すかんち、結成40周年記念ライブ「来
年は真っ赤なちゃんちゃんこでやりま
す」

すかんち結成40周年記念「SCANCH’ N 40th FANTASY TOUR」” 11.29ライブレポート
“すかんち結成40周年記念「SCANCH’ N 40th FANTASY TOUR」”の初日が11月29日、川崎 CLUB CITTA’ で開催された。彼らが10代の時、地元、大阪の高槻のAPMスタジオに集まるバンド仲間によって結成された『すかんち』。すかんちという名前はAPMスタジオ・スタッフが、とりあえずで付けた“ちんかすトリオ”に由来する。そのトリッキーなバンド名に関して、ROLLY自身はカッコいいバンド名に対してアンチテーゼを発信する意味で活動してきたそうだ(世の中にはそういうマインドでバンド名を決めてるケースも多々あると思うが)。そんなロックの王道からちょっと外れた独自の路線を突き進むバンドが40年も続くと誰が想像しただろうかーー。
あれから40年。初期メンバーのドクター田中(Key.)の逝去、後のメンバー・小川文明(Key.)の逝去、Shima-changの事故...数々の試練を乗り越え、ザ・キャプテンズのテッド(B&Cho.)と小川文明の弟子、村原康介(Key.)にサポートされ、今、すかんちを観られること自体、なんとも感慨深い。
村原康介
開演時間が近づくと会場に流れてきたのは影アナによる注意事項のアナウンス。時々、言い間違えては“コホン(咳払い)、間違えました”と律儀に詫びを入れつつ注意事項を読み上げていたのはROLLYだ。一度、すかんちの世界に足を踏み入れた人に対して、隅から隅まで楽しませたい、そんな心意気の現れなのだろう。正に真のエンタテイナー。深紅の幕で閉ざされたステージから何が飛び出すのか、お客さんたちの期待が高まる中、幕が左右にサーッと開くと、まず目に飛び込んできたのはセンターのROLLY、小畑ポンプ、そして上手にはShima-chang!! その瞬間、お客さんのワーッ!という歓喜の声が響く(ような感覚を覚える)。というのもイベントを除き、すかんちのワンマン・ライヴでShima-changが最初からステージにいるのは、あの事故以来、初めてのことだから。ギターのリフとROLLYの唄からスタートする「スローソンの小屋 」からライヴはスタート。ドラムのキックとタンバリン、テッドのベースと、村原康介のエレピの音...どんどんぶ厚くなっていくサウンド。ああ、これが今のすかんち・サウンドなのだとお客さんも噛みしめているようだ。時折、“レッツゴー!”と合いの手を入れるShima-chang、以前より元気そうで何より。にしても、ROLLYのギターの音は時に攻撃的で、時に柔らかで、とてもより表情豊かになってるなと思う。月日を重ね、益々味わい深く芳醇な味わいになっている、まるでワインのように。
ROLLY
そして♪Kiss Kiss~♪のSEから彼らのデビュー曲「恋の T.K.O.」へ。馴染み深いポップ・チューンにお客さんは体を揺らし、♪Kiss Kiss For Your Love~♪のサビでは手を振り上げる。それぞれ平等に年を重ねたという切ない現実はあれども、そこに広がるのはデビュー直後、渋谷 egg manでの光景とまったく一緒だ。そしてドクター田中のパートをテッド
がオリジナル・キーで唄い、ハモる。お見事!“ハロー、エヴリバディ! レディース、アンド、ジェントルマン! ボンジュール、ムッシュ、マドモアゼール、セニョール、セニョリータ、イタリアーナ、食べてみーな、美味しいですか?”
40年前から変わらぬROLLY節満載のMCに目尻が下がる。時折、お客さんをイジるのも彼のサービス精神のひとつだ。
“結成40周年コンサートにご来場いただき、誠にありがとうございます! 何しろ40年ぶんあるので大変なんですけどーー。紹介するまでもないんですが、久しぶりに(ステージに)帰ってきてくれたShima-changさん。とうとう、今日は最初から最後までいる予定です”そうROLLYが言うと、会場からは割れんばかりの拍手。その後もサポート・メンバーを紹介し...小畑ポンプの紹介を忘れると、すかさず“俺、誰だかわかる?”と小畑ポンプから突っ込みが入る(笑)。“小畑ポンプさん! 本当に、僕らはアンヴィル(※80年代~活動している鳴かず飛ばずのバンド。2013年にドキュメンタリー映画が公開されている)みたいな関係ってことだね。じゃ、名曲の数々を順番にいこうかな。よろしいおすか!”(ROLLY)ということで、次に演奏されたのは、先日のラジオ出演時に“ラッセンが好き~”のフレーズでお馴染みのお笑い芸人・永野氏に大好きな曲だと言われた「恋するマリールー」。永野氏に限らず多くのファンに愛され続けていることは、会場の反応から明らかだ。曲終わりから小畑ポンプがリズムを叩き続け、ベース、キーボード、ギターのユニゾンから突入したのは「仏壇返しにはかなわない」。そしてギターをグレコのレスポールに持ち替えて演奏された「恋人はアンドロイド」は、ドクター田中亡き今、彼に代わってROLLYが高いキーで唄い上げる。この曲は、紛れもなく、すかんちの代表曲の1つであり、今もファンやメンバーに愛され続けているのことが観客の反応から伝わってきて胸が熱くなる。どれもこれもマストで聴きたかった曲がズラリと並んだ前半戦で、すでに涙腺が崩壊寸前だ。
Shima-chang
途中、洋楽のライヴ盤の秘話を盛り込みつつ、“KISSに行く人いる?(ちょうど来日公演前日) チープ・トリックは延期になった...だから代わりに僕がロビン・ザンダーの役をやってる(※70年代後半、ロビン・ザンダーが着ていた白いスーツをオマージュしてるということだろう)。KISSの公演では「デトロイト・ロック・シティ」を演奏した後、お客さんの反応が思ったより薄くてポール・スタンレーはエーッ!?て思ったらしいけど(笑)、僕はね、そういう反応をされてもそんなに傷つかないよ。お客さんも一緒に成長してきたのねって思うから。よく若いバンドは、もっと声出せー!とか言うけれど、いやいや、僕らは温存でいきましょう(笑)”(ROLLY)
そんなトークでお客さんを和ませ、労れるのもベテラン・バンドならでは。それでも「君を好きになった」に綴られた胸キュンでみずみずしい歌詞、プラスROLLYの声のハリや声量は衰えを感じさせないな、と感心していると、“今日、すかんち至上、いちばん演奏曲数が多いんです”(小畑ポンプ)とのこと。“次に演奏するのは、すかんちは1982年に結成しましたけど、結成した年に作った曲で、ドラムを叩いているのは亡くなってしまった岡部貞之さんでした。 面白い人やったな”(ROLLY) “岡部さん、よく読み間違えてね。ウーロン茶の缶にOolong Teaって書いてあるのを、ウーロングテアって読み間違えはったりね。ホンマはパンフレットの取材の時に言えばよかったんやけど...後になってどんどん思い出すな”(小畑ポンプ) そんなエピソードの後に演奏された「Mr.ロックンローラー」。この曲は当時、ROLLYが想いを寄せていた地元で人気のレディース・バンドのオカダさんの歌詞が原案になっているとか。演奏後、“恥ずかしくてね。19歳くらいの頃の僕を全部を見られている感じですよ”とROLLYが言うのも頷ける。“それをお尻を押さえながら話しなさんな(笑)”(小畑ポンプ) という突っ込みはナイス(笑)。
小畑ポンプ
続けて、村原康介のキーボードとROLLYの唄から始まった「石見銀山ねずみ取り」、その後、村原康介のキーボード・ソロ、重々しい小畑ポンプのドラムが加わり「時間の言葉へ」と繋げられ、スロー・テンポのたっぷり聴かせるナンバーで第1部終了。休憩を挟み第2部は人気ナンバー「恋は最後のフェアリーテール」からスタート。そして、Shima-changゾーンへ。彼女が作曲した「LOVE LOVE HOLIDAY」、ROLLYとShima-changの唄の掛け合いが決め手の「好き好きダーリン」の演奏前にはShima-changとキーを確認。「109で待っててよ」のShima-changのパートはテッドがShima-chang と同じキーでフォロー。愛と優しさしかないステージに、お客さんも思わず目頭が熱くなっているようだ。その後、演奏されたのはShima-changが手がけた「セラピスト」を聴けば、彼女の才能は今も楽曲の中で光りを放っているなと思う。演奏した後、デビュー当時の逸話を盛り込みつつ、ディレイを効かせたROLLYのタイトル・コールからデビュー・シングル「恋のT.K.O.」のカップリングに収録された「ウルトラロケットマン」、「GRAVE DIGGER」、「恋のショック療法」、「レターマン」と立て続けに演奏され、オーディエンスも昇天寸前といったところだろうか。
“ここでウォー!とかね(コロナじゃなければ歓声が聞こえただろうけれども)。でもね、実を言うと、みんなで(困難を)乗り越えようという大和魂、僕は好きなんですよ。でね、32年もののお札でございましてー”(ROLLY)とくれば、お待ちかねの大人気ナンバー「1,000,000$マン」。シアトリカルな歌詞ゆえリリース当初からミュージカルっぽい表現は多少あったものの、月日を経てよりその要素が強まる方向に進化。ROLLY は高らかに唄い上げて本編終了...のはずだったがーー。“このままズバッと、快傑ズバッとやらせてもらうぜ”(ROLLY)ということで、そのままアンコールに予定されていたメニューへ突入。スライドバーを指に装着、ボトルネック奏法で「MANGO JUICE」を披露、古きよきロックの香り漂うサウンドに乗せてROLLYはギターを自在に操り、ブレイクでは声を上げてメンバーとタイミングを計る。アナログなロック・バンドならではのテンポの揺れや生々しさ、そして迫力。生ならではの音にオーディエンスはドップリ浸り、陶酔してるようだ。そこから小畑ポンプのドラム・ソロに繋げられ迫力のプレー、重々しいドラムの音で観客を圧倒した。
テッド
“じゃ、本当の最後の最後に。40周年やりましたんで。45年も47年もーー”(ROLLY)
“47年?(笑)”(小畑ポンプ)
“僕は来年還暦なんでね、来年は真っ赤なちゃんちゃんこでやります。武内さんは永遠の18歳ということでいいかな?”(ROLLY)
“永遠の18歳でお願いしまーす(笑)”(Shima-chang)
“最後に皆さんに感謝します。本当にどうなることかと思ったけれど...全員に感謝。「恋のマジックポーション」でお別れしましょう”(ROLLY)
“エヴリバディ?”と一声かけて『ダウンタウンのごっつええ感じ』のテーマ曲であり、すかんちの大ヒットナンバーでもある「恋のマジックポーション」で華やかに晴れやかに本コンサートを締め括った。“皆様に愛されて創業40年! もっとも珍味なロック・バンドが40年、活動してまいりました。また会いましょう!”(ROLLY)そんな言葉を残して、2時間半に及ぶコンサートは幕を閉じた。珍味なロックバンド......そう、彼らは結成以来、やれ色物バンドだの、お笑い歌謡バンドだのと揶揄されてきた。けれど、40年続けて来れたのなら、不名誉な言葉ですらも彼らの勲章となってるのは間違いない。色物とは“寄席で落語などに対して、彩りとして演じられる漫才や奇術などを指し、そこから転じて主要な位置にないもの”を意味する。すなわちそれは、他に類を見ないもの、ともとれるではないか。どこに属さず、オリジナルであることに誇りを持ち、己の信じる道を進んできたバンド、すかんち。その唯一無二のバンドにオーディエンスは、いつまでも惜しみない拍手を送っていた。
文・増渕 公子/写真・土田紘

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