12月9日@ビルボードライブ横浜

12月9日@ビルボードライブ横浜

PERSONZ、
ビルボードライブ横浜にて行なった
2022年ラストの
ワンマン公演をレポート

11月のビルボードライブ大阪公演に続き、PERSONZが12月にビルボードライブ横浜公演を行った。ここでは、2022年ラストのワンマンライブとなる12月9日の2ndステージの模様をレポートする。

【ライブレポート】

7thアルバム『THE SHOW MUST GO ON』のオーケストレーション曲「OVERTURE」が流れる中、メンバーが登場。JILLは大粒スパンコールでキラッキラのワンピースにプラットフォームのブーツ。普段にも増して、眩くゴージャスだ。

オープニングは「どんな状況でも負けないという歌です」と紹介された「NEVER SURRENDER」。上手くいかない事もあるよね、弱る時もあるよね、という内容が、語りかけるように唄われていくミディアムスローだ。そして、ビルボード横浜で前回ライブを行った2020年を振り返り、「バンドを続けてきた中で、何もできないというのは初めての事でした。次は『PRECIOUS?』(1990年)の曲なんですけど、今もこの曲を聴くと、あの頃を思い出します」(JILL)と「PRIVATE REVOLUTION」を。30年以上前に発表された曲だが“何もできず、夢さえ途切れた暗闇の中で…”という歌詞は、まさにコロナ禍で身動きがとれなかった時の気持ちが歌われているようだ。

続くMCでは、今年の夏に歴史的建造物でアコースティックライブを行ったことに触れ、「ここビルボード横浜も煉瓦作りで歴史を感じる」と、JILLが話題をふり、メンバーがそれぞれ一言ずつ挨拶。

本田「雰囲気良いよね。今年はアコースティックライブをやったり、充実した1年でした。その締めをここビルボード横浜でできるのは嬉しいです」

藤田「今年はライブも少しずつ戻ってきて。来年もPERSONZは精力的にやっていくつもりなので、いつでも遊びに来てください」

渡邉「ちゃんとした話は2人にされてしまったので、僕は心の叫びを。…ビール飲みてぇ!(笑)」

と、息の合ったトークと笑いで会場の空気を和らげた後、JILLが次の曲を紹介する。

「ネオアコースティックでは、しばらくやってない曲を掘り起こすという事をやりましたが、こうして38年やっているバンドって、誰かが応援してくれてきたからこそ」と感謝を伝え、1991年のアルバム『MOVE』収録の人気曲「誰かがあなたを愛してる」を。サビはキャッチーだが、平歌部分は、ギターが軽いオブリでアクセントをつけていくのみで、D+B+voだけで成立しているというドライブ感のある楽曲。こういう“抜き”の美学がPERSONZサウンドの魅力のひとつだと、ライブを聴いていると改めて実感する。曲の最後にはJILLが「誰かが、あなたを、愛してます!」と叫ぶ。「うん、きっとそうかも」と何故か素直に思える、ポジティブなパワーをもらえる曲だ。

この日、一番の見せ場だったのが「BE HAPPY」。JILLが「今はコール&レスポンスができないけど、あるアーティストを観てヒントをもらいまして。良い事はすぐ真似します」と話し、キラキラにデコったもう一本のマイクスタンドをステージに持ってきた。ルーパー(エフェクターの一種)を踏みながらそのマイクでコーラスや掛け声をサンプリングし、次々と重ねていく。ギタリストがその場でサンプリングしたリフをバックにソロを弾くとか、ボイスパーカッショニストが声のリズムを重ねていくのを見たことがある人は多いかもしれないが、意外と踏むタイミングが難しかったり、歌の音程やリズムが正確じゃないときれいなハーモニーにならなかったりと、実は難易度高め。JILLはパーフェクトに一度で録り終え、本来ならファンに協力してもらうコール&レスポンス部分のワクワク感を見事にセルフで作り上げた。そこへスラップベース、ギターのファンキーなカッティングも加わり、グルーヴはさらにアップ。笑顔で叩く藤田、軽くジャンプしながらリフを刻む渡邉と本田の姿からは本当にハッピーなオーラが放たれている。続く「7 COLORS」ではJILLが手にサイリウムを持ち、観客もカラフルなサイリウムを振りながら応える。大人な雰囲気の会場だけれど、この瞬間は観客のみんな、心はキッズに戻っていたと思う。

最近はイベントにもよく出演しているPERSONZだが、愛媛県で開催された“STONE HAMMER 2022”で一緒だった氣志團のメンバーや、年明け1月にもLINE CUBE SHIBUYAで対バンするSEX MACHINEGUNSのメンバーに「PERSONZは本当によく聴いてました。青春でした」と言われ、仲良くなったとのこと。このエピソードに、自分の青春時代を思い出した人も多かったのでは。そして、「今の時代に置き換えても何ら色あせない、世界に平和をっていうメッセージ。本当に尊いものは何ですか?と皆に問いかけたいと思います」と曲を紹介し、「PRECIOUS LOVE」を。歌詞の内容がシンプルで、歌詞カードを読まずともメッセージが伝わってくるのがすごい。さすが80'sバンドブームを牽引したライブバンドである。

すかさず、チアガールを彷彿させるキャッチーなリズムが鳴り響く。2020年にリリースされた最新シングル曲「I AM THE BEST」だ。このリズムはロック/ポップス界の“発明”と言ってもいいのではないかという、わかりやすく心躍るビート。PERSONZの特色であるサスティーンのないシンバル連打が持ち味を最大限に発揮するポイントでもある。もちろん観客は手拍子で全員参加だ。常に今がベスト!という現在進行形の前向きなメッセージといい、明るく覚えやすいメロディーといい、ライブで映えるキメの数々といい、音源でもライブでも強みを放つパワーチューンだ。

本編ラストのMCでは、JILLがロックの魅力と原動力についてトーク。「音楽でご飯を食べていくと決めたのは17歳の時でした。私はこの世界で生きていく、と。ロックは自由なものを感じさせてくれました」と思いを語り、「若い頃より今は、一本一本のライブを大事に、明日はないかもしれないという気持ちでやってます。これから先があるとしたら。もしかしたら今日のライブを観て、明日から誰かの人生が変わる。PERSONZを聴いて、皆さんの何かが変わってくれたらという気持ちでやっています」

ミラーボールが輝く中、演奏されたのは「SINGIN'」。2002年にシングル曲として発表されたミディアムバラードだ。演奏前にJILLが語った通り“音楽で世界は変えられないかもしれないけど、誰かの気持ちが少しでも動くかもしれない”という微かな希望を願う曲で、それは決して無責任な楽観主義ではなく、迷いや無力感さえも見え隠れするアーティストのリアルな思いが歌われている。それだけに、この日の演奏も単なる楽曲の再現ではなく、今目の前にいる観客に自分の気持ちを語りかけているような人間味と手触りを感じさせるものだった。ロックとかポップスとか歌謡とかブルースとか…、ジャンルもスタイルも関係ない本質的なエモーション。JILLの声質はハイトーンだし本田のギターも基本クリーントーンだし、フロント2人は都会的なタイプのミュージシャンだけれど、この曲には何とも言えないプリミティブなエネルギーが満ちていた。アウトロのエモいワウギターソロも、ソウルフルと言っても過言でないフェイク的なボーカルも。魂が注ぎ込まれた演奏に最後まで引き込まれっぱなしだった。

アンコールでは、まずJILLが今後の目標について語った。

「本当にギネスに載るまで(PERSONZを)やりたいですね。あと、個人的には、素敵なグランマになりたい。皆さんの悩みをきいて“そんなの小っちゃいよ。先は長いから!”とか言いたい(笑)」と野望を語り、群馬県の高崎署で一日署長に任命された事、これも初めての事だと報告。彼らがPERSONZを始めた38年前、ブロンド盛り髪のロック姐さんが警察署長を仰せつかるだなんて、誰が想像できただろうか。還暦を過ぎても、38年間バンド活動を続けていても、人生にはまだまだ初めての事が起こる。それを体現して見せてくれる先輩がいるとは、なんと頼もしいことだろう。
そして演奏された名曲「DEAR FRIENDS」。メンバーもステージを右へ左へ、ギリギリ客席の近くまで行って観客1人1人の顔を確かめるように演奏。間奏では本田がJILLにピックを手渡して、JILLのピッキングでギターソロを弾くという場面も。後半ではついに観客も立ち上がり、総立ちのスタンディングオベーションとなった。「世界一の本田毅です! 世界一の渡邉貢です! 世界一の藤田勉です! JILLです!」の言葉でこの日のライブは幕を下ろした。…はずだった。

終演SEが流れ、客電も点き、退場を促すアナウンスもされていたが、感動さめやらぬファンの拍手は止まらない。すると、なんともう一度メンバーが登場。ビルボードのスタッフに「もう一曲だけいいですか?」と確認すると、予定になかった「sayonaraは言わない」をプレゼント。この曲は、11月に石巻で開催された“ISHINOMAKI BUCHI ROCK '22”で「レクイエムのような気持ちで演奏した」(JILL)曲だそうだ。突然の別れが来たとしても、もう会えないなんて思いたくない、思わないからという気持ちが歌われているこの曲は、時代も場所も年代も越え、人としての普遍的なメッセージとして観客の心に響いたことだろう(JILLの思いをより知りたい方は、彼女のnoteをぜひ読んで欲しい。https://note.com/jillpersonz/n/na2d99af700e8)。

ダブルアンコールを含めて全10曲。どれも彼らの代表曲とも言える人気曲であり、前に進む勇気をくれるポジティブな曲を厳選した贅沢な時間となった。曲数は少なめだったが、そのぶんトークはたっぷり。2022年の活動を振り返るとともに、今に繋がる彼らの気持ちやファンと共有したい思い、そして今後の展望など、PERSONZの過去〜現在〜未来が見えるようなスペシャルなライブだった。「PERSONZの楽曲は300曲以上あるので、まだまだやっていない曲があります。来年は39周年、その次は40周年。それに向けてどんどんやっていきます!」と力強く宣言したJILL。まだライブで披露された事のない曲も聴きたいけれど、絶対盛り上がる定番曲も聴きたいし、新曲も聴きたいし…と、これまた贅沢な悩みを考えながら帰途についたファンも多かったはずだ。

text by 舟見佳子

【ライブ・イベント情報】

『Setagaya Music Festival』
日時:2022年12月21日(水)開場10:30/開演 11:00 ※終演21:00
会場:第2会場 二子玉川ライズ iTS COM スタジオ&ホール
チケット:1日通し券 6,000円
※1日2ドリンク代込 ※全席自由

■チケット購入・詳細はこちら
https://www.capital-village.co.jp/calendar/concert/2022101201.html

『SEX MACHINEGUNS 25年目の異種格闘技戦!!燃えろ渋谷!!』
日時:2023年1月27日(金)開場17:45/開演18:30
会場:LINE CUBE SHIBUYA
出演:SEX MACHINEGUNS / PERSONZ / メトロノーム
チケット:全席指定¥8,500(税込)

お問合せ:キョードー横浜 045-671-9911
土日・祝を除く平日12:00〜15:00
http://www.kyodoyokohama.com

12月9日@ビルボードライブ横浜
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OKMusic編集部

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