれど、それをいまのメンバーのテクニックでプレイすると、これがしびれるほどカッコよく聴こえるというマジックが起こるのだ。
SUGIZO
それをもっとも体感したのが「SANDY TIME」。これまでも何度か披露しているこの曲はまさに、LUNA SEAがこれまで放ってきた壮大なスケールを感じさせる神々しい楽曲たちの原石となった楽曲といえる。緊張感たっぷりに5人各々がそれぞれのパートで闇のカオスへと落ちていき、後半は表情一つ変えずに淡々と同じフレーズを弾くJの横で、SUGIZOが派手なパフォーマンスを繰り広げながらソロタイムを展開。終盤、再び歌に戻ったと思ったら、それが突然途絶えて、曲はフィニッシュ。誰も交わることなく、不協和音スレスレのところで張り詰めたプレイを続けるプログレッシブな楽曲。そのヒリヒリしたムードに、ゾクゾクが止まらない。
その緊張感を吹き飛ばすようにRUYICHIが「飛ばしていくぞー!」と叫んで、この後は「SYMPTOM」、「SHADE」と立て続けに激しめのナンバーを連続投下。ズタズタズタズターと猛スピードで駆け抜けるようにこの2曲をアクトしたあと、演奏を終えたメンバーは、すぐさまステージを後に。第1部のライブは40分強で終了した。終始、曲も照明も暗めで、時間だけ見ればあっという間なのだが、体感としてはなんともいえない濃密な闇の時間、その渦のなかに巻き込まれていたような気分だった。
このあと、現実時間に戻ったところで、場内は感染症対策として20分間の換気タイムへ。
客席が再び暗くなり、照明で赤に染まった舞台に再び戻ってきた5人は、第1部と衣装を変えて登場。そんなところからも、彼らがこの“LUNACY”を本気で楽しもうとしていることが感じられて、嬉しくなる。そうして、第2部はRYUICHIの「もう死んだふりさせない」というつぶやきで、場内は興奮のあまりこの時点で瀕死の状態に。Jがベースをブイブイ鳴らすこの曲は激レア曲「JUNK」のことで、興奮が隠せない観客たちは大慌て。そうして、間奏でセンターに出てきたINORANがLUNA SEAで唯一のギターソロを弾きだすと、さらに客席のボルテージは急上昇。普段は見られない衝撃的な激レアパフォーマンスを目の前に、視線はINORANに釘付けになる。その興奮を次の「Dejavu」がさらにヒートアップさせていく。いまもライブで演奏し続けているこの曲は、メンバーもステージ上で自由にパフォーマンス。SUGIZOが舞台の真ん中でギターソロを弾きだすと、それを後ろからRYUICHIが見守る。そのRYUICHIめがけて歩いてきたINORANは、向かい合って演奏をしたあと、RYUICHIの頭を素早く抱き寄せてキス。そうしてラストのサビパートに入ると、ドラム台の上に自然とJ、INORAN、SUGIZOが集まり、客席に背を向け、3人が真矢を覗き込みながら楽しそうにプレイ。ドラム台の下からその4人の光景と客席を交互に見ながら歌うRYUICHIも、自然と笑顔がこぼれていった。
INORAN
そのRYUICHIが「12年ぶりに復活したLUNACY、楽しんでるかい?」と観客に話しかけると、客席からは「もちろん」といわんばかりに盛大な拍手が沸き起こる。そうして「俺たちも久々なんですけど。過去に未来はあるなと思ってます」と今日のライブの手応えを伝えた。そのあと、Jがフロントに出てきてベースフレーズを弾き始める。これはなんだろう?という空気が場内に広がりそうになったところにRYUICHIが「SEXUAL PERVERSION」とタイトルコールを入れると、観客は声を殺して狂喜乱舞! この曲は町田プレイハウスで活動していた時代、彼らが手売りしていた1stデモテープ『LUNACY』に収録されていた曲で、現「TIME IS DEAD」の原曲になった楽曲だ。未音源化のこの曲を、彼らはLUNACYとして当時のまま再現。曲の輪郭にはかなり面影が残っていることを感じさせながらも、歌詞のクレイジーさに衝撃を受けたところに「BLUE TRANSPARENCY」を初期バージョンのままアクト。ここでは、RYUICHIのインパクトあるシャウトが場内に響き渡った。
J
INORANのギターから始まった「LASTLY」のプレイで時をあのときに巻き戻してくれた彼ら。「最狂の夜、楽しんでますか? 飛ばしていこうか!」とRYUICHIが客席を煽って、曲は「CHESS」へ。ステージ後方に立つ4本のタワーの間から炎があがり、Jのベースもその炎のように激しさを倍増させながら炸裂。ここでもRYUICHIのキレキレのシャウトが曲を後押し。攻撃的なサウンドで場内を圧倒したあと、Jのベースソロでつないで曲は「NIGHTMARE」へ。こちらもデモテープに収録されていた未音源化の曲だが、いまの彼らが演奏しても違和感をまったく感じなかった。アウトロでは一人ひとり、歌と演奏が終わった順番にピンスポットが消えていき、RYUICHI、SUGIZO、INORAN、真矢が次々とステージを去ったあと、最後に一人だけ残ったJがこの曲のメインフレーズを弾き続けて曲を終わらせた。第1部のオープニングを逆再生するようなパフォーマンスで、ドラマチックな第2部を締めくくってみせた。
手拍子とともに、スマホのライトを振って観客たちがアンコールを伝えていると、SUGIZOが同じようにスマホのライトを照らして真っ先に登壇。アンコールはバラード「MOON」からスタート。ここではステージ上にあった小さなミラーボールに加えて、途中から大きなミラーボールが下から昇ってきて、2つの惑星となって場内を眩しい光で覆い尽くしていくという演出が美しかった。
真矢
そうして、このあとはメンバー紹介へ。真矢は「俺たちはどれだけ歳をとっても真剣に遊べるんだなと感動してます。ここから見た景色は、世界で一番輝いている漆黒の世界」と客席を賞賛。Jは黒づくめの客席を見ながら「バンド結成した当時、自分たちのオリジナリティーを求めて始めた黒服限定。まだその旅は続いてるんだなと思いました」と感慨深そうに伝えた。INORANはMCをしないスタイルまで当時のまま再現。RYUICHIに耳打ちをして「愛してる」というメッセージを代弁してもらった。SUGIZOは「未来は過去にある」と言ったRYUICHIのMCに共鳴したことを告げたあと、「マスク白いと浮くね。(明日は)黒にしよう。あと『MOON』のときもスマホのライトはつけたままで。以上、強制じゃなく命令ね」とお茶目な表情で伝えた。そしてRYUICHIはこの日のライブを振り返り、改めて「過去、未来、いまを一つの場所に置いて、同時につなげるのが俺たちのライブだってLUNACYをやって実感しました」とまとめたあと、「かかってこーい!」と叫び、「WISH」へ。銀✕黒のテープがアリーナ最後列まで降り注ぎ、続いて久々の「PRECIOUS...」をつないでプレイ。圧倒的な暗黒に包まれたカオスな漆黒の世界に、最後は多幸感溢れる希望の光をこれでもかと降らせて、ライブを締めくくったのだった。

取材・文=東條祥恵
撮影=田辺佳子、横山マサト、岡田裕介、清水義史

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