大阪に本拠を置く4つのプロオーケス
トラが、2023-2024シーズンプログラ
ムと楽団トピックを合同発表

在阪4つのプロオーケーストラ、通称4オケ(大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団)が一堂に会して、来年度のシーズンプログラムや楽団のトピックを発表する「大阪4オケ活性化協議会2023-2024シーズンプログラム共同記者発表会」が11月下旬に開催された。
発表会には、大阪交響楽団常任指揮者の山下一史、大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督の尾高忠明、関西フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者の藤岡幸夫、日本センチュリー交響楽団首席指揮者の飯森範親が事務局の代表者と共に出席し、華やかかつ和やかな場となった。シーズンプログラムの聴き所と、各楽団のトピックは以下の通り。
共同記者発表会の様子   (c)H.isojima

■大阪交響楽団
2023年度は指揮者3人体制の2年目。定期演奏会全8回のうち、常任指揮者の山下一史が2回、ミュージックパートナーの柴田真郁と首席客演指揮者の髙橋直史が各1回、名誉指揮者の外山雄三も1回指揮し、残りの3回をデリック・イノウエ、オーラ・ルードナー、原田慶太郎楼が指揮台に立つ。山下は「ドイツ・ロマン派の世界」と題して、ブラームスとリヒャルトシュトラウスにこだわったプログラムを披露する。メインはブラームスの交響曲第4番と、シーズン最後の定期演奏会では、ソリストに清水和音を招いて、ピアノ協奏曲第2番。恒例の「4オケの4大シンフニー」の交響曲第3番と合わせて、ブラームスに力を入れた1年となる。柴田真郁はラヴェルのオペラ「子供と呪文」の演奏会形式ほかを。髙橋は「音楽と美術」をテーマに、ヒンデミットの交響曲「画家マチィス」ほかを演奏する。また、山下はピアニストの菊池洋子とベートーヴェンのピアノ協奏曲を全曲録音に着手。名曲コンサートで、まず第3番と第4番を取り上げる。
大阪交響楽団 常任指揮者の山下一史  (c)H.isojima
今年、事業提携を行ったフェニーチェ堺では、来年度より定期的にコンサートを開催する予定だとか。堺シティオペラと共同で行ったTeatroシリーズ2年目の「il Teatro L'alba L'amore "オペラ✕オーケストラ"」の舞台、歌劇『トゥーランドット』の成果が認められて、今年、大阪文化祭賞を受賞したことは、オペラ指揮者の3人を抱える楽団としては誇れる結果となった。常任指揮者の山下一史がポジションを持つ3つのオーケストラ、千葉交響楽団、愛知室内オーケストラとの合同演奏会を7月に開催。単独では取り上げ難いストラヴィンスキー「春の祭典」に挑んだことは、各楽団にとっても大いに刺激となった。
大阪交響楽団  (c)飯島隆

■大阪フィルハーモニー交響楽団
音楽監督尾高忠明の6年目のシーズン。定期演奏会全10回のうち、尾高が指揮するのは3回。シャルル・デュトワ、ハインツ・ホリガー、エリアフ・インバルといった巨匠指揮者が指揮台に立つのは、いかにも大阪フィルらしい。2024年12月で指揮活動からの引退を宣言した、元首席指揮者の井上道義も定期演奏会に登場する。また、久しく大阪フィルの指揮台に立っていなかった下野竜也の登場もファンには朗報だ。アンガスウエブスターと上岡敏之は、コロナで来日出来なかったが、ここで登壇がかなう。尾高は、4月にヴェルディの「レクイエム」で華やかにシーズンの幕を開け、後の2回は、得意のイギリス音楽から、難曲ウォルトンの交響曲第1番ほか、そして、大阪フィルのシェフとしては外せないブルックナー交響曲第7番ほかを演奏する。
大阪フィルハーモニー交響楽団 音楽監督の尾高忠明  (c)H.isojima
作曲家にフォーカスしたシリーズは、メンデルスゾーンを取り上げる。彼の交響曲全曲演奏会は比較的珍しいので、この機会を逃す手はない。こちらのシリーズはザ・シンフォニーホールで開催される。フェスティバルホールの響きとの違いにも注目したい。他の主催公演としては、年に2回のマチネ・シンフォニーでは井上道義と齋藤一郎が、ソワレ・シンフォニーでは、大植英次と松本宗利音が指揮台に立つ。恒例となった小林研一郎指揮による「3大交響曲の夕べ」は、32回目の開催。大阪フィルの顔とも言える演奏会になった。
大阪フィルハーモニー交響楽団  (c)飯島隆

■関西フィルハーモニー管弦楽団
2023年度より、従来の指揮者3人体制に首席客演指揮者として鈴木優人が新たに加わり、4人体制となる。これは鈴木優人に惚れ込んだ首席指揮者藤岡の就任要請と、楽員からの熱いリクエストに応える形で実現した。2023年10月に、就任披露記念演奏会が開催され、ブラームスの交響曲第1番をメインに、ラモー、ストラヴィンスキーといったバラエティに富んだ、鈴木らしいプログラムが披露される。特別演奏会の「第九」を含む定期演奏会は年に10回。そのうち音楽監督のオーギュスタン・デュメイが1回指揮をし、2回ソリストで登場。首席指揮者藤岡幸夫は3回登場。桂冠名誉指揮者飯守泰次郎は1回指揮をし、首席客演指揮者鈴木優人は、ベートーヴェン「第九」特別演奏会を指揮する。デュメイは5月の定期でブラームスの交響曲第4番を指揮し、9月と11月の定期ではマテュー・ヘルツォーク、アレクセイ・オグリンチュクに指揮を託し、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番と、バッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲、ベルクのヴァイオリン協奏曲を演奏する。藤岡は、得意のヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番ほか、エルガーのエニグマ変奏曲とアンドリュー・ロイド・ウェッバー「レクイエム」、エルガー交響曲第1番ほかといった、英国に寄ったプログラムを披露する。飯守は十八番のブルックナー交響曲第5番を指揮。ザ・シンフォニーホールに大伽藍が現れるのか、見ものだ。他には原田慶太楼、高関健が登場する。
関西フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者の藤岡幸夫  (c)H.isojima
席上、2023年10月に、ベルギー、フランス、ドイツで「第2回ヨーロッパ公演」を実施することが明かされた。詳細は年明けに発表とのこと。以前、第1回ヨーロッパ公演から帰国したメンバーが、「日頃演奏している作曲家の母国を知ることが、これほど重要な事だとは思わなかった」と語っていたのが印象的だった。デュメイと共にヨーロッパを回ることで、更なる飛躍を遂げる関西フィルに注目したい。
関西フィルハーモニー管弦楽団  (c)s.yamamoto

■日本センチュリー交響楽団
指揮者3人体制による3年目のシーズンを迎える。定期演奏会9回のうち、首席指揮者飯森範親が3回、首席客演指揮者久石譲が2回、ミュージックアドバイザー秋山和慶が2回登場する。残りの2回を出口大地、鈴木優人が客演する。飯森は、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲、シベリウス交響曲第7番、ブルックナー交響曲第7番をメインで採り上げつつ、演奏機会の希少な現代曲等と組み合わせるなど、拘りのプログラムで全体を通して異彩を放っている。久石はベートーヴェン交響曲第5番、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)展覧会の絵をメインに置きながら、久石のオリジナル曲も披露される。秋山の回は、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を近衛秀麿編曲版と、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」を採り上げる。センチュリーは、コロナのタイミングで定期演奏会のソリストを若手の日本人奏者にシフトしたことが奏功し、今年は9回の定期のうち4回がソールドアウト。観客動員、定期会員数共に大きく増加したとのこと。23年度の定期のソリストも、小林愛実、務川慧悟、角野隼斗、三浦文彰宮田大神尾真由子高橋優介といった、人気と実力を合わせ持った顔触れが並ぶ。
日本センチュリー交響楽団 首席指揮者の飯森範親  (c)H.isojima
また、首席指揮者の飯森範親が音楽監督を務めるパシフィックフィルハーモニア東京との間で、オーケストラ・アライアンスを締結した事が発表された。これにより6月には両楽団の定期演奏会でリヒャルト・シュトラウスの大曲「アルプス交響曲」の合同演奏を実施し、11月の定期演奏会では、世界的チェロ奏者アントニオ・メネセスを共同招聘し、センチュリーではリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」を首席客演ヴィオラ奏者須田祥子と共にソリストとして登場する。秋山が指揮する「英雄」の近衛秀麿編曲版も、アライアンスの一環で、両楽団で、生誕125年、没後50年の近衛秀麿にスポットを当てる。今シーズンから始めている学生年間パスポート(両楽団の主催公演を何度聴いても5000円)の発行やコラボ企画の実施など、オーケストラ間でのアライアンスは珍しいだけに、その取り組みが注目される。
日本センチュリー交響楽団  (c)s.yamamoto

最後に大阪4オケ誕生のきっかけとなった朝日新聞文化財団主催の「4オケの4大シンフォニー」は、遂にブラームスの交響曲4曲を採り上げる事が発表された。この企画が立ち上がった時に、当時大阪フィルのシェフだった井上道義が「どうせやるならブラームスのシンフォニーを4つのオケでやるくらいで無いと!」と言っていたことが、9回目にして現実のモノになるとは。大阪4オケが、ブラームスの4大シンフォニーを1日で演奏する前代未聞のコンサートはチケットの完売は必至。来年度も大阪4オケの動きに注目だ。
取材・文=磯島浩彰

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