変幻自在の新世代ポップで人気急拡大
! ゲスのハイブリッドなルーツとは

今回の『FaRao Music Discovery』でフィーチャーするのは、8月6日に1stシングル「猟奇的なキスを私にして/アソビ」をリリースした、ゲスの極み乙女。。今最も注目を集めているニューカマーの4人組だ。去年にインディーズからリリースされた初のミニアルバム『ドレスの脱ぎ方』以降、その変幻自在な音楽性、一度聴くと虜になるポップなメロディー、クセのあるキャラクターで、まるで噂が噂を呼ようにして話題を集めていった彼ら。昨年12月の2ndミニアルバム『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』、そして今年4月のメジャーデビュー作となった3rdミニアルバム『みんなノーマル』を経て、人気はさらに拡大中。しかも今回のニューシングルは両A面で、「猟奇的なキスを私にして」がドラマ『アラサーちゃん 無修正』OPテーマ、「アソビ」がauスマートフォンのTVCMソングと、大型ダブルタイアップも獲得。いよいよ本格的なブレイクを果たそうとしている。
インパクト抜群なバンド名に、さまざまな音楽性が垣間見える変幻自在なサウンドを奏でる彼ら。そのルーツはどんなところにあるのだろうか?

ゲスの極み乙女。は、川谷絵音(Vo&Gu)、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)からなる4人組。2012年5月にindigo la Endのヴォーカル&ギターでもある川谷を中心に結成された(ベースの休日課長もindigo la Endの元メンバー)。とはいえ、当初はindigo la Endとしてのリリースやライヴ活動のほうが本格化したタイミングでもあり「そもそもはお遊びで始めたバンドだった」(『MUSICA』2014年1月号インタビューより)という始まりだった。最初のミニアルバムの制作期間は2日だったそう。さらに、ゲスの極み乙女。とindigo la Endは今年4月には同時メジャーデビューを果たしている。なかなかにユニークな始まり方をしたバンドなのである。
作詞と作曲を手がけるのは、indigo la Endでも全ての詞曲を手掛ける川谷絵音。もともとはオリコンチャート上位にのるようなJ-POPのヒットソングを中心に聴いてきた彼だったが、大学で軽音部に入ってから洋楽のロックからノイズまでさまざまな音楽を吸収するようになっていく。中でも大きかったのは、ゆらゆら帝国とRadioheadとの出会いだったようだ。
「ずっとJ-POPを聴いてて、オリコンの1位から10位まで聴くような感じで。で、軽音部に入ってからバンドものを聴くようになって、ゆらゆら帝国をすごい好きになって、それが自分のバンドをやろうっていう意味で最初の音楽体験になりましたね。(中略)Radioheadとかもやるきっかけになったバンドではありますね。最初に「Paranoid Android」って曲を聴いて、それも気持ち悪くて意味わかんなかったんですけど、それはゆらゆら帝国のときもおんなじだったんです」(「ナタリー」2014年4月掲載インタビューより)
川谷は、洋楽や邦楽のロックだけでなく、ノイズやヒップホップなどアンダーグラウンドなものからポップなものまでさまざまな音楽を吸収してきた幅広い趣向の持ち主。そして、ただ、彼だけでなく4人それぞれバラバラの音楽的なルーツが合体しているのが、バンドの強みでもある。ヘッドフォンブランドbeatsの企画サイト「b×ARTIST」に掲載されたインタビューでは、川谷が「ヒップホップで影響を受けたのはジュラシック5」と語っていた。また休日課長はビートルズに加え、イエスなどのプログレやスライ&ファミリー・ストーンやプリンスなどのファンクもルーツに挙げている。ほな・いこかはやはりファンクバンドのタワー・オブ・パワーやSUPER BUTTER DOGを、ちゃんMARIは椎名林檎に加えてジャズのビル・エヴァンスやキース・ジャレットやブラッド・メルドーをルーツとして語っている。
刺激的なピアノのフレーズ、ファンキーなリズムに、歌とラップを絶妙に行き来する川谷のヴォーカルが映えるスリリングな音楽性を最大の武器にする彼ら。踊れるダンスロックのテイストが人気拡大のきっかけになったが、それだけではないポップな切り札をたくさん持っているのは間違いないはず。一筋縄ではいかないバンドであることが、4人のハイブリッドなルーツからもわかるだろう。
そして、そんなゲスの極み乙女。は、先輩ミュージシャンともささまざまなつながりが生まれている。3月28日に放送されたフジテレビ系番組『僕らの音楽』では、自身の楽曲だけでなくスガ シカオとのコラボレーションによる「NOBODY KNOWS」も披露。原曲を独自にアレンジしたセッションを通じてお互いミュージシャンとして認め合う関係となったようだ。また、8月21日の名古屋クラブクアトロ25周年企画ではクラムボンとの対バンが実現した。川谷はインタビューで、自らのバンドの理想像について「くるりやクラムボンのように独自の立ち位置で活躍する唯一無二のバンド」とたびたび語っており、憧れのバンドとの共演を果たした形だ。
目標を「オリコン1位」と定め、躍進を続けるゲスの極み乙女。。ヒットチャートのど真ん中で、J-POPシーンをさらに大きくかき回してくれそうだ。

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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