Saucy Dog、「同世代で一番かっけえ
と思っているバンド」ハルカミライを
迎えた対バンツアーファイナルの公式
レポート到着

Saucy Dogが『対バンツアー2022 SUNNY BOX』のファイナル公演を12月7日に東京Zepp DiverCityで行った。本記事では、対バン相手にハルカミライを迎えた同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

2022年10月から全11公演で全国を巡ったSaucy Dogの『対バンツアー2022 SUNNY BOX』は、12月7日、東京Zepp DiverCityでファイナルを迎えた。各地で激アツな対バン相手を迎えたツアーで、Saucy Dogがファイナルの対バン相手に選んだのは、音楽性こそ違えども、互いに長くシンパシーを感じ合い、親交をあたためてきたハルカミライ。Saucy Dogは2021年に行った日本武道館での対バンイベントでも彼らに出演を依頼している。バンドマンならば記念すべき「武道館初ステージ」は自身のワンマンで達成するのが本望であるはずのところを、ハルカミライは他ならぬ盟友からの依頼に迷いなく出演を快諾。素晴らしいライブを繰り広げたことも記憶に新しい。今回のツアーファイナルではそんな2組が「対バン」の意義をあらためて強烈に突きつけるような、素晴らしくエモーショナルなライブを見せてくれた。

ハルカミライ
先手はハルカミライ。序盤から「ファイト!!」、「カントリーロード」、そしてまた「ファイト!!」へとシームレスにパンキッシュなロックサウンドで飛ばしまくる。「俺達が呼んでいる」に差し掛かる頃には、橋本学(Vo)や関大地(Gt/Cho)が縦横無尽にステージを動き回るせいでマイクやギターのコードがぐちゃぐちゃに絡み合い、さすがに「ちょっと待って」と一瞬演奏を中断。しかし即座に「《ラムネは瓶がいい》のとこから4カウントで始めて」と演奏再開。さらにアグレッシブなバンドサウンドが展開されていく。そのテンポの良さもライブだ。ハルカミライのライブは常にこうした生のドキュメンタリーを見せる。その時のテンションによって、まるで音楽が生き物のように予測不能な形で展開していく。

ハルカミライ

そんな激情の「ライブ」では学のMCもグッとくる。「2017年9月17日、あいつらは俺達を対バンに呼んでくれて」と、Saucy Dogとの出会いを語り、「だから俺たちは一番の古参のサポーターです」と、彼らに対する変わらぬ愛とリスペクトを言葉にした。そして「ピンクムーン」で力強くあたたかい歌声を届けながら、「音楽のかっこよさって何だと思う?」と問いかけ、「それはやさしさだよ」と続けたのにもグッときた。「こんなギュウギュウのライブハウスに慣れていないやつもいる。でも乱暴に教えてやるんじゃなくて、やさしく教えてあげよう。ライブハウスって超楽しい場所だって。この2マンで!」というメッセージは、この日、音楽性の違う2バンドが共演する意義の表明でもあったと思う。さらに学は畳み掛けるように「音楽で心躍らせて、“魔法にかけられて”、なんだかわからない、胸に抱えたモヤモヤを“ゴーストバスター”して、今日は打ち上げもあるから旨いメシ食って飲んで、0時をまわって“シンデレラボーイ”になって帰ります」と、Saucy Dogの名曲タイトルを引用した粋なMCで会場を沸かせた。
ハルカミライ
ハルカミライ
ハルカミライ
ハルカミライ
終盤は「Tough to be a Hugh」の自在に暴走するロックサウンドでさらに観客を引き込み、メロディの良さを噛みしめるような「21世紀」からバンドサウンドが思い切りドライブする「ウルトラマリン」、さらに魂そのものの歌「世界を終わらせて」と緩急自在なライブ運び。とびきり感動的だったのはラスト曲。Saucy Dogの「結」のサビを一節歌って、学は「いい曲ばっかじゃねえかよ、あいつら」と口にした。そしてその歌を自然にハルカミライの「アストロビスタ」につなげると《眠れない夜に俺は Saucy Dogを聴くのさ》と歌詞を替えて、さらに会場を沸かせる。《サテライト小さな光 分かるかい 分かってほしい》と歌うこの曲が、終盤に再び「結」につながり、《声をかけたのは僕の方から 格好悪いとこも嫌いじゃないよ》と歌詞を絶妙にアレンジして、Saucy Dogへのあたたかなメッセージとして響かせたのにも胸が熱くなった。そして学が「Saucy Dog! みんなが、オマエらのことを待ってるよ!」と言葉にすると、ラストはまた「アストロビスタ」の大サビへ。メンバー全員のコーラスが力強いユニゾンのハーモニーを生み出し、会場中の腕が突き上げられる。そして「ライブハウスは1 人残らず全員が輝ける場所。このあとも楽しんで帰れ。ハルカミライでした」と、濃密なエネルギーを満たしたままステージをあとにした。
ハルカミライ
続いてSaucy Dog。おなじみのSEをバックに、いつものようにせとゆいか(Dr/Cho)、秋澤和貴(Ba/Cho)、石原慎也(Vo/Gt)の順にステージイン。しかしハルカミライのあのステージのあとでは、この日のライブは熱を帯びること必至。1曲目の「リスポーン」から、石原のボーカルは力強いシャウトを聴かせ、予想を超える熱量で音を放っていく。それでいて、Saucy Dogの持ち味である、しっかりと歌を聴かせて没入させるというスタイルはそのままに。続く「君ト餃子」がとても有機的なハーモニーを響かせると、「シーグラス」ではぐいぐいとドライブしていくようなバンドサウンドにフロアのハンドクラップも大きくなる。「404. NOT FOR ME」でもロックバンドとしてのグルーヴが際立ち、演奏後にせとは思わず「気持ちいいー!」と口にした。石原はフロアの反応を直に感じるためか、「今日はもうイヤモニいらない。ごめんなさい」と、早々に外してしまった。そのせいもあってか、この日のライブはとても生々しく熱いものとなっていく。
Saucy Dog

Saucy Dog
Saucy Dog
Saucy Dog

せとはあらためて、今回のツアーファイナルの対バン相手にハルカミライを選んだことに言及し「同世代で一番かっけえと思っているバンド」と言えば、石原も「メンバー3人一致の意見」と続ける。そしてせとは「負けたくないなと思うので、違う手札で一生懸命戦っていきたい。出てくれてほんとにありがとう」と告げた。その言葉をステージ袖で聴いているハルカミライのメンバー。せとは思わず「しゃべりづらい(笑)」。そんなリラックスムードのMCにも熱い想いが見え隠れし、そのエモーションは演奏に、歌に表現されていく。「雀ノ欠伸」では石原は珍しいほどに観客を煽り、明日声が枯れるのも厭わないとでもいうように全身全霊の歌を響かせる。その熱がフロアにも伝わり、 演奏後の拍手も、思わず漏れる歓声もどんどん大きくなっていく。実は喉の調子に不安を抱えていたと石原はその後のMCで語っていた。しかし病院で「がなっても大丈夫」と医師のお墨付きをもらったことを明かし、石原はギミックなしのむき出しの歌声で観客を魅了する。「シンデレラボーイ」ではアルペジオからカッティング、そしてソロへと展開するギターサウンドが、いつにも増してロックバンドとしての存在感を見せつけていた。一方「東京」では切なくも美しいファルセットに耳を奪われ、続く「メトロノウム」は圧巻のアンサンブルだった。3ピースサウンドがロックの衝動を生々しく描き出し、さらに「雷に打たれて」では客席のクラップも最高潮に膨れ上がり、ギターをかき鳴らす石原の佇まいはまるでギターキッズのようだった。そして「今、俺たちが一番歌いたい歌」と言って始まった「ノンフィクション」は、彼らの音楽への純粋な情熱が豊かなアンサンブルに昇華されたかのような、見事な演奏だった。ラスト2曲はコードストロークひとつにもありったけの想いがこもるかのような「いつか」。とても丁寧に、けれど最高にエモーショナルに石原は歌を届けた。そして「みんな自分らしく楽しめた? これからも自分らしく生きていきましょう」と言って始まった「Be Yourself」。ゆったりとしたロックのグルーヴがバンドの充実感を表していた。とても素晴らしい「対バン」の大団円だった。
Saucy Dog
「対バン」とは互いに触発し、触発され、また新たな景色を見るためにあるものだと思う。この日の両者はまさにそんな理想的な「対バン」を見せてくれた。それぞれがそれぞれの音楽に憧れ、リスペクトし、パフォーマンスに化学反応が起こる。これこそが対バンの醍醐味だ。この2組の対バンは、この先両者がどんなに大きな存在になったとしても時々観たいと思う。どんなに音楽性が違っていようとも、根っこのアティチュードの部分でつながるSaucy Dogとハルカミライは、これからも最上の友であり、最大のライバルであり続けるのだろう。
Saucy Dog
Saucy Dog、ハルカミライ

文=杉浦美恵 撮影=白石達也

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