林原めぐみ

林原めぐみ

【林原めぐみ インタビュー】
こんなに戦いを鼓舞している曲は
林原史上“最恐”

EVA初号機にゴジラ、そしてキングギドラ――。日本が誇る偉大なキャラクター3体が、なんと一堂に会する物語が登場する。そのテーマソングに挑むのは林原めぐみ。『エヴァンゲリオン』シリーズで自身が演じる綾波レイの情景も投影しつつ、林原史上“最恐”と語るスペシャルナンバーに彼女が込めた“人間”への想いとは?

立つためには屈む時間も必要だから
自分を孤独にする時間ってすごく大事

2021年に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でシリーズが完結して間もないのに、パチンコ新機種『Pゴジラ対エヴァンゲリオン ~G細胞覚醒~』のテーマソングという今回のオファーを受けた時は、驚かれたんじゃありません?

お話をいただいて収録したのは2021年の秋冬だったので、“『シン・エヴァ』の余韻もないのか!?”くらいの気持ちはありましたね。ただ、パチンコって機械の調整や国の審査などで、1年後と言いながらも2年後になるとかって結構あることなんですよ。なので、確実にいつ世に出るか分からないのだから、『エヴァンゲリオン』シリーズが完結したということと無理に関連づけることはやめよう、ゴジラとキングギドラとエヴァンゲリオン初号機だけを見て進めようと決めました。とはいえ、「集結の果てに」の冒頭には《考察が渦巻いた世界へ》というワードを入れて、『シン・エヴァ』の続きだと誤解を呼ぶことのないよう、ちゃんと別物なんだと分かるようには配慮したかも(笑)。で、最初はテーマソングは1曲というお話だったので、2009年と2010年に『CRエヴァンゲリオン』のイメージソングとして出した「集結の園へ」「集結の運命」と併せた三部作的な感じで考えていたんですが、途中でもう1曲お話をいただきまして、ぼんやり四部作になっちゃいました(笑)。

結果、今回収録されている「集結の果てに」と「集結の時 ~Territory~」ではどんなふうに歌詞のテーマや内容を書き分けたんでしょう?

「集結の果てに」はキングギドラに乗っ取られたレイをアスカが助けに行くという、パチンコのストーリーに沿ったものになっています。そこからサビも《この手を 伸ばして/離さない 君だけ》と…でも、先にできたのは「集結の時 ~Territory~」なので、こちらではゴジラ、初号機、キングギドラが集った世界を描いているんですよ。そうやってそれぞれのもの…特に巨大なものが集結した時って、相手を倒すだけでなく、“自分のテリトリーを守る”という想いが本能として出てくると思うんですね。“パーソナルスペース”という言葉が表すように、実はそれって人間にもあって、大勢でいるほうが安心する人、ひとりのほうが好きな人、ふたりでいると最初は楽しいけど不安になっていく人…といろんなタイプの人がいる。だから、“Territory”は三つ巴の戦いの中で生まれた言葉でありつつ、人間にとっても大事なものなんじゃないかというのを、なんとなく裏に込めていますね。そこが作詞家MEGUMIらしいところというか、作品のテーマは大切にしながらも、やっぱり人に落としたいんです。

“3つの魂”というワードがあったり、明らかに3体の世界観について書いていながらも、どこか人間に寄ったメッセージを感じたのはそのせいですね。「集結の時 ~Territory~」には《まだ進むか まだ生きるか》など、すごくポジティブなメッセージもありますし。

そうですね。《友でも愛でもなく/一途な闘争心(本能)で》とも書きましたけど、今っていろんなことが無理矢理に美化されている気がするんです。例えば、不慮の事故などで友達を亡くしてしまった時、SNSに“泣いた”とかって気持ちをわざわざ“投稿しなきゃいけない”みたいな空気があるじゃないですか。その子のことが大好きすぎて、言葉にもできずにうずくまって何もしない時間のほうが、むしろ価値があると私は思うけど、泣いている様子をアップするほうが共感を得たりする。そんなアピールなんて本当はする必要ないし、むしろ自分を孤独にする時間って、すごく大事だと思うんですよ。膝をついて地面を見つめて悔しがったり悲しむ時間があるから、顔を上げた時に友達がいたり、まだ進める道があるってことに感謝できる。だから、立つためには屈む時間も必要なんですよ。実際ゴジラはバンバン倒れますし、それでもギロッと目を開けますしね。

そううかがうと《まだ進むか まだ生きるか》というのも、戦いの情景そのものに見えてきます。

そうなんですよ。だから、ゴジラの姿として見てもいいし、なんとなく自分が励まされているような気持ちになってくれてもいい。ただ、今回歌ってみて、これは本当に林原史上“最恐”じゃないかとは思いましたね。人に落とし込んではいても、こんなに戦いを鼓舞している曲は、やっぱり怪獣モノだなって。その戦いは己との戦いでもあるんですけどね。

冒頭から凄まじいパワーでヴォーカルが叩きつけられて、シンフォニックな響きとロックの猛々しさが、どちらも譲ることなく詰め込まれていますもんね。

まさに、そこはどちらも譲ることないんですよ! ゴジラ側の正義、エヴァ側の正義はもちろんありつつ、キングギドラ側にも襲来した理由があるでしょうし。怪獣モノってね、紐解いていくと本当に深い。個人的にも『ゴジラ』シリーズは非常に好きで…一番好きなのは『ゴジラ対へドラ』なんですけど、シリーズの作品は結構観ているんです。なので、ゴジラとキングギドラに対する愛情は自分の中にベースとしてあって、今回のタイアップを機に勉強したってわけではないんですよね。怪獣そのものにも敬意を払っているので、ゴジラの世界を踏み荒らすようなことはしていないと思っております。
林原めぐみ
林原めぐみ
シングル「集結の果てに」

OKMusic編集部

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