Awesome City ClubのPORINによるソロ
プロジェクト・Pii、初のワンマンラ
イブレポート meiyoもゲストに登場

Pii ✕ iiiii 〜 庭に集う 〜 2022.12.8 渋谷WWW
Awesome City Clubのボーカルとして活動するPORINが、正体を伏せて始めたソロプロジェクト・ Piiの初のワンマンライブが、12月8日(木)に渋谷WWWにて行われた。
懐かしさや温かさを持つ歌謡曲を現代的解釈した「シン・カヨウキョク」をテーマとし、様々なアーティストをプロデューサーとして迎えつつ活動している彼女は、この日、私たちにどのような景色を見せてくれるのか?筆者と同様にそんな高揚した想いを胸にしていたであろう多くのオーディエンスが、フロアにてPiiの登場を待っていた。

バンドセットと、たくさんの植物が置かれた緑溢れるステージに現れたPiiは、ふわりと風になびくような青いワンピースを纏って登場したのだが、その様子はまるで、凛と咲き誇る花のよう。思わずため息が出てしまいようになるくらいの美しさを体現した彼女が大きく息を吸い、歌い出したのは「花明り」。花が散る、誰かとの別れ、季節の境目。そういった「ひとつの終焉」から薫る切なさや侘しさを、叙情性のある言葉を連ねることで表現した和を尊ぶ楽曲を、じっくりと、それでいて柔らかに歌い上げていく。テーマとなっている花が持つ盛者必衰の生き様と、風に舞い散った時の花吹雪を想起させ、幻想的な世界観をぐっと色濃くさせている。

そして「どんな夜にしようか?一足早く春が来るように、とてもとても気持ちの良い、幸せな時間をみんなと過ごせたらなと思います」と伝えると、ボカロP・164の楽曲「全部全部全部」をカバー。日常のワンシーンが描かれた歌詞を、身振り手振りを交えながら全身で歌い上げる。鍵盤が哀愁と煌めきを、小気味良いドラムのビートが夏特有の気怠さと空気感を作っていた。そこからジャジーな「in showcase」へと続けると、天井のミラーボールが輝きだし、こもった音色のベースラインが色香を放つ。アコースティックギターのきゅっとした音が、温もりと可愛らしさのあるPiiの歌声と絡み合い、極上の聴き心地をもたらした。ここで、スペシャルゲストとしてmeiyoが登場し、「THE FIRST TAKE」内のプロジェクト「MAISONdes」でコラボした楽曲「ラリー、ラリー」を披露。リズミカルでオリエンタルで、どこか懐かしいメロディの上を、言葉や想いのやり取り=PingPongとして表現された歌詞が軽快に走り出す。Piiとmeiyoが向かい合って歌う姿も、まさに卓球をしている姿に見えて、視覚的にも楽しい。
そしてそのまま、meiyoがプロデュースした楽曲「ヒノキノキ」を共にプレイ。90年代ポップスを彷彿とさせるキラキラとした音を交えつつ、トキメキと懐かしさの双方を感じさせるナンバーだ。Piiがオーディエンスに「みんなでヒノキノキになろう!」と呼びかけ、全員で頭の上で大きな三角を作って揺れるシーンもあり、温かい空気が会場を包み込んだ。しかし、次曲「CRYPT」(大沢伸一のソロプロジェクト・MONDO GROSSOとPORINのコラボレーション楽曲)では雰囲気が一変。リズムに合わせて激しく点滅するストロボと、サイケデリックでクールなループが別世界へとトリップさせる。バンドメンバーもサイバーグラスを掛けて直立し、演出さながらの異質な空気を醸し出していた。

バンドメンバーの杉浦秀明(key)、qurosawa(Gt)、伊吹文裕(Dr)、カメヤマケンシロウ(Ba)、タカハシリョウスケ(DJ)の紹介後、「すみれ September Love」、「淋しい熱帯魚」、「君に、胸キュン。」、「春よ、来い」のメドレーをプレイ。Piiの歌とバンドアレンジによって新たな魅力が寄与された、彼女のバックグラウンドが垣間見える楽曲の数々が届けられると、ここでPiiは一度退場。バックスクリーンに架空の景色と植物が映し出され、幻想的な音楽と共にPiiの声で、カキツバタの花を詠み込んだ「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」という一句が告げられると、衣装替えをしたPiiが再び登場し、「カキツバタ」と「雲雀」が演奏される。家族への想いや未来への希望、今を生きる喜びなど、人肌の柔い温度を保った思い遣りと願いが込められた詞とメロディが、会場に豊かに鳴り響く。そして、Piiというソロプロジェクト名の由来について「Personal/PORINのP、iiは、それを支えてくれる、ここにいる人たちのことです」と伝え、ここ数年は人との繋がりについて考える機会が多かったことにも触れつつ「自分の為だけじゃなくて、誰かの為に生きる、今の私が好きです」と語り、ラストに「Baby Pink」を晴れやかにプレイ。しかし、それでいてアウトロはバンドメンバー全員で激情的なプレイを見せ、まるで爆ぜるように、最後の最後に強烈な印象を植え付けて本編の幕を閉じた。

熱望されたアンコールでPiiは、年内にワンマンライブを行えたことで「今年の悔いはない!」と笑顔で伝え、2019年から動き出したソロプロジェクトではあったものの、コロナ禍の影響を受けたことで、思うような活動をすることができなかったと話した。それでも、今、こうしてライブ活動を含めて前に進めていることと、“長い冬を越えて訪れた春”のイメージを重ねて、初のデジタルEP『春が呼んでる』をリリースしたという経緯を伝えた。そして、「来年はもっと本格的に活動していきたい」と意欲を表し、最後に「原点となる曲」として、もう一度「カキツバタ」を演奏し、初めてのワンマンライブを明るく締めたのだった。

取材・文=峯岸利恵 撮影=Ryota Haraguchi

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