【堤 有加 インタビュー】
自分の音楽人生を
ちゃんとかたちにしたい
ライヴで再現できないからこそ、
ちゃんと音源にしたい
もうひとつの特色として、リズムの良さも挙げられます。
リズムは…練習しました(笑)。ある意味でクラシックを通っていないからこそのリズム感というのが、私の中にはあるような気がするんです。エレクトーンもそうだし、私は副科でドラムも少しやっていたから、そういうのもあるとは思いますね。ドラムがすごく好きなので、グルーブみたいなものはすごく大事にしたいんです。
リズムと言えば、「Fuse end」のパーカッシブなクラビネットもすごくカッコ良いです。
もともとはギターのカッティングだけだったんですけど、篠田さんがクラビネットも足すといいんじゃないかというアイディアをくださりました。今回のアルバムはライヴ感が強いですが、実際にはライブの何倍も厚い音になっているんです。でも、ライヴで忠実に再現するとなると大所帯じゃないと無理なんですよね。ライヴでなかなか再現できないからこそ、ちゃんと音源にしたい想いもあったので、ライヴのことを考えすぎずにダビングとかをやれたのは良かったと思います。
『RADIATION』はさまざまな楽器のソロパートも大きな聴きどころになっていますが、自身のソロパートで大事にされたことは?
ソロは決められたフレーズを弾くのがいい時と、アドリブがカッコ良い時があるんですよね。今回のソロは全部アドリブで、3テイクくらいしか弾いていません。
えっ! 3回だけですか?
はい(笑)。ただ、ソロはほとんど宅録だったから、いいテイクが出ない日は録るのをやめて、新鮮な気持ちで弾けるまで寝かせてから録るようにしました。それで、ちょっとリリースが遅れちゃったりしたんですけど。
ですが、それが奏功してバンドでライヴ録りしたかのような生き生きとしたソロを味わえます。
そういうものにしたかったんです。そのあたりは先にライヴをしたことも大きかったと思いますね。ほぼほぼ目を瞑って弾いているくらいな感じで、イメージはライヴ会場という感覚でした(笑)。
メリハリのつけ方や持っていき方などが絶妙で、こういうソロをアドリブで弾けることに圧倒されます。では、プレイ面で特に印象の強いソロを挙げるとしたら?
大変だったところで言うと、「Serval」のオルガンソロですかね。オルガンをメインにした現場というのはどうしてもピアノとかよりも少ないし、私はオルガニストでもないので難しさがありました。そういう中で納得のいくテイクを録れて満足しています。
「Serval」のソロはテクニカルな面も入っていますし、後半はホットに盛り上がるなど、本当に聴き応えがあります。さて、『RADIATION』はキャッチーな楽曲と上質な演奏がひとつになって、より幅広い層のリスナーが楽しめるインストゥルメンタルに仕上がりました。アルバムのリリースが待ち遠しいですし、来年1月23日に目黒BLUES ALLEY JAPANで行なわれるリリース記念ライヴも楽しみです。
BLUES ALLEY JAPANでのライヴは『RADIATION』に入れた曲にどっぷり浸って聴いていただきたいというのと、やっぱりソロ回しとかはライヴでは変わってくるんですね。なので、『RADIATION』をいっぱい聴いた上でライヴに来ていただいて、音源との違いを楽しんでいただけたらいいなと思います。
親しみやすいキャッチーな楽曲とハイレベルなインプロビゼーションの両方を味わえるライヴというのは本当に魅力的ですよね。もうひとつ、ゲストの篠田さん以外のメンバーが全員女性ということも華を添えています。
それはたまたま一緒に演奏したいミュージシャンを集めたら女性だったんです。前に予定していたライヴで、千里ちゃんと岩永真奈さんにお声がけしたことがあったんです。でも、そのライヴがコロナ禍で流れてしまって、今回アルバムを作るとなった時にリベンジじゃないですが、あのふたりと一緒に演奏したいと思ってライヴをして、その後レコーディングに入って…という流れだったから、私の中ではごく自然なことですけど、それがライヴの華やかさにつながるとしたらいいことですよね。
女性プレイヤーが卓越した演奏を繰り広げるというのは観応えがありますし、他にあまりないライヴになると思います。
そう言われると、確かにそうですね。では、そこもぜひ楽しんでいただければと思います(笑)。
取材:村上孝之
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アルバム『RADIATION』2022年12月14日発売
『堤有加 1st Full Album 「RADIATION」 リリース記念ライブ』
[2023年]
1/23(月) 東京・目黒BLUES ALLEY JAPAN
出演:堤 有加(Key)、山崎ユリエ(Sax)、瀬川千鶴(Gu)、岩永真奈(Ba)、川口千里(Ds)、ゆさ(Vln)
Special Guest:篠田元一(Key)
「Spark」MV